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第14話 シンカイの王

 ツーショットの写真を撮った後にフードチケットを二千円分買った二人は屋台を見て回ることにした。


「珠希ちゃんの好きなモノってあるかな?」

「どうだろう。ボクはお祭りって何回かしか行ったことが無いから詳しくないんだけど、フランクフルトとかたこ焼きとか好きかも。うまなちゃんは好きなものあるのかな?」

「私もたこ焼きとフランクフルト好きだよ。他には焼きそばとかも好きかも」

「良いね。二千円だとちょうど四つ買えるみたいだよ。飲み物は自販機でもいいよね?」

「それでいいと思うよ。じゃあ、私はたこ焼きと焼きそば買ってくるから珠希ちゃんはフランクフルトをお願いね」

「わかった。でも、フランクフルトだけだと悪いから飲み物も買っておくね。お茶でいいかな?」

「うん、お茶でお願いします」


 デートなのだから効率を求めるのではなく一緒に並べばよかった。栗宮院うまながそう思ったのはたこ焼きを買って焼きそばの待機列に並んでいる時だった。

 少しでも一緒にいる時間を大切にしたいとも思ったけれど、こうして相手の事を考える時間が出来たのも良いものだと思い始めていた。

 そんなタイミングで知らない人に話しかけられたので栗宮院うまなは驚いてしまった。話しかけてきた人を見ても誰だかわからなかった。


「すいません。零楼館高校の栗宮院うまなさんですよね?」

「そうですけど。何か?」

「あ、すいません。私達イザーさんからうまなさんの事を色々と聞いていたんですよ。写真でしか見たことが無かったうまなさんが目の前にいたのでつい話しかけてしまったんです。ご迷惑でしたか?」

「別に迷惑とかはないけど。あなたたちはイザーちゃんの友達って事?」

「友達とは違うと思います。私たちはイザーさんに時々相談に乗ってもらったりしてるんですよ。実は、ちょっと困っていることがあってイザーさんに話を聞いてもらいたいって思ってたんですけど、急に連絡が取れなくなってしまったみたいでどうしようかなって思ってたんです。でも、今になって思えばそんなに急ぐようなことでもなかったかなって思ってたりもするんですよ」

「そうなんだ。ちなみに、その困ってるのってどんな話なの?」


「どこにでもある話だと思うんですけど、シンカイの王ってやつが私たちの国を乗っ取ろうとして攻めてきてるんです。今のところはそこまで大きな被害もなくすんでるんですけど、これ以上何か被害が出るようだったらイザーさんに相談してみようかなって思ってたんです」

「それは大変だね。その深海の王ってのがどれくらい強い相手なのかわからないんであれだけど、イザーちゃんが来るまでの間で良かったら私が場を繋いであげようか?」

「とても助かります。今すぐにでもってわけでもないので、うまなさんはそのまま彼女さんとデートを楽しんでくださいね」


「ちょっと待ってもらっていいかな。私の隣にいた珠希ちゃんが私の彼女だってどうして思ったのかな?」

「どうしてと言われましても。先ほどからうまなさんの事が気になってて見ていたんですけど、隣にいた女性の事を凄く愛おしく見ていたのでそう思ったんです。相手の型の表情は見えなかってのでアレですけど、船の前で写真を撮ってる時はお二人ともすごくいい笑顔をしていましたよ」

「そうだね。お互いの事を思いあってるからこそ、そう言った表情に見えてしまったんだろうね。それを隠すことが出来なくてごめんよ」

「いえ、うまなさんは謝らないでください。私たちはうまなさんと彼女さんのそんな姿を見て羨ましいなって思いましたよ」

「羨ましいって、あなたたちも付き合ってるんじゃないの?」

「いえいえいえ、私たちはそんなんじゃないんですよ」

「そうですそうです。私たちはお二人と違ってただのご近所さんなだけです。この世界に来ることになったのだって、二人ともイザーさんと連絡が取れるってだけの理由ですから。それ以上でもそれ以下でもないんです」


 自分で解決出来るのであれば解決しておいた方がいいのだろう。イザーが帰ってきて疲れているところにお願いするのも申し訳ない。そんな事を思っていた栗宮院うまなは困っている二人に救いの手を差し伸べることにした。


「そんなに困っているんだったら私と何人かの戦える子を連れて行くよ。深海の王ってのがどれくらい強いのかいまいちよくわからないんだけど、海に近付かないようにしておけばいいって話だもんね?

「どうして海に近付かないようにするんですか?」

「だって、深海の王って事は海を統べる王って事なんだよね?」

「えっと、そっちの深海ではなくて、神々が暮らす世界の方の神界です」

「あ、神様の世界で神界ね。そっかそっか、そっちの方だったか。で、あなたたちの国ってどこにあるの?」

「この星とは異なる別の星にあるんですけど、私たちの宇宙船でしたら一週間ほどで突くと思いますよ。敵に出会わなければですけど」


「一週間か。それはちょっと困ったな。イザーちゃんがいれば一瞬でワープできるんだろうけど、いくらイザーちゃんが強いと言ったって神様の中の王様を倒すとか大丈夫なのかな?」

「私たちも神様に抵抗しない方がいいのではないかと思ってたんですけど、さすがに全員殺されるのを待つだけというのはおかしいんじゃないかって話になってきてるんです。うまなさんが私たちの立場だったら黙って殺されるのを待ちますか?」

「いや、待たないでしょ。そんな状況なら一刻を争うんじゃないの?」

「まあ、早く助けに行くに越した事は無いですけど、イザーさんがいないのでは急ぎようも無いですからね。待っているみんなには悪いと思いますけど、私たちはもう少しこの世界を楽しんでることにします。うまなさんも彼女さんとデートを楽しんでくださいね」


 工藤珠希とのデートを楽しみたいという思いは間違いなくあるのだが、本当に楽しんでいいのかという迷いが出てしまっていた。

 話しかけてきた二人の国が神様に襲われているのだから今すぐにでも助けに行くべきなのではないかと考えてしまう。

 あの二人が屋台を楽しんでいるように見えるのも、きっとカラ元気なのだろう。


 工藤珠希とのデートも楽しみたいのだけれど、神様と戦う事も楽しみたいと思ってしまっていた栗宮院うまなであった。

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