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絶対のんびり至上主義  作者: sakura
地盤固め編
7/86

7話.異常有り

私は少し困った事態に陥っていた。

食糧問題も確かに困るが、トイレ事情も困っている。

だが、それよりもわんこ達の言うぱちぱちとぱしゃぱしゃが間違って伝わる。

朝陽がぱちぱちしたいと言い出した時にぱしゃぱしゃしたらいいよと言った。

私は雄太が水を出して、それに火を使ってもいいよと意味で言った。

だが伝わらなかった。

やったーと喜んで森に向かって放ってしまった。

急いで雄太に消してもらったけど森林破壊だけでなく、うちまで燃えかねない。

しかも、この家は借家。

元の世界に戻れるかわからないけど、汚さないように傷つけないように注意してきた。

水道のパッキンがだめなら修理して大事に使ってきた。

火の粉で焦がすなんてあってはならない。


だから、私は朝陽と雄太に火と水を教えた。

水は知ってたはずなのに、火のぱちぱちに張り合うようにぱしゃぱしゃと言い出してしまった事が今回の不幸な事故を読んでしまった。

正直そうはならんだろ?と思ったよ。

でも、うちのわんこ達がいくら天才でも、しゃべり始めてまだ数日なのでこういうこともある。


日本語は特殊な言語と言われている。日本人が英語が苦手なのにも通じることだが、周波数帯が違うらしい。

わんこの周波数帯にはもしかしたらぱちぱちとぱしゃぱしゃは同じに聞こえるかもしれない。

れっきとした日本生まれ日本育ちでお座りやお手を聞き分けていたうちのわんこにもう一度教えていく。


「朝陽、ぱちぱちをここに出して」

「はーい」


焚火を組んだ場所に火を出してもらい燃え続ける炎を見て細かい祖語は置いておいて今ぱちぱちしてるのが『火』だよ。


「ぱちぱちとぱしゃぱしゃじゃだめ?」


かわいく見上げてくる朝陽にしょんぼり気味の雄太。

雄太も同様にバケツに水を出してもらって水だと教えた。

いや、知ってたはずの言葉を再度思い出してもらった。


可愛くて許しそうになるが鋼の意思で気持ちを押し止めて懇切丁寧にじっくりと辛抱強く教えた。

大変だった。

主にうちのわんこの可愛さが強敵すぎた。

例えるなら徹夜明けの睡魔暗い手ごわかった。

はっきり言おう、私は会社では硬派で真面目な仕事馬鹿だが、わんこと戯れるときは赤ちゃん言葉を使っちゃう系のうちの子最高にかわいい説を声高に叫んじゃう人間だ。

共感する人は10億人中10億だと思うね。


さて、狩りもできない現状で私の命の灯は消えつつあるのをひしひしと感じている。

わんこ達の食糧はあるとしても、1年も保つ物でもない。

こんなかわいい子達がやせ細って死ぬ未来なんて絶対に許せない。

手始めに私はうちの子達にタブーとしてきた禁断の知識を授けようと思う。

餌がどこにあるのかを教えるのだ。


「朝陽、雄太。おいで」


2匹を呼ぶ。


「二人ともよく聞いてね。玄関を上がり左の和室に入る。ここの棚を開けると」


「私たちのごはん~」


匂いで分かったのか朝陽が飛びつく。


「ダメ、今はまだご飯の時間じゃないよ」


「もし、私が動かなくなったら、おなかがすいたときに自分で開けて食べていいよ」


「私おなかすいたー」

「朝陽ちょっと静かにして」


もはや条件反射の朝陽を雄太が止める。


「いっぱい食べたら食べられる回数減っちゃうからね。

 おなか一杯になるまで食べないようにするんだよ」


感傷的な気分になって2匹を抱き寄せて頬を寄せる。

ゆったりした手つきで二人を撫でていると、もっと長く生きられればいいのにな~

この子達と別れるとか考えたくもないな~と目頭が熱くなってくる。


そんな時だった。


どー――んん!と、とんでもない地響きで家が揺れた。


地震かっ!と焦ってわんこ達と台所の食卓のテーブルの下に身を屈める。

数分固まっていたが、余震も何もなさそうだった。


「今の何~」

「気持ち悪い」


わんこは車でもすぐに酔ってしまうので地震の時は怯えてしまう上に体調も崩したりする。


「大丈夫大丈夫。大丈夫だからね」


徐々に落ち着いてきたのを見計らって周りの状況を確認しようと思い立ち、玄関から外に出た。

庭、異常なし

玄関、異常なし

外、異常有り


女性が倒れていた。

この世界でも声を聴いたことがある。

それでも、姿も見えないので人間かどうかもわからなかったが、普通に人間だった。

いや、そこは問題じゃない。

魔法使いが切るイメージの暑そうな黒のローブに身を包み

肩から前に垂れ下げている三つ編みの髪の毛が長すぎて地面についている。

いや、それよりもなぜうちの前で倒れてんの?

行き倒れ?食糧問題抱えてるうちに来る?

ないわ~


女性の容姿について言及するのは良くないと思う。

それでも、お姫様抱っことか不可能な体系であったとだけ言っておこう。

つまり、家の中に上げるには引きずるか介護のように背中側に抱えるしか無理。

台車が欲しかった程だ。


私の部屋はベッドがあるが、さすがに見知らぬ女性をあげたくなかったし、Dの者として誤解も避けねばならない。

和室に布団を敷いて(お客様用)とりあえず寝かせた。

気温も湿度も酷いので掛け布団なしでタオルケット。


「この人誰~?」


朝陽と雄太が興味津々で匂いを嗅いでいた。

うちのわんこ達は知らない人には吠える。

匂いを嗅ぎに行くことなんてまずない。

寝てる人なら問題ないのか?

人間の尺度で言えば寝てる人にこそしちゃいけないと思うけど。


目が覚めるまでは放置するしかないね。

いくら巨漢でも女性と言葉を交わす事すらほぼなかった私は間近で女性を見て、抱えて、少し甘いにおいを感じてだいぶ落ち着かない気持ちになった。

邪念を払いつつこんなに太ってるんだから甘いものが好物のはず(超失礼)

とばかりに唯一残っていた甘味である飴を出して用意しておいた。

まぁ、この熱気のせいで袋開けたらべたべたして袋に張り付いてそうだけど、ない袖は振れない。


お茶でも入れようと戸棚を開けるとまさかの袋麺が6食分ストックされていた。

完全に忘れていた。

男の一人暮らしでキッチンの戸棚は基本的に魔窟である。

ネズミが死んでいても不思議はない程に開けることがない。

一緒に入ってた急須もあったが、その横にティーバッグの紅茶があったのでこちらにした。

しつこいようだが、男の一人暮らしで紅茶を飲む機会なんぞ来ることはない。

お客様用の布団も同様なのだが、いつか彼女ができた日にと用意していてできなかっただけだ。

Dの者は貞操観念が強く、彼女が泊まりに来たとしても多分同衾できる度胸がないビビりなので布団は必須だ。

明るくて優しい人で朗らかに笑ってくれて、死ぬ時までの短い間、わんこ達も含めて楽しく過ごせたらいいな。

行き倒れの恩義でも感じてくれて行為を抱かれたりしたらどうしよう。

困るな~。

男なんて誰でもいいわけじゃないとか言いつつもこんなもんである。

あわよくばを考えない男なんていない。


目を覚ますのをドキドキしながら待つ。

暇つぶしできる事もない。

スマホの充電ができない時点で終わっている。


この時の私は失念していた。

言葉を交わしたことのある感じの悪い人がいたことを


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