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絶対のんびり至上主義  作者: sakura
地底世界編
72/86

72話.佐伯さんの事情

佐伯さんが楽しみまくっている間、私は何故か、色んな人から頼み事を受けていた。

まずは、橋田さん。

建築会社社長でバスケのトッププレイヤー

彼は私を見つけるなり大声で呼びかけて走ってきた。

とんでもなく声が大きくなっていたので色んな人が振り向いて少し気まずかった。

頼み事というのが、植樹について教えてほしいということだった。


「あまりにも建築依頼が多すぎてこのままでは森がなくなってしまうからどうしたものかなと思って」


「いや、そんな事言われてもね。」


「頼むよ中島さん。なんかいい知恵はない?」


うーん・・・。難しい話だね。

木を生成しても焼け石に水だからな。


「種子を集めて植樹してみたらどうかな?」


「種子?」


「つまり種ですね。木の実とかを適当に土に埋めて水をかけてみたら長い年月をかけて10年くらいで木になるんじゃないですか?」


「そんなに時間が?」


そういうと黙り込んで考え始める橋田さん。


こうなったら併用してとかなんとかブツブツ言うけど、声がデフォででかいために普通に聞こえている。


「とりあえずありがとう、中島さん。その植樹というのと生成で木材を出すのを併用してみるよ。コンクリートが生成できたら良いんだけど、まだ誰にもできなくてさ。」


「コンクリート?少し質問しますけど、接着効果のあるものに心当たりってあります?」


「接着、くっつけるためのもの?メロって言われてる物があるけど、魔法で出せるやつで」


「それならそのメロっていうのと、砂利と水、砂を全部混ぜて生コンを作って練ってそれを形成して固まったらコンクリートができるよ。多分ですけど」


「おお、生コン! やってみるよ。ありがとう中島さん。

でも、植樹もやって見るから木はどれほどあっても困らないし、流石にコンクリートで家具を作るのはちょっとね」


「お役に立てたなら良かったです。あと、基礎研究もやってみると良いかもしれませんね」


「基礎研究?」


首を傾げる橋田さん。


「つまり、何をどうすると強度が出るとか、コンクリートの作り方を他の素材で試してみるとか、石を加工できないかとかそういう試行錯誤をすることですね。」


「そういうのが得意なやつはうちには居ないからな~。育てるか募集してみるよ。」


「ええ、頑張ってください」


そう言って別れてからも次々とお願い事をしに来る人達がいた。

犬の飼い方の質問からバスケのコーチをしてほしい。

野球の特訓方法を教えてなどなど多岐にわたる。

その中にはあおいちゃんのような食堂をしたいという人もいて、面倒だから商店街を作っておいた。

家具の販売が始まって、食事処ができているのだからいずれ加工品のやりとりもできるだろう。

そこに金が絡まなければ趣味と道楽の範囲だ。

金が絡まない限り善良でいられるだろう。

そんなこんなをしていて日が暮れた。

散歩から帰ると山北さんが待っていて見ましたよとニヤニヤしている。


「何をでしょう?」


「いえいえ、人助けしてる所をバッチリと」


と、からかわれた。

そこに遠藤さんと佐伯さんが集まってきて今日の報告会みたいになった。


佐伯さんは免許取得に向けて猛特訓してるらしい。

ものすごい本気で取り組んでるらしくて鬼気迫る迫力があると遠藤さんが言っていた。


「なんでそこまで本気なんですか?」


食事を作ることに意欲を見せたかと思うと車の運転にも本気。

どうしてもそのあたりが繋がらない気がして聞いてみる。


「あの、話してませんでしたけど、俺には妹がいるんです。

いわゆるその、政略結婚ってやつでk結婚して相手の住む街に引っ越したんですけど、そのあとすぐにその街から犯罪者が出まして・・・」


つまり、関係なかったのに非国民とか言うのにされたのか。

行商をしていた時に噂を聞きつけて非国民集落に立ち寄ると妹もいたと。


「俺は妹を助けたいんです。関係ないのに巻き添えで非国民にされたから、安住の地を探して安全を確認できたら迎えに行こうって。」


「旦那さんは良いの?」


「それが、犯罪者というのがその旦那だったらしくて、助けるどころか許せない相手です。」


地上に逃げられるならそれが一番だと思っていたらしい。

それでも、魔法がなければ生きられない世界かどうかを確認しないといけなかったし、迎えに行く手段も探さないといけなかったので車があればと思ったんです。と力強い目で訴えてきた。

腐敗はそれを許す環境も問題と考えるなら自浄作用のない街を犯罪者にしてしまうのはかなり強固な政治と言えるが、確かに巻き込まれた側からすれば溜まったものではないな。


「では、やりたいことができない状況にしている鎖は切ってしまいましょうか」


「え?妹を忘れろと?」


驚愕したように怒りを込めてこちらを睨むが誤解ですよ。


「いえ、さっさと妹さんを助けに行きましょうって意味です。」


「え?助けてくれるんですか?」


「別に殺し合いをしに行くわけじゃないでしょう?そんな悲壮な顔しなくても大丈夫ですよ。戦艦に乗っていくので」


「いいんですか?非国民にされてますよ」


「別にそこの国民じゃないので」


「あぁ、そうでしたね。」


納得するようにつぶやくと、姿勢を正して頭を下げた。


「よろしくお願いします。」


と。


そこからの行動は早い。

市長に連絡を入れてちょっと佐伯さんと遠出してくるから朝陽と裕太、小垣さん達をよろしくと伝えると戦艦で空に飛び出した。


目的地はわかりません。

佐伯さんが言うには地下に行けばわかるということだったので、とりあえず自宅から地下に降りた。

戦艦で行けるほどの大穴を開けると戦艦でそのまま地底に入った。

そこからは佐伯さんのナビで移動するわけだけど、地底がいくら広いと言ってもいちいち柱のように伸びている岩や色んな物がぶつかりそうになる。

速度が出せない。

というかけっこうぶつかっては振動と緊張で吐きそうになった。

小型の戦艦作ったほうが早かったかな?


それでもゆっくりだからこそ道がわかるという佐伯さんには救われる思いだった。

七色に光りを反射するマジョーラカラー(商標登録された色名)のような鉱石等目を引くものはあるもののゆっくり見て回れる余裕は全くない。いずれ時間があればって感じだね。


「ああ、この先です。」


佐伯さんが突然大きな声をあげたのは戦艦では通ることのできないサイズの洞穴のような場所だった。

仕方がないと戦艦を着陸させると先に走って行ってしまった佐伯さんを追いかけた。

こんなごつごつした所を走れるってすごいなと妙な感心をしてしまった。


後を追って洞穴に見えた先は途中から人工的なトンネルになっている。

とは言っても炭鉱みたいな感じのトンネルだったけど。

というか、枝分かれしてたら終わりなんだけど、置いてかないでよ佐伯さん。

少しカーブしているトンネルを10分ほど歩くとようやくトンネルから出た。

そこはそれまでよりも明るい場所で廃村になっていたところよりも簡易な家が立ち並んでいた。

サーカス団のテントみたいな?

仮設住宅って事なんだろうけどそのテントも縫い合わせたことがわかるのでそういう状況と環境なんだろうね。

非国民になると街に出入りする市民証が使えなくなる。

しかも、国の管理下にある街に違法に滞在していると殺されても文句は言えないそうだ。

場合によっては軍が差し向けられることもあるらしい。

モラルを守ると言っても流石にこれはやりすぎだと思った。

このあたりの詳しいことは戦艦の中で佐伯さんが話してくれた。


どのテントが目的地かもわからない私は何もできることもなくそこで立ち尽くしていた。

佐伯さんが連れてきてくれるだろう。

どんな罪を犯したのか知らないけど、妹さんの旦那さん一人のためにこんな人数が街から突然追い出されるのか。

テントは大小様々でひっそりと息を殺しているように生活してるようだ。

ほとんど物音も聞こえない。

何百人が住んでいるのか知らないけど、これが地底世界の政治か。

どうにもやるせない気持ちにさせられる。



「中島さ~ん」


その声は静寂を突然切り裂いた。


「探しましたよ、中島さん。」


息を切らせて走ってきたのは佐伯さんだ。


「妹さんは?」


「兄さん待って」


佐伯さんに遅れて息も絶え絶えに走ってきた女性。

佐伯さんとよく似ている。

特に目が。

ここは、とりあえず、妹さんの息が整うまで待つしかないかな?


「本当にここから出られるの?」


事情説明もなく連れ出してきた妹さんに私の前で事情説明を始めていた。


「中島さんが助けてくれるんだ。もうこんな所にも、あんな旦那のことも捨ててしまえばいい」


「旦那、ええ、そうね。あんな男に嫁がされたせいで、私がこんな目に遭うだなんて思ってなかったわ。政略結婚だからしょうがないって思ってたけど好きでもない男な上に犯罪者ってなんなのよ」


妹さんは未だに怒りが収まっていないらしい。


「とりあえず、お話は伺いますから一先ずうちに行きましょうか。」


そう言って話を切り上げさせると戦艦に乗ってもらった。

私はその前にやることがあるので少し残り地上との間に巨大なゲートを生成した。

遠隔で戦艦から開閉できる巨大ゲートを設置して開くとゆっくり戦艦を上昇させた。

地上に出ると夜になっていたので安全確保のために一旦ゲートを閉じてその上に着陸した。


「一旦朝までここで休みます。

ゆっくり休んでください。

部屋はどこでも大丈夫ですよ」


それだけ伝えると私は自分の部屋に戻ってベッドに入った。

朝陽と裕太が待ってるから、自宅の前に街に行かないとな。


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