0 その2
僕がこの世界に召喚されるとそこはお城の入口前にある噴水前で物騒な格好をした人たちが四人立っていた。
「本当に現れたのか!」「姫様の予言通りだった!」「報せてくる!」「(剣を突き付ける)」
送り出されてすぐこれか、とアニメでよく見る銀色の刃を見て溜息を吐いた。人でなさそうな人もいたが恐怖は全く無くどうすればいいのかだけが気になっていた。言葉は通じるようで安心だ。
残った三人も何も言ってくれないのでジロジロ観察されながら黙って立っていたら走っていった一人が帰ってきて、そのままなんの説明も無くお城の中へ誘導された。
大きな机のある部屋に入ると身分の高そうな男女(男性はおじさん、女性は子供)と軽い感じの服を着た優しそうな青年が座っていてすぐに座るように言われる。
「わたしは国の王様でモンママンという。 貴殿は何か聞いておらぬだろうか?」
伝承によれば召喚されし者は事前に役割を理解していると記されているらしい。
まず名乗ることが普通としては他の二人の紹介が無いことに違和感がある。
「はい、魔王退治の仲間になれと」
「おお、そうであるか! では貴殿は腕に覚えが?」
「いえ、戦いなどやったことはありません」
そう答えたら、王と女の子にはあからさまにガッカリされる
「そうか…魔法などの適性は何を持つだろうか?」
魔法か、魔法があるのか
「魔法は無かったので適性は知りません」
希望も打ち砕かれてまたガッカリされる
「しかし、予知にはあなたが出たの!」
そんな可愛い声で怒鳴られても知りません。頼まれたので出来る限り取り組むだけです。
王が女の子を窘めると紹介してくれた
「わたしの娘でこの国の王女だ」
「トルマよ、得意魔法は無いけれど予知が出来るの! 今まで外れた事は無いの。魔王を倒すのに必要な者が現れると出たからには、弱かったとしてもどこかであなたは必要なのよ」
「・・・。」
「何か言ったらどーなのよ!」
決意は変わらないままであるから黙ってたら怒られた…。 それに、今の説明だから話すとこ無いと思うけれど?
「・・・して、貴殿の名はなんというのだろうか?」
王が娘を宥めつつ話を変えようと名前を問う
「長山裕太、ゆうたです」
「「ユータ」か、よろしく頼むぞ」
「はい、出来る限り頑張ります」
王も王女もあまりの感情の振れなさに引き気味であるが国や世界の命運がかかっている危険である魔王退治には意欲的なので気にしないことにしたのだ。
そして王はやっと、ずっと黙って機会を待っていた青年を紹介した!
「此度、娘の予言にて魔王を討つとされるアギレディウス殿である」
「エルフのアギレディウスです。ゆうた、一緒に頑張っていこうね!」
エルフいるんだ?とゲームとかを思い浮かべたけれど目の前のエルフは人と同じだったからちょっと残念に思っていたり。
「はい、頑張りましょう」
それから暫くの間は世界の常識とか教わったり戦闘訓練したり馬鹿にされたり叩かれたりしていた。味方と言えるのはまさにモンママンとトルマとアギレディウスだけだったと言えよう。
ゆうたに戦闘の才能が無いただのお荷物と知れ渡ると罵られ、美人のアギレディウスと話せば手を出される。 初めての時は怖かったが、神様のおかげで全く痛く無かったので別に気にすることでないと流すことに切り替えたのだった、傷は回復ポーションと呼ばれる薬を飲めば治るのもある。
ただこのイジメのおかげでゆうたは自分の役割を見つけることが出来たので他意無く普通に感謝していたりするのである。
それから半月後、遂に神様からの依頼を果たすべく魔王退治の旅が始まることとなったのだった。
・・・。
旅立ちは公にしていないので静かなもの。予知通りに不都合を出さないために同行者はいない。
「飯は何にしようか?」「ゆうたが来た世界って魔法無いなら魔物にはどういうのが相手したんだい?」「久しぶりの外かぁ!楽しみだね♪」
周りが静かだけでアギレディウスは明るくゆうたに構いっ放し、危険な旅というのにすごく楽しみにしてお城で簡単にしか話せなかった分だけ話したいことがたくさんある。 ゆうたも自分からは話さないがきちんと受け答えはするので彼も嬉しいのである、もちろんイジメのことは知らない。
始めの目的地は未開の地の森、トルマの予言により東の端の方にある森で仲間となる者に声を掛けられると出ている!
そんな知り得ない場所で誰かが住んでいる、なんて考えられないことだがトルマの力の信用の高さですぐに皆に受け入れられ旅に組み込まれたのだ。
移動はマナを注ぐと走る魔法の木車、一般的に速度はそこそこで馬で走るより遅いくらい。
ゆうたもマナを操る練習として操作してみようと試みたが一切動かずの笑い話である(魔法を使えない者はいるがマナはほぼ扱えるため)。
一方アギレディウスは剣を扱うがメインは魔法でありマナの繊細なコントロールはお手のもの、他の者が扱う以上に素材の能力を最大限に引き出せてとても速く動かせた。
・・・。
最後の街を出た次の日に東の森へと辿り着く
「ゆうた、ここはマナが強く感じるよ。 おそらくは奥へ入ればそれだけ強くなるだろうから魔物も強い、気を付けよう!」
「はい」
どこで予言の仲間に会うかなんて分からないのだから慎重過ぎるくらいでいい。
ゆうたの心配は自分でなくアギレディウスのことだけ、いかに魔物の前に出て盾となれるかを考えていた。そこで提案する
「魔物の気配がしたら魔法を準備で方向を教えて下さい」
「うん? そちらに向いて構えればいいってことかな?」
「はい」
「・・・いいよ!分かった。 複数の場合は?」
「剣を抜いて下さい、背中側を守ります」
「・・・分かった」
アギレディウスもまた、納得はしているけどゆうたが犠牲になるのではと心配をしている
森に入ってすぐ、驚くべきことに獣型の魔物が大量に襲ってきた!
アギレディウスは剣を抜くと作戦通りにはならないと魔法も使いながら倒していく。
ゆうたもまさかの数に作戦は無意味だったとアギレディウスの邪魔にならないように少し離れて目立つように駆けた。
何度も何度も吹っ飛ばされ噛みつかれひっかかれのゆうたに対してアギレディウスは何度もその名を呼びながら彼の意思を汚さぬように自分の被害を最小限に立ち回っていた。 道にいるような魔物よりは強いがそこまでの強さでなかったのが幸いし数を減らせていた。
そんな中でゆうたは冷静にポーションだけ零さないように立ち回り怪我しては飲みをして防いでいる。 そんなゆうたを驚異に感じるのか魔物たちの集まり方は強いアギレディウスよりも彼の方にいく方が圧倒的に多い。
これにより、かなり長い戦闘であったにもかかわらず殆ど無傷(?)で終えることが出来たのだ。
「ゆうた!大丈夫かい!!」
「はぁ…はぁっ……はい、僕よりアギレディウスさんの傷もはやく治して下さい」
傷が出来、かなり息は上がっているが自分の状態より真っ先にゆうたを心配して体をみようとするのが彼なのだ。
ちょっと強い相手にやられても大丈夫なことを知って収穫となったゆうたとしては過保護に思えるが「客観的に見て優しさ」と理解しているので感謝をするのもゆうたなのだ。
無事に乗り切れて休憩していると急に強い雨が降ってきて木の下に逃げた! はずなのに・・
「あたる!?」
「・・そうですね」
まるで自分のすぐ上に雲があるかのようにどこに行っても濡れる、ゆうたはすぐ諦めたがアギレディウスは避難し続けて走り回るので付いていくのが大変だ。やはり魔物たちは纏まって襲ってきたのか他にいなかったのが幸いだと思う。
「・・・ぷっ! あははは♪」
『だめだよー、ロバネー…。強いから静かに、ね?』
『でもあいつらまぬけ、抜けてる』
『そーだけど』
どこからでも聞こえるような笑い声にアギレディウスは武器を構えてゆうたの前に立った。即座に反対側を警戒する。
「ひぃ、ひぃー! ナディ、モルタネイン、見てよ! どこ見てるのかしらね、バカだわぁ♪」
『そんなもん。うちら最強』
『うーん? そうだ「そこだね!」ね・・・え…?』
「っった!?」
『『ロバネ!?』』
離れた位置からゆうたたちを一際嘲笑っていたリーダー格の顔の頬を一閃の風の刃が通る。油断していなければ簡単に対処出来るその攻撃に当てられた怒りと姿と気配を隠していたのに特定された焦りが浮かぶ。
ナディと呼ばれた者がすぐに光魔法でマナを供給し傷を無くすと三人は攻撃してきた者を睨んだ!
「どうやら当たったみたいだね? 君は僕たちの敵対する者かい?」
なんてことはない、アギレディウスはこの雨が降ってきた時から何者かの仕業と疑っていた。そこに全神経を集中しても感じるか感じないかの微弱なマナを動きながら読み取ったのだ、あとは油断させるためにゆうたの位置どりも考慮して動いただけ。
これを聞いてロバネと呼ばれた者が誰にでも姿が見えるように姿を顕す!
その姿はどの種族にも当てはまらないような未確認の小さな存在で、睨みながらふんぞり返っていてビシッとアギレディウスへ指を差した!
「あんたは許さない!」
『『いく!』』
未だ姿を見せていない二人がゆうたたちの背後をとると足元の土を盛り上げて固めてしまう
「他にもいるね?」
ゆうたは目の前の奴の攻撃だと思ったがアギレディウスは再び僅かなマナを違う場所から感じ相手が複数だと結論づけると自分たちのすぐ周りを土魔法で覆う
「!?」
気付かれて焦ったロバネが他に何かされる前に壊そうと大きな火の玉を放つ!
「なんでよ!」
しかし、壊すどころかひびさえも入らない激昂するロバネ。 他の二人もどうにか壊そうとしたが全く通らない、足場を固めたモルタネインがそこを通して土で埋めてしまえばと考えたがすでに中では解放されているようで干渉出来ない
「もういいかな? そろそろ質問に答えて欲しい、さもないとやっちゃうよ?」
「守ってばかりのあんたに何が出来るっていうの!」
ロバネが叫ぶが始めに攻撃されたことは忘れているよう、残りの二人が敵わない相手だと彼女の手を両方で引っ張るとその場から逃げだした。
しかし、すぐに停止する! 彼女たちの周りに無数の風の刃が見える形で飛び交っていたのだ!
「ご、ごめんなさいー! 何もしないからー…」
ナディが中にも聞こえるように叫ぶがロバネがみっともないとぶって止める
「ロバネ、謝る! 無理、こいつはまぬけ違う!」
「・・・うー! もう、分かった!
ごめんなさい! 敵対はしないから許しなさい!」
「いいよ、少し話がしたいけどいいかな?」
「「はい」」「・・仕方ないからしてあげる」
隣で聞いてたゆうたは魔法を使える時間さえあればこんなにも圧倒的なのかと感心するばかりであった。
・・・。
「この森はアタシたちのもの! 誰にも邪魔はさせないの!」
これがアタシちゃん(名乗らない)の言い分だった。
しかし、すぐ後に残りの二人がきちんと自己紹介してゆうたたちが森に入ってから魔物たちが襲ってきたのもモルタネインの魔法だと教えてくれる。すでに二人はアギレディウスのみは認めていて興味を持っているらしい。
「この森には魔物以外、君たちの他に生物はいるのかな?」
「いないに決まってるでしょ! 誇り高き精霊しかいないの!」
「君たちの固の名前はは精霊っていうんだね」
十中八九、仲間になるのはこの精霊(たち?)と確信を持つ
「そう!精霊は偉いの! その中で永きを生存し続けるアタシたちは超偉いなの!」
長命種らしいと分かった瞬間に二人の方が「源が果てない限り死なない」と教えてくれて無限の命だと驚かされる。しかし、多くはただの草だったり雨粒だったりと源から種が誕生し何の意思も芽生えずに生まれてはすぐ絶える存在にもならない種なのだ。彼女たちみたいなのが特別であり、その中でも更に特別な存在なのは説明要らずのこと。
「僕たちはこれから魔王を倒しに行くんだよ」
「まおーって何?」「気になる、うちはアギレディウスと行く」
「ちょ!あんたたち!!」
精霊に魔王って言葉は知らないようでアギレディウスが説明すると、魔物の強い個体が増えていたり、マナの乱れで消滅して荒れ地になった場所がある事は知っていたようでその原因に怒りを向けていた。自分たちの住む森もその被害を受ける可能性はあるのだ!
「アギレディウス! アタシの僕になりなさい! そうすればその魔王ってのをやっつけてあげる!」
「私はあなたなら一緒にやってもいいよー♪」「うちらでは多分無理、その魔王、(一緒に)倒す!」
アギレディウスは喜んでロバネの僕となり仲間になってもらった。ロバネは名前を彼にだけ教えてゆうたには決して言うなと厳命!
こうして仲間が揃ったのだ。
『あの、ロバネハイロ様が…』
か弱き者が遠くで精一杯気配を押し殺して様子を覗いていたのは誰も知らないのであった。




