14:新月探偵事務所の1日
▼あらすじ
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カランコロン、と涼やかな音を鳴らしながら、新月 梓はドアを開けた。
「いらっしゃいませーお好きな席へどうぞぉー」
目の前に映していた資料をしまい、窓際の開いている二人掛けの席に腰を下ろす。ふぅ、と一息ついてから、ヘルメット型のデバイスを外す。
「あ゛~生き返るぅ~」
首を左右に揺らすと、ゴキゴキと音が鳴る。今日は外での活動が長かったからだろう、知らない間にだいぶ体を酷使していたようだ。
梓はひとしきりストレッチをしてから、メニューを手に取った。今時珍しい紙のメニュー表をわくわくしながら眺めて、ベルを鳴らす。本当にベルの音でやってきた店員に感動しながら注文する。
「あの、BLTサンドとブレンドコーヒー、お願いします」
「BLTサンドとブレンドコーヒーですね。コーヒーですが、10分ほどお時間いただきます。よろしいでしょうか」
「もちろんです」
「では、少々お待ちください」
店員が礼をした後、奥へ戻っていくのを確認する。
梓は肩から掛けているポシェットから、メモ帳とペンを取り出し、肉眼で窓から町並みを眺めはじめた。
うーん、本日も黎船町は平和なり。
窓から見える風景は変わり映えのない日常。急ぎ足で歩いていく人、何処からともなく現れる人、ヘルメットをかぶっている人、いない人。スマートポールにちょっかいを出す子供もいる。空を見れば何かが飛んでいる……あれは増築用ドローンかな。あ、あっちは飛行機。珍しい。
大して珍しくもない光景を、レトロなカフェから静かに眺め、時折手を動かして風景を模写していく。前時代的なことに身を浸し、疑似的にタイムスリップできるこの時間が、梓は結構好きだった。
そうしてしばらく過ごしていると、お待たせしましたー、という声とともにBLTサンドが運ばれてくる。文房具をポシェットにしまい、いただきますと手を合わせてから頬張れば、口の中いっぱいに食材の香りが広がった。
「んぐ……っはー。美味しい。さすが生野菜」
「え~いいな! 俺にも頂戴」
「げ」
横から聞こえた、低い聞きなれた声で、脳内に駆け巡った幸せな気持ちが半減する。
せっかく! 一人で! 楽しめると思ったのに!
梓は、くるりと椅子を回して、声の主を睨みつける。
「…………なんでもういるの、真二」
「つれないじゃ~ん。俺一人じゃ寂しいもん。あずちゃんの位置情報、追ってきました。ぶい」
「真二に変態パッチ、あてた覚えないんだけど」
「言いがかりやめてくれない!? 位置情報なんて、消そうと思ったら消せるのに、消さなかったあずが悪いんじゃん」
確かに、どうせ後で呼ぶし今すぐ消さなくてもいいかと、情報を残して置いたのは自分だけど。多少細工はしたのに。こいつ、ついに悪知恵も見切るようになってきたか。
「だって真二、めっちゃ食べるじゃん」
「食事楽しいんだもーん。あ、すみませーん! 俺この大盛りハンバーガーセットでお願いしまーす! 飲み物は水で」
「ほらぁ……いくらすると思ってんのよ……」
梓は目を細めつつ、ハンバーガーの値段を見て絶句する。1つ3,200円。大盛りの値段も横に書いているようだったけど、そっちは怖くて見られなかった。
遠い目をしながら、残りのサンドイッチを大事に咀嚼していく。途中でやってきたブレンドコーヒーも香り豊かで美味しいのになぁ。何だか味がしないや。横を見れば、真二は「わはー!」と満面の笑顔で、お皿いっぱいのハンバーガーを咀嚼している。
「ん!ふぉふぇもふぉいふぃい」
「良かったね~。食べながらしゃべるの、お行儀悪いからやめなさ~い」
「んぐっ……はーい」
ものの数分ですべてを食べつくし、追加で注文をし始めた真二。さすがに止めようかとも思ったが、この後仕事なのだ。多少……食べたって……仕方がないかもしれない。
「あ、このハンバーガーおかわりで」
「さすがにサンドイッチにしてくれない!?」
「えー! ……んじゃあサンドイッチでぇ……おねがいします……」
そう露骨にテンション下げないでよ。こっちだってカツカツなんだから。
真二が、満足気に「ご馳走様でした!」といった頃にはもう、梓の瞳に光は無く。脳内は「自動精算……これいくらになるの……見たくない……口座見たくない!」と完全に現実逃避していた。
「ね、あず。百面相してるところ悪いんだけど、そろそろ時間じゃない?」
「誰のせいだと思ってるの……うわ、本当じゃない。もっと早く言ってよ」
梓が腕時計を確認すると、依頼人との待ち合わせまで後1分という時間になっていた。急いでヘルメットをかぶり直し、腕を振る。先ほどしまった資料を再度目の前にずらっと並べてざっと再確認。依頼メールと資料も用意して……。あとは、真二との回線接続をしなければ。
「真二、こっち向いて」
「はーい」
梓はヘルメット越しに真二の目をしっかりと見ながら、音声コマンドを発行する。
「対象ID、E79c9fe4ba8c。念話回線、オープン」
――コマンド受領……承認。対象との相互念話回線は現在オープンです。
リターンコードは0。問題なく接続ができたっぽい。正常稼働確認がてら、試しにメッセージを叩き込んでみる。
《送信/梓:繋がってる?》
ぽこん、とヘルメット越しで見る世界の端に、文字が浮かぶ。
《応答/真二:もっちろん!》
《送信/梓:今日も変なこと言わないでよね》
《応答/真二:はーい。おとなしくしてまーす》
《送信/梓:資料は大丈夫?》
《応答/真二:ちゃんと内容記憶してる。ばっちり》
《送信/梓:よし、今日も頑張るよ》
《応答/真二:おー!》
真二は応答メッセージを返すと、両手でピースもしてやる気を伝えてくる。本当に大丈夫か毎回心配になるが、そろそろ時間だ。梓は居住まいを正して、いつ依頼人が来ても問題ないようにしておく。
「あっあの! 新月探偵事務所の方でしょうか!」
そうして数分経った頃、後ろから声がした。振り向いてみれば、中年男性が立っている。腰には、このカフェのロゴがデザインされたエプロンを巻いているので、おそらく店員の一人なのだろう。注文を取りに来てくれた人とは、違う人だ。
「そうですが……私今回はベル鳴らしてませんよ?」
梓は、はて、と頭をかしげて思い当たる節があるか考える。
「……真二。私に隠れてなんか注文した?」
「違うよぉ。ほら、ちゃんと見て」
言われて顔を注視する。そしてようやく気づいた、依頼人だ。このカフェの店員だったのか。
「あースミマセン。まだ寝ぼけてたみたいです。合言葉の確認、させてください」
「合言葉……ああ、えっと。これだ。『新月は町に踊る』?」
「はい。確認いたしました。では依頼内容、伺います」
「あ、はい。あの、えーっと……」
「? なんです」
彼はちらりと、後方へ視線を向ける。
「ここだとちょっとお客さんもいますので。こちらに」
そういってバックヤードへ促す。
「承知いたしました。真二も行けるね?」
「もちろんっ!」
さよなら日常、ようこそ非日常。
店員が、どうぞと扉を開けると、質素な部屋が広がっていた。目の前には簡易的な机とパイプ椅子が並べられてる。机の上には、誰かの荷物があったり、化粧品だったり。メンテナンス器具や絶縁手袋らしきものも、ばらばらと雑多に置かれている。
「こちらへ」
「失礼します」
店員は机に合ったものを端に寄せ、梓と真二に席を促す。梓はすっと背筋を伸ばして腰掛けるが、真二にとっては少し低かったらしい。少し窮屈そうに縮こまっていた。
「では、改めまして自己紹介を。私、新月探偵事務所の所長を務めております、新月 梓と申します。室内ですが、資料確認のためデバイスは付けたまま対応させていただきます。ご了承くださいませ」
「あ、いえいえ。お気になさらず。というか、私はてっきり」
そういうと男は真二の方に視線を向ける。ああ、いつもの流れだ。
「あははー、わかりますよ。あず、身長も低いし、ふかふかのポシェット使ってるし、華奢だし。可愛いでしょ? これでも成人してるのに、まだ中学生に間違われるんですよ」
《送信/梓:余計な ことを 言うな!》
《応答/真二:〜♫》
全くこりてなさそうだったので、一発脛に蹴りを軽く入れておいた。
「こちらは副所長の新月 真二です」
「はいはーい! 俺は副所長の真二! あずのお兄ちゃん的存在です!」
「新月所長って呼べと言っているでしょう」
真二をにらみつけるが、サラリと受け流される。毎回やめろと言っているのに。本当に、もう。
「……大変失礼しました。それでは、改めてご依頼内容、伺います」
ぽかんとした表情で2人を見つめていた男性は、依頼と聞いて思い出したかのように、緊張した面持ちに戻る。
「私はこのカフェベティーロの店長を務めております、真田星雄といいます」
頭を下げ、店長は続ける。
「実は、3日程前からうちの従業員が行方不明でして。『失せ者探し』をしてほしいのです」
「……アンドロイドの方を探すんですね」
梓はあえて言い直した。失せ者探し。梓が嫌いな言葉TOP10に食い込んでくる言葉だ。物を者と言い換えるあたりが、だいぶ気に食わない。 いるんだよなぁ、こういう人。別に人間だから偉いってわけでもないのに。
梓は思わず念話回線で愚痴を吐く。
《送信/梓:やっぱりこの依頼受けるのやめない?》
《応答/真二:なんで》
《送信/梓:だって、普通に気分悪いじゃない。こんなこと言われるの》
《応答/真二:別に俺は気になんないよ。どっちかっていうと、これ断っておいしいご飯食べられなくなる方が嫌》
《送信/梓:そう? じゃあ受けるぅ~?》
《応答/真二:めちゃめちゃ嫌そうだけど、そうしよ》
ふつふつと湧き上がる怒りを何とか落ち着かせようと、大きめに呼吸をする。これは仕事、依頼、落ち着け私、と。そうしてなんとか社会人の仮面をかぶった私はペンを持ちなおし、続ける。
「では、その方の特徴を教えていただけますか?」
真田さんの話をまとめるとこうだ。
行方不明の従業員アンドロイドは汎用型対人サポート機、一般的に接客業で導入されている機種で、特に改造などはしていないそうだ。従業員からは「まーちゃん」と呼ばれ親しまれていた、女性型のアンドロイド。カフェに常設していて、開店時間と共に起動、店の締め作業が全て終わるとスリーブにしていたらしい。
そんな、まーちゃんが店からいなくなったのは3日前。
店の在庫が少なくなると、自動で買いだしに行くよう設定をしていたため、その日姿が見えなくなっても「ああいつもの買い出しに行ったんだな」と思うだけだったそうだ。しかし、その日の締め時間になっても帰ってこない。念のため数日様子を見ようと、昨日まで待っていたが帰ってはこなかったため、依頼をするに至った。
「汎用型といえども、アンドロイドは高価ですので……。それに、こんなことが本社にバレたら減給なんですよ! こんなことに巻き込んでしまって申し訳ないとは思うのですが。どうか、どうかよろしくお願いします」
そうして、改めて頭を下げる店長。
言葉の端々からにじみ出る、選人思想ともいえるに嫌気がさす。
「承知しました。1つだけ、お約束いただけるのであれば。その任務お受けいたします」
「なんでしょう?」
「……私は、彼らの事を物とは呼べませんし、そう認識できません。少なくとも、今後私の前では物のように扱うのを、止めていただけますか?」
「はぁ。わかりましたけど……」
明かに分かっていない顔だったが、せめて口に出してくれなければいい。ちょっとでも彼らを思いやってくれればいいのに。ああ、今回本当に嫌な案件だなぁ。
「では調査してまいりますので私共はここで失礼いたします。料金はご依頼完遂時にいただきます。では」
「では~」
明らかに不機嫌になっっている梓を追いかけるように、真二もドタバタと店を出た。
店の外では、梓が下を向いて固まっている。真二が聴覚ユニットの感度を上げてみれば、梓は小さな声で「耐えた、耐えたぞえらい私よくやった」と繰り返していた。
「ほんと、よく耐えたね~あずちゃん。偉い、偉い」
「今日の私はこぶしが出なかった分、十分偉かったので! 褒めを要求します!」
「さすがあずちゃん! よっ所長! 」
それから梓が機嫌を直すまで、約三分。真二はひたすら梓のことを褒めまくった。褒めに褒め尽くし、最終的には満足気にむふー! とヘルメットの中を蒸気まみれにして、上機嫌になった梓が口を開く。
「よぉし。じゃあ、まーちゃん探そ! 私はいつも通り後から追い掛けつつ、念話で追加情報送るから。真二は先にここ向かってくれる?」
「おっけ~」
梓が指示を出すと、真二はトントンと隣の店舗の壁も使い、カフェベティーロの屋根の上へ乗る。ひらひらと屋根から覗く真二の手を見て、梓も移動を開始した。
事前に町を歩いて情報収集をしていた二人が向かったのは、いくつかある商業施設の1つ。事前に連携されていたまーちゃんのIDや、町の人への聞き込み等で割り出した場所だった。一足先に着いた真二が、念話を開始する。
《送信/真二:着いたよー》
《応答/梓:さすが……早いわね……》
《送信/真二:あず、もしかして息切れしてる? 早くない? 今度また鍛えてあげよっか》
《応答/梓:今日は……朝から動いてたからだもん……あんたみたいに……はぁ……こちとら丈夫夫な体してないのよ》
《送信/真二:人間って大変だねぇ~》
《応答/梓:ほっといて!……はぁ。先にそこでまーちゃん探しておいて》
《送信/真二:はぁい》
《応答/梓:よろ……しく!》
梓はそう言うとしばらく荒い呼吸を繰り返す。ここまではいつも通り。何せ人間にとって外は暑い。顔の周りをヘルメット型のデバイスで冷やさなければ、呼吸するのも少々つらいくらいだと聞いたことがある。
この商業施設は、地上からのみたどりつける、昔ながらの施設だ。梓がここにたどり着くまでの道のりは大いなる旅路になっているはずだ。やってくるまで待っていては少し時間がもったいないからこそ、先に探しておけと言ったのだろう。
さて、と真二は考える。先に探しておいて、と言われても事前の検証では、まーちゃんは三日前にここへ入ってから出ていないということしかわかっていない。
「べつに、行先としては、変な場所じゃないよねぇ。行きつけの場所じゃないみたいだけど」
まーちゃんは買い出しに出たのだ。であれば商業施設に居るのもおかしくはないだろう。おかしくはないはずなのだが。
「さすがに道に迷った、ってわけじゃない……よね?」
この商業施設に過去彼女が足を運んだログは見当たらなかった。アンドロイドが道に迷うとは考えにくく、何か意図があってやってきたのは明白だ。真二はぐるりと周囲を見回す。なんの変哲もない、ただの商業施設に見える。アンドロイド、人間、アンドロイド、アンドロイド、人間、人間、人間。
強いていうなら、親子に見えるような個体が多いということだろうか。アンドロイドと人間、人間と人間、どちらにおいても、親子であることが多く、珍しく子供が多いな、という印象がある。
そういえば、と真二は梓へ念話を送る。
《送信/真二:ねぇ、あず。最近人間の出生率って落ちてるんだっけ》
《応答/梓:はぁついた……涼し……! んえ、出生率? 確かだいぶ落ちてるわよ。最近に限った話ではないけれど、よく評論家気取りの奴らが嘆いてるわね》
《送信/真二:それってアンドロイドのせい?》
《応答/梓:そう言う奴もいるけど……んー、どうなんでしょうね。私は自業自得だと思ってる。そりゃ、自分以外に自分のことをわかってくれる存在が居たら、恋人を望まないでしょうし、子供も産まないでしょう。人間って種は自分たちの手で自分たちの首を絞めてんのよ》
《送信/真二:なるほど~》
《応答/梓:まあ実際。恋愛なんて絡まない方が、人生楽しくやっていけるってものだし。人類の大きな過ちって恋愛に絡むものだったりするでしょう? 偏見だけど》
《送信/真二:えー、でも恋愛感情があるから、人間って変な動きするじゃん。それが面白いのに。もったいなーい》
《応答/梓:……まぁそう言われると、ちょっと勿体無い気もしてくるけれど》
梓は苦笑気味にそう台詞を放つと、数秒後《あ、》と送ってくる。
《応答/梓:恋愛……子供? そういえば、まーちゃん人間の女性と仲良く話してた、とかどこかの資料に……。あ、これこれ。……うん。彼女の行きつけもここか。いやめちゃめちゃ関連性あるじゃない。真二、この商業施設の中で子供が一番集まりそうな場所って、どこか分かる?》
《送信/真二:んー、ちょっと待ってね。追加検索する》
真二は片目をぱちぱちと瞬かせ、検索をかける。
《送信/真二:この建物に絞って調べた感じだと、新しくできた屋上遊園地じゃない? さすがにこのご時世、太陽の下ではないし、正確には屋上じゃないみたいけど。最近増築されたってSNSに書かれてるみたいだし》
《応答/梓:そこだ。向かって》
《送信/真二:はーい。まーちゃんそこに居ると思っていい?》
《応答/梓:うん。この建物、正式な増築申請なんて出てないもの。ドローンでもハッキングしたのかな》
アンドロイドであれば、ドローンのハッキング等、造作もない事だろう。真二は一言《送信/真二:分かった。先に向かってるね》とだけ伝え、階段を駆け上がっていく。
真二が屋上遊園地に着くと、同じタイミングでぽーんと音がする。見れば、ちょうど梓もエレベーターを使ってここまでやってきた様子だった。
「あれ、あず早いね」
「よかった。まだ人間の技術力も舐めたもんじゃないわね。んで? まーちゃんは?」
あたりを見渡す。にぎやかな音楽と小さな子供の叫び声で満ちた明るく雑多な空間で一人を探すのは容易ではない。梓は自分が探すのはあきらめ、真二に任せることにした。
「あ、あそこ」
「居た?」
そういって真二が指をさす方へ顔を向ける。
今、まさにまーちゃんと思われる個体が首元から何かを取り出して、柵の向こうへ放り投げる瞬間だった。
「ストレージッ! ごめん真二よろしく!」
梓は一声叫ぶと、迷いなく柵を飛び越え宙に放り投げられた物理ストレージを捕まえる。ああ、本当に無茶ばっかりするんだから。俺のことばっかり怒るけど、あずだって人のこと言えないのに。
――所有者:新月 梓 の管理者命令を確認。自動走行を開始します。
一瞬で真二の頭部パーツが熱を持つ。聞きなれた音がする。うん、悪くない。この感覚は結構"好き"だ。
「梓はいっつも無茶ばっかりするんだから」
自身の口角ユニットが笑みを浮かべるのを自覚しながら、真二も梓の後を追い柵をひょいと飛び超える。そうして自然落下を始めた。
真二はシッピングモールの外壁を蹴る。
――1.348秒後、前方に足場アリ
右足を出す。何度も増築された跡のある、近場の雑居事務。階段の手すりを蹴って角度を調整。速度を上げ、梓に近づく。
――0.186秒後、頭上に所有者確認
ストレージはすでに手の内に持ったのだろう。きゅっと体を丸める梓へ右腕腕を伸ばし、抱える。同時に左腕は射出。いびつに突き出た壁へ腕を伸ばし、掴む。
――135.25度、1.85メートル前方。延腕。対象捕獲。巻取りを開始します。
地面に足が届く前に、ぎゅるりと音を響かせ、腕を縮める。若干の浮遊感の後、左腕を離し、地面へとんっと着地する。
――所有者の安全を確認。自動走行を終了します。
「もうっ、あずまた無茶するんだから」
「真二が居ないとしないもん。無茶」
「そうじゃなきゃ困るよっ! もう!」
ぷりぷりと怒った様子で自分を叱る真二をみて、梓はちょっとおかしくなってしまって。ふ。と吹き出す。
「あず! 笑わないで! ちゃんと反省して!」
「はぁい」
注意されればされるほど笑いは止まらない。
「さて、じゃあまーちゃん連れて帰りますか」
「ん。もう一仕事だね」
えいえいおー!という1人と1体の声が町に響いた。
Q.あなたにとって〝SFらしさ〟とはなんですか?
A.バディ!脳内を駆け巡る信号!アンドロイド!16進数!!!そんな気持ちで書きました!





