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『あの娘に私の事を言おうと思うけどミリーはどう思う?』
テュンレイが最近思っていたことを実行しようかとミリーに相談していた。
「あの娘」とは引っ越しの依頼からずっと「レンちゃん」を指名しているのどかさんのことである。 知名度と親密度が上がってきたことで四人以上に増える事の難しいテュンレイには、近い内にお店とお客様対応に無理が出てくると判断してお互いに大好きな彼女にだけは正体を明かそうと考えた。
『悩む日が来るなんてよかったね♪』
『エエ、ミリーが羨ましいわ』
実行するという答えは出ているけど怖い気持ちがある。いつでも割り切っていた他人との関係の中で初めて抱く感情に躊躇ってしまう。
そんな彼女にミリーは優しく抱いてあげると嬉しい気持ちで勇気が出るのである。
『これがあなたの知る二股男の心理なのかしらね♪』
悩んでいるのは正体を打ち明ける事で色んな人に想いを寄せる事には二人とも別にイケナイとは思っていないのでただの冗談なのだが、心理的には似たような部分もあるのかと面白かった。
・・・。
そうしてテュンレイから誘ったデート二回目が始まる! 会って褒め合った直後
「今日はアナタにお話があるの」
「は、はい!」
明らかにいつもと違う真剣な雰囲気に背筋を伸ばして見つめていた。
テュンレイは音を漏らさないようにすると切り出した!
「今まで黙っていたことがあるの…」
「は、はい…」
直感的に自分が捨てらると悟った彼女は不安そうにレンちゃんを見つめた。 しかし、告げられた言葉は全くの予想外であった!
「私は精霊なの」
「レンちゃん…?」
名前を意味なく呼んだ。 言われた意味が分からなく無意識な聞き返しとして名前が出ただけだ。
「ごめんなさい、アナタに知って欲しかったの」
覚悟は決めて受け入れるつもりだったが不安で顔を見るのも怖かった。自分が人との関係でこんなになるものなのかと戸惑いの中で再び力を入れて彼女を見たら涙を流していた
「……お別れじゃないですか?」
「エ? アナタがこれを聞いても居てくれるなら。私はアナタを大好きって言ったのは本当よ」
「・・・よかったよぉぉ!レンちゃん大好き!!」
音は消していても泣きながら子供に縋り付く姿は周囲の注目を集めていた!
「フフ♪いい子いい子、可愛いわね♪」
不安も晴れ晴れと安心したのでいつも通りに愛でていたら急に顔を上げて周りを見ると真っ赤になっていたのだった。
・・・。
それからは買い物して散歩して食事して、和やかなデートを堪能していた。 彼女から「精霊」についてやその他かかわる何かについては微塵も気にした様子は無くレンちゃんと一緒の時間に嬉しドキドキを楽しんでいたのだ。
いつもの彼女の家の前でギュっとした後
「のどか、今日もありがとう♪」
「あ! 名前」
いつも「アナタ」呼びのレンちゃんから名前で呼ばれてドキリと心臓が跳ねる
「ウフフ♪ 私ね、本当はテュンレイって名前なの」
「そうなんですか?」
気にしてないだけで精霊ってことは知っているので違和感は感じなかったし、特に彼女が今まで見た事に納得した部分もいっぱいあった。
「精霊って本来は気に入った相手や興味を持った相手の前にしか姿を見せなくてね、名前は親交の証みたいなものなの。
私はいっぱい見せているじゃない? だから、呼ばれる名前を決めているの。
のどかの好きな呼び方でいいわ、ただ他の人の前では呼ばないで欲しいけどね♪」
生まれが精霊のテュンレイと逆にミリーは元々精霊で無いため、そういった意識も無く使い分ける名前は持とうとも思わない。
「そっか、名前で呼ぶのは親愛を示しているようなんですね…。 テュンレイちゃん?」
初めて呼ぶ知らない名なのでちょっとぎこちないがそれが仲良くなっている証明だと思えば嬉しい
「クス♪ 「共有」してもいいかしら?」
「え!? 共有って半額にしてくれる共有ですよね?」
「あれは安くやってもらおうとやってるだけなの。 今はのどかと重なりたいって思ってね♡」
「れ、レンちゃんと…!」
「エエ♪ どうかしら・・?」
レンちゃん・・テュンレイちゃんへの想いから色んな事への不満、醜い心も全部伝わってしまうというのが真実だと解っている今に共有するのは怖かった。 けれどそれ以上にテュンレイちゃんと重なれるという言葉に魅力を感じるしテュンレイちゃんの考えも教えてもらえるのには興味があった。
・・・なんて、目の前に楽しげな潤んだ瞳の不安をちょびっと感じさせる大好きな娘の提案を断ろうなんて彼女には全く無いのである
のどかは了承して家に招き入れると手を掴まれた。そのままトタトタと手を引っ張られて奥の部屋へ、部屋の隅にある布団が浮いて敷かれてそこで二人横になった。
これは魔法と知ってからの見た驚きと布団に連れ込まれてしまった驚きで心臓が高鳴っていた。
「いいかしら?」
「っっ!? は、はい!」
こんな状態で共有するの!と覚悟を決めて目を閉じた
「ウフフ♪ 顔が見たいから閉じないで」
横向きに顔を向かい合わせるとキスをしていた。もちろん必要ない行為でテュンレイがしたかっただけである。 その瞬間に「共有」が始まりお互いの思いが流れるように伝わり合う。
・・・・・。
キスに驚いた。しかし、直後にゆっくり伝わってくるテュンレイの感情にビクっとしたけどこれが、と情報を受け入れていく。一つずつ伝えてくれているので分かりやすい。
心から信頼してくれて大好きと思ってくれている事。いつも指名してくれて感謝してくれている事。意地悪すると素直な反応が可愛いと思ってくれていた事。
そして、今日の打ち明けるのが不安だった事
『(レンちゃんが精霊だったのには驚いたけど私の好きなのには変わらないもん♪ お別れにならないでよかったよ、大好き♡)』
『うれしい♡』
・・・あ!? 伝わっているの忘れてた!? どうしよ! 恥ずかしい!
唇に柔らかい感触にいつの間に瞑っていた瞳を開くとニヤニヤと嬉しそうなレンちゃんと目が合った。
「れ、レンちゃん!」
「レンちゃんって呼ばれる方が愛を感じるからそう呼んで♪」
「あ、愛!?」
『エエ♪ 「共有」した時に「唇柔らかい!?」「レンちゃん、レンちゃん、レンちゃん!」とか「好き! 大好き! やっぱり可愛いよ!触りたいなぁ!」とかたーくさん伝わってきたもの』
「あ・・! ぅ!? そ… ぅぅ///!」
「かわい♪ 重なりたいって? いいわよ♡」
「っ/////」
ものすごく熱くなって言い訳出来ませんでした! 可愛いと好意的に思われているのが知れたのが救いでした。
・・・・・。
『ミリーが精霊かもしれないとは思わなかったみたいね』
『全部受け入れてくれてよかったね♪』
『本当に。ミリーには教えてあげないわよ♪』
『うん。 ふふ♪ でも話題に出さない方がいいかも、今もまだテュンレイ浮かれてるからね♪』
『クス、ダメね♪ ミリー内緒ね』
『もちろん、私は何も知らないよ♪』
『ありがとう♪』




