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俺の拳とこの魂で、砕いてやるぜ!そのハーレムを!  作者: イノセス


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3/12

2話〜申し訳ございません!!〜

「ぐぐぐぅ…体が、重い…」


 そろそろ夕食だと言われて、俺は後ろ髪を引かれる思いでトレーニング室を後にした。そして、軽くシャワーを浴びて夕食会場へと向かっていたのだが、イジメ抜いた体が悲鳴を上げていた。

 トレーニングを終えてから1時間も経っていないというのに、まさか筋肉痛か?こんなに早く来るものだっけ?


「これが若さか…」


 少々の喜びを噛み締めながら会場の扉を開けると、大きなテーブルに2人の女性が座っていた。

 奥に座っている女性が…母親か。脳内データには40代となっているが、10歳以上若く見える。余程良いケアを行っているのか。

 その隣に座っているのは、先程俺を張り倒した妹の舞花。ジッと手元を見て、こちらを見ないよう意識している雰囲気を感じる。


「遅かったですね、虎二さん」

「えっ?あ、はい。お待たせして申し訳ございません」

 

 テーブルに配膳された食器を見るに、まだ数名分の空席があるように見えるのだが…?


「早くお座りなさい。お父様と龍一は、今日も遅くなるそうです」

「承知致しました」


 ああ、そう言う事ね。

 俺は座りながら、物悲しい2人の席に視線を這わす。

 もう19時を回るけど、まだ仕事中との事。平日はこれが当たり前で、休日であれば龍一も帰ってきているらしい。だが、父親は滅多に夕食を共に出来ないみたいだ。

 グループ会社の社長だから、相当忙しいのだろう。残業、出張は当たり前で、この場で顔を合わせるのは年に数回と。

 それは仕方がない。俺も社会人の頃はよく転勤させられて…って、あれ?俺は会社勤めだったのか?


「虎二さん。その頬はどうされたの?」


 必死に記憶を引っ張りだそうとしていると、母親から質問が飛んできた。

 よく、こんな小さな傷を見つけられたなぁと、俺は斜め前に座る母親を感心して見つめた。すると、妹が顔を伏せている様子が目端に映った。

 告げ口されると思っているのか?安心しなさい。君は悪くないのだから。


「カマイタチに会いました。外を歩いていれば、稀にある事です」

「カマ?…そう、ですか。では、貴方の護衛を増やす事にします」


 おっと。冗談が全く通じないぞ?この人。


「お心遣い痛み入ります、お母様。ですが、必要ありません。これは私がしでかした事への罰ですので」

「罰?」

「はい。今日私は、下級生に対して大変失礼な事をしてしまいました。その罰が、こうして降ってきたのだと理解しております」


 俺も詳しくは知らないから、かなり曖昧な説明になってしまった。

 それでも、母親は少しだけ表情を固くして「そうですか」と無理やり納得した様子。そして、その話題をぶつ切って、食事を持って来る様にとスタッフへ声を掛けた。

 …本当に、それだけなのか?母親よ。息子がやらかしたと告白しているんだぞ?追加ビンタが必要じゃないのか?


 俺が不思議に思っていると、同じくらい困惑した視線を感じた。

 妹の舞花だ。

 目を細めて「どう言うつもり?」と俺の内心を見透かそうとしている。

 他意はないぞ?妹よ。


「お待たせしました。本日のディナーです」


 少々雰囲気が悪くなった場を、スタッフさんが切り裂いてくれた。

 お皿に乗った美味しそうな料理達が、俺の前を通り過ぎて母親の手元へ着地する。

 何だろう?牛肉の煮込みか?肉の大きさや野菜の量が、母親と妹ではかなり違うな。その人に合わせて、盛り付けや内容を変えているみたいだ。


 じゃあ、俺の料理はどんな感じなんだ?と心踊らせていると…。

 脂肪の塊が、バターのプールで泳いでいた。

 ふぁっ!?


「こ、これは…?」

「はい。虎二様専用の牛煮込みでございます。ライスにもタップリと、バターを染み込ませておりますよ」


 なんでちょっと得意そうなんだ?この給仕。これを料理と呼べるのか?

 憤慨する俺。でも、内なる心は歓喜に踊りまくり、自然と唾液が溢れそうになっていた。


 嘘だろ、虎二。お前、いつもこんなオーバーカロリーを摂取してるのか?そりゃ、こんなワガママボディに育つ訳だ。

 

 俺はつい、皿を突き返して「チェンジだ!」と叫びたくなった。

 でも、そんな事をしたら料理人達に申し訳ない。新しいのを作れとなったら手間だろうし、彼らの尊厳にも関わる。

 そして何より、食材が勿体ない。

 俺は泣く泣く、内心はウキウキで食事を始めた。


 そして食べ終わると直ぐに、キッチンへと出向いた。

 こんな食生活をしていたら、数年と持たずに体が壊れてしまう。ここは是非、彼らに虎二スペシャルを止めて貰わねばならない。

 そう思ってキッチンへの扉を開くと、そこではコック達が総出で俺を出迎え、青い顔で無理に笑みを浮かべていた。

 …えっ?なに?


「わっ、わざわざ起こし下さり、誠にありがとうございます、虎二様」

「えっ、ええ…どうも、シェフ。今日は少し、皆さんにご相談が…」

「申し訳ございません!!」


 交渉しようとしたら、シェフ達みんなで土下座し始めた。

 どうなってるの!?このキッチン。


「分かっております!本日のディナーが、虎二様のお口に合わなかったと言う事を!戻ってきた皿の上を見たら一目瞭然。霜降りは大部分が削ぎ落とされていましたし、何時もは飲み干しているバターも、今日は殆ど残されていました!」

「当たり前だ!」


 殺す気か!?

 つい強く突っ込んでしまったが、シェフは余計に青い顔となり、(ひざまづ)いた状態で大きく手を広げた。


「今回のミスは全て私の責任です。ですのでどうか、クルー達の処罰はお考え直し下さい。その分、私の給料をカットして構いませんので!」


 マジか!?今までそんな非道を虎はしていたのか?そりゃ、顔も青くなるだろうな。

 俺はシェフの気持ちが痛いほど伝わり、つい土下座し返したくなった。でもそんな事をすれば、彼に余計な心労を掛けてしまうだろう。

 俺はゆっくりと、シェフ達に頷いて見せた。


「誰の罪も問うつもりはありません。俺はただ、皆さんに次回以降の料理についての相談をしに来ただけなのです」

「ぐっ…そう、ですか…」


 なんで余計に表情が悪くなっているの?

 あれか、もっと酷い注文を付けられると思っているのか。そりゃ、あんな料理を作らされる方が、料理人としちゃ屈辱だもんな。


「大丈夫ですよ、シェフ。そんな非道な申し出ではありません。ただ、俺も妹の様に、普通のメニューに戻し…ぐっ!」


 今までにない、強い感情が押し寄せて来た。

(嫌だ!俺の夕飯だ!俺の唯一の楽しみだ!誰にも奪わせないぞ!)

 そんな、中毒にも似た焦燥感が胸の中で暴れる。

 でも…そんなダラシねぇ感情には、こうだ!

 ドゴッ。


「ぼっ、坊ちゃん、何を…」


 自分で自分の腹を殴る姿に、みんなはドン引きだ。

 でも、効果はバツグン。惰弱な感情は引っ込んだ。

 俺は苦笑いを浮かべる。

 

「なに。ショック療法ですよ。それより、メニューを普通に戻すのは可能ですか?」

「戻すって…脂肪もバターもいらないんで?」

「ええ、要りません。寧ろ、妹がバクバク食ってた付け合せのジャガイモも要らんです。代わりにブロッコリーを入れて欲しい」

「ど、どうしてしまわれたのです?虎二様。また何か、ハマっているんで?」


 心配そうなシェフ。

 "また"と言う発言から、虎が飽きやすい性格だと伺える。そして、その度にみんなを振り回していたのだろうな。

 ならば…。


「ええ、最近筋トレにハマってね。暫くは健康志向の食事を出して貰いたい」

「暫く、ですか」

「そうです。最低1年はそうして欲しい。またコロコロ意見を変えられたら不安だと仰るなら、確約書を書きましょう。全責任は俺にあると文言も付けて」


 俺がそう言うと、シェフ達の表情が一気に明るくなった。

 口先だけで命令して、後で「知らん」って言われるのが1番辛いからね。取引先から明文化して貰えた安心感は良く分かるぞ。

 俺は近くにあったメモ用紙に文言をしたためて、しっかりと署名する。


「これでよろしく頼みます」

「おおっ!これでしたら、喜んでご協力させて頂きます!」


 おっ、言ったな?


「ならば追加オーダーを。肉は牛ではなく鶏を中心に。低カロリー高タンパクのむね肉がベストです。米も雑穀米か玄米が良いな。勿論、バター炒めは無し。あっ、あとジュースも廃止。水か低脂肪牛乳だけにして欲しい。あとはデザートも廃止か豆腐を使った物に変更…」

「ちょっ、えっ?本当に、どうされたんですか?坊ちゃん。そんなアスリートみたいな食事で…一体、何を目指しているんで?」

「何を?そうですね…」


 強くなる為に…と回答しそうになって、考え直す。

 ここは虎二らしい回答を。


「俺はただ、痩せてモテたいだけですよ」 

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― 新着の感想 ―
カマイタチ… この世界の要点全てを、ブタ魂や資料室?から参照するまでは、居ないとも言い切れない(真顔 コメディードラマの様な絶対服従使用人ムーブを一糸乱れず常用してる?辺り、結構給料良いのかしらん?…
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