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俺の拳とこの魂で、砕いてやるぜ!そのハーレムを!  作者: イノセス


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5話〜がんばれー!〜

 俺達は屋上へと続く階段を降りる。

 ハーレムを築くセイジ君を見に行ったのだが、想像以上におかしな光景が広がっていた。

 誰も彼もが、不自然な感情の相関図を繰り広げている。幾ら愛情を投げかけても、それは歪められてセイジ君に届かない。だと言うのに、彼女達の誰もが不満に思わない。彼が笑うと、自然と彼女達も笑い合う。1人の男を取り合っている筈なのに、誰も相手を憎いと思っていない様に見えた。

 それが、1年以上も続いているとヒデちゃんは言っていた。

 

 そんな事は考えにくい。人とは、どうしても利己的に動くもの。己の愛を受け止めさせるため、他者を蹴落としてでも成就を願う。特に、精神的にも社会的にも成熟していない若者達が、恋愛と友愛のバランスを保ちながらストレス社会を生きるなど、出来るとは到底思えない。

 歪。彼らの関係は、どう見ても歪。

 まるで、作られたかの様な関係性。

 まるで…。


「まるで、バグだな」

「バグ?虎二さん、それって何です?」

「うん?あっ、いや…なんだろうな?」


 自分で言っていて、その言葉の意味が理解出来ない。でも、心の何処かで納得している自分もいる。

 俺が忘れた、記憶の一部なのか?

 

「兎に角だ。彼らの関係が危うい事は分かった」

「危うい?虎二さんの言うことは、どうもあっしらには分かりません。あっしはただ、セイジの野郎がムカつくだけなんです」


 ヒデちゃんは分かりやすいな。


「マモちゃんはどう思うよ?」

「僕は腹減ったよー」


 良いね。君も分かりやすい。

 俺からしたら、マモちゃんみたいな男子の方が良物件に見える。高身長だし、優しそうだし、独特のユーモアもある。

 まぁ、男目線じゃ女性の嗜好は分からんがな。


「どちらにせよ、今の我々では彼らに接触すら出来ん。俺には悪評も立っているし、能力的にもカーストトップには近付くことさえ許されない。故に、能力と地位の向上を図ろうと思う」

「向上って…どうするんです?」


 困惑するヒデちゃんに、俺は人差し指をピンッと立てる。

 

「我々は学生だからね、認められるには一定の学力が必要だ。近頃で何か、テスト等が催される予定は無いかい?ヒデちゃん」

「テストですかい?ええっと…今は4月ですから、5月のGW明けに中間テストがありますね。あと小テストでしたら週に1回、国語と数学でありますよ」

「小テストか」


 昼休み明けの5限目が英語だから、そこで英単語のテストがあるそうだ。


「先ずはそいつからだな」


 俺は早速、目標を定めた。

 …筈だった。


 でも、昼食を食べながら開いた教科書を見て、俺は絶望した。

 その教科書はとても綺麗で、折り目すら付いていなかった。もしかしてタブレットで勉強しているのかと思ったが、データも真っさらだ。

 そして、俺の脳みそもまた、同じくらいに真っさらだったのだ。

 どちらのツールを見ても、授業の情報が全く呼び起こされない。

 俺は…。


「俺は今まで、何をしていたんだ?」

「ゲームしてましたよー」

「ゲーム…だと?」

「うん」


 マモちゃん曰く、俺はよく仮病で授業を抜け出し、保健室でスマホゲームをしていたらしい。

 そんな事して許されるのかと疑問に思ったが、どうやらこの学校の運営資金は大半、黒沢グループが出資しているらしい。その為、先生方は俺に頭が上がらないのだとか。

 コネクションは凄いが…使い方が間違っている。これでは親のスネを齧っているだけだ。


「何処までも堕落していたのか、こ奴は…」

「……」


 俺が悔やんでいると、横からねっとりとした視線を感じた。

 ヒデちゃんだ。


「何かあるのか?ヒデちゃん」

「ええっと、なんて言うか…虎二さん、今日は随分と違うなぁって思いましてね。もしかして、ソックリさんだったりしませんよね?」

「おいおい。こんな腹の出た高校生がそこかしこに居たりしたら、日本の医療は終わりだぞ?」


 俺が茶化すと、ヒデちゃんは「そこです」と俺の腹を指さす。


「虎二さんは何よりも、身体について言われるのが一番嫌だった筈です。デブとかチビとか、言われたら1週間は機嫌が治りませんでしたよ」

「ああ、そうだろうな」


 今だって、自然と拳を握っていた。それなりに黒い感情が、腹の底でうねっている。

 でも俺は、それを無視してヒデちゃんに笑いかける。


「なんと言えば良いか分からんけど、急に目が覚めたんだよ。このままじゃ不味いってね」

「あっ、分かりましたよ。お父様に何か言われたんすね?」

「父親?まぁ、そうだねぇ…遠からずってとこかな?」


 ヒデちゃんが納得しているみたいなので、俺は乗る事にした。

 身内に目覚めさせられたと言う意味では、ハズレてはないからね。


 兎に角、俺は授業が始まるまでの時間、必死に勉強をした。

 そして…。

 爆散した。


「ぐぅっ…40点かよ…」


 タブレットに映る小テストの結果に、俺は頭を押さえる。その結果の平均点を見ると、60点となっている。

 平均点すら越えられなかった。

 ってか、小テストがタブレットで出来るってのが凄いな。紙じゃないから直ぐに採点してくれるし、平均点も最高得点も見られる。恐ろしい世の中になったもんだ。

 そして、その最高得点は勿論…。


「今回も満点は七音だけだな。よくやったぞ」

「はいっ」


 流石は学年のアイドル。頭脳明晰と言う情報は伊達ではなかった。

 ハキハキと答える彼女の姿に、周りからも好意的な視線が向けられる。

 やはり、学業において優秀な成績を収めることは、一定の好感度を得ることが出来る様だ。俺の点数では、逆に嘲笑を受けてしまう。明日の数学こそは、平均点を取れるように勉強しよう。


 そう思っていた俺だったが、課題は勉強だけではなかった。6時間目の授業は体育で、内容はマラソンだったのだ。

 これは大ピンチであった。今の俺は体重が80㎏を超えており、BMIで計算したら測定外となってしまうワガママボディである。こんな超重量で走ったりなんかしたら、膝がぶっ壊れてしまう。

 昔、同僚でそういう人が居たんだ。かなりの肥満体形で無理して走ったら、膝の軟骨が潰れてしまって2か月も入院してしまった。

 

 今の俺も同じ状態。だから、みんなと同じように走り回ることは出来ない。

 そう感じた俺は、体育教師の元へと向かった。

 でも彼は、俺を見るなり目を丸くした。まるで、幽霊でも見るかのように驚いている。

 うん?何をそんなに驚いているんだ?

 

「黒沢…どうしたんだ?今日は、体操着なんか着て」

「えっ?みんなと同じものを着ていると思いますけど…?」


 厳密には、サイズ5Lの体操着だから、同じ物とは言えないかもしれない。けど、色合いと素材は一緒だ。

 そう思って答えたけど、細マッチョの先生は手を振って否定した。


「いやいや、そうじゃなくて。お前は今まで、この授業を殆ど参加していなかっただろ?体の調子が悪いとかなんとか聞いていたが、それは良いのか?」


 マジか。虎の奴、体育の授業もサボりまくっていたらしい。しかも、体調不良と偽って。

 なんて奴だ…と呆れながらも、俺は先生と交渉する。体調は良いが体重がヤバいので、走るのではなく早めのウォーキングをさせて欲しいと願い出た。

 すると、


「おう、良いぞ。自分のペースでやってみろ。怪我だけは気を付けろよ」

「はいっ!ありがとうございます!」


 快諾してくれた。

 これが昭和や平成初期であったら、きっと殴られたり、そんなの関係ねぇ!って無理やり走らされていたのだろう。良い世の中になったもんだ。

 そう思って、俺は気分よくトラックを歩き始めた。

 でも、


「ちょっと、あれ見て」

「うわっ、なんでアイツが体育やってんの?」

「おっそ。あたしより足遅いじゃん」

「まるでブタの散歩だね」


 状況はあまり良いとは言えなかった。

 俺を抜き去る生徒達の中には、こちらを見てクスクスと笑い合う人がいた。普段から授業をボイコットしていたからか、周囲から刺さる目は随分と冷ややかなものだ。

 

 きっと、俺が嘘をついてサボっていたのを知っているのだ。だから彼女達は、俺を卑怯者だと思って蔑んでいる。

 仕方がない事だ。サボっていたのは事実で、太っているのも俺の怠惰が招いたこと。こうして晒し者になるのは仕方がない事。


 笑われても、俺はただひたすらに歩く。前を向き、腕を振って、なるべく足を速く動かして着実に距離を稼いでいく。

 今日の授業は、1800mを走れば終了だ。あと1000mくらいか。頑張ろう。

 そうして、汗だくになりながら競歩を続けていると、


「がんばれー!」


 励ましの声を掛けてくれる人が居た。

 見ると、走り終わってトラックの中央でストレッチをしていた女子生徒の1人が、こちらに小さく手を振っていた。

 随分とオシャレで可愛い娘だ。髪色は金髪で、スタイルもかなり良いので外人さんかと思ってしまったが、虎二データベースから飛び出してきた情報が違うと言っていた。

 

 ええっと…なになに?彼女の名前は…式部(しきべ)(じゅん)。うわっ、セイジハーレムの一員じゃないか。隣クラスのムードメーカーで、胸のサイズがH…って、どうやって得たんだ!?その情報。

 

 兎に角だ。カーストトップ層が俺に話しかけてくる筈はない。こいつは俺の勘違いで、近くに親しい友人が居るのだろう。  

 そう思い、俺は自分の周囲を確認する。でも、誰も居ない。

 取り合えず、俺はジュンさんにビシッと手を上げて、「ありがと!」と大きく返事をしてみる。すると、彼女もグッと親指を上げてくれた。

 

 おお…。こんな悪評だらけのクズ男に反応してくれるなんて、なんて優しい娘だろうか。

 俺は感動すると同時に、足を更に速く動かす。

 もっと前に、早く前に。

 優しい彼女まで捕らえてしまうあの偽ハーレムを、1秒でも早く正す為に。

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地球タイプ世界共通の現代社会相当の一般常識は備わってても、学力関係の記憶はスポーン☆と飛んだのかw ブタいじめ(身体の制御権と情報の引き出し)以外に特殊能力も無い、地道な再建スタートw あまり大っぴ…
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