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俺の拳とこの魂で、砕いてやるぜ!そのハーレムを!  作者: イノセス


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33/62

32話〜ジュンのことばっかだね〜

 俺は運動場へと急いでいた。

 大事な話だったとは言え、舞花に随分と時間を割いてしまった。久保さん達が居るから最悪の状況は回避できるとは思うが、なるべくなら会って欲しくない。

 連休中に俺と会っていたことを非難されたりしたら、ジュンさんがまた悲しむかもしれない。優しい彼女の心を、傷付けて欲しくは無い。


「それが仮令(たとえ)、学園のアイドルであっても、俺は一切躊躇せんぞ?」


 俺はノゾミさんと戦う覚悟を決め、廊下を突き進む。

 だが、


「うん?」


 前方から足音が聞こえた。次いで、こちらに駆けて来る体操着姿の少女が。

 あれは…ノゾミさんだ。

 

「七音さん!」

「あっ」


 声を掛けると、彼女は驚いて顔を上げ、その場で立ち止まる。でも、俺と目が合うとまたすぐに顔を伏せてしまった。

 本当に一瞬。でも、彼女の目が赤くなっていたのは見逃さなかった。

 泣いていた。

 十中八九、ジュンさんの事でだろう。


「済まなかった、七音さん。俺がジュンさんの事を伝えなかったばかりに、君を傷つけてしまった。本当に、申し訳ない!」


 俺が頭を下げると、頭上からは「ジュン…」とノゾミさんが呟く声が聞こえた。

 あっ、しまった。親友の名前を俺が呼んでしまったから、気分を害したか?

 またやっちまったと、俺は顔を伏せながら歯を食いしばった。

 だがそんな俺に、ノゾミさんは落ち着いた声を掛ける。


「別に、貴方が謝る必要ないわ。嘘を付かれた訳じゃないし、ジュンを無理やり連れ込んだ訳でもないみたいだし…」

「それでも!連休中やテスト前の大事な時期に、俺はジュンさんに時間を割いてもらった。君達との友好を深めるチャンスを奪ってしまった事を、ここで謝罪させて欲しい」

「だから、それもジュンが選んだことでしょ!?」


 ノゾミさんは強めの言葉を吐き出して、直ぐに「あっ、やっちゃった」みたいな顔をする。

 分かるよ。今まで一緒に居た親友を取られて、その原因である俺が憎いのだろ?だが、それを選んだのはジュンさん自身だから、何処に怒りをぶつけていいのか分からない。そうだと思ったから、俺がその壁になろうと、こうして懺悔していたのだが…真面目なノゾミさんには、逆効果だったか。

 ならば、直接こちらの要望を伝えよう。


「ああ、そうだ。七音さん。この選択はジュンさんが行った事。だがそれは、彼女が自信を欲したから選んだことなんだ。自分がどうすれば輝けるのかを見つけようとして、俺の後ろを付いて来ているんだ。こう言っては自信過剰に聞こえるかもしれないが、俺は努力することだけは人一倍長けている。そんな俺を見習って、彼女は頑張っている。自分の道を見つけようとして、輝こうと努力しているんだ。だから、もう少しだけ静観してはくれないだろうか?上郷君には、この事を内密に願えないだろうか?」


 無理だろうか?セイジ一筋の彼女に、この願い出は受け入れられないかもしれない。

 そう思いながらも、俺は不安を押し殺し、ノゾミさんを真っすぐに見る。

 すると、彼女は顔を伏せてしまう。

 そして、


「ジュンのことばっかだね。そんなにジュンの事が大事?」


 呟くように問うてきた。

 俺がそれに「ああ」と答えると、また消え入りそうな声で「そっか」とノゾミさんは呟いた。


「分かった」


 そう言って、彼女はまた歩き出した。俺の横を通り過ぎ、玄関へと歩いて行く。

 俺は一瞬、彼女を追いかけようと足を踏み出した。でも、一歩踏み出したところで思い留まる。俺の頭の中に、屋上で泣いていたジュンさんの姿が思い浮かぶ。すると、俺の足は自然と反対方向へと向いていた。

 

 ノゾミさんがあんな状態だったと言う事は、ジュンさんはもっと大変な状態かもしれない。彼女にもしものことがあっては大変だ。久保さんが付いてはいるだろうが…それでも。

 焦りで、一歩一歩が速まり、いつの間にか走り出していた。そして、運動場への入口で彼女の背中を見た時、俺は堪らず彼女の名前を叫んでいた。


「ジュンさん!」

「あっ、虎ちゃん」


 俺の心配とは裏腹に、彼女は小さな笑みを浮かべて俺を迎える。そして、運動場の中を指さして小首を傾げる。


「あそこで走ってる男の子、かなりヤバそうな顔してるよ?まだ走らせるの?」

「えっ?…ああ、そう、だね。おーい!ヒデちゃん!休憩!休憩して良いよ!」


 俺が声を掛けると、その場で倒れ込むヒデちゃん。

 おーい。いきなり止まると、心臓まで止まっちまうぞ?


「良かった。じゃあ、あたしはノゾミを追いかけるから」


 ジュンさんが俺の横を通り過ぎようとするので、俺は咄嗟に「待ってくれ」と彼女の手を掴んでいた。

  

「七音さんなら、ちょっと前に帰ってしまったよ」

「えっ?そうなの?」

「ああ」


 俺が先ほどのやり取りを端的に伝えると、ジュンさんは「そっかぁ…」と暗い顔になる。

 暗い…けど、後悔しているって顔じゃないな。どういう事?


「ジュンさん。何があったのか教えてくれないか?七音さんが泣いていた様に見えたんだが…?」

「うん。それがね、立ち話をしてたら急に泣き出しちゃって。あたしも焦っちゃってさ、追いかけられなくて…」


 うん?妙だな。てっきり、ジュンさんと喧嘩でもしたのかと思ったのだが…。

 そもそも、俺はジュンさんも大きなダメージを負っているものと思っていた。隠れて会っていたのは我々の方であり、ノゾミさんは追及(ついきゅう)する側なのだから。

 だと言うのに、ノゾミさんが泣いて帰り、ジュンさんは彼女を心配する素振りを見せている。

 一体…。


「一体、どんな立ち話をして、彼女は泣き出したんだ?」

「えっ?ええっと…それは…」


 うん?なんで顔を赤くしているんだい?俺はまた、気付かない内に恥ずかしいセリフを言ってしまったのか?


「ジュンさん?」

「あ、あたし、着替えて来るね!」


 ビューンっと、ジュンさんは走って行ってしまった。

 …どう言うことなの?


 

 ノゾミさんが帰ってしまったのは残念だったが、ジュンさんが来てくれたお陰で練習も(はかど)った。彼女が応援してくれると、野郎どもの士気も爆上がりであったのだ。


「ガンバレー!」

「はーい!」

「うぉお!やってやりますよー!」


 うん。ヒデちゃんだけは、何だか怪しい気合いを入れているぞ?

 俺は運動場の舞台で応援してくれているジュンさんに近付き、新しいジャージの上着を差し出した。


「ジュンさん。これを着てくれないか?」

「ええっと、この上から着てってことだよね?」


 ジュンさんはそう言って、チアガールのコスを摘む。

 なんでも、ジュンさんが応援したいから服を貸してくれと相談したら、メイド長の長谷川さんがこいつを持ってきたのだとか。

 とても良い仕事をしてくれたんだがね、長谷川さん。ジュンさんのこの格好は、我々には刺激が強過ぎるんだ。特に、下心マシマシのヒデちゃんには見せたくない。

 そう思ってジャージを差し出すと、ジュンさんが嬉しそうに笑った。


「もぉ。独占欲ツヨツヨだね?虎ちゃん」

「うっ…済まんね。俺のワガママを押し付けてしまって」

「いいよ、いいよ~。あたしも、その…嬉しいし…」


 ジャージをギュッと抱きしめるジュンさん。

 可愛い。

 チアガール姿が見れなくなってしまったのは残念だが、これでやっと安心できる。

 良かった。


「良くないっす!!」


 ヒデちゃんが叫ぶ。


「酷いっすよ!虎二さん。折角、式部さんが応援してくれてたのに、そんな…」

「別に、チアガール服でなくとも応援してくれるぞ。なぁ?ジュンさん」

「うん!任せといて!」


 ジュンさんが手を上げると、ヒデちゃんは「うぅっ…」と一瞬黙る。

 でも、直ぐに復活した。


「虎二さんばっかズルいっす!いつの間にか七音さんだけじゃなく、式部さんとも仲良くなってるし、式部さんのおっぱいまで独占するなんて!」

「おーおー。やはりそう言う魂胆か、貴様」

「あっ」


 ヤベッ、という顔になったヒデちゃんは、くるっと背を向けて逃げようとする。

 だが、逃がさん。プールとレッグプレスで鍛えた俺の脚力から、簡単に逃げられると思うなよ!

 

「捕まえた」


 もやしっ子を捕えるのに、5歩あれば十分だった。

 首根っこを掴まれて項垂れるヒデちゃんに、俺はニターと作った笑みを向ける。


「仲良くなってズルいと言ったな?では貴様に、その極意を伝授しよう。さぁ、先ずは屋敷の外周を20周だ」

「い、いやぁ、あっしは、虎二さんレベルになる気はサラサラ無くてですねぇ…」

「遠慮するな、友よ」

「いや、マジで勘弁っす!下ろしてください!誰か、助けてぇ!」


 その後、ヒデちゃんは外周3周目で力尽きた。

 うーん。これは、バスケ以前の問題だな。



 夕飯前までみっちりバスケの練習をしたヒデちゃん達は、帰る頃にはぐったりしていた。特にヒデちゃんはもう歩けないくらいに弱ってしまい、田上のお爺さんに送ってもらう羽目になった。折角、ジュンさんも同乗してくれたと言うのに、シートにもたれかかって白目を剝いていた。

 ジュンさんが帰り際に「また明日ね。虎ちゃん」と手を振ってくれた時は、「とら…ちゃん…?」と微かに呻いた気がしたけど、俺の気のせいだったかもしれない。


 そうしてみんなを送り届け、今日のタスクは終了だと意気揚々と帰った俺を、口元に僅かな笑み(アルカイックスマイル)を浮かべた妹が出迎えた。

 …何を期待しているの?


「あら?惚ける気ですか?虎兄さん。込み入った事情とやらを、私に教えてくださるんでしょ?」


 おっふ。忘れてたぜ。ずっと忘れていたかったぜよ、マイシスター。

 

「分かった。ではディナーの後、俺の部屋か舞花の部屋で…」

「ディナーの場にしましょう。お母様も聞きたいでしょうし」


 おーい。お前ら、俺の恋愛話を肴にする気だな?

 俺が呆れて妹を見ると、彼女は笑みを消してゆっくりと首を振った。


「これは兄さんの為よ。今のうちに、お母様を味方にしておけば、後々動きやすくなるわ。私達は、黒沢の人間なんだから」


 ふむ。黒沢の人間、ね。つまりそれは、将来的に面倒になるってことだな?

 一理あるか。


「分かった。君の案に乗ろう。母への事前告知は頼んだぞ?」

「承知しましたわ」


 と言う事で、俺の恋愛事情を夕食の場で暴露することが決まった。

 どんな罰ゲームだ?

「まさに刑罰であるな」


妹と母親に自身の恋愛話なんて…私なら意識を落と(シャットダウン)していますよ。


「朝食の場での発言で、既に決まっていた運命なのかもしれんな」

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― 新着の感想 ―
カッテェなぁ、黒沢氏ぃ…全く動じねぇ。マジでジュンさん一筋か…私としては、鈍感系主人公の方が面白いと…あぁ、そんなこともないか。黒沢氏の場合、勝手に相手が落ちるのですから、本人の意志など関係ありません…
チア服がメイドさんの私物なら平和だが、父や兄の紳士活動の副産物?の場合、妹の視線が更に冷ややかにw 見る目が有ったから従来の虎二は相手にせず、見る目を曇らされたからハーレムメンバーに取り込まれてたと…
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