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第42話 怖そうな人たち

 逆立ちをしていた人が普通の姿勢に戻るとみんなお笑い芸人のような服装になっていた。こうしてみると、おそろいの服を着ていることを考えるにこの人たちの制服がこれなのかと思ってしまった。ちょっとだけ、気の毒に感じていた。


「こんな格好で失礼します。以前立ち寄った逆立ちをして過ごさないと死ぬ星に環境が似ていたので取り乱していましたが、この星は普通にしているだけじゃ殺されることが無いというイザーさんの教えを思い出して事なきを得ました。お姉さんから隊長の匂いがしているんですけど、それはどうしてなのか俺たちにもわかるように説明してもらっていいですか?」


 見るからに怪しい集団に絡まれて絶望を感じていた工藤珠希だが、途中でイザーの名前を聞いてこの人たちは自分と全く無関係ではないのだという事を知った。

 ただ、こんな怪しい集団に地球の事を教えてほしくないと思ってもいた。


「ごめんなさい。ボクはあなた達の事を何も知らないのですごく怖いって思ってます。でも、イザーちゃんの事を知っているという事は悪い人たちではないという事ですよね?」

「良い悪いはそちらが決めてくれればいいことなんじゃないかな。俺たちはお嬢さんに良い人だと思われようが悪い人だと思われようがどうでもいいって思ってるんだよ。そんな事よりも、俺たちの質問に答えてもらっていいかな。どうしてお嬢さんから俺たちの隊長が出しているメスの匂いを感じるんですかね?」


 自分の質問を完全に無視された上に自分よりも頭二つ分くらい身長が高い大男に凄まれた工藤珠希は今度こそ泣いてしまうのではないかと思ってしまった。何とか涙はこぼさないようにこらえることが出来たのだけれど、もう一言でも怖いことを言われてしまったら周りの事などお構いなしに何もかもを漏らしてしまうのではないかと思ってしまっていた。


「すいません。こいつって長時間の移動でストレスが溜まって乱暴なことを言っちゃってますよね。初対面の人に対して失礼な口をきいてしまったんで、こいつはいったんこちらで教育しなおしておきますから。お嬢さんはあまり気にしないでくださいね。本当はこんな奴じゃないんですけど、ずっと宇宙船に乗っていたストレスでおかしくなっちゃったのかな」


 優しそうな人もいるにはいるのだが、どの人も目だけは獲物を狙う恐ろしい肉食獣のようにしか見えなかった。今まで何度か見てきた恐ろしい生き物の眼光に似たものを感じるのだけれど、この人たちは鋭い目つきをしていても実は優しい人たちなのではないだろうかと言う考えも少しだけは感じていた。


「イザーさんに見せていただいた写真にお嬢さんの姿も写っていたと思うのですが、もしかしてお嬢さんは工藤珠希さんだったりしますか?」


「はい、ボクは工藤珠希ですけど。それがどうかしたんですか?」


 周りに集まってきていた集団は工藤珠希に会えたという喜びを爆発させてしまって、耳を塞いでもうるさいと感じてしまうような声量でそれぞれ思いのたけを叫び続けていた。

 自分の名前にいったいどんな意味があってこんなに叫んでいるのか考えてみたけれど、当然その答えにたどり着くことは出来なかった。

 こうして自分の名前を連呼される事態に陥ってしまった工藤珠希は迷惑に感じている部分と自分の名前を呼んで褒めたたえてくれているという事実の板挟みにあって複雑な気持ちになっていた。


「工藤珠希さんって思って体よりも小柄な方だったんですね。イザーさんの話を聞いていると工藤珠希さんって女を惑わせてメスにさせる力があるって聞いてるんですけど、隊長も工藤珠希さんの魅力で惚れちゃったりしてるんですか?」

「それは無いんじゃないかな。他の人みたいにアピールとかしてくることも無いからね。そんな事よりも、ボクが女を惑わせてメスにさせるってのはどういう事なんだろう?」

「俺たちはイザーさんに聞いただけなので本当のところどうなってるのかはわかりませんが、イザーさんの話では工藤珠希さんの出しているフェロモンはどんな女でも耐えることが出来なくてメスになっちゃうって言ってましたね」

「自分の知らないところでそういう事になってるのってちょっと怖いかも。それに、ボクは誰かを狙ってメスにさせるとか思った事もないけどね。そんなことが出来るんだったら、ボクはこの世界から戦争を無くすことが出来ると思うな」


「戦争を止めることは出来ると思いますよ。イザーさんのお話では、工藤珠希さんが一声かけると世界中の女が活躍する雄姿を見せようと躍起になって行動してしまうそうです。イザーさんはそういうのに耐性があるから大丈夫だけど、長い時間一緒にいたら工藤珠希さんの魅力でどうにかなっちゃうって言ってました」


 これ以上深堀するのはやめておいた方がいいのかもしれない。そう考えた工藤珠希は自分の事ではなく隊長の話に変えてもらう事にしようと張り切っていた。

 隊長はおそらくクリームパイだと思うのだが、あの小さな体でこの大きな大人たちを制御できているのか心配になってきた。ところどころ自由に行動しているものもいるけれど、基本的には先頭に立っている男の言うことを聞いているという感じなのかもしれない。


「あなたたちが探している隊長ってクリームパイちゃんのことかな?」

「そうですけど、隊長の事をクリームパイちゃんって呼んでるんですか?」

「うん、クラスのみんなもそう呼んでるよ」

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