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絶対のんびり至上主義  作者: sakura
逃亡編
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54話.わんこ大生成

朝と言うには遅い時間

私は散歩に行こうとして朝陽も裕太もお留守番だったことに気づき残念な気分になり、うだうだしててもせっかく来たのに寝ているわけにも行かなくて役所に向かった。

役所は知らない間に賑わっていた。

何でだ?結婚ラッシュかな?


とりあえずインフォメーションで社長を呼んでもらった。

名前が浜辺さんなのを忘れていて、前の会社の社長とか言ってたら私を知ってる人が案内してくれた。


「ああ、中島くん。早かったね」


「まぁ、同行者がすぐ行くって言いはったので。

ところで何でこんなに人が多いので?」


「説明しにくいんだけどさ、またバカ親父が違う傘下の会社をそそのかしたらしくてね。

そこの社長は優秀でね。何もわかってない未知の魔法を気にして斥候っていうのかな。確認要因を立てて報告を受けた結果、みんな家族連れで亡命してきたんだよね。」


優秀だな。情報の重要性に気づいてる。


「でさ、中島くんならどうする?」


「そりゃ亡命を受け入れて情報の重要性をわかってしっかり考えられる人は重用する・・・ですかね?」


「だろ?僕も同意見だからそうしたんだ」


最近社長は一人称が私ではなくなった。

社長じゃなくなって自由に話してるのだろう。


「そういうわけで本題なんだけど、新しく街に来た人達はまだまだ不健康な体型でペットを飼う事を許可出来ないんだ。

そもそも、犬をそこまで見てない彼らはどういうものかわからない。

ペットについては役所で一時的に預かって、基準を満たして認可を受けた人達にゆっくり譲渡していくから、一旦60匹程お願いできるかな?

ちゃんと場所も作ってるからね」


役所は大きさのイメージは出来たけど、この世界にそぐわない課や覚えてない場所や使っている中で必要になるかもしれない新しい課を考えて空白スペースが結構ある。

その一角に土を敷き詰めて柵で囲われた場所があった。

案内されて私は多数の犬を生成して、どこでイメージが混ざったのか猫も生まれた。

全てつがいになるようにオスメスを同数にしてある。

餌も大量に出しておいた。窓に格子をはめ脱出できないようにしてから換気を行う。

臭いは役所に広がると可愛そうだからね。

わんこ用のお風呂も用意しておき扱い方を説明したり書いたりして渡した。


生成していく過程でわかってたんだ。

だけど私は見ないふりをして約束を果たすことを優先させた。

結果、かなり賑やかに甘えるような声で泣く子犬が数十匹。

数えてられなくなってから適当になっているけど数が増えるに比例して鳴き声に可哀想な感情が芽生えてしまう。


もう少し誕生させないといけないはずなので流石にどうしようか悩み始めた頃

社長が女性を連れて訪れた。


「僕って結構自由に動けるんだよね。」


そういって手伝いに来たらしい。

例の若い奥様とともに。


「中島さん、素敵な結婚式場をありがとうございました。」


そう挨拶してくる女性がつい最近結婚したばかりの社長の奥様だった。


「さすがにこの数だと賑やかだね。」


社長はにこやかな笑顔を苦笑に変えて子犬たちを見て回る。

奥様は手近な子犬たちから抱きかかえて一箇所にまとめていった。

犬用のベッドを多く作り泣いてる子をあやして眠らせていった。

安心できたのなら良かった。

そんな中、奥様の足元でペロペロし続けている子犬が気になった。

甘えてるのか遊んでもらいたいのかわからないが、かなり奥様が気に入ったのか少し離れてもついていく。

この子は社長宅で飼うことになりそうだな。

奥様もまんざらではなさそうに優しげに微笑んでいた。


「いいだろ? あの穏やかで優しい笑顔に僕もすっかり騙されてさ。

でも、この前の電話の時とかちょっと怖いオーラ出すんだよ。

中島くんのせいだからね」


「とばっちりにもほどがあります。流石にそこまで責任負えません」


「あっはっは~。そりゃそうだ」


小声で話していたのに社長が楽しそうに笑った途端奥様が社長を見た。

わんこを飼い始めると子供が生まれにくいと言うけど大丈夫だろうか。

下世話な話だから黙っておくけど。


子犬を生み出して、多分60匹くらいにはなっただろうと思ったところで肩の力を抜いた。

社長は嬉しそうに笑っていた。

普通の役所で子犬スペースが有るところなんて早々ないだろうから新鮮な気分だ。


実はこの役所には育児所という幼稚園のような場所がある。

これは、子供の世話をていると運動ができず、体型が横に広がってしまうと嘆いた女性が多かったために急遽作られた手のかかる子供達を見守るための場所で保母さんのような有志の方々が役所の一角で交代で見守っている。


つまり、賑やかなのはここだけではないのだが、その保母さん達と同じような部署が作られるという。

子犬の世話をするための有志の方々が集っているとのことだ。

なので、役所に任せてしまっても安心できる体制ができている。

後のことは社長達に任せて私は適当に挨拶をして役所を離れた。

また来てね~とのんきな声が聞こえたが幻聴だと思いたい。


そんな役所を出た所で、意外と役所付近が空きスペースになっていることに気づいた。

役所でボランティア活動に勤しむ方々もお腹はすくし役所に詰めている時間も短くはないことだろう。

ここに憩いの場所ができればどうだ?という安易な考えで子ども食堂をここに建てることにする。

キッチンは厨房の設計にするが、少し背が低い子供達が作れるように引き出し式のステップを設けておく。

カウンターも同様だ。

あまり詰めた話はしていなかったが、子供達に運ばせるのも中々怖いものがあるので注文した食事をカウンターに載せたらセルフで持って行ってもらい、洗い物を戻す返却場所を作っておいた。

なるべく子供達で回せる飲食店を目指して労力を減らす工夫を随所に散りばめた。

美野里ちゃんやあおいちゃんに今まで大勢の食事を賄った経験はないだろう。

その辺りをサポートできる人手がほしいところだな。

具体的には食材を魔法で出してくれる係とかそういう感じで。

その辺りのサポートは親御さんに頼んでもらうなりしたほうが良いだろうな。

それとも、本当に子ども食堂として子供達のボランティアでも良いかもしれない。

どちらにしても、大型の寸胴等手に余りそうなものが多いので、誰かしらに相談してくれることを祈ろう。

物珍しさから一気に客が押し寄せる可能性があることも・・・。

このあたりは山北さんあたりにそれとなく話しておくか。


釜や工房については少し郊外に作るとしよう。

とは言っても、真壁さんが相当頑張っているようで、戸建住宅がどんどん増えてどこの鶏を使って良いのやらいまいちわからないのでその辺りも相談しておくことにしよう。


ま、今日はそれなりに疲れたからかえって寝るけどね。

あっ、その前にあの3人に予定を聞いておかないといけないな。

メールでいいか。

帰宅してメールを送って返事を待たずに風呂に入った。

それぞれ満喫してるだろうから暇な時に返してくれればいいよ。


そう思っていたのに風呂からあがると着信がずっと鳴っている。

慌ててバスタオルを巻いて電話を取った。


「中島です。」


「中島さん、山北です。メールの件ですがお急ぎですか?」


「帰るまでで大丈夫ですけど、忙しいですか?」


「いえ、西園寺さんの興味が無限に広がっていて、まだもう少し滞在したいと言ってまして」


「でも、モモちゃんは大丈夫なのかな?」


「モモちゃんへのお土産みたいな感覚みたいですよ。

ここで新しいものを覚えてモモちゃんと遊ぶと言ってました。」


「いや、娯楽は多いけど、わんこの遊べるようなものはないんだけど」


「モモちゃんと車で遠出して目一杯走り回らせてあげたいから運動を頑張って免許を取ってと、色々妄想してるみたいです。

子煩悩なおばあちゃんみたいですけど、モモちゃんが大事すぎるから全部ももちゃんのためって感じですね」


「それならこっちで少し生活してみるか聞いておいてくれます?

もし必要ならモモちゃんと生活できる場所も作るし」


「似たようなことを先輩が質問してたんですけど、モモちゃんが他の人になつくのは嫌だそうですよ」


そうはならんだろ。

独占欲が強すぎる彼女が彼氏にする嫉妬って感じか。


「とりあえずこちらからの相談事は子供食堂についてなんだけど、子供だけでは忙しくなりすぎるんじゃないかと思って、何とか協力者を見つけたいんだけど、何とかなりませんか?」


「社長に相談するほうが早いですよ」


「いや、あまりにも私が社長の仕事を増やしすぎてるらしくて、相談しにくいです」


「それは、あるかもしれませんね。課長は?」


「絶賛喧嘩中」


「うわぁ・・・。」


とんでもなく命知らずだとか思われてそう。


「それなら、学校行事にしてしまえば良いのではないですか?」


「う~ん・・・子供達の負担にならないかな?」


「楽しんでやってくれると思いますけど、心配だったら学校のお料理教室の奥様方にお手伝いを頼んでもいいと思いますよ。」


その発想はなかった。

そういえばお料理教室は結構流行ってたし、学校給食もお願いしてたなと思い出す。

子供達だけでお昼ごはんを当番で準備するのならいいかもしれない。


「いい案なんだけど、私からすると知らない人達ばかりで連絡も取れないんですよ」


「中島さんって他人にかける迷惑をすごく大事みたいに考えてますよね。

みんな遊びみたいな感覚で楽しんでやると思うから気にせず頼めばいいのに。

この場合だと、先輩がそういう話を持っていくの得意だからおまかせしてしまえばいいと思いますよ。」


そうなのか。

山北さんから頼んでもらうのもあれだから、明日にでも頼んでおこう。


「ありがとう。参考になりました。

あと、私も朝陽と裕太が心配なので、もし西園寺さんが免許を取得するまで残るならももちゃんは預かりますって伝えてもらえますか?」


「わかりました。

あっ、すみません。長電話してしまいましたね。

ではそろそろお風呂に入ってくるので失礼します。

おやすみなさい」


「おやすみなさい」


おやすみなさいって挨拶、なんか良いな。

何となくそんなふうに少し思った。


明日は小垣さんに相談して頼んでもらうかな。


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