79話.続・渡り鳥
先週は風邪でダウンしてました。
声が出なくて咳で息苦しく、更新できなくてすみませんでした。
とある日。
市長の親御さんが来てたらしいと小垣さんに聞いた。
挨拶したほうが良かった?と質問したら
害意を持ってる人に会ったら、中島さんは容赦しなくなるから会わない方がいいと思いますと割と真剣な顔で言われたのでならいいかと思った。
ガスや給湯器についてはまだ良い方法が思い浮かばない。
モヤモヤしながらも楽しそうに教習を受ける佐伯兄妹や朝陽と裕太と小さな暴君でお馴染みの和泉の様子を見たりするだけで癒やされる。
この小さな暴君は生後2ヶ月くらいなのにとにかく暴れる。
朝陽と裕太がそこそこ相手をしてくれているから助かるけど、ずっとべったりだった朝陽と裕太にちょっかいをかけまくる。
私のズボンを噛んで引っ張る。
更に、家に近づく人は誰彼構わず吠えまくる。
早急に向こうの家に帰りたくなるね。
あまりにも近所迷惑になりかねないから。
佐伯さんの妹さんの奏美さんに子犬をプレゼントしたら泣いて喜んでくれたけど、お兄さんの
楽斗さんはちょっと引いていた。
妹に与えてはいけないものの一番最初に思い浮かぶ犬を与えてしまったとか言っていた。
病的に和泉を見てたからな。寝るときまで一緒に寝たいとか言ってたし。
そこに市長からメールが届いた。
メールは私だけでなく、何故か私を(勝手に)含めたメーリングリスト宛になっていて、
橋田くんが仕事中に迷い人発見。
現在スタジアムで保護し、隣のホテルに宿泊中。
明日、担当者に迎えに行ってもらうので、意思確認次第では住人になる可能性があります。
性格診断や戸籍登録等、必要部署は準備をお願いします。
という内容だった。
一応、街の住人ではない私は本来無関係なはずのその内容は、緊急時連絡網と題したメーリングリストになっている。
私は、基本的にかかわらないだろうと、確認だけして返信はしなかった。
今は、暴君のしつけが優先だからね。
本音を言えば、ちゃんと家に帰って、しっかりしつけて、問題がなくなってからでないと、こっちの家では怖くて生活させられない。
そんな事を言いながらも、こっちの家の地下とつながる地下基地を作ってしまいましたが、これは単純に戦艦を格納する為であって、こっちで生活するためでは決してないのです。
そんな平和な日々だったのに、やはり無関係ではいられませんでした。
ようやく佐伯さんの免許が発行されたと連絡を受けて、そろそろ帰ろうかという話になっていた時に市長から連絡があったので市役所に赴いた。
「ごめんね~中島君。ちょっとこの3人を君のところで住まわせてあげてくれないかな?」
いきなりの話で面食らった。
いや、何の話?
「最初から説明してもらっていいですか?
結論だけ言われても意味がちょっと」
「あ~ごめん。例の迷い人達なんだけど12人いてたんだよね。
それで、そのうちの3人が騒がし過ぎて街に溶け込めそうにないっていうんだよ」
「街の外に家を建ててもらえば問題ないように聞こえますが?」
「怒んないでよ。そういうことじゃなくて、この3人は旅をする事を大事にしてたせいで、街の空気がしんどいみたいなんだよね。
中島くんのとこなら、たまに学生が課外実習でお邪魔するくらいで、基本的に静かなわけでしょ?
一箇所に落ち着きたい気持ちはあるけど、街はしんどいなら中島くんにも気持ちはわかってあげられるんじゃないかなってさ」
う~ん。確かにそれはわかるけど。
人が増えすぎたらこっちもうるさくなりそうじゃない?
「まあ、わかりました。それで、その3人とは面識もないですけど。」
「大丈夫。待ってもらってるから連れてくるね。」
そう言うが早いか、市長は市長室から飛び出していった。
すぐに戻ってきた市長は3人とともに入ってきた。
大野 大地
佐上 淳弥
梅野 夏美
それぞれが自己紹介をしてくれたので、こちらも自己紹介を返す。
「遠藤くんみたいな感じで、困ってたらサポートしてあげるくらいでいいからさ。頼んだよ。
あっ、必要なら中島君の家周辺も住民登録できるようになってるから、免許がほしいとかあったら声かけてね」
どうやってあんな飛び地を住民登録できるように住所を決めたのかは聞かないでおこう。
その前に、どういうところが街で落ち着かなかったのかは聞いておかないといけない。
ちなみに、彼らはそれほど太っていなかった。
旅をしていることが良かったのか、しっかり運動をしてる体型になっていた。
私は3人に向き直って質問する。
「この街のどういうところが合いませんでした?」
「あ~、皆意識が高いっていうか、歩くより走る感じ?
どう言えばいいんだろう。ストイック?な空気感かな?」
と大野さん。
「ここは人が多すぎて騒々しい。
俺、子供のでかい声嫌いなんすよ」
と佐上さん。
「ここみたいに生活しやすくて、しかも静かなんでしょ?
行くしかないじゃん」
と梅野さん。
どの辺が行くしかないのかわからないけど、3人に不快な気持ちになることもなかったので了承した。
ちなみに、自宅からテレビを見られるようにケーブルだけ自前で自宅まで引いてある。
まだ、乱立してるチーム名を覚えていないけど、のんびり生活しながら娯楽として見てたらそのうち覚えていけるだろう。
朝陽と裕太と和泉に佐伯兄妹とそのわんこ、小垣さん、山北さん、西園寺さんとそれぞれのわんこ、まだまだ研修を受けたいという遠藤さんに渡り鳥の3名を加えた生活が始まる。
だが、早速問題が発生した。
「そ、空を飛ぶって!?」
「歩いていくのだと思っていたんだが」
「素敵~」
三者三様の反応を見せたが、若干一名喜んでいた。
怖いので遠慮したいという2人は楽斗さんが車で連れてくることになった。
奏美さんは兄さんの運転で行くのは嫌ということで戦艦になる。
一応免許取得の順番的に少しだけ先輩の遠藤さんがサポートにつくということで、男4人が佐伯さんの車でうちに来ることになった。
一応心配なので、スタジアムのホテルで合流して、きつそうなら車ごと戦艦に乗せることも考えている。
地下室から街の外の出入り口に戦艦を出しておいて、車組以外の全員が乗り込んだら出発する、のだが。
奏美さんと梅野さんと西園寺さんがわんこの可愛さで意気投合。
戦艦のロマンも何もなく、わんこルームにまっしぐらだった。
わかるけども、空を飛ぶ緊張感も、楽しみもかなぐり捨ててわんこですか。
ちょっと残念だった。
小垣さんと山北さんだけブリッジでシートに背を預けてこちらはリラックスモードでした。
「そう言えば、街では二人はどうしてたの?」
「そうですね。私は結構役所の仕事を手伝ってましたね」
「え?まなちゃんそんな事してたの?」
「え、ええ。特にやることもなくて暇だったので。」
「でも、まなちゃんの事を馬鹿にしてた元カレが街に来てたんでしょ?」
「もう関係ないですから」
何となく気になる話題だったので聞き耳を立ててしまう。
「でも、気持ちが完全に切れてても気になるものなんじゃないの?」
「それが、全く気にもならないんですよ。目障りとさえ思いませんでしたよ」
「割り切ってるのね~。あたしも彼氏がいた事があったらそんなものなのかな?」
「そうじゃないですか?先輩は彼氏を作るところからですね。別れてからの話なのでその先の話です」
珍しく機嫌が悪そうな言い方に聞こえる山北さんの発言に少し驚いた。
「あたしにだって好きな人はいるんだよ。」
「知ってます。」
「私が聞いててもいい話なの?それって」
つい会話に割り込んでしまった。
二人はため息を付いて。
「女の戦いです。聞いてもらって問題ないですし、何なら参加してもらいたいくらいですよ」
そういう山北さんの目は少し小垣さんを睨んでから、ニコッとこちらに笑いかけた。
う~ん。よくわからん。
「そうそう。あたしは学校行ってたよ。
料理教室が面白いし、こども食堂も勉強になるしね。
いつかあたしの好きな人に食べてもらおうと思ってね」
「天然物の食材は街にしかないですよ?」
「それはそうだけど、人も増えたし、あたしたちの家の近くでも天然物を育てられるようになればいいなって」
とこちらを見る。
「出来なくはないけど、大変だよ?」
「ですよね。でも、天然物って、同じ調理でも微妙に味が変わるので奥が深いし楽しかったんですよ。」
天然物ね~。言い方は少し引っかかるけど、確かに天然物って言えなくはないね。
ショウほどではないにしても、小さな魔法生物に家畜の世話や農作業を任せるとみんなのいう天然物を食卓に並べることは難しくない。
ガス問題が解決する前にできそうな気がするし、挑戦してみてもいいかな。
そんな事を考えているとスタジアムを通り過ぎたので旋回して空港に着陸させる。
ホテルに空きがあるか見に行きましょう。とわんこルームに向かうと、ここで寝るので大丈夫ですとかいう3人がいた。
流石にそれは許可できないので、せめて戦艦の自室で寝てくださいとお願いすると渋々従ってくれた。
それでいいなら、戦艦にも使い切れないほど部屋はあるし、たまには良いかと全員で戦艦に泊まることになった。
SA毎に休憩を挟むだろう初心者ドライバーさんたちの到着は明日だろうか?明後日だろうか?
到着したらスマホに連絡くださいとメールを打ってから朝陽と裕太と和泉にお休みの挨拶をして自室に入った。
自宅に帰ったらワンコ達と楽しく過ごそう。
でも、その前に3人の家を作らないとね。
テレビの設置もしてあげないといけないし、To Doリストをスマホに打ってベッドに入った。




