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絶対のんびり至上主義  作者: sakura
地底世界編
71/86

71話.佐伯さんの希望職種

地底世界の事を色々聞いて、地底では馬車が使われていることもわかった。

馬車の説明を動物に引っ張ってもらう車のことですと佐伯さんが答えた時、3人は怒りの目を向けた。

どうも、犬に辛い労働を強いていると思ったらしい。

馬という生き物がいてと必死に佐伯さんが説明していた。


ま、地底世界についてはとりあえず放置するに限るな。

格納庫は魔力と鍵がないと開かないようにしておいたので戦艦とか兵器類を使われることもないだろう。

どのみち、国や市町村に入れる目処も立ってないからできることもないしね。


佐伯さんは地上生活を満喫している。

遠藤さんと妙に馬が合うようで、一緒にいることが多い。

私は相変わらず朝陽と裕太を愛でる日々。

朝陽と裕太も街にいたときよりも喜んでくれて満足だ。

喜んでいる理由が3匹の子犬達のような気がしなくもないけど。


佐伯さんと遠藤さんへの授業も順調らしいある日の事。

遠藤さんに相談を持ちかけられた。


「中島さんにお願いしたいことがあるんですけ」


話し始めたのは佐伯さんのこと。

小垣さんが遠藤さん、佐伯さんを連れてサーキットに行って楽しんでから免許がほしいと言い出したそうだ。


「魔力問題って何とかなりませんか?」


佐伯さんは魔力を持たないので免許証と車のキーを連想させられないと考えたそうだ。


「一旦街で免許証の基準クリアと、発行をしてみましょう。」


そういう事になった。


街へ行く予定日当日、佐伯さんは目をランランと輝かせて待ち合わせ場所にやってきた。


「どっちで行く?」


「車か戦艦かですか?」


「うん」


「戦艦でお願いします。」


朝陽と裕太たちのことも考えると戦艦だったけど、免許が目的なら車のほうが良いのでは?と思って聞いたのに、みんな戦艦派だった。

わんこも含めて全員で地上に出してきた戦艦に乗り込んだ。


佐伯さんはおっかなびっくりに乗り込んだ。


「地底ではそこまで広い場所を確保するのは難しいし、空を飛ぼうなんて天井があるから無駄って考えるので空を飛ぶなんてみんな考えませんよ」


ということらしい。


私達はまっすぐに街を目指して飛ぶ。

艦内では思い思いに楽しんでいた。

私は相変わらず操縦席でわんこたちはみんなわんこルームに入り浸っていた。


「こんな重そうなものが空を飛ぶなんて」


佐伯さんの言葉は的を射ている気がする。

他の人なら大きいものが空を飛ぶなんてというだろう。

大きい物と重い物は似て非なる表現で、大きくても気球のように大きくても軽かったりすると飛ぶことの想像は難しくないけど、単純に重いものが空を飛ぶことはしっかり理屈を理解していると感じる。


「熱に強い袋に空気をためて中の空気を暖めると空を飛べたりしますよ」


「でも、これは明らかに鉄の塊じゃないですか!

全然違う話ですよ」


うん、普通に理解してるね。


「鉄が重いのはその通りですけど、う~ん、そうですね。

ものすごく簡単に説明すると、重ければ重い程持ち上げるのは大変ですけど、強い力で持ち上がります。その強い力を常に出し続けていられるから飛べるわけですよ」


「は、はぁ~」


多分理解はしているけどそれほどの強い力の発生を感じられないんだろうな。

魔法だし。


そんな解説をしながら時折山北さんも理解してないような質問が飛んでくるけど、答えながら操縦していった。

話をする余裕があっても人を載せて空を飛んでいるのだから適当な運転はできない。

戦艦は横幅も高さも大きすぎるのでここから見える範囲で全周囲を確認できるはずもない。

唯一救いなのはこの戦艦以外に空を飛ぶものは何もないということだけだった。

それでどうやって着陸するのか。

もちろんゆっくり慎重に着陸態勢になってからダンパー頼りです。

大きな衝撃が来るのは嫌だからね。

だから街中に降りるなんて考えたこともない。

インターホンが普通に機能しているのだから上からすっぽり見られるカメラと操縦席にモニターを設置すればできるかもね。


空の旅は加速感をあまり感じない。

見える範囲に木々でもあれば加速感は感じるかもしれないけど、そんなものはなかなかない。

あまり楽しめるものでもないけど、皆楽しげだから満足だ。


ナビを見ながら空を飛び、街に近づくと減速してゆ~っくり高度を下げて着陸した。


「着きましたよ。」


皆に声をかけて全員で降りる。

飼い主に追従して皆でわんこルームに寄っても遠藤さんも佐伯さんも何も言わなかった。


市長に挨拶しようと市役所に全員で移動する。


「中島く~ん、待ってたよ~。」


嫌な予感がする。


「何かありました?」


聞きたくはないけど聞かざるを得ない。


「それがさ~、この前わんこを増やしてくれた時に2匹だけ変わった子がいたじゃない?

その子達の人気がすごくて、あの子が飼いたいって人が後をたたないんだよね。

課長なんかは浮気者の言うことなんざ無視しなとか言って煽るしさ~」


課長か、課長ね。


「わかりました。

あの子達は猫と言います。

犬と違う種類の生き物ですけど、犬派の私は集中しないと生み出せないと思いますけどやってみますよ。」


「助かるよ~。

それで、君が地底の人・・・かな?」


「はい、はじめまして。佐伯楽斗です。

よろしくお願いします。」


腰を折りお辞儀をする。


「ふ~ん。あまり変わらないんだね。魔力がないだけって感じかな?」


とこちらを見る。


「そのようですね」


納得したような顔で何度か頷くと


「免許証の事については教習所に行ってもらうけど、体力測定とかの身体検査した後だよ。

基準がクリアできないとそもそも免許証以前の問題だから、僕にも同しようもないからね」


「わかりました。」


ここから先は社長改め市長とここの皆さんにおまかせしましょう。

それにしてもとガラスから外の状況を見る。

色々変わったな。

街には木造建築が増え規模が大きくなっている。

マンションも一戸建ても増えてもはや知らない街になってきている。

皆が笑顔でわんこの散歩をしていて子供達が走り回り、見た感じ肥満体型の人はいなかった。

車も何台か走って高速道路方面に行き交っている。

佐伯さん達と別れて私は役所内の保護エリアに向かうと市長の奥さんが居たので挨拶をして猫を生み出すことを伝えた。


「もしかしたらわんこと喧嘩するかもしれないので、同時に買う人が居たら気をつけてください。

わんこはヤキモチ焼きだったりしますし、にゃんこに飼い主が取られたと思ったらいじめるかもしれません」


「にゃんこですか?」


「あ~、犬はわんこ、猫はにゃんこと呼んでいたのですみません」


「いえ、可愛いと思います。

種類が猫で愛称がにゃんこと」


わざわざメモまで取っている。

思い出しながら猫を生成した。

確か下がザラザラしてて爪の出し入れみたいなことをするんだよな。

猫と触れ合ったことなんてないからあまり知らないけどこんな感じだろ?と生成していった。


できれば犬派が増えてほしいんだけどな~。


「それと」


言い忘れていたことがあって奥さんに声をかける。


「はい?」


「猫に散歩は必要ないと思います。自由に家の中を歩き回って散歩しますし、勝手に外に出ようとするのでそこだけ注意してあげれば飼いやすいと思います。

爪が痛いのと、かなり気まぐれなので注意してください。」


「わかりました」


「それと適当に切り株をおいてあげると良いと思います。

猫は爪とぎで家具でもなんでも引っかき傷だらけにしますから、ストレス発散できるようにしてあげることが大事ですよ。」


「夫も私も猫を飼う予定はないですけど、飼う人には伝えておきますね」


「お願いします」


20匹程生成すると頭がパンクしそうになった。

猫の種類をそんなに知らないし、思い出しながら集中して生成するのはなかなか骨が折れました。


疲れたので今日はこの辺でと言い残して役所を辞して、吸い込まれるように傍にあった飲食店へと入った、


ここは美野里ちゃんとお友達のあおいちゃんで始めた飲食店だ。

まだ混み合う時間ではないので並ぶ必要はなかったけど店内はそれなりに混雑していた。


「あ、いらっしゃいませ」


「こんにちは、美野里ちゃん食べに来たよ」


「ありがとうござます。あおいちゃんのお料理は前より美味しくなってるので後で感想を聞きたいです。」


「私の評価は厳しいよ」


「えへへ、おいしいから厳しい評価の方があおいちゃんも喜ぶよ」


客商売を始めたからか、美野里ちゃんの言葉遣いが少し変わった。

大人になったな。

思わず頭を撫でるように手を伸ばしかけたけど、そのまま引っ込めた。


隼人くんも成長してるんだろうね。


出てきた料理は回鍋肉定食。

この食堂ではメニューはなしにして、あおいちゃんの気まぐれで提供する料理が変わるらしい。

食堂が混み合うときはカレーか焼肉の匂いが広がったときらしい。

美味しそうな匂いが広がらないと繁盛しないそうだ。

うどんの時などやってるかどうか確認しに来る人もいるらしい。


ちなみに回鍋肉定食だが、私がよく通った町中華の店より美味しくなっていてかなり驚いた。

食堂と学生の二足のわらじが大変だから、学校は美野里ちゃんとあおいちゃんの出席免除を決めて、1週間毎に授業を行うことにしたそうだ。

2週間同じ授業がされて、一週間ごとに手伝いの生徒と授業の生徒が入れ替わるらしい。

社会勉強として学校の新たな授業の一環として稼働していると、手伝いのボランティアで来ていた生徒のお母さんが教えてくれた。


ちなみに隼人くんは1週間の課外学習を建築会社で見習いをしているそうだ。

他にも役所や牧場などそれぞれ興味のある場所で色んな職業訓練のようなものが始まっているらしい。

その中には果樹園や田畑の世話もあって、果物や米に野菜も栽培できるし牛等家畜の世話も始まっている。

子供が生まれすぎて大変になった頃から少しずつ解体して肉等も手に入り始めたということで、本格的に魔法なしの生活が始まりかけているが、魔法も練習しないと使えなくなりそうだから、そこは後で市長に伝えておこう。


美野里ちゃんが呼んでくれたあおいちゃんには今まで食べたことがないくらい美味しかったよと伝えてその場を後にした。

腹ごなしを兼ねて久しぶりに色々と徘徊して見て回った。

街には散歩やランニングする人が多く居て、服装も多種多様に揃っている。

あちこちキョロキョロ見回しながら歩いていると色んな人に挨拶されて挨拶を返す。

バスケの試合も少し観戦してからショウに挨拶して、元の家に戻る。

朝陽と裕太は嬉しそうに土間で走り回っていた。

今の家も間取りとか同じなんだけどね。


佐伯さんは遠藤さんが連れていき、小垣さんと山北さんは旧交を温めているようだ。

さて、私はどうしよう。

特にやりたいこともないけど、散歩に出かけると西園寺さんが散歩しているところに出くわした。

モモちゃんと一緒に嬉しそうに散歩している。

何となく一緒に散歩して、公園のベンチで草木の匂いを嗅いでいるワンコたちを見ながらのんびりしていた。


「嬉しくなってしまいますわね。」


突然話しだした西園寺さんに困惑する。


「ん?」


「皆さん本当に可愛がっていらっしゃるのが表情を見ていてわかりますもの」


「あぁ、そういうことですか。」


「わたくしはモモちゃんといると幸せですわ。

ですけれど、他の皆様も同じだとわかって嬉しかったという意味ですわ」


「西園寺さんは自分の子供のようにモモちゃんを大事にしているので私も嬉しいです」


「もちろんですわ。こんな可愛い子を大事にしないだなんてありえませんもの」


力強くそう言って嬉しそうに笑う。

優しげに目を細めてまたモモちゃんの一挙手一投足を見ていた。


朝陽と裕太が飽き始めたので先にベンチから立ち上がり、家に帰ろうとして公園の入口に向かって歩き出し、振り返ると知らない男性とわんこ談義でも始めたのか西園寺さんは嬉しそうに笑いながら話していた。

なんとも社交的な事だ。

家に帰ると遠藤さんと佐伯さんが待っていた。


うちに上げて話を聞くと、基準をクリアしていたから教習に入る前に、魔力がないことを心配した遠藤さんが免許証が作れるか先に試してあげてほしいと言い出した所、問題なく免許証が発行できたらしい。

免許証を持っているけど、不正をしたような気持ちになって相談に来たらしい。


「別にいいんじゃないでしょうか?

一旦正式に免許発行まで預かってもらえばいいですし、運転もできるんですよね?

エンジンがかからないとか魔力がないと何か不具合が起きるとかでない限り、皆さん同様に免許試験に合格してから返してもらうようにしてください。」


「はい。わかりました。」


「それと、もう一つあるのですが」


遠藤さんが先を促す。


「佐伯さんはあの、市役所の近くの子ども食堂?でしたっけ。

あそこで味に感動して、こんな料理が作りたいと突然そこの子供に頭を下げたんですよ。」


「いや~あれはしょうがないですよ。あんなに美味しい料理をまさかあんな小さな女の子が作ってるなんて」


地底世界で肉、魚、野菜に果実なんでもござれな生活だったのに、地上にあるものであんな美味しい料理が作れることが心底信じられなかったと語る佐伯さん。


「でも、難しいですよね? みんな魔法で食材を出してるから」


と遠藤さんが残念そうに言う。


「あれ?聞いてませんか?

自然の素材で野菜や家畜の肉が出回り始めてますよ」


「え?そうなんですか?」


佐伯さんの食いつきが凄い。

これはじゃがいもや人参の畑を増やしたり、香辛料を増やしたりとやることが増えそうな予感がするな。

まぁ、畜産も含めて広めていくなら鶏など雄鶏を含めて増やしてから雄鶏をより分けて無精卵を食料にしたり鶏肉も食べられるようになる。

魚は池を作ってあるのでそこで飼育してもらおう。

プランクトンが上手く生成できるかはわからないけど、魚は必須だよな。

昆布やその他色々生成しておこう。


「佐伯さんは食堂で料理修行をしたいってことですか?」


「ええと、食事には興味があります。でも、それだけじゃないですね。

バスケも車も、ここは珍しいものばかりで、こういうのを待っていたって感じです。

地底世界のように仕事をしないといけないって言われたら、やっぱり食堂ですけど」


消極的肯定みたいな言い方をし始めた。

子供店主に弟子入りが恥ずかしいとか思ってる感じか?


「それにしても美味しかったですね。

あんな生徒を教えることができる教師ってやっぱ凄いです」


「樹先生達は色々考えながら頑張ってるからね」


「俺も早くそうなりたいですよ」


「教師?」


私と遠藤さんが食堂の話から学校の話に及んだ時に佐伯さんの質問が飛んできて、学校の説明をする。


「なるほど。その修業で中島さんに弟子入りしてるのが遠藤さんってことですか」


「まぁ、そんな感じかな?」


「才能を見出して伸ばす、立派な仕事ですね」


佐伯さんは感心したように驚きを口にする。


「あれ?ってことは学校に学びに行けば、子ども食堂のような料理を教えてくれるってことですか?」


その質問には私が答えるしかない。


「あれは、学校の実習を通して自分で考えて工夫をした生徒が考えて作り出した料理ですから、あのままを教えてるわけではありませんよ」


「それでも、あんなふうに料理ができるようになる基礎を学んだってことですよね?」


なかなかの熱量で質問してくるのでこちらも少し引っ張られるようにテンションが上った。


「そうですね。基礎は学べます。そこから先は独創性や、発想力。美味しい料理を作りたいという情熱等が必要になるでしょうけど、色々試す機会はあるでしょうね。」


「素晴らしい。そこで学ばせてもらえませんか?」


「え?学校で?」


「はい。」


佐伯さんの真剣な表情に笑ってしまいそうになる。


「学校は子供達が勉強する場なので無理じゃないですか?」


と遠藤さんが言うが、大人も勉強できるように教室を開いているはずだ。

料理教室や大人の部のように大人が勉強できるようにもしようと言っていた記憶がある。

結局あれってどうなったんだっけ?

人が集まらなかったんだっけ?

覚えてないから学校で聞いてみて?と伝えて解散になった。


私はそのあと農園に畜産関係のテコ入れを魔法で生成したあと、そういえばと戦艦の上から見下ろすモニターが作れるかやってみた所、上手く行ったので満足して家に帰った。


風呂に入り、少し埃っぽくなっていたベッドを消して再生成したあと横になった。

明日は特に予定がないから朝陽と裕太と遊ぶかな。



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