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昼、ミリーのなんでも屋さん前の道を塞ぐように数台の馬車が止まると囲っていた兵士たちが店を包囲するように展開した!
周りの人たちが何だ!と恐怖するが声を発する者がいないのは馬車に描かれている紋章のせいである。
「どうぞ姫様!」
イケメン騎士に手を引かれ馬車から降りてきたのはこの国の王の一人娘のエレフレネ・ニュ・トントウォルである。18歳になったばかり。
「ここなのね?」
「ハッ! 不遜にも主の命を断った「ミリーのなんでも屋さん」なる店で御座います!」
「ふーん? キレイね? かなり狭いけどウチの庭より良いじゃないの? ねえ? そう思うわよね?」
この何度も尋ねるように言う時は不機嫌な時の合図で「城の庭師はこの庶民の経営する店にも敵わない無能なのね?」と怒っているのである。
「ハッ!戻りましたら即!」
すぐにクビにする、イケメン騎士も嫌な役回りだが命令は絶対である。自分も元は一般兵、だけど数年前に顔で姫様に選ばれて側近となれた身、ただの嫌な奴なら金になっても仕えるのは嫌だけど美人なのである!多少は我慢してでも幸せ過ぎるご褒美もあるので傍にいたい!
お姫様は庭の植物を観賞しながら入口までゆっくり歩くと兵士が扉を開いて通る。
「いらっしゃいませ♪」
中から聞こえるお気楽な声に子供がやらねばならぬ微小な店だと嘲笑った
「ふーん、なかなか清楚じゃないの」
思っていた何倍もキレイで空間を上手く使った内装に素直に感心する。
「お店の説明はあちらの説明書をお読み下さい♪」
「必要無いわ。 ベイグ」
「ハッ!」
ベイグは姫様側近のイケメン騎士のことでベイグリードの愛称である。
姫様の態度から単刀直入に交渉しなさいと正しく受け取り準備する。
「ミリーという主人は貴女様ですね?」
「はい、そうですよ♪」
彼が後ろから上質な皮の袋を兵士から受け取り前に出るとミリーの前で解いた。
「こちらに10000000ダナ入っております。ヒールポーションに関する権利を全て買い取りしたいと思います」
これも姫様の指示で最初に金を見せれば庶民なら容易く付いてくると言われての行動だ。 自分もそう思っていた。しかし…
「ヒールポーションの件はあの優しい騎士様にお断りをしたはずでしたが?」
その瞬間に優越感を浮かべていた姫様の顔が引き攣っていた。更に彼女は言葉を続けた
「あの方はすごく真面目で優秀な人でしたね♪
命令に従ったとはいえ目線だけは合わせてくれました♪」
一応来るにあたって前任者の彼の話は聞いておこうとしたが誰も(話に聞く耳持たずだったため)失敗して追放された以外の情報は無かったんだ。
「小娘の分際で煩いわ、分を弁えたらどうかしら?
ゴチャゴチャと言ってないで付いてきたらどうなの?」
姫様の態度は良く無いけどその通りだ。これだけの報酬を用意されて蹴るなんてあり得ないだろう! まして国を相手にしてまで逆らうなんて考えられない。
「お断りしますね、ごめんなさい」
雰囲気から察してたけどやっぱり断られた。姫様は握り拳を強めて睨むと後ろの兵士たちに合図する。
すると一斉になだれ込もうと突入しようと駆け足した!
「!?」
あーあ、と思いながら、姫様の護衛として彼女を警戒しながら兵士たちが配置に着くのを待っていたけれど一向に足音が無い。
こんなすぐの距離であり得ないと振り返ってみたら女の子が扉の前で外へと手を振っているではないか!
側近で危険は付き物なので気配には過敏だが分からなかった! しかも、外に兵がいない!?
「実力行使も受け入れると言いましたけど本当にするとは思ってませんでしたよ? どうしますか?」
「兵士をどこへ!」
「森の入口よ♪」
「ベイグ!」
「・・ハッ!」
もう訳が分からないし戦っても無駄じゃねえかと戦意喪失していたが姫様に言われたとあっては頑張るしかない!
まずは目の前の主人から力を奪わないとと佩いた細剣を抜いて構えると突こうと足を狙った!
もちろん目は良い、動きを見極めるのに必要だ。自分の剣が主人に届く寸前まで相手の出方を窺っていたが動きも無く見た目通りのただの少女かと痛む心を見逃して突き刺さしたのだが、ヒョイと右へ跨ぐことだけで避けられていたのだ!
「(もう間に合わないところまでやっていたのに!?)」
もう決まったと女の子の方へ向くと決めて行動していた自分は大きな隙を作ってしまったと逆に足を前に出そうとしたが何かに躓きコケてしまった。
「何をやってる!!」
姫様・・これヤバいって!?
少女だと侮っていたところも無くはないけど油断はしてなかったはず! なのに、全部何をされたかもどう行動していたのかも見切れなかったんだぞ…
今だって、あんなこと出来るならいつでもコッチをやれるだろうに何にも行動してないでニコニコと見守ってるんだぞ? さすが、「実力行使も受け付ける」ってだけあるわ!
「ベイグ何やってんの!はやくやりなさい!」
心配一つしてくれないのか…、全力で尽くしてきたのに。剣も一回も交わせなかったし、足がもつれて勝手に転んだとか思ってんだろう、これも彼女の力って解ったらすごく怖いんだぞ!
何一つ動かずに気高く弱みを見せないように振る舞っているお姫様は一歩も動いていない、相手の行動すら見ずにこちらばかり見てる。嬉しいことだな。
「姫様は逃げて下さい! 素直に逃がしてくれると思います!」
この交渉はやるだけ無駄だ、彼は正しく判断し処罰覚悟で抵抗せずに帰ってきたのだろう。
「馬鹿なこと言ってないでこの二人をはやくやりなさい!」
馬鹿はあんただ! 怒りしか感じてなくやりなさいも捕らえろではなく亡き者にしろって感じだし。
もう死ぬ気で立ち向かうしかない、と思った時に女の子が喋り出した
「ハァ…やれやれね…
そっちのアナタもういいわ、帰りなさい」
「そうしたいけれど姫様を置いていくわけにはいきませんのでね!」
・・・トン。
目の前の女の子が目も離していないのに消えると次の時には姫様の肩に触れていた
「はい、これで「今すぐ家に帰りたくなって着いたら今日一日何してたか忘れる」わ」
「何言って…」
「ベイグ!城に帰るわよ!」
「ハッ?」
入口を出て行く姫様、急激な変化に戸惑うばかり
「アナタは忘れないから上手くやりなさいね! もう関係者全員来るんじゃないわよ!」
「お客様ならいいよ♪ ありがとうございました」
・・・。
お城に戻ると姫様は本当に忘れていて、庭園で散歩して優雅にお茶をしていた事になっていたのだ。庭師のクビは回避されたらしい。 何はともあれよかったと思う、この家の人等は権力を振り翳し過ぎだから罰が下ったんだろう! ヤレヤレだ!
そういえば同行した兵士たちはどこへ消えたのかと思っていたら、一月後に帰ってきて半数が戻され、半数はクビになった。職務放棄だから仕方ないが可哀想である。 それと彼等は一日休みで街の中で遊んでいただけだとなっていたようで、本人たちには理不尽に追われた形になったらしい…、姫様のせいでごめんなさい!
また、姫様が行きたいと言ったらどうしようかと頭を悩ませるのであった。




