002. 斧が現れ、森が危ない
さて、今から何をすべきか?
あの出来事の後、巨大な木の下で意識が戻った。
数分前のことだ。
現在の状況をまとめると、
「今回はなぜか、すごく落ち着く……少し清々しい」
よし、まずやるべきことはこの粗末な“ベッド”から起き上がることだ。
基本的に、俺はさっきの大木の根っこの隙間で寝ていた。奇妙なことに、この異常なサイズの体が収まっていたんだ。
よく見ると、根の隙間の幅は約25センチほど。それ以上ではない。
つまり中型のゴリラ並みのデブな俺が入れるなんて、まったく現実的じゃない。
おかしい。
それに体が……なぜか軽い。少しスリムになった感じ。
体重120~150kgの男の体とは、とても言えない。
信じられないが、
これが現実だ。
それだけ。
「わあっ……!」
隠れ家から這い出した瞬間、息をのむ光景が広がっていた。
周りを見渡す。
初期スポーン地点は深い森の真ん中らしい、と結論付けた。
望んでいた場所じゃない。
今日は空が驚くほど晴れている。
多分今は昼11時前後だろう。
もちろんここに時計なんてない。
今が何時かなんて、頭の真上にある太陽の位置で推測するしかない。
この事実を受け、
俺は反射的に深く息を吸い、妙に熱心に吐き出した。
ついでに、変な体勢で寝たために凝った筋肉を伸ばしてみる。
だがこの健康ルーティンを数分やっていると──突然、崖らしきものが視界に入った?
そこまでわずか五歩ほどの距離だ。
このスポーン地点が高台なのかどうか、自問したがわからなかった。
「まあ、とりあえずいいか」
最初から気になっていたものの方が大事だからだ。
それは巾着袋ひとつ。
大きすぎず小さすぎず。中くらいの麻袋に包まれた物体といった感じ。
それを開けてみると、
ん?
中には変な物がたくさん入っていた。一瞬で思考が混乱したが、最終的に結論が出た:『どうやらこれらはかなり役に立ちそうだ』
だから中身をひとつずつ取り出し、何があるか確認した。
最初に見つけたものは──レンズ??
コンタクトレンズだ。
これ、間違えなければ、茶色や黒つまらない瞳色を変えるためにコスプレイヤーがよく使うアレだ。
深く考えもせず、
反射的に装着していた。
その結果は完全に予想外。
常識外れだった。
「ええっ!? ……植物ラベル?」
いや、足元をのんびり歩いているアリさえも……
頭の上にラベルが表示されている。
どう説明すればいいか、
このレンズは自動的にスキャンして名称・説明などを表示する機能らしい。
要するにプロフィール表示機能だ。
今見えているのは:
【名前:ロビー
年齢:28日
コロニー:A
役職:ナスターポリネ運搬係
ランク:C
スローガン:働けー!女王様のためだー!】
だな。
それは食料を運んでるアリ1匹のプロファイルだ!!
この滑稽さに数秒間、くすりと笑うのを抑えられなかった。
だが最終的に、これを装着し続けることに決めた。二度と外すつもりはない。
どうあれ、このアイテムは生存に不可欠な要素だ。404 。
次はあの袋の中身をまた調べる番だ。
時間は有限。
無駄にできない。
中からサバイバル用の服一式を見つけた。
ゴニ袋みたいな茶色のローブ、普通の白シャツ、茶色のズボン、
それにベルト付きで──ズボンにしっかり固定された小さなダガーがついている。
ブーツも一足入っていた。
ふむ……。
どう見てもRPGゲームのNPC服を思い出す。
ゲーマーじゃないけど、それなりに知識はある。深く没頭したわけじゃないが。
たとえるなら、牛飼いというか……田舎の畑仕事人の服に近い。
まあいいか。
変に考えすぎた。
とにかくすぐに着替えなきゃ。
もともと、最初からずっと病院の患者服を着ていたんだ。
たしか…救急室で最期を迎えたからな。
サンダルも履いていない。
忘れたわけじゃない。
あの時は履くのが禁止されてた。
「ん? なんだこれ……?」
着替え終わろうとした時、何かが落ちた。
手紙らしい。
気になって拾い上げ、素早く服の着替えを済ませると、真剣に読み始めた。
一枚目にはこう書かれている、
サナカタトオルさん、第二の人生エピソードをぜひ楽しんでください!!
ところで、あの麻袋に入っていたのは前の参加者の残り物です。
「何でもいいから役に立つものが欲しい」というリクエストにぴったりだったでしょう? 叶えましたよ。
それと頭の中の自動翻訳機能も承認済み。証拠に? 今この手紙を読めてますよね。
親切な受付嬢女神の文面に違いない。名前を間違えて書いてるですぐわかった。
だがなぜかクスッと笑ってしまった。
次のページ、
希望した『現代式農具』の能力も、いつでもどこでも使えます。
実はこういう説明をする権限は本来ないんです。
でもなぜか義務だと感じまして。
使い方:欲しいものを強く思い浮かべるだけ。例えば『ハンマー』と思えば、自動的に現れます。
へえ、そういうことか。
要するに取扱説明書だ。
まずは試してみよう。
映画で主人公が神器を召喚するシーンを参考にしてみる。まあイメージだけどな。
だから右手をできるだけ高く上げて——
目を閉じ。
息を吸い。
吐く!
そして斧が欲しいと強く念じた。
木材が必要だからだ。
つまり次の行動は──この深い森で道を作るため、いくつか木を伐採すること。
「え、ほんとに現れた!!」
その瞬間、中型の斧が手のひらにすっと現れた。
ドラマチックなエフェクトも何もない。全てが当たり前のように起こった。
変だ。
あるべきじゃないか?
たぶん今後はあのジェスチャー不要だろう。
はあ〜、初めてのことでちょっと恥ずかしいな。
実際のところ、女神の説明通り「思うだけで十分」だったのだ。
これで十分道具を召喚できる。
……よし次。
最後のページも読むのを忘れずに。
内臓、魂、骨、肉、全身がリメイク版になりました。『頑丈な体が欲しい』って言ってましたよね? それも叶えました。
仕様:一部改良済み。だから以前より若返った感じ。サイズも最新版。
さあ何を躊躇ってるの?
早くやりたいことをやりなさい! 我々神々が祝福しています─!
ふむる。
だから体の違和感を感じてたのか。これで説明がつく。まるで18~20歳の頃のように動きやすい。
木の根っこに入れた謎も解けた。
これにはもう言葉もない。心底感動した。
結局ただ神に感謝するしかない──願いを全て叶えてくれたことへの。
いや待て。
それより気になるのは、
あの受付の女神様、特定の名前とかないのか?せめて正式呼称が欲しい。
神話ではたいてい女神や神に固有の名前がある。
でもこいつの場合、一切教えてくれなかった。
うーん。
この件は後回しにするのが賢明だろう。
今のところ彼女をこう呼ぶのが一番しっくりくる:「親切な受付嬢女神」
全てを理解した後、俺は熱心に密林の開拓を始めた。この体が信じられないほど強くて、疲れを知らない男のようだ。
普段ならやりすぎで出る腰痛も全くない。
例えて言うなら、全力で木を切り倒しても、ただひたすら切り続けたい衝動しか感じなかった。
これは奇跡だ。
それ以上に、使えそうな材料も探さなきゃな。