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俺の拳とこの魂で、砕いてやるぜ!そのハーレムを!  作者: イノセス


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9話~お好きな様にしてください~

 校舎の裏で、複数の男子に囲まれるセイジ君。圧倒的不利な状況に置かれても、彼は相手を睨み返し、大きな声で反論していた。

 でも、端々からは恐怖が窺える。握る拳は小刻みに震えているし、返した声も半オクターブ高めであった。

 そんな状況の彼に、制服の男子達は更に詰め寄る。


「調子に乗ったのが何時か、だって?それが既に、調子に乗ってるって言ってんだよ!」

「意味が分かんねぇよ。俺、お前達に何をしたって言うんだよ…」


 ほとほと困った様子のセイジ君。その様子を見て、1人の男子が前に出て来る。セイジ君の胸倉を掴んで、グッと顔を近づける。


「目ざわり…消えろ…殺す…」


 何かボソボソ言っているけど、ここからだと聞こえ辛い。でも、一触即発なのは火を見るよりも明らか。制服男子達の目を見るに、このまま会話するだけで終わるとは到底思えない。

 だから、助けに入ろうと俺はしていた。

 

 でも、動かない。セイジ君の声を聞いた瞬間、足が動かなくなった。

 俺の内側で、囲む男子達に負けない怨嗟の想いが膨らんでくる。

 (いい気味だ。あんな奴、救う価値すらねぇよ。俺が助ける義理なんて、何処にも無い。二度とノゾミちゃんの前に出られないくらい、ボコボコになっちまえば良いんだ)


「お前の気持ち、理解は出来るぜ。虎」


 俺はそっと、自分の胸に手を置く。

 だが、その感情に押し流されてはダメだ。ただ人を羨み、妬むだけでは何も生まれない。それは、セイジ君を取り囲む彼らにも言える事。

 だから、


「諸君!そこまでだ!」


 俺は声を上げた。途端に、腹の中に渦巻いていた嫉妬の感情が薄まっていき、俺の足が動くようになる。


「誰だ!?」

「俺だ」


 謎の声に慌てる男子生徒達に、俺は建物の陰から姿を現す。すると、何人かの男子は小さな笑みを浮かべた。


「なんだ、黒沢かよ」

「こいつは大丈夫ですよ、相川先輩。俺達と同じ、上郷に煮え湯を飲まされてる奴ですから」

「1年の時、ノゾミちゃんに告って玉砕したんすよ。それ以来、俺達とは別で上郷を攻め続けて…なぁ!そうだろ?」


 なんと、そんなことがあったのか。

 虎よ。お前、記憶の忘却魔法が卓越し過ぎてないか?

 きっと、それが夏休み前の出来事なんだろうなと推測しながら、俺はセイジ君の横に立つ。彼を捕まえている相川先輩の腕を軽く掴んだ。

 彼の鋭い目が、俺に向く。


「何のつもりだ?黒沢。お前はこいつを許せるってのか?あぁ!?」

「感情で言えば、許せませんね。僕の腹の中でも、先輩方と同じくらい怒りの炎が渦巻いていますよ」

「だったら!」

「ですが!…この方法は悪手です」


 被せるように言って、俺は先輩を黙らせる。そして、校舎の方を見上げる。


「もしもですよ、先輩。もしもここで彼に手を出してしまい、それを誰かに見られたりしたら、先輩方の立場は危うくなります。停学処分、最悪は退学処分になるかもしれません」

「見られたらの話しだろ?だから俺達は、ここを選んだんだよ」


 ニヤリと笑う先輩。

 なるほど。そこまで理性を失ってはいなかったか。でもどうせなら、こんな無謀なことをしても無駄だと理解するまで、頭を働かせて欲しかった。

 俺は内心で残念に思い、首をゆっくりと振った。


「残念ながら先輩。私がここに来た時に、誰かが走り去るのを見ました」

「ホントか!?」


 嘘だよ。

 俺は心の中で謝りながら、大きく頷いた。


「ここは危険です、先輩。今すぐにでも撤退のご決断を」

「くそっ…分かった。だが、もし嘘だったら承知しねぇぞ!」


 先輩はそう言いながら、スタタタッと走り去る。他の人達も、先輩の後ろを追ってバタバタと逃げて行った。

 承知しない…か。さて、この嘘をどうやってリカバリーしたものか。


「ったく…なんだったんだ…」


 俺がこの先を憂いていると、セイジ君が弱弱しく呟き、その場に座り込んでしまった。

 恐怖から解放されて、力が抜けたのだろうか?


「大丈夫か?上郷君」

「あっ、ああ、済まない。ありがとな」


 俺が手を差し伸べると、彼は慌ててその手に掴まって立ち上がる。

 うっ…。マモちゃん程じゃないけど、なかなか背があるな。折角収まった怒りの渦が、また蠢き出してしまったぞ?


「ホント助かったよ。マジで先輩に殺されるかと…ええっと、黒…川くん、だったっけ?」

「黒沢だ。黒沢グループを知らんのか、貴様」


 おっと。つい怒りの感情が表に出てしまった。どうもセイジ君の目を見ていると、苛立ってしまう。

 俺はつい怒気を漏らしてしまったが、それを受けたセイジ君は「ああ、黒沢って、あの」と薄っすら笑みすら見せる。


「知ってる、知ってる。偶にテレビのCMでやってるもんな」


 それは、俺が知らなかった。普段、テレビを見ないからなぁ。


「そっかぁ。そんな凄いところのお坊ちゃんだったのか」

「ああ、まぁ、俺のことは良い。それよりも君の体は大丈夫か?かなり強く胸倉を掴まれたように見えたが?」


 見た所は大丈夫そうだが、座り込んでいたし、無理していないだろうか?

 そう思って聞いたが、彼は力こぶを作って「大丈夫だ」とアピールする。そして、大きくため息を吐いた。


「しかし、あいつらにも困ったもんだよな。いきなり掴みかかって来るし、変な言いがかりを付けられるしよ」

「…本当にそう思っているのか?」


 まるで他人事のように零す彼を見て、俺は目を細めた。

 すると、薄ら笑みを浮かべていたセイジ君の表情にも、緊張が走る。


「なっ、なんだよ、黒沢君まで…」

「上郷君。大きなお世話かも知れないが、何故、先輩達が絡んで来たのかを理解しないと、今後も君の…」


 俺が説教モードに入ろうとした時、先輩達が走り去った方向から複数の足音が聞こえた。

 振り向くと、数人の女子生徒がこちらへと走り寄って来ているのが見えた。


「セイジー!」

「セイちゃーん!」


 おっと、不味い。ハーレムメンバーだ。

 俺の心が大きく波打っている間に、彼女達はセイジ君に駆け寄って、彼の体をペタペタと触り始めた。


「大丈夫?セイちゃん。男子に無理やり引っ張られて行くところを見たって、クラスの子が教えてくれてさ」

「途中で怪しい奴らを見かけたけど、もしかしてあいつらに何かされたの?」


 ノゾミさんとジュンさんが、心配そうにセイジ君を覗き込む。

 その様子を傍で見ていた俺の前に、背の高い女性がスッと近づいて来た。

 昼休みの屋上にも居た人だけど、この人は…?


「またお前の仕業か。黒沢虎二」


 艶かしい長い黒髪を後ろで束ねたお姉さんが、鋭い目で俺を見下ろしてくる。

 その目を見て、俺の中の虎が歓喜に震える。

 彼女の名前は万江村(まえむら)那津(なつ)。我々の1個上であり、この学校の生徒会長でもある。


「またお前が、セイジ君をイジメようとしていたのは明白。今日と言う今日は許さん!私の一刀で、完璧に成敗してくれる!」


 そう言って竹刀を構える彼女は、剣道部の主将でもある。文武両道にして美しさも1級品の彼女に、是非とも罵られたいと思っている男子生徒も多いらしい。

 だがな、虎よ。俺は進んでこの一刀を受ける気は無いぞ?俺にそう言う趣味は無いからな。


「やめて下さいよ!ナツ先輩!」


 俺も心の中で構えていると、セイジ君が声を上げて生徒会長を止めようとする。

 それで、会長の抜刀モーションは止まったものの、彼女は振り上げた竹刀を降ろそうとはしなかった。俺を睨み下ろしながら、背後のセイジ君に声を掛ける。


「慈悲を掛ける相手が違うぞ?セイジ君。こんな卑怯者は、一度死んだ方が…」

「黒沢君は俺を助けてくれたんだ!」


 セイジ君の弁護に、ノゾミさんが驚いた声を上げる。


「どう言う事なの?セイジ。あの人が貴方に怪我させようとしたんじゃないの?」

「全然違う!黒沢君は俺が先輩達に殴られそうだった時、それを止めてくれたんだ」


 セイジ君が簡単に、さっきあった事を説明してくれた。すると、俺を見るノゾミさん達の目が、少しだけ優しくなった気がした。

 でも、目の前の武者だけは揺らがない。俺を見下ろしながら、半歩近付いてきた。


「本当にそうなのか?セイジ君。私にはどうも、この男の登場が都合良過ぎるように思うぞ」

「…どう言う事だよ、ナツ先輩」

「つまりだ、セイジ君。君が襲われたのも、それを救ったのも、全部こいつが仕組んだ事ではないかと言っている」


 つまりは、マッチポンプを疑われていると言うこと。

 それを聞いて、ノゾミさんは視線を迷わせ、セイジ君も「そんな訳…」と言いながら固まってしまう。さっきまでの威勢を無くしてしまい、こちらを完全に白とは言えなくなっていた。


「どうなのだ?黒沢よ。お前がまた、裏で金をばら撒いたのではないか?」


 ナツ先輩が厳しい視線と共に、竹刀の先もこちらに向けてくる。

 それに、俺はため息を吐いて肩を竦める。


「ここで俺が、そんな事はしていないと主張しても、会長は信じて下さらないのではないですか?」

「当然だ。これまでのお前を見ているからな」

「そうですか」


 そう言って、俺は1歩前に出る。彼女の竹刀の先が、俺の額にコツンッとぶつかる距離で止まる。


「でしたら、お好きな様にしてください。貴女の気の済むまで、俺を痛みつけると良いでしょう」

「ふっ。観念したか」

「いいえ」

「…なに?」


 余裕の笑みを浮かべていた会長は、俺の即答を聞いて再び顔を強ばらせる。

 そんな彼女を、俺は真っ直ぐに睨み上げる。


「どれ程の痛みを受けようとも、俺の心は折れません。俺が何ら後ろめたい事をしていないと、俺自身が知っているからです。仮令(たとえ)、貴女の正義(やいば)がこの首を落とそうとも、俺の心は一片の傷も負う事はない」


 さぁ、どうぞ。

 俺はそう言うが如く、両腕を広げる。その一刀を、受けきって見せると態度で示す。

 すると、竹刀の先が僅かに揺れた。

 会長の瞳も、僅かに揺れる。


「お前は…本当に黒沢、なのか?」

「それ以外の何に見えましょう」


 暫く、生徒会長は俺との睨み合いに興じる。そして、スッと竹刀を戻した。

 彼女はそのまま「行こう」と言って、他の3人を連れて校舎へと戻ろうとする。

 ただ、


「おい、ジュン。どうした?」


 ただ1人だけ、俺をジッと見詰めて動かない娘が居た。

 いや、動けなくなったか?少々威圧し過ぎたか。


「済まない、お嬢さん。怖がらせてしまったか?」

「う、ううん。違くて…あの、黒沢君。君は…」

 

 ジュンさんが俺に、何か聞こうとした。

 でも、後ろから「ジュン!」と会長の厳しい声がそれを遮る。


「ごめん、黒沢君。またね」

「ああ」


 反射的に手を振ってしまったが、彼女の言う「また」とは、どういう意味なのか。

 いや、


「社交辞令だろうな」


 この時の俺は、そう思う事にした。

「…冒頭でも感じたが、これが生徒会長なのか?」


暴力的ってことですか?う~ん、でも、先輩達も暴力に訴えようとしていましたし…。


「ほぉ。案外、治安が悪いのだな。この学び舎」

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― 新着の感想 ―
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