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感染症

テン

「おいしー」

「……よく食うな。腹壊すなよ」

「はあー、小言を言うイケメンさえ居なければもっと美味しいのに」

 パクりと手に持つ肉を齧る。ジュっと音がして肉汁が飛ぶ。バンズのようなものと野菜のようなもので肉のようなものを挟むフードを私は犬のようにがっついた。のような、と表現したのは本当に、のような、ものだから。

 この時代には天然の肉や野菜は超高額らしくて、遠くに見える超超超高層ビル群に住む天上人しか食べられないみたい。だけどここスラムの人たちは逞しい。食べられないなら作れば良い精神で、類似品を編み出したのだ。

「俺はその味に飽きているからな……。本当ならそんなモノをカノンの体に摂取させたくはないんだが」

「この体を維持するためには仕方ないでしょ。よく分からないんだけど、この世界では技術は発展してるけど人間の体自体は100年前と変わってないんでしょ?食べなきゃ死ぬ。当たり前のことが変わってなくて助かるわ。ご飯は食べたいもん」

 体は変わっていない。とはいうものの人体に機械を埋め込むのは進んだみたい。隣で嫌そうな顔してるテンでさえ服で見えない場所は「義体化」を行っているらしい。見たくはないけど。更にスラム街を歩けば至る所に義体化した人たちがいた。顔半分や目、足や腕。それでもテンが言うには安物の部品を使っているようで。

「感染症で死ぬやつは大勢いるな」

とのこと。

「そんなリスク背負ってまでなんでみんな義体化っていうことをするの?」

「変なこと言う奴だな?当たり前だからだろ」

「いやいやいや。だって感染症おこす確率高いんでしょ、このスラムでは!」

「……この世界は義体化をして初めて適応できるんだ。だから生まれて瞬間に義体化の準備をしなきゃいけない。このスラムでも同じことだ。だから安物でもみんなそうしてきた。最近は安物でも技術発展はしてきたからな。病院行けばなんとかなる。」

「でもこのカノンちゃんはまったく生身じゃん」

「……カノンは特別だからな」

「なにそれ?」超能力でも使えるの?」

「カノンは生まれた時から特別な存在だ。その体を傷つけることは許されない」

「……あんたとカノンって恋人同士なの?」

「そんなわけないだろう」

「じゃあなに?」

「……さっき言っただろ。生まれた時から一緒だったんだ……」

 ほーう!ようやく合点がいく。この男、このカノンちゃんに小さい頃から惚れていたのだな?だからこんなに気持ち悪いくらい執着してるのか。カノンカノンカノン!こんな顔だけはイケメン野郎に惚れられるって羨ましいぞ、この野郎!


「カノンちゃんが攫われる理由はわかるの?おっと、お前が攫ったんだろうはなし!私は違うって言ってるからね!!」

「……ハッキリとした理由は分からない。ただカノンはこのスラムを嫌がっていたってことくらいだ。だからそこをつけ込まれたんだろう。脳が取り替えられる技術者を有してる金持ちの奴が、カノンの体を欲しがってもおかしくない。そういうブローカーもいるからな」

 そう言うテンはギリギリと拳を握る。よっぽどこのカノンが大切なのね。でも私だって元に戻りたいのだ。方法は知らないけど。

「スラムの中に、金持ちに綺麗な子を紹介するクズ野郎がいるってこと?」

「いる。俺が生まれる20年前くらいから、スラムから人が消える事件が起き始めたらしい。………………まずはそこから叩くか…………」

 勝手に納得してウンウンと唸るテンを尻目に、袋から飛び出したハンバーガーのようなものを私はバクバクと食べるのであった。

 

 

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