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俺の拳とこの魂で、砕いてやるぜ!そのハーレムを!  作者: イノセス


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58話~今度のパーティーでは何をするの?~

「はい。では当日の送り迎えを宜しくお願い致します。…はい、はい。失礼いたします」


 セイジが乱入してきた次の日の昼。我々は宿泊学習の準備に追われていた。

 とは言っても、たった今バスの手配も見通しが立ったし、新幹線の予約も申請済みだ。細かい事を言えば、お弁当の手配や自由行動のルール決めなど、まだまだ決めるべきことはたくさん残っている。

 だが、ここから先はルートが正式決定してくれないと動けない。ルートに寄って、大きく変わって来る所だろうからね。

 つまり、今できることは粗方済んだと言う事だ。


「束の間の休息ってことね」


 図書室のベランダで、ノゾミさんが大きく伸びをしながら呟く。ジュンさんも「なんとかなったねぇ~」と満足そうに微笑んでいる。

 うむ。ここまでプランを固めたら、後は学級委員に任せても大丈夫だろう。勉強の片手間で作業をしても、計画がとん挫する可能性は無くなった。

 あと我々が手伝えるとしたら、しおり作りの手伝いくらいだろうか?


「見積もりも、時間はかからないだろうと担当者さんは言っていたから、ノゾミさんには学級委員の臨時招集をお願いしたい」

「了解よ。学年主任の武井先生に言っておくわ。みんなには放課後を開けておくように言えばいいかしら?」

「助かるよ。いつ見積もりが来るかわ分からないけど、きっと今週中だとは思うから。なるべく開けておくように言っていおてくれ」

「分かったわ。なんか、私まで社会人になった気分」

「お、おい。俺が社会人みたいに言わんでくれよ」

「うふふ」


 ノゾミさんは笑いながら、「じゃあ、また明日」と言って帰っていった。

 さて。


「じゃあ、俺達も行こうか」

「うん!」


 俺はジュンさんを連れ立って歩く。

 今日から早速、ジュンさんと約束した勉強会だ。今日はジュンさんの家ですることになっている。


「虎ちゃんが来るって聞いて、ママも張り切ってるから」

「なんでママさんが張り切るんだい?」


 今までも何かとお菓子とか軽食とか取り揃えてくれちゃったけど、また何か用意してないよね?張り手の謝罪は散々頂いちゃったよ?

 俺が心配していると、ジュンさんは軽いステップで俺の前に躍り出る。


「多分だけど、腕によりをかけて夕ご飯作るって意味だと思う。虎ちゃんも食べてってよ」

「良いのかい?そんな所までお世話になっちゃって」

「良いよ、良いよ。パパも単身赴任でなかなか帰ってこないからさ、久しぶりに作り甲斐があるって喜んでたし」

「そうか。そいつは有難い」


 そう言いつつ、俺は家に連絡を入れる。今からなら、俺の夕食を明日に回してくれるだろう。こういう連絡を小まめにしないと、家に帰った時に大目玉を食らってしまうのだ。

 

「ただいまー!」

「お邪魔します」


 久しぶりのジュンさん家のお宅訪問。でも、リビングへと入ってみると、シンッと静まり返っていた。

 おや?


「ママ、買い物行ってるみたい」


 あっ、そう言う事。

 そう言えば初回も、買い物帰りに遭遇したんだったな。今の時間だと、夕方のタイムセールか何かかもしれないな。それか、会社帰りなのかも。


「さっ、虎ちゃん。あたしの部屋に行こっか?」

「いや、待ってくれ!ジュンさん」

「あはは!冗談、冗談だよ~」


 ぐぅ…。また遊ばれてしまったか。


「コーヒー淹れるね?虎ちゃんはブラック?」

「ああ。それでお願い」

「はーい」


 なんか良いな、今のやり取り。まるで新婚さんみたいだ。

 …うわっ。自分で言って後悔した。気持ち悪いこと考えるな、俺。


「はい、どうぞ」

「ああ、ありがとう。良い香りだね」

「うふふ。なんか今の、新婚さんみたいだね」

「げっほ!げっほ!」

「あはは!焦り過ぎだよ、虎ちゃん」

「いや…実は俺も、同じことを考えていたんだ」

「ブフッ!」


 2人して自爆してしまった。

 互いに赤い顔を見合わせた俺達は、何だか馬鹿らしくて、2人して笑ってしまった。

 そして、俺はカバンから教科書と参考書を取り出す。

 

「さて、一服も出来たし。そろそろ勉強タイムに移ろうか」

「よ~し。次の期末は、平均点以上取るを目標にするよ!」

「おっ、良いね。では俺も、総合50位以内を目指すとしよう」

「虎ちゃんなら、1位も目指せるよ」

「もうちょっと段階を踏ませてくれない?」

「虎ちゃんなら行けるって!」


 と言う事で、志高く勉強会をスタートした。何時お母さんが帰って来るか分からないから、勉強は対面式にしてもらう。ジュンさんが隣に来たがっていたが、また誤解されたら大変だ。今度こそ、首が吹っ飛ぶかも。


「せんせー!ここの問題が分かんないよー!」

「どれかな?」

「ここのね、この式がこうなるのが分かんないの」

「ああ、これはね。こういう式が隠れているんだよ」

「あっ、そういうことか!」


 俺がちょこっとアドバイスをするだけで、ジュンさんは直ぐに理解を示す。

 凄い成長速度だ、ジュンさん。この間まで、頭から湯気を出していた人とは思えない。やっぱり彼女はバカなんかじゃない。その一瞬だけを切り取って判断した人が愚か者だっただけだ。その愚か者が貼ったレッテルのせいで、随分と苦い思いをしてきただろうな。


「なになに?虎ちゃん。あたし、何処か間違ってる?」


 いつの間にか彼女をジッと見詰めており、それに彼女は慌てた様子になった。

 俺は大きく手を振る。


「いや、違うよ。ただ君の成長に目を見張っていただけさ」

「ええ?成長って、何処見て言ってるのぉ?虎ちゃん」


 そう言って、両手で胸元を隠すジュンさん。

 いやいやいや!


「違う!そっちじゃない!そっちじゃないんだ、ジュンさん!君の学習能力を言ったんだ」

「本当にぃ?」

「本当だ!信じてくれ!」


 分かって言ってるんだろ?そんな風に、ニヤニヤ笑っているって事はさ。


「そっかぁ。でもあたし、こっちも成長してるよ?」

「うぇっ!?」


 嘘だろ?あの時の虎情報ですら驚きだったのに、それを凌駕するだと…?


「触ってみる?」


 ぐおっ!

 

「なっ!?何て魅惑的…じゃなくて、恐ろしい事を!」


 本当に恐ろしい。つい魂が揺らいで、飛び込みそうになったぞ?


「もうっ。虎ちゃんは真面目なんだから」

「ジュンさん。本当に気を付けてね?男は狼なのよ?」

「はーい!」


 と、そんなことをしていると、リビングのドアが開いて、ビニール袋を大量に抱えたジュンさんママが現れた。

 俺は即座に立ち上がり、彼女の元へ駆け寄る。


「お持ちしますよ、お母さん」

「あら、ありがとう。じゃあ、お米持ってくれる?」

「お安い御用で」


 お米だけでなく、いくつかの袋も強奪した俺は、それをキッチンの中へと運ぶ。

 毎日毎日、こんな重い思いをして大変だ。お母さん、見た目よりも力持ちなんだな。母は強しって事か。


「お帰り、ママ。あたしも何か持とうか?」

「良いわ。重いのは全部、虎ちゃんが持ってくれちゃったから」


 あら?お母さんまで、俺を虎ちゃん呼びするの?

 意外に思った俺はつい、お母さんを見詰めてしまう。すると、彼女はハッとした顔になる。

 

「あら、ごめんなさい。ジュンがいつも貴方の事をそう呼ぶから、つい同じように呼んじゃったわ。虎さん、とかの方が良いかしら?」


 いや、虎さんって…。

 俺は手を前に出して構える。


「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又。性は黒沢、名は虎二。人呼んで、回転の虎と発します」

「貴方、よくそんな古いネタ知ってるわね?あたしでもギリ分かるかどうかレベルよ?」


 ええっ!?親世代ですらそんなレベルなの?ママさん、俺より若いんじゃない?

 ああ、いや。俺は高校生だから、肉体的には貴女より若いんだけどさ。


「ねぇ、ママ。今のって、何かのセリフなの?」

「ええ。古い映画のワンシーンよ」

 

 ぐっ。ジュンさんに至っては、聞いた事すらないのか。

 

「それより。あんた達、随分と楽しそうだったわね?何の話をしていたの?」

「えっとねぇ。虎ちゃんがあたしの成長に興味津々って話をしてたのぉ~」


 あ~。ジュンさんがニヤニヤしてる。

 

「学力の話だからね?ジュンさん。その胸を寄せる動作、マジで止めてくれないか?冗談抜きで、俺の首が無くなっちゃうから」

「だって、焦ってる虎ちゃんも可愛いから」

「焦らせる手法の問題なの!ジュンさん」


 君のお母さんを見なさい。俺達の事、凄い目で見ちゃってるでしょ?

 そのお母さんが、ボソッと呟く。


「あんたら、早く付き合っちゃいなさいよ」

「ちょっ!何言っちゃってんのよ、ママ!」


 本当に、何を簡単に言ってくれているんだ、お母さん。俺にはまだ、超えなくちゃいけない壁があると言うのに。


「はいはい。じゃあ君達は勉強しながら仲良くしてなさい。お母さんは晩御飯作るから。黒沢君も食べていくでしょ?」

「ママの作るオムライスは絶品だよ!虎ちゃん」


 ジュンさんが言った通り、キッチンに立つお母さんの表情はとても生き生きとしていて明るい。これで断るなんて、とても出来ない。


「はい。是非、ご相伴に預からせてください」

「ごしょうばんって、黒沢君は育ちがいいのね」


 お母さんは楽し気に言いながらも、手早く夕食の準備を進める。

 この感じだと、手伝うのは逆効果だな。お言葉に甘えて、勉強に集中させてもらおう。


 そうして、俺とジュンさんは勉強に戻るも、それから程なく夕食の時間となった。


「ちょっと作り過ぎちゃったから、いっぱい食べるのよ?2人とも」

「あたしは無理だよ。そんなに食べられないもん。虎ちゃん、お願い出来る?」

「ああ、お任せあれ」


 手を合わせて懇願するジュンさんに、俺は胸を叩いて応じる。 

 元デブを舐めないでくれよ?皿ごと食ったるわ。


「良い食べっぷりね、黒沢君」

「ありがとうございます。元々、食べるのは好きな方でしたから」


 そのせいで、あんなデブになったとも言える。パーティー会場ではもっぱら、残飯処理係に徹していたらしいし。


「そう言えばさ、虎ちゃん。今度のパーティーでは何をするの?」

「うん?そうだな。基本的に挨拶回りがメインになると思う」


 父や兄の代理として行くからね。黒沢グループとして出席してますよっていうアピールと、これからもお付き合い宜しくって言い回るのが俺の役割だ。

 あっ、しまったな。名刺を忘れていた。代理ってことで、父か兄のを貰うか?


「え~。なんか地味なんだね。ダンスとかしないの?」

「ああ、そう言えばプログラムにそんな事も書かれていたな」


 あくまで希望者だけだけど、主催者が希望したら踊る必要が出てくるかもしれない。

 

「練習しておいた方が良くない?あたし、ちょっとは踊れるから、教えようか?」


 おお、ダンスレッスンか。


「センスが無い俺だけど、良いのかい?」

「もちもち。いつも教えてもらってるんだから、偶にはあたしを頼ってよ」

「そいつは有難い。宜しく頼むよ」


 これは又とないチャンスだな。苦手なダンスを克服できる。

 …苦手だよな?野球とか、絵を描く時と同じ嫌悪感があるし。


「なになに?パーティーって、あんた達、何の話をしているの?」


 お母さんが不思議そうな顔で俺達を見比べる。

 それに。


「ええっとね。宿泊学習で京都行く為に、虎ちゃんがお父さんと交渉してくれたんだよ。それで、パーティーに参加しなくちゃいけなくなって…」

「宿泊学習で、交渉?良く分からないけど…そのパーティーって、誰かの誕生日会とかなの?」

「ええっと…何のパーティーなんだっけ?虎ちゃん」


 ああ、そうか。そこら辺は話してなかったな。


「三方さんって言う、議員さんの誕生日会だよ。地元がここら辺の議員さんだから、向こうは票集めって意味でも開いているみたい」


 そして、こちらは大量の票を入れる代わりに、良い関係を築いていきましょうって会だ。何とも腹黒くて楽しそうなパーティーだよ。ほんと。

 俺が嘆いていると、お母さんが真ん丸な目で俺を見る。


「えっ?議員?黒沢君のお家って、政治家一家なの?」

「違うよ、ママ。虎ちゃんのお父さんは、黒沢グループの社長さんだよ」

「…え”っ!?黒沢って、あ、あの、黒沢?」

「そうだよ?ママ、虎ちゃんの苗字聞いて、気付いてなかったの?」

「気付ける訳ないでしょ!黒沢なんて苗字の人、いっぱいいるんだから…」


 お母さんが大混乱している。アワアワ言い始めて、俺と手元のオムライスに視線を彷徨わせる。


「あたし、そんな家の子に、こんなの食べさせちゃって…」


 こんなのって…。

 

「とても美味しいですよ?お母さん」


 俺は大きな口でオムライスを頬張り、ニコリと笑う。でも、お母さんは余計にアワアワしてしまった。

 家柄なんて、気にしないで欲しいんだけどなぁ…。

「分かっちゃいるんだ、妹よ」


危ないから、それ以上やめて。


「ふむ。名作が色あせていくのは悲しいものよ」


だからって、ここではやめて下さいよ。

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― 新着の感想 ―
予算と企画を持ち込んだ、実質オーナー一族の生徒が主任教諭を通して学級委員を臨時招集、というのは 民会で選出された執政官(コンスル)と突然出現した独裁官(ディクタトール)が並立してる感w 目的・機能が限…
黒沢家でも 食事の連絡しないと怒られるのか (´・ω・)
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