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ミリーのなんでも屋さん  作者: スルー
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 人々が自分で手に負えない事を依頼金(おかね)を出すことで請け負ってくれる者を冒険者といい、その活動を仲介する施設がここ「精霊様の使者」である(メリメレイル特有の名)。


「今日も街主(うえ)から催促だよ、本当に嫌になっちゃうよ…」

「そうですね、上乗せ報酬金(しえんきん)を増やしていただいたらすぐにお集まりになりますのに」

「あの方がそんな事するわけないよねぇ…」

「「ハァ…」」

 溜息を吐いているのは「精霊様の使者」の主のガマスと秘書のポルタガル。 街のトップの街主から毎日出て着々と溜まっていく依頼を見てゲンナリしていた。

 依頼の内容は物資の調達や周囲の危険度調査など。しかし、その中で一番多いのが掃除あった。街の裏道や地下水通路、街道ととにかく人手が必要だ。 これは少しでも腕のある冒険者の仕事となっているのだが誰も引き受けてくれない。 その理由が雀の涙ほどの報酬であった!

 例えば地下道の掃除、広い場所を一人で行うとして30日は最低でもかかるのだが報酬は五万ダナである、それで終わればいいが実際にやればもっとかかることだろう。では複数人ではやく終わらせたらと思うが報酬は変わらないので意味が無い。

 街の仕事ではあるが、担当は「精霊様の使者」となっているので悪影響を及ぼせば責任を負うことになってしまうという理不尽、誰も受けない定期的なこの仕事は職員が無償でやるしかなくなっているのだ。

 ちょっとくらい報酬を負担して上乗せすることくらい出来るが相場を考えたら大金であるし一回だけやっても意味が無いので困っていた。


「お呼びですか?」

 暗い雰囲気の中で通されてやって来たのは高位女性冒険者だ。

 秘書に促されてガマスの前へやって来ると冒険者の方から口を開いた。

「いつものですね、今回は何?」

 成果があったり指名依頼が入っていたならともかく、何にもしてない時に主から呼び出されれば「自分が誰もいなかったらやってあげる」と言った件だと判るというもの。

「本当に申し訳ないね、チュエム…

 今回は街道(みち)をお願いしたいんだ、報酬は二万ダナだけど「精霊様の使者」(こちら)からも三万ダナは出すからお願いしたい…」

 疲弊した主の顔を見れば切羽詰まってから依頼されたのだと理解出来る。必要な経費なのに渋るダメな街だなと呆れてしまう。

「道の調査と魔物の間引きね分かりました、場所はいつもの6・5・7でいいですか?」

「いや、西は被害が少なくなっているから3まででいいらしい」

 数字は地点の目印を指していて「高山側・王都方面・西の街方面」となっていて、西側は大幅に削られてやらないでいいことになる。

「それ大丈夫?」

 ガマスは静かに首を横に振って溜息を吐くとチュエムはやれやれと部屋を出ていった。

 数十日かけて達成させると何ヶ所か別の街へと報告しに行っていた。



・・・。

 いつも通りガマスが部屋で仕事をしていた時だった。 職員がガマスに会いたいと願う者が来たとあった。

「どちら様でしょうか?」

 ポルタガルはガマスにアイコンタクトで「用事次第でお引き取りさせろ」と受けて職員へと内容を問うた

「それが「精霊様の使者」における高位冒険者のチュエム様なのですが、年10前後の少女を連れていまして。 内容は聞いておりません、「主を呼んで」とだけ」

「・・・」

 チュエムなら呼びかけだけで通すが子供二人を連れて来たとなると厄介事のにおいがする。この街にかかわる人攫い案件や街主暗殺など秘密で行う出来事の可能性が高いので無視は出来ない。


 チュエムが連れて来た子は綺麗できれい(・・・)な子だったのでそういう案件で来たわけでは無いのかもしれないとチュエムへと訪問理由を促す。

「はい、この二人にメリメレイル街内全土の清掃及び浄化を受けさせて欲しいの!

 街でお店を開いている子たちなんだけど協力してくれるって! でも冒険者になるつもりは無いよ」

 要するに街主からのゴミ報酬依頼を片付ける協力をしてくれるつもりであるが一時的でも冒険者になる気は無いのでその資格を得るために融通してくれってことだ。 個人でやっても問題は無いが報酬はもちろん出ない。

「それは有難いけど…」

 ガマスが二人の少女を見るとチュエムも理解しているので大丈夫と強く頷いた。

 彼女が推薦するくらいだから大丈夫なのだろうが場合によっては浮浪者や棲みついた魔物が出る場合も無くはないのだ。仕事も半端にやられたら逆に困る。

「わたしが付き添いますから!手取り足取り教えますから大丈夫です! 許可を下さい!」

 やたら積極的な彼女にこんな性格だったかなと不思議に思う

「分かったよ、じゃあチュエムの名義で請けて欲しい。 報酬は・・・五万ダナと六千ダナに加え三人には七万ダナずつを出しますね」

「精霊様の使者」としては手痛い出費だが普通に考えたらこの五倍は出して然るべき内容なのである。

「あ、その事だけど! 追加報酬は要らないよ」

「「!?」」

 チュエムは一生お金に困らないくらいに持ってはいても、やっていることには誇りがありそれに見合う対価を受け取ることも義務と傷む追加報酬も受け取っていたのに今回に限っては固辞したのだ。

「その街主の出す五万六千ダナだけでいい」

 ただでさえ少ない報酬を今回は三人でいて、(その相棒を見ても)日数の短縮は見込めない可能性が高い。それは頼む側として許したくない。

 チラリと少女二人を見るがここに来てから一言も喋っていなく微笑んでいるのでチュエムに全て任せているのが窺えた。冒険者でも無い上、こんな小さな子たちに仕事と報酬のつり合いなんて判るはずもないから当然だ。

「では、報酬は終わった後に決めましょうか?」

 手続きと報告書を作成して報酬を準備している間に決められればと時間がかかるのはよろしくないとガマスはとりあえず頷いたのだった。


・・・。

 三人が外へ出ると前に行った「共有」にて内容と範囲を把握しているミリーは早速取りかかった!

 チュエムも何も動いていないミリーを遠慮なく抱っこする。

「終わりました♪」

「速いね!もう終わったんだね」

 時間にして一分ほど清掃及び浄化、目に付いた浮浪者をテュンレイが警備隊の下へ出頭させる。幸い魔物の発生・侵入は無かった。

「どうしようか?」

「今なら面白い顔が見れるでしょうね♪」

 疑われ必至の時間、何もせず帰ってきたとなるだろう。 

 虚偽の報告となれば名前を借りたチュエムが傷付くこととなるが、彼女は確認はするまでもなくミリーたちを信頼していたのである。


・・・。

 この件も大事だが何十日もかかることより通常業務を終わらせようと優先することは当たり前だ。そんな時に困惑しながらさっきの職員が部屋にやって来たのだ

「あの、チュエム様が依頼の件が済んだので会いたいと…先ほどの少女二人といらしたのですが…」

「「は?」」

 間抜けな声を出すのは仕方ない、聞きそびれたことがあるならまだともかくとしてこの数分間しか経っていないのに依頼を完了したと言うのだ!


「それで、何かあったのかな?」

 探りつつ戻ってきた内容を尋ねる

「メリメレイル街全域・地下水路全域における掃除・浄化はこの二人により完了しました」

 やはり依頼を終えたらしい。彼女とて虚偽報告は重罪だと理解していないわけは無いだろう、今までも完璧にやってくれていた一番信用している冒険者なのだから。

 そこで気付いた、というよりも彼女の有能さに埋もれて本気にしていなかった存在、はじめっからこの子たちが主体で彼女は支援するだけって聞いてたことを思い出す。何よりこの子たちが過去との一番の変化だ。

「君たちに話を聞いていいかな?」

「はい♪」「エエ♪」

 初めて向き合うと自己紹介

「私は「ミリーのなんでも屋さん」の責任者のミリーです♪ よろしくお願いします」

「レンちゃん、ですわ」

「!!」

 ガマスたちも「ミリーのなんでも屋」の噂は知っていた。最近出来た安くて素早く解決してくれるお店で一度似た同業者として挨拶(はなし)に行こうかともしていた、まさかこんな子供たちだけでやっているお店とは思っていなかったが。

 しかし、今回は評判の良いなんでも屋だろうと限度のある速さなのである。杜撰な仕事(始めたかも怪しい)で金を取りにきた以外は考えられない。彼女がいなければ即犯罪者扱いである。

「ここに来る前から取りかかっていたとかではないよね?」

「はい、お受けしてから行いました」

「どうやってやったか聞いても?」

「いいですよ♪

 まずチュエムさんから聞いていた範囲に結界を張ります、そして内側を綺麗にしつつ浄化しました

 中にいた悪い奴をレンちゃんに教え警備の役人さんの所へ連れていってもらいました」

「・・・?」

 ガマスたちには最初から意味が解らずで最後までいってしまった。唯一(時間的なことを省けば)理解出来たのがレンちゃんの方が行ったことである。

「ポルタガル」

「はい!」

 それだけで伝わったのかポルタガルは役人の下へ確認をしに向かいに出ていった。

 ミリーが説明した事からも内容は理解しているので行ったとみてはいいがやはり信じられない・・と考えてた時にある可能性を思い出した

「ミリーさん、答えたくなければ答えなくていいのだけど、君は何か別の種族の人だったり? 例えばエルフ、とかね」

 冒険者の歴史は長い。登録記録の中には消されたものも多いが信じられないような記述が細々とあったりもした。〇人族だったり人〇族だったり、前王だってエルフであるからそういう可能性はある、人間に無い能力を持っていたとしてもおかしくない。

 これは少女を傷付けるかもしれないから訊きたくなんてないのだが、このままでは依頼に対して進展しないのである、誰かが(責任者のガマス)嫌われ役を引き受けなければならない。

 チュエムの反応はミリーとレンちゃんを幸せそうに見ている。本当に人が変わったようだ。

「ふふ♪ エルフではありませんよ」

 そう言って柔らかく微笑む姿はまるで絵画の精霊様のようで見蕩れてしまうほど美しかった!

 エルフでは(・・)無いというのが答えだと解ったガマスはそれ以上追及はしない。答えてくれたことに感謝するとポルタガルが戻るのを待ってくれるように報酬の話をしながら賓客のようにおもてなしを行ったのだった。


・・・・・。

 ポルタガルが持ち帰ったのは犯罪者共が自ら自白しに来たと言う情報。これでは報酬は出ない、というより出させないやり方なのだろう。

「…先日のキラーグリズリー」

「ええ、おそらくはそうなのでしょう」

 ふと過ったキラーグリズリーの一件、報酬は足止めして討伐した二人に出されたが報告は謎が残っていた。 もし、他にやった者がいるとすると姿も見せぬ自分に利が無いただの協力しただけの意味不明な行い、それが何となく似ているのである。

 目の前の少女を見れば信じられないがチュエムが信用するほどであり先ほどの疑惑の件もある、そこに行き着くのが自然だ。

「ミリーとレンちゃんもお店に戻らないとだからそろそろいいかな?」

 報酬も確固として街主のだけでいいと主張したのでそうなった。 それにこの二つの依頼は「ミリーのなんでも屋さん」に届ければすぐにやってくれると有難い申し出まで頂いたので契約を結ぶ、報酬は街主の決めた額、「1000ダナでいい」なんても出たが街主の懐が痛まないのは許せないからそんなあり得ない提案だけは頑として拒否した。

 チュエムが情報を漏らすなんてあり得ないことだが、それのおかげでこちらは助かるのだから文句は言えない。街主にバレないようにだけ気を付けないといけないなぁ。


・・・・・。

「本当に困っていたからありがとね!」

「どういたしまして♪」

 ミリーたちが協力しようと思ったきっかけはチュエムが何度も何度も「共有」を試してどこまでのことが分かるのかをし続けて彼女のほぼ全ての知識を受けて、その中に街の危機を知ったからだ。それにテュンレイが街主の振る舞いが許せないってのもある、精霊様の名を使って税を高くしていてその殆どを自分と奥さんに使っているらしい。

「今日も特訓に付き合ってくれる?」

「いいですよ♪」

「やった♪ 結界って何!どんなの見せて!」

「分かりました」

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