第4話:秘密と、やっぱりな
カフェを出たあと、三人は川沿いへ戻ってきた。
夜風が肌をなで、遠くで車の音が途切れ途切れに聞こえる。
「じゃあ、私こっちだから」
朱美が手を振り、別の道へ歩いていく。
その背中が見えなくなると、静かな時間が訪れた。
エララと潤、二人だけの川沿い。
川面には街の灯りが映り、きらきらと揺れている。
「……潤」
呼ぶ声が、夜の空気に溶けた。
「ん?」
振り返った潤の目を、まっすぐに見つめる。
「わたし……この世界の人じゃない」
一瞬、潤はまばたきした。
だが次に浮かんだのは、驚きよりも、少しだけ納得したような笑み。
「やっぱりな」
「……やっぱり?」
「初めて会った時から思ってた。
なんかさ……現代の子とは違う雰囲気してたんだ」
川の音が、二人の沈黙を包む。
エララの胸の中にあった秘密は、今やっと形を持って、潤の胸へ届いた。
「……だからって、俺はエララを変なやつだとは思わない」
その言葉に、胸が熱くなる。
見上げた満月が、やけに近くに感じられた。
<あとがき>
第4話では、ついにエララが潤に「自分はこの世界の人間ではない」という秘密を打ち明けました。
これまで胸の奥に押し込めていた言葉を、初めて声にする――その瞬間の緊張や不安を、少しでも感じてもらえたら嬉しいです。
そして潤は、驚くどころか「やっぱりな」と微笑む。
受け止めてもらえた安心感と、ふたりだけが共有する秘密の親密さが、この先の関係を少しずつ変えていきます。
次回は、現代での生活に少しずつ馴染んでいくエララの日常。
しかしその中に、小さな波紋が広がり始めます――。