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ミリーのなんでも屋さん  作者: スルー
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 ソルアトは立派な建物を見てこれが一瞬にして出来た建物(もの)なのかと驚いた。

「ミリーとテュンレイか・・・ふぁ…おっと」

 さすがにねむい。歩いていても意識が薄くなるくらいにキツい状態だ。 ダリボレには終わったらすぐに寝ると言ったが自分でも見るくらい確認しておきたい。

 それにしても建物はともかくとして、色とりどりの周りの花やら木やらは一体どういうことなのか・・。看板も幟も設置してあり店構えは既に開店していますと言える万全の構えである。


「あっ、ソルアトさんでしたか!

 ご支援ありがとうございます! おかげさまでお店を開く準備が整いましたのです」

 鍵が掛かっていたその時はその時と、敢えてノックして返事を待たずに入ってみたら、まるで来ることが分かっていたようかのようにミリーが待機していてすぐ対応してくれ驚く。

「ちょっと気になって来てみただから、仕事で来たわけじゃないからね」

 親しい人に接するように対応してみることにしたら正解だったみたいにミリーはふわりと笑みを浮かべて再びお礼を言った。


 店内をぐるりと見渡してみるとどこかの役所みたいに整っていながら誰でも気軽に入れるような雰囲気が感じられた。

「感じよい雰囲気だね♪ 今日はテュンレイ(あの娘)はいないの?」

「いらっしゃいませ?」

「!?」

 なんの気配も無かったのに真隣からニヤニヤしながら話し掛けられる。くっ付くくらいの距離に居ても分からなかった。

「ウフフフ♪私も居るわ、見えないの・・かしら?」

「ごめんねー! 見えなかったんだよ!」

「そ♪ それで、お店はいつやっていいの?」

 同じくノッた俺に嬉しそうだった、二人ともこの方がいいのだろう。 俺らみたいな職の大半は堅苦しいのが多いからすごく楽だ。

「ダレボレがすぐに動いていたからいつでも大丈夫だよ♪」

「アラ? 今からでもいいのね?」

 人手も無いし、まだ何も置いていないけどすぐに始められるのか

「いいよ♪ 外観の準備は完璧だったもんね、とってもきれいだったよ♪」

「そうでしょう♪ 彩り華やかに咲かせてみたの♪」

 うわ、この子がやったのか! 魔法っていうのは本当になんでも出来るみたいだ。この子たちが好戦的でなくて本当によかったと思う!

「ミリー」

「はい」

「魅せていいの?」

「はいです!」

「???」

 なんだか二人で何か始めるらしい、追い出す気もないみたいだから見ていていいみたいだけど何をやるんだろうか? ちょっと楽しみで眠気も醒めた。


 するとソルアトの前に二人は立つとミリーが「ジャンプで」なんて言ってテュンレイが頷いていた。

「ソルアトさん、よく見ていて下さいね」

 ミリーの合図で二人が高めに跳ねた

 四人とも綺麗な着地を決めていた

「え!?」

増えた!? ミリーが二人、テュンレイが二人、いつ増えたし!?

「・・よく見たら微妙に違うのか?」

 そう、増えたミリーとテュンレイの髪が微妙に違ったり目色もバラバラだ、別人なのか?

 カラカラ笑う二人はハイタッチを交わしている

「次は後ろに」

「ええ」

 ミリー二人とテュンレイ一人がくるりと1回転した。また起こるのかと思っていたが何も変化は無い・・・

 不思議に思ってジッと見ていたらテュンレイが俺の背後を指差した

「???・・!!??」

 声が出なかった! 後ろを振り向いたら回った三人が立っているではないか!!


「「「こんにちは」」」


 正直すごく怖くて逃げたくなったがあくまで冷静に踏ん張る

「フフフフ♪ 私は三人が限界だわ、ガッカリしたかしら?」

 あからさまに驚いた俺を分かっていての言葉、ものすごく楽しそうだ

「いやいや、何が起こったか理解が追いつかないよ? これは?」

 一人で来た自分を殴りたい、久しぶりに誰かに縋りたくなった。

「これはそうね? 私たち種の固有能力ってものね!

 意識を二つにして分けるの、保有マナも半分になっちゃうけどね」

 きいてない事まであっさりと教えてくれた。意識を二つにして分かれるとか意味が分からなかったけれど魔族特有の能力って事は分かった・・恐ろしいな…

「種・・・。君たち種族に名前ってあるの?」

「あるもなにも前に言ったじゃない」

 前にと言われても覚えがない、ダレボレと情報も共有していたはずなのに。

「テュンレイ、まだすぐの時で混乱していたでしょうし、あの言い方も混乱させただけです。きちんと説明しましょう?」

「クフ♪ミリーだって流したじゃないの」

 やはり軽くだが説明されたらしい…、仕事柄しっかりしていたはずだけど


「あらためまして? 私たちは精霊ですわ。どうぞよろしくお願いしますの」

「精霊!? あ、ごめんよ」

「いーえ、お気になさらないで下さいまし」

 ソルアトがまず思ったことは、「魔族ではなかった」だ!

 存在の有無よりも聞いていた事に納得がいく事があり過ぎて疑いの余地もない。

「あ、「あなたたち」は「メリメレイルの人々」って事か!」

「…何の話よ?」

「悪い、崇めてる存在ってきいていたのを思い出したんだよ」

「ああ、エエ♪ええ、そうよ」

 間違っていなかった、それにしても生まれたばかりのわりに情報通なのは気になる。 伝承の精霊にしてもそんな事実は無かったはず。

「また答えてくれてありがとな! さて…」

 時間をかけるのもよくないし害ある存在でないのも知れてよかった。 では、目の前で増えた違和感はスルーすべきだと理解したから切り替えてお店の説明をしてもらおうかな? ハァ…報告だけどこの二人がどこまで開示するのかも知っておかないとな…。


「このまにゅある(・・・・・)を読めばわかるわ」

 綺麗にまとめられた看板と同じ表紙の冊子を渡されて読んでみた。

・。

・・。

・・・。

「なんでも引き受けてくれるみたいだ」

「そうよ」

「一作業全部500ダナって安くない?」

「お金を返すために倍にしたから安くないわよ?」

 書いてあることによれば、たしかに一作業が500ダナだから事によっては高くなるけれど、例に書かれた「作業」の基準がかなり広く大抵のことが二作業以内に収まると思われるので稼げない。 それに気になる一文が入っている、最後に注釈で「「共有」していいなら半額になります。 詳しいことは受付で」と入っていた。何だろうか?


「この魔物退治や素材採取はどの程度なら引き受けてくれるの?」

「情報あるならなんでもよ」

「情報って?」

「魔物でも素材でもどの辺にいるか、って何で私ばかりに訊くのかしら? 詳しいのはミリーよ」

 場所だけでよく、強さでの上限はなさそうだ。いざという時は頼りにしてもいいかもしれないね。

 仕事内容の対応はミリー担当らしい、それでも全部説明出来る彼女もしっかりしている。テュンレイが訊きやすいこともあるけど、なんかミリーって話し難い感じがあるんだよね…、とりあえずそこに触れないようにして誤魔化してみる

「あはは、ごめんね? なんかテュンレイって僕好みでつい話し掛けたくなっちゃうんだよ」

「あら?嬉しいこと言ってくれるのね♪

 でも、ミリーの方が可愛いわよ!」

 本気で言っているのが分かる。一般的に見てミリーはこの世のものと思えない程に可愛い容姿をしている、けれどテュンレイの幼い姿ながら大人っぽい雰囲気の彼女が気になるのは本当だ。

「まぁ、嘘ではなさそうだしこれはサービスよ」 

 テュンレイが軽く浮遊するとソルアトの頬にキスをしていた、さらにちょぴっと生温かさが触れる。

 柔らかく湿った感触に「え!」っと反応出来なかったが、数瞬後、思考が追いついてくると怠かった身体が軽くなっていたのがわかった!

「クフフ♪ 嬉しいかしら?」

 そちらは何も知らないとばかりにキスについての感想を求めてくるその顔はやはりニヤニヤしていて艶やかであった。


・・・。

 帰り道にダリボレと話をしようと寄ってみたら盛大に怒られた。


「魔族ではなかったんだな」

「ああ」

 伝説の存在だろうが二人の素性なんてどうでもよかった。危険があるかないかだけでそれが分かったのが安心であった。

「お前が気にしてた生まれも多分間違ってない。 違うだろうが、種特有の能力だとでも思っておいたらいいかもな」

「そうか」

 かつて魔王退治に関わった精霊の一人とも僅かに疑っていたけれどその線はほぼ消滅した。

「なんでも屋、すごかった」

「そうか」

 またすぐに様子を見に行くだろう。

 結局、お店は明日からにしたがどうなるかなと楽しみにするのだった。

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