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絶対のんびり至上主義  作者: sakura
逃亡編
57/86

57話.くっしー(櫛菜さん)のアドバイス

わかってたことだった。

中島さんが出てこないことも、連絡が取れないことも。

あたしが、傷つけたからだと思う。

あたしは、中島さんにもっとみんなが感謝してるしあたしも大好きだって言いたかっただけなのに、どうしてこうなっちゃったんだろう。


何度も後悔した。何が悪かったのかもわからない。

課長は小僧はひねくれてるからほっときなって言ってた。

周りの人はみんな中島さんが作ってくれた街に感謝してたら、中島さんが気を悪くするようなこと言うべきじゃないっていう。


こっちに戻ってきてからもスマホに連絡もできず鬱々としながらも結城、陽太、モモの3匹の様子を眺めてはずっと考えていたら西園寺さんに


「わたくし、思うのですけれど、中島さんってこちらとの常識の違いが大きすぎてごご自身の存在も含めて異端のように想っているのかもしれませんわね。」


その一言に衝撃が走った。


「どういう意味?」


恐る恐る尋ねると彼女は話し始めた。


「わたくしは、皆様とそれほど長くいるわけではございませんわ。

だからこそ思うのかもしれませんけれど、私から見ますと皆様も十分すぎるほどに常識が異なりますわ。

スポーツの楽しさを知りましたけれど、モモちゃんの可愛さを知りましたけれど、知らなかった頃に比べると私も常識の違いが埋まっているのかもしれませんわ。

ですが、細かいことまで含めますと、中島さんの知る人間の常識ですら全く違うのかもしれないですわよ?」


常識の違い。

以前あたしがやらかしたことを、またやってしまったのかな。

中島さんの世界での事やトラウマを無神経に刺激してたのかな。

気をつけてるつもりだったのに。


「他人が信用できない世界かもしれないですし、生きているだけで苦しい世界かもしれませんわ。それは私にはわからないことですけれど、こちらの世界との違いが大きすぎてご自身の事をお認めに慣れないのではないでしょうか。

相手の事情を分からないで、ご自身のことをお認めになってみては?と言ったところで伝わらなかったりするものではございませんこと?」


そう言われて腑に落ちた気がした。

まなちゃんも黙って視線だけを東屋の影の先に戯れる子犬を見ているけど話を集中して聞いているのがすごくわかる。

あたしは最初まなちゃんに相談するつもりはなかった。

負けた気になるから。

それに、後輩であるまなちゃんに先輩として尊敬されるような大人の女性になれるのではないかと色々頑張ってきたんだし、弱みも見せたくなかった。

中島さんが出てこなくて、中島さんのわんちゃん達だけが出入りしてる状況を見ていて辛くなって、くっしーとまなちゃんに相談したけど、くっしーの話はまなちゃんに聞かれたくなかったなと想った。

あたしだけがわかっておきたかったなんて感情が浅ましい気もするけど、あたしだけが理解していたかった。


「中島さんの事情や想いを気にかけずに、あたしはみんなが中島さんを大好きだから信じてって言っちゃった。

でも、それって悪いことじゃないよね?」


「悪いことではありませんわ。

だから、お互いに悪いことはしてないのではございません?

ただ、中島さんの中で人を信じる事がどうしてもできない感情的な溝があるのかもしれませんし、指摘されたくなかったのかもしれませんわ。

ですから、お二人がそこまで落ち込まないでよろしいのですよ」


「??? あたしたちが?」


「そうですわ。小垣さんも山北さんも素敵な女性で中島さんの事を考えてよかれと想って行動しているのはわたくしから見ても温かい気持ちになりますもの。

わたくしの場合はモモちゃんといる時の次くらいには温かい気分ですわよ」


そういって柔らかく微笑んだ。

西園寺 櫛名さん。

あなたの方がよほど素敵な女性です。

あたしなんてそんな事考えもしなかったし、周りも見れてなかったように思う。


「私も、私も中島さんの事を傷つけてきたのかもしれないです。

トラウマを背負ってるのは知ってるけど、普段の会話から気をつけるなんてちっとも考えてなかったから」


ずっと黙っていたまなちゃんが口を開いた。

まなちゃんは常にしっかりしているのに不安に思ったりする事もあるんだね。

あたしは聞いた記憶もあまりないんだけど。


「本来、わたくしも含めて皆様多かれ少なかれトラウマくらいお持ちのものではございません?

それが大きい、小さいはございますけれど、中島さんはそれが大きすぎた。それだけだと思うのですけれど」


「そうなのかもね。」


「それに、お二人が笑ってくださらないと、お二人の家族がなんだか元気がないように見えますの。

モモちゃんも楽しめませんわ」


「どこまでもモモちゃんが最優先で心配性のママさんみたいだね」


「あら?わたくしはモモちゃんのママですのよ。

わたくしの全てはモモちゃんのためですもの」


そう言って3人共少し控えめに笑い出した。

笑い声に釣られたのか甘えたくなったのか3匹がそれぞれのママの足元で頬を寄せてきたので抱き上げて膝の上に乗せると


「モモちゃんどうしたの~?ママのお膝が良いの?」


なんて聞いたこともない口調で話しかけるからあたし達は笑ってしまっていた。


「何ですの?モモちゃんの可愛さの前ではこういう話し方になるのは仕方ありませんわよ」


少し照れながらそう言って、またあたし達は笑った。

本当に不思議な人だと思う。

とても丁寧な話し方で、周りをよく見ていて、控えめで、なのにモモちゃんが関わると豹変する。

年下なのに頼りがいも包容力もあって、すごい人だと思う。

あたしじゃこんな風にはなれないと思うけど、ここに来てくれて感謝だね。

それ以上に苦労してきたんだろうけど、少なくとも、気持ちを助けてくれたこの人の味方でいよう。

そう想った。


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