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第4話 日本の噂を

第4話 日本の噂を



日本の商社がニグルンド帝国の商人との商談が成立してから幾ばくかの月日が経過していた。


その間にも民間企業主導による大陸進出は順調に行われていた。


反ニグルンド大陸同盟の事実上の解散から数ヶ月。年が明けてウィルテラート大陸東部に属する国々の多くは既に日本環太平洋経済連盟へと加入していた。


無論、未だ中立を維持する小国や、大陸南部の深い森林を拠点としているブィルトン族といった部族連合はこちら側への接触を拒絶したままではあるが、彼等民間から見ればニグルンド帝国という大陸の巨大な市場開拓の成功に胸を撫で下ろしていた。


数千万人もの市場、何よりもそれらを賄える膨大な食糧の流通ルートの確保は日本政府からも依頼されていたものだ。


だがそんな政府への要望をするまでもなく、彼等民間企業は新たな利益確保の為に大々的に動いる。


その彼等の影響は既に大陸の各所で見受けられ、大陸でも有数の大都市でもその影響は如実に現れていた。


      ウィルテラート大陸

    ニグルンド帝国 帝都ニグルンド


大陸最大の覇権国であるニグルンド帝国の帝都を通る大通りに面する酒場では、今日も大勢の客が入り繁盛していた。


中間層を相手にした酒場では、太陽が真上に位置する昼間であっても1階の全体を占める酒場の各席は殆どが利用客で埋まっていた。


そんな酒場の1ヵ所で2人組の男性が対面に座って両者の間にある丸机に置かれた料理を口に運びながら会話をしていた。


「…………なぁやっぱりお前も乗ってみないか?こんな良い機会なんて滅多にこないぜ?」


そう片方の男性は対面に座る相方へ誘い文句を言う。それに対して誘われた男性は気怠そうに木のスプーンで木皿に盛り付けられたジャガイモ・ニンジンの入ったシチューを掬って食べ、幼少からの相棒である男性へと言った。


「そうは言うけどなアントラ。所詮はまだ噂の域を出てないんだろ?…………だったら危険が多すぎる。草臥れ損で終わりが目に見えてるじゃないか。」


冷静にそう言い返す男性、それにアントラと呼ばれた男は尚も誘うのを止めない。


「何を言ってるんだ!シュメール。船を乗らずして海は渡れぬって言葉があるだろ?危険を顧みずして成功は成し得ないって昔の偉い奴が言ってるだから挑戦してみる価値はあるって!」


アントラの言葉にシュメールと呼ばれた男は今度は羊と山羊の粗肉を詰めた腸詰めをパリッと音を立てて食した。


朝から食べていなかったシュメールは空腹を満たす料理を上手そうに食べる。そんな相棒の姿を前にアントラは立ち上がった。


「いつまで食ってんだよ!俺の話よりも飯がいいのか!」


今日一番の大声を出すアントラ。しかし酒場の繁盛のお陰か、その大声は店内の雑多なざわめきの中で掻き消えた。

 

「勘弁してくれよ。こっちが飯を食おうとした時にお前が来たんだろ。なら飯くらい自由に食わせろ。」


シュメールの尤もな言葉に流石のアントラもここで少し落ち着きを取り戻すが、彼の意思は微塵も変わっていなかった。


「何度も言ってるがこれはチャンスなんだ!いまハンザブレックでは見たことも無い珍しい品物が市場に出回ってる!いまや帝国中の金持ちや貴族共がその珍しい商品を手に入れようと躍起になってるんだ!名のある商人や行商人達は挙ってハンザブレックに足を運んでいってる。

 幸いにもまだ本格的に動いてるのは僅かだ。俺達もその波に乗ってハンザブレックへ行こうぜ…………お前確か、最近懐が暖かいんだろ?俺の金も合わせれば商売する元手は十分だ!

 なぁ、お前も乗ろうぜ?俺1人だと心許ないんだよ…………頼むよぉ。」


両手を合わせて懇願する彼にシュメールは困ったような表情で麦酒を口にして悩む。


アントラが何故ここまでシュメールに懇願するのか。それはここ最近になって帝都内の市場で流れ込んだ珍しい物品の存在である。


彩り豊かな扇、透明で全く歪みのない硝子食器や彫刻品、頑丈で軽量な紙製の箱、銀とは違う銀色の材質で作られた軽量の食器類、どの地方にも見受けられない風調の家具。


それらはこの大陸や隣のラム=リュマラニア大陸や西南にあるトボー諸島群といった近隣の大陸、島々とも異なる全くの異国風の品物はこれまで数多くの珍しい品々を見てきた富裕層や特権階級を驚愕させた。


そしてそれらの品々は全て大陸随一の商業都市ハンザブレックから持ち運ばれている。その情報を耳にした目敏い者達は我先にと隊商を結成してその品々を自分達で仕入れようと動こうとしていたのだ。


それを知り合いの情報屋から態々高い金を支払って知ったアントラは最も信頼出来る仲間であり幼馴染みでもあるシュメールへと話を持ち掛けた。


「なぁ、良いだろ。そろそろこの不安定な仕事から足を洗って商人として成り上がろうぜ。

 死ぬまでこの仕事をする積もりか?」


再び勧誘をするアントラ。そしてそんな幼馴染みからの的を射た言葉にシュメールも考え込んでしまう。実のところ否定の意を表している彼自身も今後の仕事について考えていたのだ。


アントラとシュメールの彼等。2人が生業としている仕事とは冒険者組合に所属し、人間社会に害する魔物と戦ったり、世界を旅しをしたり、行方不明者の捜索や未開の地の調査、薬剤採取、隊商護衛といった多種多様の仕事を請け負い。


危険ではあるが成功すれば大金を稼げる事の出来る、幼き頃の男であれば一時は誰もがそれに憧れを抱く『冒険者』であった。


この2人はそんな冒険者達の中でも中堅に位置する『銀等級冒険者』であった。


基本的にどの大陸にも冒険者やそれに近い職業は確立して組織化されており、そんな彼等冒険者達の階級はその大陸によって差はあるものの、かなり近い形態にあった。


そして彼等2人が生活するこのウィルテラート大陸にある冒険者組合が定めた階級では銀等級冒険者は中級の実力者として認められ、一般的な冒険者であれば無事に引退する年齢まで生きていればその階級に該当した。


因みにその1個上である『金等級冒険者』であると才能のある冒険者として認知される。才能は無いが無難な階級とされるのがアントラ達が位置する『銀等級冒険者』なのである。


しかしアントラとシュメールの2人は年齢でいうと共にまだ21歳と、まだまだ全盛期を駆け上がる途中であった。しかしアントラは兎も角、シュメールも転職を考えてはいた。


稼ぐことに無心なアントラは分かるが、まだ将来性のあるシュメールがそう考えた理由、その理由がいま2人のいる席の窓枠から歩いているのが見え、シュメールは思わず目で追いかけた。


「お、見てみろよ。『薔薇姫』だぜ。」

「本当だ……あんな高位冒険者でもこの辺りに来るんだな。」

「結構前に組合で見かけた事あるが、いつ見ても別嬪揃いだなぁ。」


他の席に座る別の男達も気付いた様でそう声を上げる。それに他のグループでも次々と『薔薇姫』達に視線を集中させた。


酒場に面する通りの歩道を歩く1組の女性冒険者。その彼女達を指す名は『薔薇姫』。このニグルンド帝国やウィルテラート大陸でも超高階級である『オリハルコン等級冒険者』に上り詰めた女性冒険者達だ。


一般的な階級では最高位階級が『アダマンチウム等級冒険者』であり、その1個下に『オリハルコン等級冒険者』となる。つまり彼女達は冒険者達の中でも特に選ばれた者達しか成れない階級に君臨していた。


大陸でも4つのチームしか存在せず、しかも『薔薇姫』は唯一の女性だけで編成された冒険者チームであった。


リーダで剣士を勤める ロウリナ・メルヘネデス。

副リーダで聖騎士を勤める フィーリア・メイリア=ベイン・カサンドラ。

盗賊を勤める メロイ。

聖職者を勤めるローナ・シャローン

魔道師を勤める スターシャ・リリオン


均等のとれた5名の職業から成る彼女達は瞬く間に実績を上げていき、全員が齢20程度の年齢でありながら大陸有数の冒険者となっていた。


彼女達の1人1人が高い戦闘能力をと類いまれなる美貌を併せ持ち、男女問わず高い人気と影響力を誇っていた。


特に副リーダである聖騎士 フィーリア・メイリア=ベイン・カサンドラは伯爵令嬢でもあり貴族界においても高い関心を引き寄せていた。


そんな若くて誰よりも優れた『薔薇姫』を目の当たりにして酒場にいた客達は一瞬にして彼女達に関する話題で再び騒がしくなった。


「『薔薇姫』って言えば最近、またネームド付きの特別危険個体を討伐したんだってな。名前は何だっけ…………」


「『銀色の王猿』だ、覚えとけよ。しっかし、女だけのチームで凄ぇよな。」


特別危険個体………大陸に数多く生息する怪物や魔物等の中には極めて高い戦闘能力を保有する個体が存在する。


そういった存在に対して冒険者組合が警鐘を意味する為に名称が定められ、冒険者や軍隊、国問わず最大限の警戒を知らせる制度だ。


そのネームドを付けられた個体には冒険者組合及び国から多額の報奨金が懸けられ、腕に自慢のある人物に対して討伐を促していた。


そして今回『銀色の王猿』という名称を指定された二足歩行型の怪物の討伐に『薔薇姫』達は成功したのだ。恐らくこの討伐によって支払われた金額は相当な額になるだろう。


何せ『銀色の王猿』は30年前から討伐指定されており、これ迄に数多くの高名な冒険者や軍隊が討伐に赴き、返り討ちにあい続けていたのだ。


軍が管理する戦竜を持ち上げる圧倒的な身体能力を持ち、物を掴んで利用するといった高い知能も持つ怪物。更には山岳地帯を住みかとするため、国が大規模な討伐隊を送るにも一苦労であった折に、彼女達は討伐したのだ。


「聞いたか?討伐した時にそこの領主だったロイフォード侯爵が盛大な宴を10日間も催したらしいぜ。侯爵が冒険者に対してそこまでするか?普通に考えてよ。」


「バカ。『薔薇姫』の副リーダが伯爵家の次女じゃないか。それに帝国内で2つしかいない『オリハルコン等級冒険者』を無下にする命知らずなんていないだろ。」 


「つってもよ………常に冒険者を蔑む貴族様がそこまで感謝するなんて異常じゃねぇかよ。

 俺なんてこの間、どっかの男爵からの依頼であのルット大森林の奥地に生える貴重な薬草を採取したのに金だけとっとと払って感謝なんてされなかったんだぜ? ご苦労とか、そんな一言ぐらいあっても良いだろ。」


「貴族なんてそんなもんだろ。そもそも『薔薇姫』だから彼処まで歓迎されるんだろうが。」


そんな各席で盛り上がる『薔薇姫』の話題。それらの会話を背景にシュメールは思案する。


まだ将来性のある彼が転職を考えた切っ掛けは紛れもなく彼女達『薔薇姫』の存在だ。


自分達と同程度の年齢でしかも女性がこれまで数年掛けて昇格した自分達を一瞬にして追い越した『薔薇姫』の存在に、シュメールはすっかり自信を失くしてしまったのだ。


実際、シュメール以外にも同年代のまだ若き冒険者達の幾人かは、己の才能の限界を悟って故郷に帰る者も出ていた。


自分も故郷の村に戻って適当な家を買って近所の娘を娶ろうか悩んでいた時にアントラの誘いが来たのだ。


幸いにも若くして銀等級に成ったのだ。貯蓄はある程度あり、このまま冒険者を引退しても数年は食い繋げれる。


それかその貯蓄を元手にアントラと一緒に商売を始めるのも1つの手ではあるか。シュメールは『薔薇姫』の登場によって考えを改めつつあった。


思案に老け込むシュメールは頭の思考をより巡らせようとコップに注がれた麦酒を喉に通す。


その心中で悩むシュメールの姿を目敏く察したアントラは説得の圧を強める。


「なぁ考えてみろよ。このまま冒険者をやっても俺等だと精々金等級止まりだ…………悪くは無いがあの『薔薇姫』の姿を見ちまったら結局落ち込むのは間違いない。

 だけど噂の珍しい品々の商売に成功すればあの『薔薇姫』の事なんてすぐに忘れるぜ。大金持ちになれば向こうから接触してくれる可能性だってあるんだ。

 故郷の皆にも自慢できるぜ。」


アントラによる怒涛の誘い文句。これにシュメールは飲んでいた麦酒のコップを置いて口を開いた。


「…………何か策はあんのか?ただ金を片手にハンザブレックに行ったとして伝のない俺等が上手くいく保証なんて無いだろ?」


漸く乗り気になったシュメールを前にアントラは嬉々として話した。周囲の客達に盗み聞きされないよう小声で話す。


「実はだな……先に冒険者を引退して商人になった銀等級の先輩がいてな。その人もこの話に乗ってくれたんだ。既に荷馬車と人手も用意してある。後は道中の護衛が必要って訳さ。

 ハンザブレックまでは同行してそこでの仕入れは別々って話で纏まってる。」


それにシュメールは納得する。この帝都からハンザブレックまでの道のりは約400バレクとかなり遠い。馬車だと2週間の距離はあるだろう。その道中では無人地帯が多く広がり、山賊やゴブリンといった下位の魔物もいる。


そこへ銀等級冒険者が3人もいればある程度の安全は確保出来る。幸いにもシュメールとアントラは銀等級の軽戦士だ。一般の兵士と比べても非常に強く、ある程度の危険は排除できる。


「その人は信用出来るのか?途中で山賊と一緒に襲われるってのは勘弁だぞ。」


「勿論だ。何年もの仲だ。あの人だって一儲けしたいんだから、そんな馬鹿な事なんてしないって。」


「それなら良いんだが…………ていうか、何を仕入れるのかは決まってるのか?」


「当たり前さ。目星は付いてるんだ。」


シュメールの質問にアントラはニヤリと笑って答える。


「そもそもの話、ハンザブレックで出回ってる珍しい品物ってのはあの『ニホン』って国の特産品らしいんだ。

 お前も聞いたことあるだろ?」


「ニホン? 最近良く組合とかでも噂になってるあの国のことか?」


アントラが答えた国名はシュメールも何度も耳にした名前であった。この帝都でも人が集まる箇所にいれば1回はその国の名前が出る程度には噂は出回っている。


「もう何ヵ月も前の古い情報みたいなんだが、大陸東部の大陸同盟が解散してその国が盟主の同盟連合が結成されたらしいぞ。」

 

「は?大陸同盟が解散したのか。リュルハイド国とかの大国はどうしたんだよ。」


「大陸同盟の国々はみんなその同盟連合に入ったらしい。噂じゃ、あのポルグラート王国がニホンと戦争して降伏したらしいんだ。

 それで他の大国も降ったってのが行商人からの話だ。」


突然、大陸全体から見ても大きな事変に、シュメールは顔を近付けた。


「おいおい…………一大事じゃないか。ポルグラート王国程の大国が降伏って…………ニホンはそんなに凄い国なのか? 今までそんな大国がいたなんて聞いてないぞ。一体どこにある国なんだ。」


シュメールの言葉にアントラは周囲を油断なくキョロキョロと見渡すと再び小声で話した。


「それが全くの不明なんだ。」  


「と言うと?」


アントラの様子に思わずシュメールも小声で聞き返し、互いに身を寄せ合った。


「俺が聞いた行商人はポルグラート王国の更に東にある国で商売した時に耳にしたんだがよ………そのニホンってのは突然東の果ての海からとんでもない程の巨大な船を引き連れて来たらしい。そこで見たことのない馬鹿デカい乗り物を吐き出して、雲にも届く巨大な建物を作っただとよ。」  


話を最後まで聞いたシュメールは呆れた様子で反応する。


「…………何だそりゃ?随分と大袈裟に言うじゃないか。 その行商人に騙されたんじゃないのか?」

 

まるで子供の与太話のような内容にそんな反応をするが、アントラは続ける。


「俺だって最初は同じ事を言ったよ。そしたらよその男、これを俺に見せたんだ………これだ。」


アントラは懐から1枚の小さな真っ白な羊皮紙を取り出してシュメールへ見せ、彼は目を丸くする。


「こ、これは…………!」


その羊皮紙には海に浮かぶ巨大な灰色の船と漁船と思われる小さな木造船が驚く程精巧に描かれていた。


しかし目を引くのは一緒に描かれている漁船と比べるのが馬鹿馬鹿しくなる程の巨大な船だ。こんな巨大な船が本当に水に浮かぶのかという疑問が湧いた。


「その行商人がニホン人から貰ったシャシンって言う物らしい。それを俺が買い取ったんだ。高かったんだぜ。」


「……成る程、これは凄い国だな。流石にこの巨大船は盛ってるとしてもこんな本物の景色同然に絵を描けれるんだ。ただの大国でないのは分かる。」


「だろ? ニホンってのは工房が盛んな国らしい。だからコレみたいに珍しい物を作れる訳だ。俺達は帝都でまだ誰も目にした事のない品物をハンザブレックで手に入れるんだ。」


そうすれば俺達は金持ちだ。そうアントラは自信満々に言う。


「話は分かった…………いつ出発するんだ?」


シュメールの質問にアントラは少し考え込んで言った。


「向こうの準備もあるからな…………3日後の日の出と共に出発だ。」


「分かった。」


2人は会話を終えるとアントラは酒場から出ていった。恐らくは話に出ていた先輩との調整に向かったのだろう。1人残ったシュメールは既に冷えてしまった料理を食べていく。





        帝城ニグール 


ニグルンド帝国の政治の中心である帝城では地方から寄せられた報告に国務大臣が唖然としていた。


「これはまことか?」


報告書を呼んだ国務大臣の問いに、その報告書を提出した男は困惑気味に答えた。


「複数の情報源から確認した内容です。信憑性は限りなく高いかと。」


無情な答えに国務大臣は絶句する。速やかに報告書に記載された内容をその足でこの帝国の最高権力者である皇帝へと告げる。


「ダークエルフ共が結集して建国をしたと?」


皇帝の間にて国務大臣から報告を受けた皇帝はその言葉をそのまま返した。


「はっ、何でもダークエルフ共は極東の島に集結してオルフェン=ニルなる国を名乗り、世界各地に散らばった同族を呼び集めている様です。」


皇帝はオルフェンという単語に反応した。


「オルフェン…………奴等はそれを名乗ったというのか?」


「はっ。それは間違いないかと。奴等は隠れて受け継いでいた様です。」


その返答に皇帝は眉を潜めた。半世紀以上も皇帝に君臨し続けた君主から怒りという感情が湧いて出た。


オルフェン…………遥か昔の時代、いまだ人間という種族が各大陸の一部地域にしかその居住圏を限定し、エルフと世界の覇権を争っていた時代にダークエルフ達を纏め上げた初代族長の名がオルフェンという名であった。


現代ではダークエルフ達にその名を継承させる事は世界で固く禁じられており、とっくに忘れ去られていたと思われていたが、どうやら細々とその記録を伝承させていたようだ。


「確認した結果、数ヵ月前より都市警邏を行っている第2騎士団から貧民街でダークエルフ共の姿を見なくなったと報告を騎士隊長が受けていたと確認がとれましたが、そこで報告が止まっていた様です。」


ダークエルフには居住の自由は認められていない。まぁそもそもの話として差別の対象となっている彼等に家を貸す物好きはおらず、国が動かずとも必然的に貧民街での生活を余儀無くされていた。


そんな貧民街においても彼等ダークエルフは常に他の貧民階級から差別や搾取の対象とされ続けていた。


「そのダークエルフが貧民街から忽然と消えたか…………」


「他にも間諜として従えていた者も行方知れずとなっております。最初は任務途中で野垂れ死んだと思っておりましたが、この状況を見るに奴等の国へと………」


国務大臣の説明を聞いた皇帝は熟考に入る。


「この期に及んで奴等が極東に逃げた理由は何だ?」


皇帝の疑問に再び国務大臣が答えを述べる。


「ニホンでございます陛下。彼の国がダークエルフ共の後ろ楯となっているのです。」


「ニホンだと? 昨年に大陸同盟を降ろしたあの国がよりにもよってダークエルフと手を組んだと申すか。」  


皇帝は訳が分からないといった反応だ。世界中から忌み嫌われている賤しい種族に手を差し伸べたとあればそれだけで他国から拒否感を持たれるのは明白だ。


「理由こそは不明でありますが、昨今のニホンは無視できない程の影響力を増しつつあります。既に大陸東部と東北部の国々は完全に奴等が造り上げた新たな同盟連合を組しております。このまま奴等を見過ごせば何時、南部の部族連合と手を取り合うか分かりませぬ。」


「ぬぅ………」


皇帝はそこで悩む。


現在このウィルテラート大陸には大きく分けて3つの勢力に別れる事になった。


1つはニグルンド帝国とその属国及び属領からなる帝国が。

2つは日本を主導にした環太平洋経済連盟諸国が。

3つは大陸南部の山脈付近に広がる広大な大森林に住む部族連合が。


その他にもどの勢力にも属さない中立国が一定数存在するが大きな影響を及ばさないので無視してもよいだろう。


そしてニグルンド帝国は現在、大陸南部の山脈を中心に生活するドワーフ族との大規模な貿易を行うためにその手前にいる部族連合との戦争準備を行っていた。


目的はドワーフ族が持つ高度な精錬技術で造られた武具関連の入手である。戦争で得る選択肢も帝国内で意見されたが、ドワーフ族の特徴と立地的な問題がその方針を変えさせた。

 

ドワーフ族は人間種と比べると小柄でずんぐりとした体格をしている。その為走るといった行為は不得意であるものの、彼等の筋力は人間の数倍を誇る高い身体能力を有していた。


その高い身体能力は普通の人間の兵士が扱えない重厚な搥や槌の武器から放たれた攻撃は彼等の鎧とその内側にある肉体を簡単に破壊してしまう。


単純な戦力としてはドワーフ1人に対して一般の兵士数人分と評価されていた。


もう1つの理由である立地的な問題では、ドワーフ族が生活する山脈は標高5000m級の山々が連なりそこの環境は過酷で、そこに進軍するだけでも一苦労である。更にはその周辺で生息する魔物や怪物等も大陸中央部と比べると手強いのだ。


これらの理由があるためニグルンド帝国は友好的な手段を取らざるをおえないのだ。


しかし簡単に貿易を行える訳でもない。ドワーフ族の多くは未熟な精錬技術しか持たない人間種を下に見る事が一般的な価値観で、自ら積極的に接触を図ろうとはしないのだ。


そして大前提としてドワーフ族の居住圏に辿り付くには長大な道のりを進むしか無く、最大の懸念点として大陸中央部の人間から見て極めて粗暴で野蛮な部族連合がその行く手を阻んでいるのだ。


彼等、大陸南部の部族連合の人間達もニグルンド帝国人や大陸同盟よりも大柄な体格を誇り、高い近接戦闘術を誇っていた。


故にニグルンド帝国は大陸南部の平定のために大掛かりな準備をしていたのだが、そのタイミングで日本という危険値が未知数の存在に皇帝は頭を悩ます。


大いに悩んだ皇帝は国務大臣へ命令を下した。


「ニホンへの対応は南部の問題が解決してからとする。陸軍大臣に伝えよ。年内には全ての準備を完了させて南部の野蛮人共を我が帝国の版図へと加えるのだ。」


「ご下命承りました。」


国務大臣はそこで皇帝の間から退出した。帝城の廊下を1人で歩く彼は話に出た日本に視野を向ける。


彼自身も最近の帝都でニホンから流れた品物が一世を風靡していると耳にしていた。それが平民等の間だけでなく、貴族間での社交界においてもニホン産の品物が大きな影響を及ぼしていると。


そこで彼は自身の身内の事を思い出して溜め息を吐いた。


「アイツは無茶を言ってくれる……」


先日、縁のあった貴族から招待を受けて茶会から帰ってきた妻が帰宅早々に彼へ懇願をしてきたのだ。


どうやら誘われた茶会の主催者である伯爵夫人の衣装がこれまでに見たことのない非常に珍しい素材で作られた物らしいのだ。


妻が言うには、今までのどの布よりも肌触りが良くて軽く、何よりも見た者全員が圧倒される程の光沢を醸し出していたという。


その為、その場にいた多くの貴婦人達はこぞって彼女の周りに集まり一躍注目の中心になったという。妻はそれが我慢できず同じものを手に入れて欲しいとねだったのだ。


彼は渋々ながら妻と娘達の専属となっている仕立屋やデザイナーに件の伯爵夫人と同じものを作るように指示したのだが、その指示を受けた者達は難色を示した。


どうやら伯爵夫人が着た服は服飾業界の間でも大いに噂となっているようで、その条件の厳しさを国務大臣よりも理解していた。


彼等が言うには商業都市ハンザブレックの商会でしか販売していないキヌという大変貴重な織物らしい。


流通経路が限られており、前例のない素材のため1着製作するのに試行錯誤を繰り返しながらのため相当な時間が掛かるのだが、何よりもその素材を使うと1着に対する費用が莫大になってしまうという。


国務大臣が幾ら掛かるのかと聞くと、問われた仕立屋の支配人は、大まかな計算になりますが、という前置きをしてから言い難そうに小声で金額を言った時、彼は思わず聞き返してしまい恥をかいてしまった。


だがその金額は国務大臣という役職を持った彼ですらも躊躇する程の大きな額だったのだ。その余りにも高過ぎる金額は、いま思い出しただけでも気が重く成る程だ。


「たかだか1着のドレスにそこまで金を掛けれるか。」


それが彼の判断であったが、大臣職という立場である以上、その伴侶である妻には他の貴族夫人よりも質の高い物を身に纏わせねば両家の評判を落としてしまう。


それは彼も良く理解していたが、そのキヌ製の衣装1着に対しての金額が、8頭立ての特型馬車数台分と同程度の金額なのだ。そして貴族家たるもの、それ1着だけ作ってそれを使い回すなんてはしたない事なんて出来ない。


通常であれば別のデザインの衣装を何着も製作させて一定期間を過ぎれば、また新たなデザインの衣装を作らせて着る。それの繰り返しだ。期間を過ぎた衣装なんて2度と着ることは無いだろう。例え1回も着てない物があろうともだ。


…………冗談じゃない。一体どれだけの金が吹き飛ぶ事やら。


流石に破産とまではいかないが、今後はより一層の領内と荘園の税収入に気を付けなければ増税する羽目になるだろう。


たかが服の為だけに増税するなぞ、領地運営能力が無いと領地内外に宣言するような行為だけは避けたい。


しかし断れば妻から何と言われるか、それを想像した彼は再び大きな溜め息を吐いた。四六時中駄々を捏ねて娘達も動員して懇願してくるのは目に見えていた。下手をすれば宝石まで一緒にねだってくるかも知れない。


「………仕方がない。来月の騎士祭りは欠席するか。それに教会への寄付も今回は見送ろう。」


多くの名門貴族家が参加する配下の騎士の技量を争う剣術大会を彼は何か適当な理由で欠席とし、貴族が義務としている国教への寄付も止めて僅かながらの節約を決意した。


後は領内の幾つかの公共事業も縮小するしかないか。そう呟いた。


ひょっとしたら他の貴族も同じ悩みを抱いているのでは無いか、そんな淡い期待というより同族意識を持ちたい彼は廊下を淡々と歩いた。






3日後……帝都ニグルンド 日の出の数刻前 

        ミルブンド街



アントラとの約束の日を迎えたシュメールはこれ迄拠点としていた冒険者御用達の宿で借りた部屋で出立の準備をしていた。


個人で持っていた魔法の灯りを宿した魔法道具の蝋燭を寝台横の台に置いて、室内の床に広げた道具の最終確認を続ける。


床に1枚の大きな布を広げて、その上に冒険で使い続けた自身の道具類が一杯に置かれていた。


冒険者として必須である武器関連には、愛用の片手剣を筆頭に予備武器である短剣と木の枝の伐採専用の鉈。片手に収まる大きさの小型盾。剣の整備用としての油の入った袋と携行砥石。


何かと便利な数ナトロ分の縄。ランタン。火打ち石。道中で使う木の器とコップ、スプーン、フォーク。2人用の鍋はアントラが持つため除外。日用品のナイフ。そして個人用のテントに毛布。雨風を防ぐための雨具。数日分の肌着。


飲料水の入った革袋。数日分の棒状の固形糧食。この宿で購入した干し肉と干した果実類


そして上記のこれらを全て入れる為の背負い袋は寝台に置いてある。


腰に掛ける荷物ポーチ。そこに収納する貴重な回復と解毒の水薬。数枚の羊皮紙。そして今回最も大事な硬貨の入った袋と数個の換金用の宝石だ。きちんと金額と個数を確認する。


ここに彼の全財産が詰まってる。金額にすれば銀等級冒険者でも裕福な額がここにある。


最後に今からシュメールが装備する胴体と手足を硬い革で覆った硬革の部位鎧。そしてその下に着込んで矢や獣の歯から守る鎖帷子。手を守る牛革で出来た籠手。頭部を守る鉄製の兜だ。


これら全て問題ない事を確認し終えたシュメールは満足そうに頷いた。銀等級冒険者の装備としてはその中でも質の良い装備品と言えるだろう。


駆け出しの冒険者から始めてから数年間、地道に貯蓄して少しずつ装備の質を高めた結果が目の前に広がっている。しかし冒険者としての姿も今日で最後だと悟るとシュメールは小さな溜め息を吐く。


だが気を取り直してこれらの荷物を纏める。全ての荷物を背負い袋と腰掛けポーチに上手く収納すると今度は着慣れた鎖帷子と部位鎧を装備していく。


最後に兜と籠手を嵌め、片手剣を腰のベルトに射し込むと自身の装備に不備が無いか確認する。一通り問題ないと判断すると遂に部屋から出た。


世話になった宿を後にするシュメール。外はまだ日の出前のため、まだ暗く人通りも少ない。


誰にも邪魔される事なくアントラとの待ち合わせ場所である帝都城門付近の広場へと到着すると、そこには3台の帆を張った荷馬車とそれに乗る数人の男に1人の男と話しているアントラが既にいた。


完全装備をしたシュメールを見つけたアントラは自身と同じように革製の部位鎧を着た腕で自身の方へ振った。


「シュメール。こっちだぜ!」 


それに彼は反応してそこへ足を進める。会話が出来る距離になるとアントラは隣に立っていた男性を紹介した。


「シュメール。この人がこのまえ話していた、先輩のオルブさんだ。この日のために新しい荷馬車を1台用意してくれたんだぜ。」


そうアントラから紹介されたオルブという男はシュメールと固い握手を交わして口を開く。


「オルブだ。今回は宜しくな。」


アントラとシュメールよりも僅かに背の高い中年の男性は人受けの良い笑顔を見せる。


「シュメールです。こちらこそ。」


軽い挨拶を交わすとシュメールは続けた。


「ハンザブレックで仕入れた物は一緒に運んでくれる。それまでの道中の護衛は」  


「俺達がやるって訳だな?任せろ。山賊程度なら何人掛かって来ても返り討ちに出来る。」


シュメールはそう自信満々に言い放った。実際、質の荒い装備しか持たない山賊と大抵の魔物からの攻撃を防げる装備をきたシュメールとでは大きな戦力差があった。


そこで数年の冒険者として培った戦闘技術があれば、シュメール1人であろうとも、数人程度の山賊ならば簡単に相手取れる実力を持っていた。


そんなシュメールにオルブは嬉しそうに笑った。


「ハッハッハ。こいつは頼もしい。アントラと相棒を組んでると聞いていたが、こんなお調子者がすぐに銀等級に成れた理由が解ったぜ。」


「それどういう意味すか。」


アントラが不満げに聞くがオルブは軽く笑うだけで誤魔化すと後ろの男達に声をかけた。


「うし!お前ら、出立するぞ。目的地は商人の都、ハンザブレックだ!」


後ろの男達はどうやら商人になったオルブの部下のようだ。彼等は意気揚々とそれに応えると荷馬車の御席へと座って出立を整える。


「俺等も乗るぞシュメール!」


アントラが言った。シュメールは静かに頷いて先頭の荷馬車へと乗り込む。


到着までは10日間程度の長い道程だ。シュメールはどんな襲撃者が来ようとも必ず返り討ちにしてやると意気込んだ。


広場から出た一向は巨大な城門で警備をする騎士達の方へと進む。





        商業都市 

       ハンザブレック


連日、大陸中の商人達が集まるこの都市の1等地にあるエラウノーラ商会のある敷地ではここ最近、特に他所からの商人と行商人等が列を成して取引に来ていた。


彼等の目的は決まってる。先のニホンの商会から取引が開始された品物の仕入れに来ているのだ。


エラウノーラ商会の販売・在庫管理に現場の対応を任されている番頭はそんな大量の客を相手に連日、日の出から日の暮れまで処理し続けていた。


今日も番頭は連日の疲労を完全に癒す間も無いまま朝から並ぶ客の処理をいつも通りに行っていく。


エラウノーラ商会本拠地のあるこの敷地では、主の住居も兼用の大商館と商会としての仕事を行う、常に解放された取引所が併設されている。


この商会が取り扱う商品を仕入れに来る客はこの取引所で取引を行うのだ。


「何度も言っているが、キヌの取引はもう終了しておる。これ以上の販売は無理だ。」  


番頭は昨日と同じ断り文言を言うが相手方の商人は引き下がらない。


「そんな!待って頂きたい! わ、私はイエブル伯爵家から厳命を受けてるんだ!

 何がなんでもそちらのキヌを入手して仕立屋に納品せねばどんな目に合うことか…………」


どうやら相手の商人も名のある商会の者らしく伯爵家からの圧力を受けている様だ。


他の客からもほぼ同じ文言を聞き終えた番頭は心の中で特大の溜め息を吐いて、別の品物を薦めた。


「キヌの在庫は無いが変わりの物ならば用意できるぞ。お前達、あれを持ってきなさい………」  


番頭はそう言って側に控えていた部下に商会倉庫へと向かわせた。相手の商人は変わりの物では意味ないといった表情をするが、一握りの希望を持って確認が取れるまで我慢するとした。


やがて商会倉庫から1箱を両の手で抱えた部下が戻ってきて、番頭は相手の商人に見えるように箱の蓋を開けて中身を見せた。


渋々といった様子でその中身を改める商人はそれを見て目を丸くした。


「こ、これは!?」


彼が見た箱の中身には幾つかの筒状に丸められた織物が入っていた。そしてその織物はこの商会玄関で厳重に展示されていた噂のキヌとはその光沢は劣るものの、それでも既存の織物と比べて優れた光沢さを出していた。


番頭はその内の1反を取り出して相手の商人に手渡す。商人は恐る恐るといった様子で受け取って念入りに確認した。


「それは『ナイロン』と呼ぶ織物だ。そちらが探し求めているキヌと比べると劣るがそれも充分に貴族が御満足する出来だろう。」


渡した織物の説明をする番頭。それに商人は安堵と満足した様子で握手を求めた。


「感謝しますよ!これなら伯爵様もその令嬢様も大満足しましょうぞ!

 いやはや、流石はかのエラウノーラ商会ですなぁ。まさか噂のキヌ以外にもこのような素晴らしい物を持っていらっしゃったとは。」


早口で次々と称賛の言葉を投げ掛ける商人に番頭は慣れた動作で遮って、次の客の相手へと足早に歩く。


ナイロン。矢幡部長の勤める商社が、絹の代替品として新たに提供した合成繊維である。


当初の販売予定になかった製品であったが、矢幡部長側とエラウノーラ商会側の両者の予想を遥かに上回る絹を求める声に、リビアン商長が変わりとなる物品はないかと打診してきたのだ。


そこで矢幡部長側は代替品として絹に劣るが、似たような性質を持つナイロンを新たな販売品目として送ったのだ。


数ある合成繊維の中でもトップクラスで軽く速乾性にも優れ、皺にも成り難い。ただ欠点としては熱に弱く、吸水性も悪い。そして劣化の激しい繊維である。保管技術が未熟なこの地ではそう長期間の保存は難しいだろう。


だが少なくとも顧客に提供するまでの間は問題ない。それにナイロンの製造コストは低く、大量生産に向いていた。


問題は原材料が石油であり、今や国の存続を掛けた状態が継続するこのご時世のため、開発初期の石炭に原材料を戻したため、品質は石油製のナイロンと比べて僅かに劣る…………が、この世界では充分の品質だろう。


事実、先の商人は大満足した様子でエラウノーラ商会の者と仕入数について商談を纏めていた。


そうやって今日も次々とやってくる客を捌いている番頭。やがて真昼の時間帯を合図する都市の鐘が鳴った。


そこで一旦は客足が落ち着いたので一息の休憩をする番頭の元へ、エラウノーラ商会の主 リビアン商長がアディスを背後に連れて近づく。


それに気付いた番頭は疲労した身体を動かして自身の主を出迎えた。


「取引は順調かしら?」


アディスに日傘を指して貰い、身内にのみ向ける優しい表情を番頭に向けた。


「商長。本日も滞りなく商談は纏まっております。この調子ならば今月も例年の月よりも大幅な黒字となりましょう。」


実に喜ばしい事です。番頭はそう言ってリビアン商長の言葉を待つ。


「そう………確かに館からも聞こえる位には大勢の人が来てるものね。」


リビアン商長はそう返した。敷地を埋め尽くす程の客はやはり館で仕事をする彼女の耳にまで届いていたかと番頭は察した。そこで彼は彼女の今日の予定を思い出して問いた。


「そう言えば本日はチェスターボード商長殿が此方に来られるのですよね?ここに居てよろしいのですか?」


チェスターボード商長………この商業都市ハンザブレックのチェスターボード商会の主であり、リビアン商長が経営するエラウノーラ商会と同じこの都市の1等地に大商館を構えていた。


そしてこのチェスターボード商会はこの都市においても最大規模の商団を誇る大商会であった。その主が今日、リビアン商長の元へ来る予定なのだ。


彼女と同じ評議会議員の1人でもあり、下手な対応をとればどんな影響を及ぼすか予想が出来ない程の大物なので番頭は思わず確認をとる。しかしリビアン商長はその優しい表情を崩さずにゆっくりと答えた。


「あぁ、心配しないで良いわ。これから来られる頃だからその出迎えで外に出たのよ。」  


「左様でしたか。何か御入り用があればすぐに知らせてください。」


番頭は納得する。その後も軽い世間話をするとリビアン商長は時間を計らってこの敷地の正面入口へと向かった。


鉄柵で囲われた敷地の出入りを管理する入口ゲートでは数名の私兵が門番として警備しており、彼女の姿を見るとお辞儀をする。


彼女が片手を上げて返答をした丁度その時、件のチェスターボード商長を乗せた馬車が大通りから現れた。


金模様を施した6頭立ての豪華な大型馬車は周囲を重装備をした騎兵で護衛された列と成してエラウノーラ商会の敷地へと入った。


大型の馬車も停車可能な広い停車地に到着を待っていたリビアン商長は日傘を指して貰っていたアディスを下がらせて身嗜みを整える。


一瞬で整え終えた彼女の目の前で止まった6頭立て馬車から1人の男性が降りる。

 

エラウノーラ商会を越える大商団 チェスターボード商会の主は出迎えてくれたリビアン商長へと声をかけた。


「お出迎え感謝しますリビアン嬢。」


それに彼女もスカートの裾を掴んでお辞儀をして声を出した。


「本日は当商会へお越し頂きありがとうございます。チェスターボード殿。」


両者は優雅という表現が似合う挨拶で言葉を交え、その場で一通りの世間話をした後にリビアン商長は館にある第1応接室へと案内した。


応接室にはリビアン商長とチェスターボードの2人だけとなると互いに部屋の中央に置かれたソファへと腰を下ろした。


「エラウノーラ商会、最近では貴方達の噂を聞かない日は無いですよ。随分と珍しい品々を手に入れたようですな?」


両者が座って館の侍女が2人に紅茶を置いて部屋から退出して扉を閉めた途端、チェスターボードは開口一言目に今回館に来たであろう話題に触れた。


(早速ね……)


リビアン商長は予想していた質問を前に紅茶を飲んで返答をどうするか考え込む。チェスターボードはそれに関する事なく言葉を続けた。


「どの商会でも話題はエラウノーラ商会一色で染まっていますよ。今や飛ぶ鳥を落とす勢いだと、今日、ここに来てそれはただの噂では無いとすぐに分かりましたよ。それに……貴方のその姿も納得です。」


チェスターボードはそこで対面に座る彼女を見た。正確には彼女が付けているアクセサリーに視線を向けていた。


リビアン商長はいま、矢幡部長から特別に贈られていた日本国内でも希少価値の高い宝飾品を身に付けていた。


大手宝飾メーカーの精密機械で製作された細かなダイヤモンドで装飾された耳飾り、大粒の真珠のネックレス、だがその真珠は地球でも珍しい蒼白い真珠であった。


そして彼女の商会傘下の仕立屋から仕立てて貰った絹製のドレス。


これらの姿を見てチェスターボードは彼女への質問を更に続けた。


「いやはや…………幼少期の貴方を知っておりますが、あの頃は元より今の貴方のお姿は実にお美しい…………帝国が誇る商人達の皇女、そう貴方を絶賛する者が後を絶ちませんよ。」


最後の言葉に彼女は飲んでいた紅茶のカップを置いて口を開いた。


「皇女など…………そのような畏れ多い表現は私には似合いません。」


下手に貴族関係者が耳にすれば不敬罪として連行される恐れがある評判に彼女は否定する。


「何を言いますか。喩えこの評価を否定する者がいようとも今の貴方のお姿を見れば誰もがその考えを変わること間違いない。喩え本物の皇族だとしても…………それだけの魅力が貴方にはあるのですよ……リビアン嬢。」


その言葉に彼女は僅かに動作を止める。別に照れ隠しでは無い。目の前の男は明確に彼女を脅している事に気付きいたのだ。


帝国商人達の皇女。純粋に女商人に対して最大の褒め言葉に聞こえるが、実際にそんな評判を野放しにすれば彼女の身が危ない。


皇族という帝国で最も高潔な一族がいるというのにたかが商人が、その高貴な皇族の名を騙るなど不敬罪以外の何者でもない。


それを知識階級である彼が察せない訳がない。だというのに、一向にその言葉を彼女に使い続け挙げ句の果てに、今の姿を見せれば『誰もが』その考えを変える、そう彼は言ったのだ。


この噂を彼が皇族関係者に告げ口すれば彼女の立場は大きく揺るぐだろう。例え自身がその評価を否定しようが不敬罪の適用は免れない。


明確にこの男はリビアン商長を脅している。彼女の事を『商長』ではなく、『嬢』で呼んでいるのもその一貫だろう。


彼がここに来た理由をある程度察した彼女は本題に切り込んだ。


「過分な評価、痛み入ります…………それで、本日はどういったご用件で?チェスターボード商会も多くの商団との取引があった筈、それらを置いて此方に入らした理由を知りたいです。」


「おや?今日は実に積極的ですな…………まぁ確かにお互いに多忙な身、私もそれに乗っかるとしましょうか。」


積極的なのはどっちだ。そうリビアン商長は口の中で転がす最中、チェスターボード商長は座り直した後に口を開いた。


「ずばり、ニホンとは一体どのような国ですかな?私の記憶では、この大陸周辺にそのような名前の国など存在しない筈ですが、とある時期を境に引っ切り無しに耳に入ります。

 そんな折に、そちらの商会でニホンの商会が大規模な取引をしたそうですね。噂に成る程の品々を貴方達に提供したと。」


一体この間にどれだけ稼いだんだ?そう聞きたそうにするチェスターボードだが、リビアン商長は答えを濁す。


「さて……私も詳しい事は把握していないのです。向こうも明確な返答を返してくれなかったものでして。」


「そうでしたか。まぁそれは置いといて、実は先日、ある噂を耳にしましてな。エラウノーラ商会がそのニホンの商会へ埠頭の一部使用権を売却したのだと。」


チェスターボードの言った言葉に思わず彼女は表情を張強らせた。その反応を見て彼は大きく頷いた。


「成る程成る程…………その様子を見る限りは事実のようですね。評議会議員に与えられた特権を他の………しかも他国の商会に売却するなど、一体何を対価として得たのですかな?実に気になります。」 


チェスターボードはそう言葉を投げ続けるが、彼女はそれを遮って弁明をする。


「誤解のないよう説明しますが、埠頭の使用権を一部、ニホンの商会へ渡したのは事実でありますが、売却はしていません。 

 あくまでも指定された時間帯でのみでの租借であります。」


ハンザブレックにある港湾の船着き場である埠頭には評議会権限を持つ議員に対して管理権と使用権が与えられていた。


つまりその議員が運営する商会の船を優先的に使える訳だ。更に都市に課せられる税も免除される特権、それを貸出とは言え他の商会に渡した彼女に対して、それを代償に何を得たのかを知りたいようだ。

 

リビアン商長の返した言葉にチェスターボードは怪しげな視線を向けるが、今度の彼女の表情からはその内側を読み取る事は出来なかった。


チェスターボードの疑いの目が全く薄まる様子が見えない事にリビアン商長は平常心を保ちつつニホンのヤバタという男との会話を思い返した。




2週間前…………


      ハンザブレック 港湾部

    エラウノーラ商会管轄の埠頭


日が暮れ、人と船の出入りが制限された時間帯。数多くの木造の貨物船が埠頭に停泊した場所でリビアン商長とアディスは日本の矢幡部長等と共に着ていた。


今回、彼女等がこの埠頭に来た理由は日本の貨物を載せた船が来ると話を聞き、リビアン商長はその貨物に載った荷物の確認をするためである。


裾の長いスカートの端を掴んで埠頭にある段差を超えていたところで矢幡部長の声がかかった。


「彼方から我が社の船が来ます。」


そう矢幡部長は大海原の方角へ指を指した。それにリビアン商長はその方角へと視線を向けて凝視する。


時間は完全な夜中、暗闇であるが日本の船から発光された光を彼女は見つけた。


その薄翠色の瞳から映ったのは水平線の先から1隻の船が此方に向かってくる光景であり、彼女は1つの違和感に気付いた。


「速いわね。」

 

彼女の知る船とは明らかに違う速度に彼女はそう呟いた。そこからもう暫く待つと彼女達が待つ埠頭に日本の船が横付けされる。聞いたことの無い船から発せられるエンジン音と共に。


「随分と大きいのね。 しかもこれは…………ひょっとして木造では無い? それにさっきから聞こえてくるこの音は一体…………」


この世界における一般的な木造輸送船の大きさは排水量が500トン~1000トンの間であり全長は50m前後が平均だ。


しかし今リビアン商長達に横付けされた日本の貨物船は排水量が3000トン級、全長が80mあり、日本から見れば小型貨物船に分類されるが、この世界においては大型の戦列艦をも越えた超大型船扱いだ。


そして彼女はこんな夜更けに船を停泊させた理由に理解した。このような巨大な船が近くに来ればどれだけの人が集まることか。


ニホン関連の製品は現在、非常に多くの人間から注目を浴びている。故に目の前のニホン人が滞在する屋敷の場所を突き止めて接触を図ろうとする者達が後を絶たないのだ。


そんな状況でこんな船が大勢の人の目に映れば更なる混乱が起きるだろう。


リビアン商長は本来、夜間の港湾への船の出入りは都市の条例で禁じられていたが評議会議員の権限を行使して特別に今夜、許可しておいて良かったと安堵する。


そんなリビアン商長の心境を他所に横付けされた船に乗り込んだ矢幡部長は彼女を呼んだ。


「リビアン商長、此方に今度の商品がございます。ご足労願えますか?」


矢幡部長の誘いに彼女は足を進ませようとするが、背後に控えていたアディスが小声で制止する。


「商長……危険です。」


アディスはここまで矢幡部長に付いてきていた小島財閥傘下の警備隊員と船の甲板に立っている警備隊員に視線を向けた。


その全員が彼が見たことのない装備をしており、その脅威を推し図れなかった。しかし彼女の護衛としてこれを見過ごす事は出来ない。


だがリビアン商長は安心させるように言った。


「問題ないわ。彼等が私達に危害を加えるつもりなら最初からそうしてるわよ。」


リビアン商長はそう言うと、日本側が設置した埠頭と船を繋ぐ簡易の繋ぎ板で船に乗り込み、アディスも警戒心を上げて乗り込んだ。


この世界では異例の大きさを持つ貨物船に立った彼女は船上の設備や壁に触れてこの船の特徴に驚く。


「やはり木では無いのね…………」


リビアン商長の反応に矢幡部長が答えた。


「特殊な製造法で金属で造られています。」


「金属?まさか金属が水に浮かぶの?貴方達はどうやってこの船を…………」


彼女の疑問は尽きないが、矢幡部長は言葉を濁すように話を反らした。


「説明すると長くなります。それよりも此方に前回お話した物がございます。」


矢幡部長はそう言うと船の後甲板へと向かった。リビアン商長もそれに続きながらもこの船全体を隅々と見渡す。


(ヤバタの言う通りに金属……鉄で造られているのかしら?いよいよ本格的にニホンが分からなくなってきたわ。)


この世界仕様に改良された小型貨物船、喫水線を従来よりも浅く設計し、貨物クレーンのない世界でも容易に荷卸が出来るように後甲板には貨物置場としていた。


そんな広い後甲板に置かれた大量の木箱。その内の1つの大型木箱の前に矢幡部長は止まった。


その前にリビアン商長も止まると矢幡部長はそこにいた部下に木箱を開けてその中身を彼女は確認した。


中身はこれ迄の商談で独占販売権の対象であった品々が入っていた。彼女はそこで視界に映る木箱の山を見回した。


これ全部?


リビアン商長は目を丸くした。普通の貨物船では決して積載不可能な量を前に立ち尽くすしか無かった。


噂が噂を呼び今や帝国中の商人達が押し寄せつつある現状、どの品物も価格は上昇する一方でありその末端価格は仕入れ価の数倍になる物すらあった。


もし仮にこれら全部を売り捌いた時、どれだけの大金が彼女の商会に入る事か、大商人である彼女ですらすぐには想像できなかった。


「我が社は今後定期的に此方の船で品物を提供させて頂きます…………が、このような船ですので、大勢の無用な人々が集まり過ぎてしまう恐れがあります。

 ですので、指定された日付のこの時間帯でのみ、こちらの埠頭の使用を許可が欲しいのですが如何でどうでしょうか?

 そうすれば輸送費を抑えられ、貴商会にはもう少し価格を下げられる余地が出ますが。」


そんなリビアン商長を見計らい、矢幡部長はそう提案した。それに思わず彼女も了承してしまう。


「え、えぇ、構わないわ………そうね、た、確かにこの船では余計な騒動を起こしてしまうものね…………」


度重なる珍事を前にして彼女に考える時間を与えなかった矢幡部長の勝ちである。




貨物船の荷物を確認した彼女はそのままアディスを連れて自身の館へと帰って行ったのを見送った矢幡部長。その表情は先ほどまでの営業スマイルは微塵も含まれていない冷淡なものであった。


矢幡部長は背後に護衛の警備員を引き連れて船内にある船倉へと入った。


「内部の荷物まで見られ無かったな。」


矢幡部長は道中で背後の警備員に話し掛けた。それに彼は応える。


「はい。これでしたら箱を偽造する必要はありませんでしたね。」


「全くだ。まぁ、それ程までに彼女から見てこの船は衝撃的だった訳だ。」


会話を終えたタイミングで目的の部屋へと到着した矢幡部長。


彼等が入った部屋には既に大勢の人が座って待機しており、矢幡部長を目にすると全員が立ち上がって敬礼した。


矢幡部長はそれにお辞儀して応えると、その中の1人が前に出て話し掛ける。


「お疲れ様です矢幡さん。上は問題ありませんでしたか?」


「問題なしです。これより計画通りにお願いします。横河さん…………いえ、隊長殿。」


矢幡部長より隊長と呼ばれた隊長はそれに笑うと背後の部下達に指示した。


「出動だ。荷物を持って船から出ろ。」


部下達はそれに応え、部屋の端に置いた箱を開けてその中身を各々が取り出した。


彼等が手にしたのは、アメリカ製のアサルト・ライフル M14カービンやドイツ製のサブ・マシンガン MP5に、自動拳銃のグロックシリーズやワルサーシリーズといった海外の傑作銃が勢揃いしていた。


更に別の箱をも取り出すと、その中身も防弾ヘルメットや防弾チョッキに防弾プレートを次々と取り出して部下達はそれを装備していった。


彼等は日本が誇る陸上自衛隊の精鋭部隊…………では無かった。


彼等の正体は小島財閥が傘下とした警備会社を民間軍事派遣会社にした戦闘員達であった。


日本最大の財閥の資金力を背景に、彼等は特殊部隊相当の装備を手に入れたのだ。


その装備をした彼等も日本転移に伴い、史実よりも大幅に増設された陸上自衛隊の師団を解散させて民間人となった元陸自隊員達を警備兵として雇用されたのである。


彼等の目的は来る日本政府によるニグルンド帝国侵攻作戦のために派遣されていた。彼等は陸自の正規部隊と呼応して作戦に従事するというのが、日本政府と財閥との協定であった。


大陸に到着した彼等は一旦、矢幡部長達が拠点とする邸宅で表向きは増員された警備員として活動する。


丁度大勢の大陸人がその邸宅に押し掛ける事態になっているため、表向きの理由としては疑われないだろう。


矢幡部長はそんな彼等を横目に背後にいた警備員に指示を出した。


「次の寄港ではエラウノーラ商会から仕入れた食料品を詰め込むためその準備を本国に念押ししといてくれ。」


「分かりました。」


返事を聞いた矢幡部長は足早に船を後にした。





現在に戻ってチェスターボードからの質問をそれとなく回避したリビアン商長は疑問を解消しないまま馬車に乗って帰宅する彼を見送っていた。


「…………行ったわね。」


「えぇ。行きました。」


アディスが応え、彼女は彼の方へと振り返った。


「ヤバタに伝言をお願い。やはり次の寄港には私の商会による立ち入り調査をさせて欲しいと。」


リビアン商長の指示にアディスは驚いたような表情をしたが、すぐに応えた。


「畏まりました…………ですが、宜しいのですか?」


ニホン側を刺激しないのか、そんな不安を抱いたアディスにリビアン商長は胸を手で抑えてその真意を言った。


「何かが変なのよ。あのニホンが余りにも謎に包まれ過ぎてる…………彼等は一体、何者なの?」


リビアン商長の絞るような呟きにアディスは答える事が出来なかった。





時は何日か経過してハンザブレック近郊



荷馬車の荷台で横になっていたアントラにシュメールの声がかかる。


「おい、アントラ。いい加減に起きろ。」


その声にアントラはガバリッと起き上がって御者席の隣に座っていたシュメールの背後へと近付く。


「遂に到着か!?」


そんなアントラに、御者席にいたオルブが機嫌良く応えた。


「そう焦るな。この丘を越えたら見えてくるぞ。」


そうオルブが言い終えたと同時に丘の頂上に着いた一向の目から念願のハンザブレックの城壁が見えた。


帝国有数の大都市に到着した彼等は歓声を上げ、アントラは意気揚々と言った。


「いよっしゃ!待ってろよニホン!俺達が来たぜ!」


そうアントラは荷馬車から飛び上がって宣言した。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れですm(_ _)m この世界の絹の価値がインフレしまくってやがる、、、、 もう少し下げてもいいじゃないですか? じゃないと売れなくて国内の絹産業が売れなくて先に死んでしまいそう、、、、 (…
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