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俺の拳とこの魂で、砕いてやるぜ!そのハーレムを!  作者: イノセス


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42話~折り入ってご相談が…〜

 部室棟は、教員棟の隣に立つ大きな建物だ。東館と西館に別れており、今我々が登っているのは運動部が入っている東館だ。

 今は授業中と言うことで、普段の放課後より人は少な目だが、何人かの運動部員がエントランスで雑談に興じている。

 

 ふむ。中は意外と綺麗だな。運動部と言うから汗臭いイメージだったが、随分と清掃が行き届いている。これは、部室の中や西館の文化系部活も同じなのだろう。

 そんな事を思いながらも、俺は通りかかった大柄な男子生徒に声を掛ける。緑のジャージだから、我々と同じ2年生だ。


「ちょっと済みません」

「うん?俺?」


 初対面の俺に話しかけられて、若干警戒気味の男子。俺がバド部の相川先輩に用があると言うと、余計に表情が険しくなる。

 うん?なんで?


「君、見た事ない顔だな?転校生…なんて話は聞いてないし…相川先輩に何の用なんだ?」

「えっと、俺は黒沢って言います。2年2組の」

「…黒沢?黒沢って…もしかして、生徒会長とやり合って無傷だったって噂の、あの?」


 どの?


「戦ってはないですよ?睨み合っただけですから」


 それであれば、つい十数分前にもやり合ったって事になるがね。


「ああ!やっぱり、噂の人か!」


 男子は納得したみたいで、スマホを取り出しながら「ちょっと待っててくれ」と言って何かを打ち込み始めた。そしてすぐに顔を上げる。


「すぐ降りてくるってさ。ちょっとそこのソファーにでも座って待っててよ」

「ああ、ありがとう。助かったよ」

「お安い御用さ。悪いけど俺、ドッヂボールの試合があるからもう行くぜ」


 そう言って、男子は走り去っていった。

 木下君達から、会長との小競り合いが噂になっていると聞いていたが、本当だったみたいだ。

 残念な知らせを聞いて、俺は力なくソファーに身を沈めようとした。でも、すぐに声がかかった。


「よぅ、黒沢」

「あっ、相川先輩」


 早い。もう来てくれたのか。


「どうした?お前から会い来るなんて、珍しい…待てよ、何か嫌な予感がするな。まさか、とうとうセイジの野郎が、アイドル達に手を出したか?それとも、お前と式部純との関係が上手くいかなくなったか?」


 うおぉ…。やっぱりこの人達の情報網は恐ろしい…。

 改めて、戦いは数だと認識しながらも、俺は大きく首を振る。


「違います。セイジではありません。ですが、同等以上の脅威を目の当たりにし、その首謀者を捕まえました」

「あの野郎と、同等だと?何なんだ?それは」

「盗撮魔です」

「…はぁ?」


 間髪入れずに答えると、先輩は珍しく情けない顔を晒した。

 そして、俺が先程の出来事を簡潔に話すと、先輩は見る見る顔を赤くした。

 その後、


「なんてことだ…そんな外道が、この学園にのさばってたってのかよ。くそっ!」


 己の手のひらに拳を突き立て、激しい怒りを(あらわ)にしていた。

 よしよし。これだけ怒ってくれるなら、話が進めやすいぞ。

 俺は舌で唇を濡らす。


「相川先輩。そこで、折り入ってご相談が…」

「ああ、分かってる。そのクソ野郎がしでかした罪を、俺達が洗い出せば良いんだろ?任せろ。隠田の野郎の、小中時代の罪も全部暴き出して、野郎を地獄の底に突き落としてやる…」

「いえ。そうではなく」

「あぁ?じゃあなんだ、奴がバラ撒いた写真の回収か?流石にそれは、直ぐには出来ねぇぞ?」

「それは…何時かはやって欲しい事なんですけど、貴方達に直ぐやっていただきたい事ではありません。今すぐに必要なのは、親衛隊の活動方針を考え直して頂きたいのです」

「あぁ!?なんだと!?」


 そんなに吠えんで下さいよ、先輩。

 俺は両手を出して先輩を宥める。


「貴方達親衛隊は今、アイドル達の最大の敵がセイジだと定めて、その妨害に全力を費やしている。違いありませんか?」

「ああ、そうだ。俺達は奴を邪魔し、アイドル達を守っている。それだからこれまで、アイドル達は誰も奴の毒牙にかかってねぇんだ」


 う〜ん。そうなのかね?俺にはそもそも、セイジにそこまでする勇気も度胸も無いように見えるのだが?

 そう思う俺だったが、そんな事は口にはしない。頭を大きく下げて、彼らを立てる。


「それは本当に、感謝しかありません。これまでジュンさんを守っていただき、ありがとうございます」

「良いって事よ、兄弟。俺も、お前には感謝しかねぇんだ。最近俺に届く報告によると、野郎の傍に式部純が寄り付かなくなったそうじゃねぇか。お陰で、奴もかなり焦っているって話だ」


 うん、確かに。最近のセイジは焦っている。そして、前までは見せなかったボロも見せ始めている。自己中な発言を連発したり、ヘタレな一面を見せたり、女性に乱暴な仕草をしたり…。

 段々とメッキが剥がれてきているのは、ここ最近でも顕著だ。お陰で、周囲の女子生徒達も、奴を見る目が少しずつ変わっている様に思う。

 以前までなら、朝も真っ先に挨拶していたけど、最近はそう言う人も減って来たからね。

 …代わりに、俺に対する挨拶が苛烈になって来た気がするけど、気のせいだと信じたい。


 朝の事を思い出して憂鬱な気分になっていると、相川先輩が一歩俺に近付いた。その熱く真剣な目を、俺に向ける。


「黒沢。俺はお前に謝らねぇといけねぇ。俺達が歯を食いしばっても出来なかった事を、お前はやってのけた。事態はドンドン好転している。だってのに俺は、あの時お前の道を夢物語だなんて言っちまった。出来ねぇ事だと、勝手に決めつけちまった。本当に済まなかった、黒沢」


 そう言って、勢いよく頭を下げる先輩。

 俺は慌てて、声を上げる。

 

「頭を上げて下さい、先輩。俺は皆さんに対し、お願いする為にここへ来たんですから」


 そう言うと、先輩は顔を上げて幾分か厳しい目で俺を見る。でも、さっきみたいに吠えたりしない。ただ真っ直ぐに、俺を見る。

 これは…説明しろって事ですね?

 ゴホンッ、ご説明致します。


「今回の盗撮魔事件で、敵はセイジばかりではないと判明しました。首謀者は捕まえましたが、また新たな脅威が生まれる恐れは十分にあります。彼女達は魅力的ですからね。校内だけでなく外にも良からぬ考えで寄ってくる輩はいるでしょう」


 だから、親衛隊にはそちらにも目を光らせて欲しいのだ。

 本来親衛隊とは、対象を守るナイトの様な存在の筈だ。だが、先輩達はセイジの脅威にあまりにも注力しすぎて、今回の盗撮には気付くことが出来なかった。

 だから、


「本来の役割である、専守防衛に移行して頂きたい。皆さん親衛隊には、相手を攻撃するのではなく、姫君達を守るナイトになって頂きたいのです」


 そうすると、ジュンさん親衛隊は益々俺の邪魔をしてくるかもしれんが…そこは仕方がない。彼女がまた盗撮等の被害に遭わなくなるのならば、そちらの方が断然良い事なのだから。


「如何ですか?相川先輩」


 恐る恐る彼の様子を窺うと、彼はガリッと奥歯を噛み締め、閉じた目からは薄らと涙が滲んでいた。

 ええっと…どういう心情?


「何やってんだ、俺は。今までの俺達は!本来の目的を忘れ、ただ暴れ回るだけの不良グループに成り下がっちまってたじゃねぇかよ、くそっ…」


 先輩はそう言って悔やみ、目をカッと見開いて、俺に手を差し出した。


「助かったぜ、黒沢。お前のお陰で、俺は目が覚めた。元々俺達が結成した目的を、思い出すことが出来たぜ」

「目的、ですか?」

「うん?ああ、そうだ。あれは2年前の夏休み前だったな」


 先輩は懐かしそうに話してくれた。

 なんでも、先輩達は当初、親衛隊ではなく生徒会直下のボランティアとして活動していたらしい。当時書記を務めていたナツ先輩が、率先して学校の為にと様々な活動を展開していた事に心を打たれ、彼女の活動を支える為に結成したのだとか。そして、先輩達は学校の行事や校外活動を、会長と共に行っていたらしい。

 それが変わったのは、1年前。


「上郷の野郎が入学してから、ナツ様は変わっちまった。俺達生徒を邪魔者みたいに扱い、野郎ばかりを気にかける様になっちまった」


 その頃から、好評だったボランティア活動は無くなり、ナツ先輩は上郷の番犬のような暴力女に成り下がってしまったらしい。

 だから、先輩達はボランティアから親衛隊に方針を切り替えた。変わってしまったナツ先輩を取り戻す為にと、諸悪の根源である上郷を妨害するようになった。

 それが行き過ぎて、この間の暴力未遂に繋がったのだとか。


「あの人を取り戻すって思いばかりが先行しちまって、いつの間にか野郎を苦しませる事に意識が切り替わっちまってた。奴の事ばかり追い回す、ただの不良になり下がっちまっていた。これは、俺だけじゃねえ。親衛隊全員に言えることだ…」


 でしょうね。最初貴方達を目にした時は、なんて治安の悪い学校だと思ってしまいましたもの。

 でも同時に、貴方達の心情も分かる。セイジの目を見ていたら、俺ですらいら立ちが先行しそうになるから。

 元々この学校、やけに暴力で片付けようとする人が多いと思っていたんだけど…これもセイジの力が及ぼした影響だったのか。

 …推測の域を出ない事だがな。


「虎二さん」


 俺が考え込んでいると、ヒデちゃんが背中をツンツンした。


「そろそろ行かないと、また試合に遅れますよ?」


 おっと。もうそんな時間か。


「済みません、相川先輩。試合が始まるので、我々はそろそろ行きます」

「ああ、そうか…」


 先輩は一瞬顔を伏せ、何かを考える。そして、再び顔を上げた時には、少しだけ優しい顔になっていた。


「なぁ、黒沢。やっぱり親衛隊に入らねぇか?俺はお前に、次の総長になって欲しいって思ってんだ。お前なら、俺みたいに道を外れたりしないだろ?」


 先輩は俺を、真っ直ぐに見る。

 その文言は、何時ぞやのトイレで聞いたものに酷似している。でも、彼から感じるオーラは淀みが無くなっていた。

 それを見て、俺は首を振った。


「先輩は少々、俺を過大評価されていますよ。略奪愛を企む人間の歩む道が、正道な筈がない。俺の歩む道は、茨が蔓延る蛇の道。今まさに掘り進めている地獄の道です。そんな邪道に、皆さんを連れては行けませんよ」

「そうか?その道が開通したら、立派な王道になると思うがな、俺は」

「はっは。ではその時は、僕の後ろに着いてきて下さい。通行料は安くしますので」

「金を取るのかよ!」


 先輩はツッコんで、楽しげに笑う。そして、軽く手を上げて去っていく。

 その背中を見ていると、何となく、もう親衛隊への勧誘は諦めた様に見えた。


 親衛隊か。入ったら入ったで、また違った世界が見れたのかな?


「虎二さん?」

 

 おっとやばい。時間が無いんだった。今度は流石に、ノゾミさんに怒られちまうぞ。


「ヒデ、マモ。ダッシュだ」

「ええっ!試合前ですよ?」

「ウォーミングアップに最適だろ?」

「なんか、僕たち、何時もこんなんばっかだねぇ~」

「言ってないで、ほら、行くぞ」


 ノゾミさん達が待つバスケ会場へと、俺達は全力で走るのだった。

盗撮魔が言っていた、会長も大人しかったとはそう言う事だったのですね。

魅了が、会長の性格も変えてしまった?


「何処までの効力があるかは、分からんがな」

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― 新着の感想 ―
生徒会ボランティア残党ほど入れ込んでいない他生徒からしてみれば、実績とカリスマを持ち合わせた?女子 生徒である彼女が2年生時点で既に生徒会長に選出されていも不思議は無さそうですね スズメバチにたぶら…
相川先輩 こんな熱血な人だったのね (´・ω・) セイジくんの能力は思ったよりヤバい物なのか
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