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陰キャ小説家と陽キャ探偵の宝石事件簿  作者: 卯月 絢華
File 01:柘榴石(ガーネット)
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フラッシュバック

K談社さん、本当にすみませんでした……。

 ――私は、とんでもないモノをナチスの軍部から託されてしまったかもしれない。

 確かに、人を簡単に殺そうと思ったらこの手の兵器が手っ取り早く殺せる。それは確かだ。しかし、なぜナチスの軍部は私のような日本人に対してこういう代物を託したのだろうか? それが疑問だった。

 確かに「日独伊三国同盟」が結ばれている以上、我が国はナチスドイツとイタリアの3国間で軍事的な提携を行っている。それでも、ナチスの軍部は「この液体の扱いは慎重に行ってくれ」との一点張りだった。

 その液体は――無色透明で無味無臭。見た目だけだと完全に「水」である。でも、それが「毒」であることは壜に貼られた骸骨の刻印からも明らかだった。

 そういえば、最近広島と長崎で敵国が「原子爆弾」という未知の殺戮兵器を投下したと聞いた。その殺戮兵器は都市1つを壊滅させる程の威力があるらしく、情報筋の話によると――広島の惨状は悍ましいモノらしい。

 果たして、この液体は「原子爆弾」に対抗できるのだろうか? いや、どうあがいても対抗は出来ない。私にできることといえば――この液体を部屋中に充満させて、自らの命を絶つことである。


***


 ――8月が来る度に、私は父親からこの話を聞かされていた。それはいわゆる「平和学習」なんだろうけど、毎年同じような話をされると、耳にタコができそうだ。

 それにしても、どうして人間は争うのだろうか? 「自分の方が優れている」という理由で争い、その争いはやがて「殺し合い」になってしまう。それって、考えただけでも残酷だ。

 広島と長崎に投下された原子爆弾は、その小さな見た目からは考えられないぐらいの威力で街1つを消滅させた。

 当然、生きている人間は高熱の放射線で焼かれて溶けてしまう。私は広島への修学旅行でその惨状を目の当たりにして、人々だったモノの蝋人形は夢にまで出てきた。それぐらいのトラウマになっているのだ。

 そういうトラウマを抱えつつも、私は少し前に「アメリカにおける原子爆弾の開発者」の映画を映画館で見た。その映画はアメリカ映画の賞レースで大きな賞を獲ったと聞いたが、所詮は愛国心から来るモノであると思っていた。とはいえ、監督はそういう意思の元でメガホンを取った訳じゃないんだろうけど。

 当然、殺し合いを解決する最終手段は「核兵器」なのだろう。よく「核の抑止力(よくしりょく)」なんて言葉を目にするが、アメリカの大統領はその気になれば敵国に対して原子爆弾のスイッチを押下するのかもしれない。一応、現状の日本は「アメリカの属国」に等しい状態なので、多分――原子爆弾を落とされることはないのだろう。でも、仮に何かの手違いで日本に対して原子爆弾が落とされたらどうなるのだろうか? あまり考えたくはないけど、今の戦乱の世の中だと――考えざるを得ない。

 ところで、私の祖父が(のこ)したモノ――毒と聞いた。これはなんだろうか? やはり、人を殺すための道具なのだろうか?

 そして、この赤い石は――毒の解毒剤(げどくざい)なのだろうか? 私は、興味本位で2つの物質について調べることにした。

 あれ? 私の名前が書かれている。もしかして、私は知らず知らずのうちに人体実験をさせられていたのだろうか? そう思うと、私は――この家に対して懐疑的になってしまった。


 ――鏡には、自分の嘲笑う顔が浮かんでいた。

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