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ミリーのなんでも屋さん  作者: スルー
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 「ミリーのなんでも屋さん」が開店してから少し経って値段の安さから適当な依頼で遊びに来る人が多かったりしていた。


「どっちがお姉ちゃんなのかしら?」

「私がそうですよ♪」

「リリーちゃんが妹ちゃんなのね」

 おばちゃんが買い物の荷物運びを頼みながら、分体とミリーの関係をきいていたり。


「レ、レンちゃんと一緒のお出かけを頼みたいのですけど…!」

「あら♪また来てくれたのね、お誘い嬉しいわ♪」

 先日、引っ越しを依頼したお客様はすっかり常連となり、いつも依頼としてテュンレイと遊んで、貢いでいたり。


「きょ、共有お願いします!」

「ふふ♪では・・ご依頼は」

『(共有…あぁ、可愛いよな…ドキドキする、柔らかそうな唇とか触ってみたい、それも頼めたり…なんて』

「私の唇を触る、ですね?」

「ちちちち、違います! ごめんなさい!!(本当にわかっちゃうんだ!)」

「それも受けられますけど?」

「え!? あ、え? いいの…? あ!えと…だ、大丈夫です…」

 その場で一番強く思ったことは真っ先に伝わるので美少女を目の前に「共有」を試して失敗する客も出ていたり(しっかり半額にはしてもらえる)。


 お客様は多くはないけど困らないくらいには来店してくれて、ダリボレとソルアトへゆっくり返済も出来るくらいに余裕のある暮らしになっていた。


・・・。

「いらっしゃいませ」

「この店の責任者を出して欲しい」

 来店してすぐにミリーへそう言ったのは50過ぎの男性だった。店に居た人も何だと注目していた。

「はい、私が「ミリーのなんでも屋さん」のミリーです」

 受付に居たミリーが男性の前に出ていくとものすごく驚いたようにミリーの上から下を何度も見てからため息ついた。

「こんな小娘だったとはな…、いや失礼」

 謝ってはいるが始めから聞こえるように喋っているのは態度で明白である

「ミリー殿に問う、この店で扱う「ヒールポーション」なる物はどこの者に作らせている」

 こんな入口で話す内容でないのにここで言うのまだ小さき少女を舐めているのと不正に仕入れているだろうと知らしめようとしているからだ

「ヒールポーションは私の手作りですよ」

「なに!? …そんな、いや、まぁいい

 ならミリー殿、その製作法を教えて欲しいのだが?」

「お断りしますね」

「条件くらいは聞いて欲しい!

 わたしは行商をしていてね、あちらこちらの街を回っているんだ! だからそのヒールポーションをもっと広く売ることが出来るんだ! 分かるだろ?」

「はい、この街以外でももっと沢山売って利益を出せるのですよね?」

「その通り! しかし、定期的に仕入れするのは難しい… そこでどこでも売れるように製薬の仕方を教えてもらいたいのだ、もちろん製作法を教えてもらうのにお金は払う!

 ・・・そうだな、100000ダナでどうだろうか!」

 熱の入った言葉にミリーもテュンレイもウンザリしているのに気付かない。十万という大金を吊るしてすぐに食いつくだろうと悦に浸る姿は滑稽である。


 ・・・なので

「じゅ!十万ダナですか!」

 ミリーが乗ってきた姿を見せると男性は口元が緩み目を光らせた

「不満でしたら120000ダナ・・・いや、150000ダナで買い取らせてもらいますけど…」

「十五万って・・一本売って三十ダナのヒールポーションの利益何本分に・・♪」

 そんな利益で商売している馬鹿なのかと思う。もう決まりそうなミリーの言葉にニヤけるのが止まらないのである。

 そんな時に奥の受付の方から優雅に幼き少女が出てくる

「あらミリー、そのお話簡単に信じていいのかしら?」

「レンちゃん?」

「このお客様が行商人って本当かも分からないのよ?」

「あ、確かにそうですね?」

 せっかく決まりそうだったのに何言ってくれんだこのガキが!と憤る男性。そこで少女は何か思い付いたようにパンッと手の平で叩いた。

「アナタには本当のことしか話せないように催眠を施してもいいですか!」

「催眠?」

 ガキらしくバカバカしいと思い、自分は嘘は言ってないんだから万が一にかかっても大丈夫だと了承する

「ウフフ♪ いいですわ」

「もういいのか?」

「ハイ♪」

 一瞬、それも目を合わせたり触れたりも道具も無い。笑ってしまいそうだったがなんとか堪えた。

「そうですねー、ではあなたは街を回って商売をしている人ですか?」

「そうだ」

 答えるのに抵抗はない、嘘は言ってないが催眠にかかっていたとしたら何かしら障害が出るはずだと胸の内で催眠を施したと言ったガキを嘲る。

「では、あなたはヒールポーションをいくらで売るつもりですか?」

 この無知そうな店長からそんな質問が出てくるとはおもわずに驚いたが冷静に800ダナくらいにしようかなと答える

「にじゅ・・・な!」

「どうしたのですか?」

 急に思ったように喋れなくなり200000と言っちゃいそうになってあのガキを見てみたらニヤニヤしているでないか。まさか!

「いえ失礼した、材料集めにかかる費用を考慮して(ということにして)・・」

 具体的な金額を言わないように材料の集めやすさで売値が変わるということにしようとしたが口が変わってしまうのだ。

「かかる費用ということにして、なんですか?」

 続きを促される、やばいぞ! これだけの薬、素材の貴重さを売りに…なんて、あれこれ考えていたら口が勝手に動いてしまう

「貴族なんかに200000ダナで売りつけるつもり・・ではないです!」

「クフッ、アハハハハハ! おかしいわね? ミリーから買った値より一つ作って売った値が高いわよ?

 それなら最低でもその百倍は出すべきでないかしら?」

 むかつくガキだとこのままでは身が危ない事よりも怒りの方が圧倒的に上回った!

「あら? そんなおっかない顔をしてどうしたのかしら? 仕方ないわよね? 騙そうなんてするからよ、どうせ腕力は大したことないのだから諦めた方がいいわ♪」

 ここまで言われた男性の頭に冷静にいられるわけが無かった。このガキは馬鹿にしているがダテに危険な橋を渡り歩いているわけでなく、さすがにそれはやばいと一線を引いて我慢しているだけでそれなりに荒事には精通しているのだ。

 周りに人は青醒めて見ている、入口でやってなければみんな逃げて通報されているだろう

「黙っちゃってとんだ腑抜けなのね…、ガッカリだわ。 迷惑料払ってどっかいきなさい」

 プツッと何かがキれた!

 男性はいきなりテュンレイの胸ぐらを掴む! 悲鳴が上がるが関係ない

「アラ?乙女の胸を無断で触るなんて最低ね?」

「うるせい!このガキ」

 拳を振り上げて思いっきりその頬へと殴りつけた!

「ガァァッ!?」

 しかし予想外のことが起きた。殴った方の男性が苦痛の悲鳴を上げて、男の手から離された少女は何も無かったように「ふぅ」っと男性を見下ろし立っていたのだ。

 周りからテュンレイが何かやったのか?と見えない攻防を予測しているがミリーの常時付与している結界に阻まれただけである。

『ミリー大好きよ♡』

『うん、今どこ?』

『もうお店の前ね』

 扉が開くとダリボレと見知らぬ役人さんが入ってきて状況も確認せず役人さんの方が苦悶している男性を捕らえていった。

「お騒がせしました、お詫びに今居る方にヒールポーションを欲しい方は100ダナで販売いたします」

 三人だけだったが全員が依頼すると共にヒールポーションを買っていった。

 ダリボレは同席してしまったお客様にもすぐに対応した対応力に感心していた。 そして事の流れは分かっているが一応当人のミリーにも話を聞いて問題が無いことを確認した

「何か困ったことはあるだろうか?」

「だいじょーぶ!バッチリだよー♪

 みんないっぱい来てくれるからお金渡すねー、手続きとかお支払いありがとーだねー♪」

 明るく元気なキャラに変わって変化するキャラ(それが)楽しくていいなと感じていた。

「ん? 20000ダナ(こんなに)…?」

「おかげさまでねー♪」

 開店したばかりの店数日程度の利益でかと思った彼はもっと詳しくきいてみると自分たちのお金が一切入っていなかった!

 たしかにそれなら、あの評判、基本お金を使っていないで宿暮らしで無い・・なら可能、とも思いかけたがやはりあり得ないと二人を見る

「しっかり食事は摂れているのだろうか?」

 一番お金がかかるのは高い食費である、この街はとある理由により物価が高くなっている。言い方は悪いがお役人のような安定した高給料の人でもなければその日その日をやっていくような人で溢れかえっていたりする。

「ぼくたちねー、栄養とか要らないのー

 別に食べられるしすき焼きとか好きだけど食べないで平気! キャハハ♪」

 すきやき?とかは分からなかったけれど食べないでいいことには驚く、種的に違うと分かっていても心配なものは心配である

「・・・お店終わったら一緒に行かないだろうか?」

 気付けば自然と誘っていた

「んー? いいけどお客さんが来なかったらお金ないよー?」

 ミリーも心から心配されて断るような無粋はしない

「二人の分は俺が出す、っていうかこれは君たちのお金だから」

「あら?私もお二人のお邪魔いたしてもよろしいのかしら?」

 なぜ食べない二人を誘ったのにと考えてからその意味に気付き慌てる

「っ、これは二人を誘ったんだ!そういう・・」

「まぁまぁ!ミリーだけでなく私も狙われていたのですわね♪ 別によろしいですわ!ね、ミリー」

「うん!テュンレイ一番だけど、分体(いもーと)でよければ」

 「よろしく♪」とミリー(オリジナル)と同じ容姿で分かれた(つくられた)分体からダリボレに挨拶すると彼は照れながらも否定していたのであった。

 予想した通りというかその後来たお客様は少なかった。 お店は分体に任せて門へと移動する。


・・・。

 交代まで後少しのところで彼女たちがものすごく綺麗な格好でやってきてドキッとしてしまう。心なしかいつもより大人っぽい。

「ソルアトが来るからもうちょっと待っててくれ」

「はい…お待ちしておりますね♪」「お仕事頑張っていますわね♪」

 すぐ近くに来て気付く、背が僅かに高く視線が昼間よりも近い。

 この時間に来る者なんて少ないから彼女たちに近くにいても大丈夫と言っておく

「ウフフ、あなたのお側に居られて幸せですわ♡ ね?」

「そうですね♪」

 二人と付き合っている設定が続いていて恥ずかしくなってきた

「なんだ? そういう関係になったのか…?」

 門の中からは見えない横の道からひょっこり現れたのはソルアトだった。そっちから来ていたのは彼女たちには見えていたはず

「ソルアトさんこんばんは」「こんばんは」

「よっ!ここに来るなんて珍しいな、用事か?」

 否定したかったのにミリーも普通(・・)になっているし既に話が終わっていて出来なかった、ソルアトも冗談だったのだと後から気付く。

「いえ、これから三人でダリボレさんとデートするのですよ」

「でーとってなんだ?」

「好きな人と共に行動することです」

「おっ、やっぱりそういう関係になったのか!」

 話が戻ってきてニヤニヤされた! 揶揄う気満々で困る。

「でも残念だな、テュンレイちゃんはこいつみたいのが好みなのか」

 ソルアトにしては珍しく若干の落ち込みが見えた気がした

「ウフフ♪ もちろん好みはミリーですわ」

 ガシッとミリーの腕にしがみ付く彼女は素直で遠慮の無い言葉を紡ぐけれどどこか心を開いてくれず少し苦手かもしれない… ミリーは・・・好みであって人を比べるなんて最低だな!

「でも「共有」してあげてもいいわよ? ウフフ♪」

 その言葉は仕事の時と違って、心を無にして行うものでは無いと正しく彼に伝わったよう。

「・・・やってくれるの?」

「エエ♪アナタならいいわ」

「じゃあ、お願いするよ」

「分かったわ」

 自分じゃないけどドキドキする、下手したら関係すら壊してしまうのに彼をさらに尊敬してしまう。

 数秒間二人は目を閉じていた。

「初めてミリー以外と「共有」しました」

「はぁー心に直接流れてくる感覚だ」

 喋り始めた二人に変化はないがソルアトの方は落ち込みが晴れたように感じる。

 終わって、彼にいつまでもサボりは良くないと言われて別れたのであった。


 着いたお店は遅くてもやっている酒場

「私でも入れるのかしら?」

 テュンレイは当然入ったことはないが酒場が大人たちの集い場だとは知っている、ある程度の年齢ならともかく見た目幼い自分は入っていいのだろうかと悩む。

「誰でも入れるから大丈夫だ、ここの主人が元傭兵の強い人で色々あって騒ぎも無くなった」

 役人が何度も暴れて主人にやられた輩を回収しに来た店だというのは有名なお話だ。


「らっしゃいませー! あ、久しぶりだね、お疲れ様。今日はかわいい娘二人も連れてるねー?」

 茶髪のショートの女性が元気に出迎えてくれた。

「…はい、今日は「デートよ♪」・・ぅ…」

「でーと? 何かな?」

 テュンレイが説明すると女性は微笑ましそうな優しい表情を浮かべる

「アッハハ!若い娘もらえてよかったじゃないかー!」

「ええと…」

「こっち座って、何にするのー? って初めてじゃ分かんないな! アハハ♪」

 ダリボレは何も喋らせてもらえないのにテュンレイは笑っていた。


「・・・二人は食べないものってあるのか…?」

 二人にはお任せで頼むのもいいかと思っていたが、精霊という存在に対してあまりに無知で食べ物を食べられると聞いても、食べてはいけないものもあるのかもしれないと思い至る。

「好き嫌いはありませんよ。しいていえばくらいですがあまりに辛いものは好きでありません」

「私もですわ、アナタにお任せします」

 好みをきいたわけでなかったがそう答えるということは何でも大丈夫なのだろうと適当に注文することにしたのだった。 もちろんお酒は二人の前だから注文しない・・というかソルアトと違い好きでないので飲まないのだ。


 先程の女性の名前はレリリ、お客に呼ばれた時以外は同じ机で酒をグビグビ飲んでいた。

 彼女は新規の客で気に入った相手にはよくこうして話をしていてダリボレもソルアトと初めて来た時に共にしたとか。自己紹介をすると意外な関係が判明した

「そうかー!ミリー(あなた)(テトニー)の言ってた新しい店の「なんでも屋さん」とかの主なのかー」

 レリリはマナの制御・使い方の依頼をした子供たちの中の断られた子の親だった。自分たちが若い時に危険な仕事をしていたから娘に対する「危ない事」に過敏になっていたと主人と反対したらしい。

「・・それで、魔法ってのは本当にあるのかな?」

 声を潜めるあたり現実的でなく信じるのは恥ずかしいと思っているのだろうな。

「はい♪」

「・・・そっかぁ、そっか! あるのか!! あなた・・ミリーは使えるのか?」

 突然の見たことないくらいの興奮状態に驚いてしまう。

「使えますよ♪」

「ワァ!!レンちゃん(あなた)は?!!」

「使えますわ♪」

「依頼する!頼む!いくら!!」

「500ダナです」

「安いよ!10000ダナ払うから教えて!」

「500ダナです♪」

「違うよ!後継しなかった技術を安売りしちゃダメなんだよ!」

 彼女は魔法が昔、人間にも使われていた(精霊談)ということを知っているのだろうか?

「500ダナです♪」

「あー、もー! 分かったよ!

 フー・・・(ゴクゴクッ)今日はあたしの奢りにするね、もっと持ってくるから待っててー♪ チョットー!追加だよー!」

 こんな事になるなんて…。奢りなんて役人として申し訳ないが何を言っても聞いてくれそうにない雰囲気に何も言わずに三人奢られたのだった。

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