表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の拳とこの魂で、砕いてやるぜ!そのハーレムを!  作者: イノセス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/12

11話〜やっほー〜

毎度ご愛読下さり、誠にありがとうございます。

カッコの使い方について、追加説明させて頂きます。


「」…通常の会話。

()…心の声。

〈◆〉…視点切り替え。←new

〈〉…文章や書かれている文字。←new

 相川先輩に豪語してから、俺は日々のトレーニングを更に加速させた。それまでは全身をまんべんなく鍛えていたが、これからは足を中心に鍛えていくことにした。

 人間の筋肉は、60%が下半身にあると言う。つまり、下半身を鍛える方が筋力量を増やすことが出来る。そして、筋力量が増えると消費するエネルギーが爆発的に増え、痩せやすい体になるのだ。


「先ずは、この邪魔な脂肪を、燃やしてやるぜ、ふんぬっ!ふんぬっ!」

「坊ちゃん。今日はいつにもまして気合が入ってますねぇ」


 早朝。トレーニングルームでスクワットをしていると、ボディーガードでありトレーニング仲間の久保さんが話しかけて来た。

 なので俺は、6kgのダンベルを持ち上げながらグッと親指を立てる。


「ムキムキになって、女の子にモテなきゃいけないんでね」

「おっ、青春っすねぇ。俺も高校生の時、陸上部に好きな子がいましてね。その子の為にと、毎日走り込みをしたもんですよ」

「ほぉ。久保さんも十分、青春しているじゃないですか。その後、その娘とはどうなったんで?」


 俺が質問すると、途端に遠い目になる久保さん。

 あっ…(察し)


「自分のことは気にしないで下さい、坊ちゃん。それより、トレーニングのやり過ぎで体を壊したりしないで下さいよ?」

「ホント、それなんですよね。俺って、ただでさえワガママボディじゃないですか?」

「…返答に困ります」


 そんな気を遣わんで下さい。自覚していますんで。


「それだから、余計に膝とか腰を痛めるのが怖いんですよ。一応、姿勢に気を付けたり、曜日によってメニューを変えたりして負荷をコントロールしようとはしているんですけど…」


 それでも、体が出来ていない虎では不安が残る。ベースの体幹がしっかりしていないから、想定よりも先に関節がイカれる恐れがあった。

 俺が不安を吐露すると、久保さんは「なるほど、なるほど。それなら…」と大きく頷いて、自分のリュックからかなり大きな靴下を取り出した。

 …いや、こいつは靴下じゃないぞ?


「これは?」

「サポーターですよ。俺も学生時代、無理がたたって膝を痛めた事がありましてね…」


 あっ、それで玉砕したのか。


「でも!こいつは凄いんですよ。痛みが全然ないし、体も軽い。色々試した俺が進める逸品です!」

「おぉ~、それは凄い。でもお高いんでしょ?」

「新品を持ってきてるんで、プレゼントしますよ」


 ええっ!?良いのか?


「しかも今なら、もう1枚付けちゃいます!」


 そう言って、2枚のサポーターを手渡してくれる久保さん。

 ノリノリだな、久保さん。なかなかユーモアのある方だ。


「ありがとうございます!久保さん」

「頑張ってください、坊ちゃん。俺のようにはならないで…」


 重い言葉だ。

 先人の戒めを胸に刻み、俺はサポーターをしっかりと巻き付けた。


〈◆〉


 俺は久保。黒沢家に就職して、今年で5年目になる。

 1年目の頃は、業務に追われて先輩達に怒られて、何度転職を考えたか分からない。それでも続けられたのは、純粋に給料が良かったからだ。

 黒沢グループは大きな企業で、幾つもの会社を取り込んだマンモス会社だ。現社長に代わられてからも、順調に大きくなっているらしい。

 そんな会社のトップが、俺達の雇い主だ。そりゃ、そこらのサラリーマンが羨むくらいには良い給料を貰っている。

 

 ただ、金持ちの家だから大変なことも多い。先輩達は厳しいし、同僚も優秀な奴ばかりだ。そして、この家の人達もなかなかに曲者揃いだった。

 奥様は美しく、いつも笑顔が絶えない方だが、その裏で俺達に激辛な評価を塗り付けて来る。お陰で、俺の同期が何人やめさせられたことか。

 龍一様も恐ろしい方だ。完璧な仕事を求めて来るので、手が抜けない。もしも彼に迷惑など掛けてしまったら、後でどんな報復を受けるか震えることになる。

 舞花様は唯一の癒しだ。いつも「ご苦労様」と愛らしい笑顔と共に労ってくれるから。


 …いや、唯一の癒しだった、と言うべきだ。今はそこに、もう1人追加されるから。

 虎二様だ。最近の彼は、かなり変わった。

 ちょっと前までは、俺達使用人に威張り散らすいけ好かない悪ガキだった。俺は外回りばかりで接触が少なかったけど、女性同僚の間ではかなり嫌われていた。セクハラされたなんて話も聞いているし、それが原因でやめた奴も知っている。


 それが、今では見る影もない。

 舞花様みたいに労いの言葉をかけてくれるし、俺達の業務を増やさないようにと動いてくれる。勿論セクハラも無くなったし、ちょっとのことで怒らなくなった。以前なら、重いとか小さいという言葉を聞くと、無条件で怒鳴り散らしていたのに、今では自虐ネタにするくらいだ。


 そして何より変わったのは、努力を惜しまなくなった事。トレーニング室に行けば必ずと言って良いくらいに入り浸っているし、早朝には家の周りをウォーキングしている姿も見かける。

 聞いた話、コック達に直談判して、飯もトレーニング用に改造しているらしい。以前までは好きな物だけ食べていて、医者が何度警告しても無視していたのに。


 それもあってか、最近はちょっとお腹がへこんできて、顎下もスッキリし始めている気がする。


「坊ちゃん、かなり痩せたんじゃないです?今、体重何キロですか?」

「さっき風呂場で測ったら、77㎏だった」


 すげぇ!1か月も経ってないのに、もう5㎏近く減ってるんじゃないか?やっぱり、食事療法と筋トレが効いているんだな。


「大成功っすね」

「まだまだよ。当面の目標は、適正体重である58kgだ」


 虎二様はそう言って、ダンベルを持ち上げる。トレーニング開始時は一番小さなダンベルだったのに、今では6㎏を軽々と持ち上げていた。

 すげぇな、この子は。女の子にモテたいってだけで、こんなに必死になれるんだから。

 でも…。


「それで、坊ちゃん。そのダンベルに貼り付けてるのは何ですか?」

「これ?これはね、単語帳だよ。こうしたら、勉強も出来て効率的でしょ?」


 …うん。意味が分からん。

 やっぱここの人達って、俺達とは異なる人種なんだな。


〈◆〉


 久保さんから貰ったサポーターは、凄い効き目だった。激しい運動をしても膝が悲鳴を上げないし、運動後の疲労感も殆どない。お陰で、最近は軽いジョギングも出来るようになってきた。

 その効果は、体にも現れるようになった。服のサイズが1段階減り、歩く時に床が軋まなくなった。歩く度に激しく揺れていた腹と頬の脂肪も、ちょっとだけマシに感じる。

 …まぁ、こいつについては、俺がこの体に慣れただけかもしれんが。


 そして、俺の変化は周囲の人間との間にも影響を及ぼした。


「おはよう!」

「はよー」「おいっすー」


 朝、クラスに入って挨拶すると、男子達が返事をしてくれるようになってきた。

 以前までは、視線を合わせようとするだけで煙たがられていた。マトモに会話できたのはヒデちゃんくらいだったのに、彼らとも交流を持てる様になってきた。

 女子達からはまだ返してもらえないが、最初の頃に投げつけられた侮蔑の視線は弱くなっていた。

 

 ちょっとだけ痩せた効果もあるけど、授業を休まずに出ていることも大きいかも知れない。加えて、小テストでも悪くない点数を取れるようになってきたので、その効果も大きいと思う。


「……」


 しかし、全てが順調な訳ではない。

 ノゾミさんからは厳しい視線を送られており、俺が少しでも近づこうとすると警戒されてしまう。この前の事が、まだ尾を引いているみたいだ。

 セイジ君からも俺が無実であると証言してもらえているから、今更そのことで突っかかって来られることはない。けれど、俺が本当にセイジ君を助けたのかは疑問に思われてしまった様子。


 上手く切り抜けたかと思ったが、禍根は残してしまったみたいだ。彼女達ハーレムメンバーに近付くだけでも、まだまだ相当な努力が必要みたいだ。


「おーい。次の体育、テニスだってよ」


 数学の授業終わり、男子生徒の1人が嬉々として教室に入ってきてそう言った。

 途端に、野郎共が浮き足立つ。

 

「おっ、やりぃ。サボれるじゃん」

「どうする?サッカーでもやる?」

「マンガ読んでようぜ。カバーだけ教科書の被せてさ」


 男子達が喜ぶのも無理はない。テニスの授業は待ち時間が長く、その時間は多少遊んでいてもお目こぼしを貰えるのだ。

 

「虎二さん。どうします?」

「何か持ってく?」


 ヒデちゃん達が近付いて来たけど…さて、どうするか。


「そうだなぁ…何処を鍛えるかなぁ」

「あっ、やっぱそっち方向なんすね」


 決まっているだろう?なんで、そんな残念な子を見るような目を俺に向けるんだい?うん?


「ヒデちゃん達は、好きな遊びに参加すると良いよ」

「えっ?いえ、でも、あっしらは虎二さんに付いてないと…」

「無理しなくていいって。俺も好きでやってることなんだし、テニスをやる時は一緒に組もうよ」

「そ、それなら、あっしは読書を…」

「僕はサッカーに入れてもらおー」


 うんうん。高校生なんだから、筋トレなんて興味ないだろう。無理して俺に付き合うことはないんだ。


 そうして俺は体育の時間、テニスコートが空くのを待つ間にマラソンをすることとした。

 校庭はゴムチップで塗装されているからね。最近は膝サポーターのお陰で少しは速く走れる様になっていたけど、ここならもっと気兼ねなくスピードを上げられる。

 

 俺は早速、校庭を駆け出す。思った通り、膝へのダメージは全くと言って良い程少ない。足が自然と前へ行き、かなりのスピードが出ている気がした。

 …勿論、気持ちだけだ。まだまだ体重が重すぎるので、普通の人の早歩き程度だろう。

 それでも大きな進歩だ。このままいけば、夏休みまでには普通に走れるようになるかもしれない。

 …おっと、いかん。別に、マラソン選手に成る為にやっているんじゃなかった。趣旨を忘れるなよ。


「うん?」


 自身を諫めていると、後ろから誰か走って来る足音が聞こえた。

 ヒデちゃん達か?やっぱ心配で、付いて来ちゃったか?

 そう思って振り返ると、


「やっほー。頑張るね、黒沢君」


 太陽の様に明るい笑顔を浮かべる女子生徒が、俺に向かって気さくに片手を上げていた。

 ハーレムメンバーの1人、式部純だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ