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絶対のんびり至上主義  作者: sakura
地底世界編
73/86

73話.家族

翌朝早い時間に目が覚めた私は朝食を軽く済ませたくて食パン、ジャム、味噌汁という普通の朝食で佐伯さん兄妹が起き出してくるのを待っていた。

・・・のだが、なかなか起きてこない。

自分だけ朝食を食べるのも失礼かと思って待っているのだが、昼まで寝る感じなのか?

お腹すいたんだけど。

もしかして、艦内が広くて迷ったとか?

ちょっと様子を見に行きましょうか。

こういう時は楽斗さんからだな。

というか女性の部屋をノックするつもりはない。

楽斗さんの部屋につくとノックをする。

数回叩くと


「はーい」


と声がした。完全に寝起きな感じの。

悪い事したかな?


「おはようございます。どうしました?こんな朝早くから」


「おはようございます。もう昼になる時間ですが、艦内で迷っているのか心配になって様子を見に来たんですよ」


「え?昼?」


時計は11時を指していた。


「すみません。すぐ起きます」


「実は妹さんもでして」


「わかりました。すぐ起こしてきます」


ドタバタと後ろで音がしてるけど、気にせずに食堂に向かった。

ブランチにしては量が少ないかとサラダとサンドイッチを追加しておく。


「すみません。寝坊しました」

「ごめんなさい」


食堂に姿を表した二人はきっちり顔を洗って服も着替えたようだ。


「疲れていたのでしょう。ご飯はできてますから食べたらうちに飛びますよ」


「はい。いただきます。」


席についていただきますをして食べ始めた。

思ってたよりも妹さんがよく食べた。

緊張感から解き放たれたって感じかな?


「ごちそうさまでした」


ごちそうさまをしてから食器を片付ける。

話し出そうとする妹さんを制して私は先に街に戻りたかった。

朝陽と裕太を放置できない。


一先ず、自宅に着陸して、佐伯さんに案内を頼んで興奮する妹さんを落ち着かせてもらおう。

その間に私は一人で街へ向かった。

市長に時間を取ってもらって事情を説明してから朝陽と裕太を迎えに行って戦艦に戻った。

その時、朝陽と裕太から離れようとしない一匹のわんこがついてきた。

朝陽と裕太は役所の子犬たちを育てるエリアで両親のように振る舞っていたらしい。

朝陽と裕太と離れようとしない子犬がいても何ら不思議はないけど、離れるだけでものすごく悲しそうに泣くから職員さんが可愛そうだから連れて行ってあげてくださいと頼んできた。

一匹の子犬が家族になった。

名前はどうしよう。

少しウキウキして考えながら戦艦へと歩いていると小垣さんと山北さんに遠藤さんが揃って合流した。

一旦自宅に戻ると伝えるとみんなついてくるそうなので全員で戦艦に乗って家に戻った。


そこで改めて事情説明があり、ここに住んでもらって構わないけど街でもいいよと伝えた。

街には行ったことのない妹さんが行ってみたいと言うのでまた街にとんぼ返りすることになったが、流石にそう何度も往復してるとなかなか疲れを感じて明日行くことになった。


そんな彼女は今、朝陽と裕太にじゃれついてうんざりさせている小さな暴君に夢中になっていた。


「はぁ~超可愛い~」


頬杖をついてうちの縁側で前のめりに様子を見ている彼女はそろそろ帰るよというお兄さんの言葉を何度目かの生返事で返した。


「もうチョット待ってて」


地底世界でも家畜として飼われている動物は色々居るけど柴犬の可愛さは異次元だったらしく、犯罪者の烙印を押されて緊張が続く日々から逃げた先で楽園にたどり着いたとずっとこうして血走ったような目で見続けている。


「食事は美味しい、可愛い子たちが居る。その上安全だなんて・・・

もう私ここに住む」


「だから、ここで住むために連れてきたんだってば」


何度目だろうか。

こんな会話(?)が繰り返されている。

全く聞こえていない彼女に何を言っても無駄だと思うけど。


ちなみに、小垣さんと山北さんと西園寺さんはみんな自宅に戻った。

うちに来た子犬の名前はまだ決めていない。

名前どうしよう。

そんなことより彼らだよ。


「今日はここで泊まります?」


「いえいえ、そこまでご迷惑をおかけするわけには」


と楽斗さんが言ったのに


「え?いいの? なら、私はここで寝ます。」


縁側で寝るとのたまう彼女はお兄さんのお小言は聞こえないのに、私の声はしっかり拾っていた。


「いやいや、それは駄目だろ」


楽斗さんは常識的だが、愛犬家としてうちのワンコ達が好かれているのは悪い気はしない。

しょうがないな。


縁側に布団を出して、朝陽と裕太と子犬用にベッドを出した。


「朝陽、裕太。今日はこっちで寝てくれる?」


「わかった」

「いいよ」


そう答えて縁側に上がってベッドで丸くなる。

子犬用のベッドが空いている。

裕太と同じベッドで丸くなったからしょうがない。


「お利口さんで、かわいくて、会話もできるなんてはぁ~実は私、もう死んでて新しい世界に生まれたみたいだよ~」


楽斗さんはため息を付きながら


「すみません。」


とそれだけ吐き出した。

楽斗さんも心配だったようで、俺もこちらで泊めていただいてもいいですか?

と聞くので了承して縁側に近いキッチンの床に布団を出した。


暗くなってワンコたちが見えなくなったら流石に寝てくれるだろうからと私は気にせず寝室に戻った。

明日もまた街に遠出かと思いながら、今日はしっかりと休むことにする。

子犬の名前は明日の朝考えよう。



翌日、散歩に行こうといつも通り起きて準備をしたらすでに妹さんが起きて3匹のわんこを抱えるように抱きつきながら撫でまくっていた。

楽斗さんはその光景を光を失った目で眺めていた。


「おはようございます」


挨拶をして3匹を彼女から引き離して胴輪をつけていく。

リードを持って散歩に行くわけだが、案の定、彼女もついてきた。

いつもの散歩コースの公園に向かって一周する。

子犬はあっちもこっちもと気が散ってしょうがない様子だったので、朝陽と裕太のリードをそっと外す。

子犬に不意に引っ張られると朝陽と裕太も引っ張られてちょっと迷惑そうな顔をしていて可愛そうだったからね。

リードを外しても朝陽も裕太もルンルン気分で一緒に歩く。

子犬はやはり落ち着きがなくて興味があるもの全ての匂いを嗅いでいた。

私は散歩中あることを考えていた。

これだけわんこを好きになってくれたのなら、これまでの精神的苦痛も加味してペットセラピー的な効果に期待しつつ、子犬をプレゼントしようと。

朝陽と裕太にベッタリな子とは別に柴犬を生成して、飼い方は西園寺さんに教わるようにすればいいだろうね。


その前にとりあえず今日は朝食後に街だね。

楽斗さんの免許取得も必要だろうし。

散歩を終え、朝食を出してわんこも人間も朝食を摂る。

一休みしてから集まってきた小垣さん達と合流して戦艦に全員で乗り込むと街に向かって飛んだ。

空を飛ぶ感動なんて興味ないのか、妹さんはわんこルームから出てこなかった。


無事に到着して着陸すると全員で降りて街に入った。

ある程度のことは市長にメールしているので妹さんも普通に受け入れられた。

楽斗さんは朝ごはんを食べてからそれほど時間が立っていないにも関わらず、妹さんの手を引っ張って食堂に連れて行った。

その後教習所コースだろう。いや、もしかしたら学校かな?

私は頼み事を聞いたりしながら様子を見ようと学校を訪ねた。


先生方は独自の教育方法とやらで、一人一人教え方や説明の仕方が違って面白い。

たゆまぬ工夫の成果って感じだった。

中でも樹先生は実践する方式を取っているようで、数学で実験を用いているのも理解しやすそうでいいなと思った。

よほど食器を作った実践講習がお気に召したようだ。

校舎を授業風景を見ながら歩いていると翠先生がいた。


「中島先生」


授業中の教室に配慮して小声で呼び止められた。


「すみません。お願いがあるのです。」


教育に必要なお願いなら聞かなければいけない。


「どのようなお願いでしょう?」


正直、色んな工夫をこらしてる教師陣が、私にお願いしないと実現できないことの予想がつかない。


「実は、ペットの飼い方について、学校教育に取り入れてほしいという要望が役所から届きまして検討中なのですが、家でも飼ってるのに、なんていうか、うちの子って他人への警戒心が強くて、子供に会わせ辛くて。役所でお願いしても、責任を持って世話をして、飼うという代表者がいないと承諾できないって話だったのです。」


実際に飼う大変さを教える授業を行うのに責任の所在をはっきりさせないと飼育許可を出せない。もどかしい問題ですね。

どちらの意見も正しく思えます。


「それでは、犬ではないですけど・・・」


そう言いかけてやめた。

学校で育てるならうさぎと思ったけど、そんな事をすればまた役所に迷惑がかかって呼び出されることになる。

イメージ通りの生き物が生成できるなら、犬だけど、魔法生物。

つまり、仮に餌がなくても生きられるけど、餌をきちんと食べないと無駄吠えする。

散歩に連れて行かなくても問題ないが、散歩に連れて行ってくれた人に好意を向ける。

そんなわんこがいればどうだろう。

そのわんこが懐いている子供はきっちり世話をするし散歩も行ってくれる。

そうでない人は、飼う資格があるか考えないといけないという形にすればいいだろう。


「中島先生?」


「ああ、すみません。少し考え込んでしまいました。

犬以外にすると市長に迷惑がかかりそうだったので犬を生成しますが。

熱心に世話をするかどうかで懐く度合いが変わってくるような性格をイメージできれば飼い主として的確かどうかの判断材料としようと思いまして」


「そんな事ができるのですか?」


「すみません。やってみないとわかりません。」


「それでもいいです。お願いします。」


そうして生み出された二匹を校庭に作った柵の中に犬小屋を作って飼うことになった。

もちろん報告は市長か、役所の担当者にしないといけないので、後で忘れないように行かないとな。


「ありがとうございます。きちんと世話をするように、可愛いとか楽しいだけじゃないことも教えていきますので」


そういって頭を下げる翠先生に挨拶をして役所で担当者に話を通した。


「助かりました。学校で必要だとはわかっていますが、責任の所在を曖昧にはできず、どうしようかと困っておりましたので」


「今回は仕方がないですね。規則として責任の所在を明らかにしないといけないことは必要ですし、飼い主不明で育児放棄なんて許せませんからね。」


「だからこそ、本当に助かります。

助かりついでに、猫をもう10匹ほどお願いできますか?」


ついでで頼む話ではなさそうなのに、どうにも笑顔の圧力が強めで断れなかった。

少なくとも佐伯さん達兄妹が落ち着くまでは滞在するので、ある程度困っていることがあるなら力になりつつ、一段落ついたら家に帰ろう。

どうにも街の自宅は仮宿ってイメージになっていて、家に変える感覚ではないんだよね。

不思議なことだ。

騒々しいと言うか、人の喧騒があるからなのかな?

夕方の散歩をランニングする人や散歩する人たちにまぎれて公園を歩き、家に帰って夕食から就寝。

以前のように全員で集まって昼食や夕食みたいな感じがなくなったので、無理に虚勢を張る必要がなくなったのにやはり落ち着かなかった。


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