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俺の拳とこの魂で、砕いてやるぜ!そのハーレムを!  作者: イノセス


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35話〜引っ張らないで!〜

 球技大会に向けて、我々は全力で訓練に取り組んだ。

 最初の頃は体力が皆無であったヒデちゃんは、取り合えず1クオーター(6分)を全力で走り切る体力を獲得した。ドリブルしながら歩けなかったマモちゃんも、直線でのドリブルなら走ることが出来るようになり、ダンクやレイアップなどのシュートは入るようになった。

 これで戦えるのかは不安だったが、球技大会当日の朝にチームで集まった際、コーチへこの事を報告したらお褒めの言葉を頂いた。


「十分よ、2人とも。それだけ出来るなら、今日の試合でも十分に活躍できると思うわ」

「うぉお!七音さんから褒められたっす!感無量っす!地獄のしごきを耐えた甲斐がありました!」


 良かったな、ヒデちゃん。君の頑張りが評価されて。きっと、ちゃんと集中して訓練に参加したから褒められたんだぞ?最後の方は、ジュンさんの体をガン見することも減ってたからな。

 ただね、俺としては地獄のしごきではなく、愛の鞭って言って欲しかったんだけどさ。


 泣き出したヒデちゃんの背中を摩っていると、コーチの隣に立つ男がため息を吐いた。

 セイジだ。


「おいおい。レクリエーションで泣いてたら意味ないだろ?そんな練習、やらない方が良かったんじゃないか?」

 

 肩を竦めて言い放つセイジ。それに、ヒデちゃんも泣き止んで彼を睨みつける。周囲の男子も、彼に冷たい目を向けて、クラスの温度が一気に下がった。

 それを受けて、流石のセイジも余裕の笑みを消す。


「なっ、なんだよ。だってそうだろ?この大会は成績にも影響しないし、賞品だって大したことない。何の見返りもないのに、なんでそんなに頑張ってんだよ?」


 まぁ、彼の言う意味も分からなくはない。学業と言うより、レクリエーションの意味が強い。賞品も、今のところ判明しているのは、打ち上げで食堂を利用する権利くらいなものだ。

 だが、そう言う事ではないのだ。

 呆れていると、俺以上に呆れた様子で、ノゾミさんがセイジを睨みつける。


「ちょっと、セイジ。みんながやる気になってるのに、なんで水を差すようなことを言うのよ?」

「なんだよ、ノゾミまで。最近お前、俺に対して冷たくないか?俺、追試は受かったんだぞ?」

「それとこれとは話が別よ」


 う~ん。どんどん空気が悪くなる。これでは、皆の士気が下がってしまい、勝ち戦でも負けてしまうぞ?

 仕方ないな。

 俺は奴の前に出る。


「上郷君。ただ報酬や評価を得る為だけが、人のやる気に繋がる訳ではないんだよ」

「どういうことだよ?黒沢君。評価されなきゃ、頑張ったって意味がないだろ?」

「そうか?例えば、君がスマホゲームをするとしよう。ゲームで好成績を収めたら嬉しいだろ?ただのデータであり、それが人生に役立つことはない。それでも、そのゲームをクリアしたり、上手くなろうと熱中したことは無いかい?」

「あー。ゲームか。それなら、俺も良くやるから分かるぜ。休日も熱中し過ぎて、良くノゾミ達に怒られるからな」


 うむ。君が理解できたのは良いとして…最後の発言は余計だ。休日もノゾミさん達とイチャイチャしているのが垣間見えて、周りの男子から殺意が漏れ出してるぞ?

 俺は呆れてセイジを見上げるが、彼はそんな事お構いなしで、お気楽な笑みを俺に向けて来る。


「流石だな、黒沢君。すげぇ分かり易くて助かったぜ。やっぱ、持つべきものは友達だな」


 友達?本当にお前は、俺をそう見ているのか?

 俺が疑問視していると、ノゾミさんがセイジの袖を引っ張る。


「ねぇ、セイジ。黒沢君が友達なら、今日の球技大会、私達と一緒に回って貰ったら?」


 ニコニコ顔で提案するノゾミさん。それに、セイジは焦って視線を泳がせる。


「えっ!?あっ、いやぁ〜それは…ほら、ナツ先輩が嫌がるし」


 おいおい、セイジよ。友達なのに、そんな扱いをするのか?それって結局、お前にとって都合の良いアドバイスキャラとして使おうとしているだけじゃないのか?

 俺が白けた目でセイジを見ていると。彼は「おっと、そうだった」と思い出したように手を叩く。


「今の内に、ジュンの奴を捕まえようぜ。あいつ全然メッセージ読まないから、今日俺達と回ることになってるの知らないだろうしな」

「えっ?ちょっと待ってよ、セイジ。ジュンが嫌がったらどうするのよ?」

「何言ってんだ、ノゾミ。俺とあいつは親友だ。親友の俺が言うことを、あいつが嫌がる訳ないだろ?」


 セイジは豪語して、教室を出ていく。

 その傲慢な言い様に、俺の頭の中では奴の背後から襲撃する算段が瞬時に出来上がる。でも、何とかその凶悪な思いを腹の内に留め、奴の背中を静かに追う。

 いざという時は、貴様の意識を奪わせてもらう。


 そう思ってセイジの背後に潜んでいたが、俺の手刀に出番はなさそうだった。


「おい!なんで一緒に来ないんだよ、ジュン!」

「だから、言ってるでしょ?あたしは友達と回るの」


 1組に着いた我々を待っていたのは、ジュンさんへの道を阻む1組の男子達だった。ジュンさんは彼らの後ろで、お友達らしき娘達と手を繋いでセイジに険しい顔を向けていた。

 それに、セイジが弱った声を上げる。


「意味分かんねぇよ…、お前。なんで俺が言うことを、素直に聞かないんだよ?俺とお前は親友だろ?なぁ?頼むよ、ジュン。今度、お前の頭を撫でてやるからさ。それで仲直りしようぜ」

「だから、それが嫌だって言ってるでしょ!」


 ジュンさんの強い拒絶に、セイジは「はぁ?」と言ったまま固まってしまう。今まで言いなりだった人に、それが通用しなくなって焦っている様子だった。

 そうして困ったセイジは、俺に振り向いた。


「な、なぁ、黒沢君。こんなのっておかしいと思わないか?ジュンは俺の事を好きなのに、その俺のいう事を聞かないんだぜ?これってさ、誰かに脅されてるとしか思えないよな?」


 ほぉ?

 

「君は、式部さんが好意を寄せている事は理解していたのか?」

「えっ?あっ!いや、それは…って、今はそんなこと、どうでも良いだろ?そうじゃなくて、誰がジュンを苦しめているかって話だよ!」


 お前だ。

 そう言ってやりたいところを、グッと堪える。言えば、こいつに塩を送る事になる。ジュンさんがより、こいつの魅了に取り込まれてしまう。

 であるから、上手く誘導する必要がある。


「脅されていると取るのは早計だな、上郷君。俺の見た限り、式部さんが君から離れた様に見えるのは、彼女の置かれた環境が変わったからだと推測する」

「環境?」

「そうだ。彼女は今、1組の友人達との友愛を育んでいる。遠い親戚より近くの他人。近くに居るものを大切にするのは、人として自然な事だろうよ」


 俺の説明に、しかしセイジは納得しきれない顔をする。

 

「でもよ、あいつは俺を好きなんだ。今までだってそれで、俺の傍に鬱陶しいくらいまとわり付いていたんだ。なのに、いきなりこんな態度を取るなんて…1組の奴らに、何かされたとしか思えねぇよ」


 ふんっ。何処までも傲慢で、自己中心的な野郎だ。

 

「好きだからと言って、常に傍らに居たいとも限らんだろう。人の心は移りゆくもの。己の影の様に、常にそこにあるものと思う方が傲慢ではないか?」

「影?…お前の言うことは、正直良く分かんねぇけど、つまりは気の迷いって事だな?」


 そうでは無いぞ、セイジ。どれ程好きな相手でも、お前が傲慢なままでは愛想を尽かされると言っているのだ。今まで許して貰えていた蛮行も、何時かそれが許されなくなる日が来ると言っているのだ。

 そう思う俺だったが、

 

「好きに捉えて貰って構わんよ」


 それしか言わなかった。奴に教える義理はないから。

 すると、何を思ったか、セイジはパッと笑みを浮かべた。

 

「おう!サンキューな、黒沢。やっとジュンの事が分かったぜ」


 元気を取り戻したセイジが、ジュンさんに向き直る。手を振って、朗らかに言い放つ。


「おい、ジュン!今はお前の好きにさせてやるよ。でもな。後でちゃんと、俺の元に帰って来いよ?お前のスペースは残しておいてやるからよ!」

「……」


 ジュンさんが何も返さないのに、セイジは満足した顔で振り返る。そして、ノゾミさんの肩を掴んで「ほら、行くぞ」と立ち去ろうとする。

 でも、


「ちょっと!いきなりやめて!引っ張らないで!」


 ジュンさんの方に気が散っていたノゾミさんは、セイジの急な行動に付いて行けず、態勢を大きく崩してしまった。

 それに、セイジはため息を吐く。

 

「なに怒ってんだよ?お前がボーッとしてるのが悪いんだろ?ほら、早く行くぞ」

「…っ!」


 ノゾミさんは何かを堪える様に奥歯を噛み締めるも、渋々歩き出す。そして、俺の横を通り過ぎる時に、訴えかける様な目を向けてくる。

 俺にはそれが「助けて」の救難信号に思えた。

 そう思うと同時に、自然と足が動いた。セイジの前に回り込んでいた。

 俺の目を見たセイジが、息を飲む。


「なっ!なんだよ?黒沢…君」

「ちょっと待つんだ、上郷君。君にどうしても確認したい事があるんだが…君にとって、ノゾミさんは大切な人ではないのか?」

「はぁ?何を言って…いるんですか?」


 俺の瞳を見て、半歩下がるセイジ。それを見て、俺はつい笑ってしまった。

 何故こんな奴に、ノゾミさんの様な真っ直ぐで素敵な人が付き従うのかと、この世の不条理に嘲笑が浮かんでしまった。

 その表情のまま、セイジに詰め寄る。


「大切な人の肩を、そんな風に掴むのは違うだろ?君にとって大切な人なら、もっと丁寧に、そして敬意を持って接するべきだ。君や俺とは違い、ノゾミさんは繊細で、か弱い女性だ。そんな彼女に、君の素行は目に余るものがある。もう少し彼女の姿を見て、彼女に寄り添うべきだと思うぞ?」


 俺が諭すと、セイジは押し黙り、ノゾミさんは潤んだ瞳をこちらに向ける。

 よくぞ言ってくれたと、俺を見ていた。


「黒沢君…」


 うんうん。分かるぞ、ノゾミさん。こんな勘違い野郎の幼馴染で、君も苦労しているんだろ?

 俺はノゾミさんを労りながら、彼女の肩を鷲掴みしていたセイジの手を取り払う。そして、空いた奴の手をしっかりと握る。


「君も色々と抱えているかも知れんが、その鬱憤を彼女達にぶつけるのは違う。本当に困ったら、俺達男子に相談してくれ。何時でも相手になってやるぞ?」

「そう…だな。うん。ありがとよ、黒沢。俺が辛いのを分かってくれるのは、やっぱお前だけだ」


 …おい、セイジ。そうじゃねぇだろ?女の子はもっと大切に扱えって言ってんだよ、俺は。

 …もういいや、こいつ。

 俺は諦めて、セイジの前から飛び退く。


「時間を取らせて済まなかったな」

「おう、悪いな、黒沢。今からナツ先輩と合流する約束なんだ」

「そうか、早く行くが良い」


 上郷は軽いステップを踏んで向こう側へと消え、その後ろに続くノゾミさんは重い足取りで俺の前から去った。

 …塩を撒きたい気分だ。

 盛大にため息を吐きたい気分を抑えながら、俺は1組の面々を振り返る。


「皆さん、お騒がせしました。皆さんの勇気ある行動に、ただ感謝を」


 そう言って頭を下げると、何故か拍手が起こる。

 何事かと顔を上げると、目の前にメロンが迫ってくる。

 次いで、柔らかい衝撃。


「虎ちゃん」


 ジュンさんか。


「済まない、ジュンさん。俺が不甲斐ないばかりに、怖い思いをさせ…」

「ううん。そんな事ない。すごくカッコ良かったよ、虎ちゃん」


 ええっと…何処がです?

 ジュンさんに抱き締められ、1組の面々に賛美を送られる状況に、俺は理解が追いつかずに固まるしかなかった。

…もっとガツンとやっちゃって良いのに、虎二君。


「珍しく荒れているな、イノセス」


おっと、失礼しました。


「だが、まぁ、これで親衛隊が上郷を攻撃する心境が、お前にも理解できるのではないか?」


…確かに。

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ふぅん、おもしろっ。女性を言いように動かせる力を、生まれたときから持っていたとして…男性、大人の女性は範囲外。両親も範囲外だとすると、壁にぶち当たらなかったとは思えない。中学の時にここまでの能力を発揮…
我ら仲良しバスケ部八人衆!的なチームがゴロゴロしてない限りは主人公・七音組の本気モードで対応可能? 上郷の頼みとするような発言の端々からも、コンディションMAXとなった決戦モード主人公に対峙する上郷…
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