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俺の拳とこの魂で、砕いてやるぜ!そのハーレムを!  作者: イノセス


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13/13

12話〜違う、違う!〜

 俺が1人で黙々とマラソンに興じていると、後ろからハーレムメンバーのジュンさんが追いかけてきた。

 …いや、違うな。俺を追ってきた訳じゃない。きっと彼女もマラソンをしていて、目の前に邪魔な脂肪漢が居たから声を掛けただけだろう。

 そう思って、俺はアウトコースへと路線変更をした。


「ごめんね。いつの間にか、インコース独占しちゃっていたよ。さぁどうぞ、お先に」


 俺が手で先に行くように促すと、案の定、彼女は俺の横を通って駆け抜けて行き…。


「あはっ!違うよ、黒沢君。君を邪魔なんて、思うはずないじゃん」


 駆け抜けずに、何故か俺の横で並走し始めた。

 えっ?


「あたしはただ、君とお喋りしに来たんだよ?」


 …マジで?

 俺の頭は混乱する。彼女が何の目的で接触してきたのかを必死で考える。

 先日の事件について、責任を追求しに来たのか?それとも、会長から何らかの指示を受けているとかか?彼女の容姿とスタイルなら、ハニトラの可能性は十分に有り得るぞ。細心の注意を払わねば。


 そう考える一方、心の中では歓喜に打ち震えていた。

(ジュンちゃんが俺に興味を持っている、だと?それって、もう、俺に気があるって事だよな?こんなおっぱいの大きな子が俺の彼女になるのか?うひょー!最高じゃねえか!)


「ぐっ…」


 俺は言葉が詰まった。思考と感情の温度差で、俺の魂が熱疲労を起こしそうだった。

 そんな俺を見て、ジュンさんはちょっと悪い笑みを浮かべた。


「なになに?あたしみたいに可愛い女の子に話しかけられて、緊張しちゃった?」

「そりゃ、緊張するよ。君みたいに可憐な娘に話しかけられたら、俺じゃなくてもこうなるさ」


 だから、勘弁してくれよ。ただでさえこの体、女の子に免疫がないんだから…。

 堪らず、ジュンさんに本音を零してしまうと、彼女はみるみる顔を赤くして、両手をブンブン振った。


「ちょっ、止めて!マジメな顔でそんな風に返さないで!今のは冗談だから。自分で自分を可愛いとか言っちゃって、めっちゃ痛い奴になってるし」

「痛くは無いさ。君が言った言葉の全てが事実なのだから」


 ジュンさんであれば、モデルをしていてもおかしくはないし、普通の学校であれば一等星になれる程の逸材だ。

 ただ、この学校のレベルがおかしくて、ジュンさんに負けない美少女が他に3人も居るだけ。そして、そんな人達がハーレムとして集まっているから、余計に自分の輝きが分からなくなっている。


「そんな君に話しかけられたから、俺の心臓が飛び出しそうになっているんだ。それは、男子であれば当然の事と思うがね?」

「ちょっ!もうやめてっ!恥ずかし過ぎて死んじゃうから!」


 ジュンさんは両手で顔を覆うも、耳まで真っ赤になっているから全然隠せていない。

 ふむ。事実を言っただけだが、デリカシーが無かったか。反省せねばな。


 俺は歩みを緩めて、ジュンさんの歩調に合わせる。すると、彼女も顔を隠すのをやめて、両手でパタパタと顔の火照りを取ろうとしていた。

 そして、ちょっと怒った顔でこちらを見る。


「あー、もうっ。黒沢君が揶揄(からか)うから、めっちゃ焦っちゃったじゃん。君って、見た目と違って結構Sなんだね?」

「正直者のSって意味なら、肯定するよ」

「もぉー。やっぱSだ」


 また少し顔を赤くするジュンさん。でもすぐに、真面目な顔になった。


「じゃあ、その正直者さんに質問です!」


 デデン!と、自分の口で効果音を出しちゃうジュンさん。

 可愛らしい娘だな。


「この前、セイちゃんが男子達に襲われてたでしょ?あれに君は参加していたでしょうか?○か×で答えてください」 

「参加の意味が、先輩方の企みに加担していたのかと言う意味であれば、俺は×を選択しよう」


 やはり、あの事件についてを聞きたかっただけか。

 俺は頭の中で安堵する一方、心の中は荒む。(結局は、セイジの事しか頭に無いのか!)と大いにやさぐれている。

 ふふっ。まぁ人生なんて、そう簡単には行かんものよ。


「ふ〜ん…」


 俺の答えに、ジュンさんは不満顔だ。

 なんだい?求めていた答えと違ったか?俺を主犯格にしたいのかい?


「あの時も言ったが、信じて貰えないのは重々承知している。無理に飲み飲んで貰おうとも思っていない」


 俺はつい、皮肉な笑みを浮かべていた。

 すると、ジュンさんはブンブンと手を振った。


「違う、違う!疑ってなんかないよ。少なくとも、あたしは…だけど」

「ほぉ?意外だな」


 予想外の反応に、俺もつい彼女を興味深く見詰めてしまった。

 途端に、ジュンさんは恥ずかしそうに俺から視線を逸らし、頬を掻く。


「ほらあの時、君は言ってたでしょ?自分自身が悪くない事を知ってるから、心は折れない…的な事をさ。あの時の君、なんか凄く凛々しくて、嘘とか付くいてる様には見えなかったんだよね。そうやって堂々としてたから、その先輩達?も追い返しちゃったんだろうなって思ってね」


 済まんな、ジュンさん。追い返し方法は、君が言うような格好良いものではなかったんだ。

 心の中で謝りながら、俺は「では?」と話を進める。


「式部さんは、何に不満を抱いているんだい?」

「不満って言うか、疑問かな?黒沢君ってかなり度胸があるのにさ、なんであの時は直ぐに引いちゃったの?自分はやってないって、イジメを受けていたセイちゃんを守ったんだって、君なら言えたと思うんだよね。でも、君は黙って濡れ衣を着ちゃって、殴られても構わないなんて言い出しちゃって…」


 ジュンさんは辛そうに顔を歪ませる。あの時の事を思い出して、まるで自分の事の様に思ってくれている様子だった。

 それを見て、俺の心はとてもポカポカした。疑われても構わないと言い続けていたが、やっぱり濡れ衣は着心地のいい物ではなかった。それが、少しだけ報われた気がした。


「ありがとう、式部さん。だが、俺が今まで疑われる様な事をしてきたのも事実だ」


 今までの虎二は、相川先輩方のイジメに便乗して、色々と裏工作を行っていた。先輩達と同じく、そうやって邪魔をしている内に、彼女達が目覚めてくれるのではと考えて。

 だから、俺は強く出られなかった。あの時、疑われるまで彼女達の信頼値を下げたのは、他ならぬ俺自身なのだから。

 だから、


「会長達の判断と行動は理解できる。俺だって、素行の悪い人間が近付けば、それだけで警戒してしまうから」


 俺は暗に、会長を悪く言うのは止めようね?という意味を含めて発言する。

 それでも、ジュンさんは納得しきれていない顔を向けてきた。


「本当に、それで良いの?ナツさんやノゾミは、まだ君の事を疑っているよ?」

「良いさ。式部さんが俺を信じてくれた。それだけで十分だ」


 あの掛け合いは禍根を残しただけかと思ったが、彼女のような理解者を得ることも出来た。そう思えば、あそこで引かなかった事が正解であったと言える。

 これも、ジュンさんのお陰だ。


「うっ…うぅ…」


 ジュンさんに感謝の念すら抱いていた俺に、彼女は再び怒った表情を向けて来た。

 えっ?どしたん?


「ああ、もうっ!またそうやって君は、あたしを揶揄(からか)って」

「えっ?揶揄う?今のは俺の本心で…」

「うぅ〜…。またそうやって、恥ずかしいこと平気で…もうっ、知らない!あたし行くからね?」


 えぇ…。

 スタタタッ!と走り去ってしまったジュンさんの背中を、俺は呆然と見詰める。

 今の発言、そんなに恥ずかしいセリフだったかな?

 …いや。


「女心と秋の空、って事か」


 年頃の女の子は、本当に難しいものだ。


〈◆〉


「はぁっ、はぁっ」


 久しぶりに全力で走ったから、胸がかなり苦しい。心臓がずっとバクバク言っている。

 ううん、違う。これは走ったからだけじゃない。もっと前からこうだったもん。


「ああ、もうっ。黒沢君が変な事言うから」


 恥ずかしげもなくあんなこと言うなんて、やっぱりあたしを揶揄っていたとしか思えない。男の子って、へそ曲がりというか、女の子に意地悪するところがあるから。

 でも、本当に彼もそうなのかな?以前、走っているところを応援したら、素直に「ありがと!」っていい笑顔で返してくれたし。

 

 あの時は、ちょっと可愛いなって思っちゃった。

 だからかな?セイちゃん事件の時、黒沢君の様子がその時とは全然違って、とても凛々しくてビックリした。あのナツさんが怖い顔で睨んでいるのに、全く逃げようとしないんだもん。


 あんな人、今まで見たこと無い。セイちゃんをイジメようとする人は結構いるけど、みんなナツさんを見たら逃げ出すし、竹刀なんて向けられたら震え出したり漏らしちゃったりしていた。

 だから、あんな風に立ち向かえる事に衝撃を受けたし、なんかカッコイイなって思えて…。


「って、何を考えてんだろ、あたし」


 あたしが好きなのはセイちゃんなんだから、他の男の子をカッコイイなんて思ったら、浮気みたいじゃない。


「浮気…」


 呟いて、あたしは慌てて首を振る。突然湧いて出たその考えを吹き飛ばす為に、強く。

 違う。セイちゃんのは浮気とかじゃない。彼が煮え切らない態度を取るのは、あたし達を考えてくれているから。あたし達が仲良く出来る様に、セイちゃんは頑張っているんだ。

 だって、あたしはセイちゃんも好きだけど、みんなも同じくらい好きだから。頭の良いノゾミも、凛々しいナツさんも、可愛くて不思議なコハルも、みんな好き。

 だから…。


「だから…どうするべきなんだろ…」


 あたしはまた、答えを出せないでいた。あたしの中にある漠然とした不安に、向き合う勇気が持てなかった。

 やっぱ、あたしって…。

浮気じゃ、ない?

随分と寛容な子ですね。式部さん。


「さて、その者だけがそうなのかは、今のところ分からんな」

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― 新着の感想 ―
脂肪漢w マラソン授業ともなれば大なり小なり息も絶え絶えという感じ?の中、歓談してるだけでも凄いw 突如差し込まれる思考の志の低さ加減に、情緒のダウンバーストが発生?心臓マッサージ(折檻)の出番か?…
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