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プロローグ

 冷たい雨が倉庫の屋根を叩き、滴る水滴が作業エリアのコンクリート床に小さな波紋を広げていた。

 物流現場を統括する山田拓也は、オフィスの窓越しにその光景を眺めながら、深い思案に沈んでいた。

 雨音に混じって聞こえるフォークリフトの音と作業員たちの掛け声は、この倉庫が日々の生活を支える重要な拠点であることを改めて感じさせた。


「この状況をどう打破するべきか…」


 山田はデスクに広げた管理表に目を落とし、記された数字とメモに目を走らせた。

 繁忙期の到来とともに浮き彫りになったのは、人員不足と効率性の低下という二重の課題だった。


 即戦力を求めてアルバイトの拡充に力を入れるべきか、それとも長期的な視点で正社員を育成して安定性を重視するべきか——どちらの選択肢も一長一短があり、決断を先延ばしにする余裕はなかった。


 窓の外では、雨に濡れながらも黙々と働く作業員たちの姿があった。

 フォークリフトが規則正しく荷物を運び、トラックが順に荷下ろしを行う光景は、一見するとスムーズに見えた。

 しかし、その裏には効率化が急務となる現場の現実が隠されていた。


 山田の脳裏には、田村直也の姿が鮮明に浮かんだ。

 彼の迅速な作業と的確な判断は、現場の士気を高め、生産性を劇的に向上させている。


 一方で、正社員の佐々木健一の姿もまた、山田を悩ませていた。

 彼は正規雇用者の正社員のため、会社の指示には文句も言わず従い、会社側としては無理を言いやすく、長時間残業も行ってくれるが、作業効率性の低さと指示待ちの傾向が課題となっていた。


「田村のような人材を増やせれば…でも、佐々木のように文句も言わずに残業を行ってくれる人材も必要とも感じる。」


 山田は椅子の背もたれに深く寄りかかり、疲れた目を閉じた。

 雨音が一層強まり、彼の考えを遮るかのように響いていた。

 その音に耳を傾けながら、山田は自分が下すべき決断の重さを改めて感じた。


 この物流施設を効率的かつ安定的に運営するには、田村と佐々木のような人材のバランスを取ることが不可欠だった。

 しかし、限られた予算と時間の中でその最適解を見つけるのは容易ではない。


 山田は深く息を吸い込み、再び管理表に目を落とし、彼は翌日の計画を練り始めた。


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