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陰キャ小説家と陽キャ探偵の宝石事件簿  作者: 卯月 絢華
File 02:紫水晶(アメシスト)
12/17

Break 01 報い

「――どうして、私から智くんを奪ったの?」

 そんな事言われても、別に私が智也くんを奪ったわけじゃない。あなたは勝手に智也くんに惚れていて、勝手に智也くんに絶望しただけなのに。

 それでも、友人は話を続ける。

「私は智くんのことがずっと好きで、仕事でも良い関係になっていた。でも、突然振られた。私は振られた理由が分からなかったけれども、この間――偶然、難波(なんば)であなたと智くんが手を繋いで歩いているところを見てしまった。私はショックで言葉が出なくて、そのまま道頓堀で独り泣いていた」

 ――それがどうしたの? 恋愛する相手を選ぶのって、自由じゃん。私の好きにさせてよ。

 そもそも、この女子会を計画しようと思ったのはあなたの方じゃないの。文句を言う筋合いはない。

 グラスに、赤ワインが注がれている。――確か、「智也くんと結婚した時に飲もう」と思って買ったワインだったかな。

 1998年産のボルドーで、価格は100万円。

 目利きのワインセラーから買ったモノだから、相当美味しいモノなのだろう。

 でも、そのワインは友人の手によって栓が開けられてしまった。

「――これが、智くんの血なの?」

 あなた、何を言ってるの? そんな訳ないじゃん。

「これを飲めば、私は智くんと一つになれる」

 ――絶対違うと思う。

「でも、あなたには汚れた血を飲ませるしかない」

 汚れた血? ますます言ってることが分からない。とりあえず、私も友人が注いでくれたワインを飲んだ。

 ワインというモノはアルコールだから、飲んだら自然と脈拍が早くなっていく。でも、脈拍の早くなるスピードが――おかしい。

 ――あなた、ワインの中に何を入れたのよ?

「――ふふふ、あははははは!」

 こんなの、友人じゃなくて――ただの悪魔だ。

 私は、悪魔の誘惑に嵌められてしまった!

 そして、悪魔の誘惑に嵌められた結果、私は――意識を失った。


***


 ――これで、私は智くんと一つになった。

 でも、何かが足りない。

 一体、何が足りないのだろうか?

 そう思った私は、ホテルの一室を後にして、箕面にある智くんの自宅へと向かうことにした。

 そうだ、部屋から出る前にこのアメシストを置いておかないと。

 アメシストは昔から「酔い止めの効果がある」って聞いていたけど、更に遡れば――ギリシャ神話で「酒の神が女性を美しい石に変えた」という逸話のもとになった宝石としても知られている。

 当然、美しい石になった女性は死んでいる。つまり、水浦阿佐美という女性はこの時点で――死んだも同然だ。これからは、私があなたを支配してあげる。


 ――これは、私から智くんを奪った報いだ。

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