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百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話  作者: 釧路太郎


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第12話 久しぶりの通話

 イザーが異世界に旅立って日の夜、いつものように工藤太郎の様子をスマホで確認しようとしたのだけれど、そのタイミングで電話がかかってきた。登録されている番号であれば名前が表示されるはずだし、登録されていない番号であればそのまま番号が表示されると思われるのだが、スマホの画面に表示されている番号は見たことのない記号と一度も使ったことのない絵文字が物凄い速さで入れ替わっていた。

 このまま出た方がいいのか数秒悩んでしまった工藤珠希ではあったが、何となく出た方がいいような気がして深呼吸をしながら通話してみることにしたのだ。


「あ、珠希ちゃん? 俺だけど、今大丈夫?」


 聞こえてきた声は何度も聞いたことがある工藤太郎の声だった。工藤太郎のスマホは今手元にあるのでどうして工藤太郎の声が聞こえるのか工藤珠希にはわからなかったが、久しぶりに聞いた工藤太郎の声は元気そうで安心することが出来た。

 異世界に旅立ってから画面越しにしか見ていなかった工藤太郎とこうして話が出来るという事に喜びをかみしめるだけで、どうして工藤太郎と通話することが出来ているのかという疑問はこの際どうでもいいと思えるほどだった。


「大丈夫だよ。太郎は大丈夫なの?」

「俺も大丈夫さ。今日の昼にイザーちゃんがこっちに来てくれたんだけど、珠希ちゃんが心配してたから電話してあげなって言ってくれてこうして電話してるんだよ。異世界からでも繋がるとは思ってなかったからスマホ持ってこなかったんだけど、こうして連絡をとれるなら持ってくればよかったよね。手回し式の充電器も買ったとこだったから本当に失敗したよ」

「イザーちゃんと無事に合流できたんだね。もう少し時間がかかるかもって思ってたよ。でも、こうして通話出来るなんて知らなかったな。スマホって凄いんだね」


「あ、ちょっと待って、イザーちゃんが呼んでるからこのままにしてて」


 異世界にも電波が届いてしまうのはすごい技術だと思った工藤珠希ではあったが、工藤太郎がイザーに呼ばれてそちらに行ってしまったのは少し気になってしまう。助けに来てくれた人の頼みを聞くのは当然だとは思うけれど、こうして久しぶりに話をすることが出来ている自分を放置するのは良くないんじゃないかと心の中で思っていた。


「なんかね、イザーちゃんの話だと俺が自分のスマホを持ってきてたとしても圏外になって使えないんだってさ。イザーちゃんの場合は特殊な加工をしてる上にこっちの世界とそっちの世界の電波を繋げてるから通話出来てるんだって。イザーちゃんが近くにいる時は気にせずに使えるみたいなんだけど、メールとかメッセージは文字化けしちゃうから通話しか出来ないって事みたいだよ」

「よくわからないけど、イザーちゃんって本当に凄い人なんだね。凄い人って言うか、凄いサキュバスだね」

「まったくだよ。俺がこっちに来てどれくらいの時間が経ったのかわかってないんだけど、今まで魔王の痕跡すら見つけることが出来なかったのにさ、イザーちゃんと合流してから一時間も経たないうちに魔王城と魔王殿と魔王塔を完全制覇することが出来たんだよ。一応俺がとどめを刺したって形になってるんだけど、最後の一撃以外は全部イザーちゃんが上手いことやってくれたんだよね。魔王を三体倒すって課題は無事に達成出来たんだけど、全く達成したって実感がないんだよね。それなのにさ、この国の王様から祝賀会を開くって言われてしばらく帰れそうにないんだよ」

「凄いね。イザーちゃんが一人協力するだけでそんなに劇的に変化するもんなんだね」


 イザーが凄いというのは工藤珠希も認めている。

 イザーだけではなく栗宮院うまなだって凄いし、栗鳥院柘榴も鈴木愛華もみんな凄いのだ。それは紛れもない事実なのだけれど、そんなわかりきっていることを工藤太郎の口からききたくないと思ってしまうのは工藤珠希のわがままなのだろうか。


「それはそうと、イザーちゃんから聞いたんだけど、珠希ちゃんが海でデートする相手がうまなちゃんに決まったって本当なの?」

「うん、サキュバスの人達が話し合いでそう決めたらしいんだ。本当に話し合いで決めたのかわからないけど、うまなちゃんと海でデートすることに決まったんだよ」

「海でデートいいな。俺も海に行きたいって思ってるんだけど、そっちに戻れるのが来週になりそうだから間に合わないんだよね」

「間に合わないって、何かあるの?」

「うん、ちょうどいまそっちの港に戦前に活躍した駆逐艦の復刻したやつがやってきてるでしょ? それを見に行きたいなって思ってたんだよね。滅多に見られるものじゃないから直接見たかったんだけど、今はこっちにいて見に行けないから諦めるしかないんだよね」


「それだったらさ、ボクが海に行ったときに写真とか動画とか撮っといてあげるよ。そうすれば太郎も好きな時に見返すことが出来るでしょ?」

「本当に? ありがとう。めっちゃ嬉しいよ。それだったらさ、俺のスマホの方が珠希ちゃんのスマホよりもカメラの性能がいいと思うんでそっちを使ってもらってもいいかな?」

「ボクのスマホって結構古いから太郎のスマホの方が綺麗に撮れそうだもんね。うん、わかったよ。太郎のスマホの充電を満タンにして撮ってくるね」

「お願いします。ちなみにロック解除の手順なんだけど」

「あ、それはわかってるから大丈夫」

「え、わかって……る?」


 久しぶりに工藤太郎と話すことが出来たからなのか工藤珠希は眠りにつくまでずっと上機嫌であった。普段は出ない鼻歌も機嫌の良さを伝えるのに十分であった。

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