43話.気楽な冒険譚
一人と2匹の気楽な旅から二人追加になったが気分は晴れない。
ゲーム等では人が増えると旅が楽になりできることの幅が広がり嬉しいものだが現実に人と一緒にいるというのは気を使うし異性ならなおさらだ。
私は結婚したとしても暴力は振るわないし人並み以上に優しくするだろうけどそれだけ、なるべく自分の時間を取ろうとするだろう。
結婚が人生の墓場とはよく言ったものだ。
まぁ、前の世界では結婚したい女性も結婚資金も何もなかったから一人寂しく朽ちるのみの人生だっただろう。
こちらでも結婚しようなんて微塵も思わないわけだが。
食事は作って一緒に取るがあまり会話には参加しない。
朝陽と裕太も私に気を使っているのかすり寄っていったりはしなかった。
外でのんびりハンモックタイムでは折りたたみ式のハンモックを2つ追加で出してそれぞれ使ってもらってからは自由にさせている。
そもそも何でついてきたんだろう?
私が本当は陰湿根暗でついて来たことに公開しているのかもしれないがこちらからは頼んでいない。
まぁ、魔法も使えるし基本的な知識も教師役にしようとしてたので教えてあるけど本当になんでだろうね。
私に近づいても傷つくだけだと思うけどな~。
走っては休み走っては休み
アメリカ大陸縦断するほどの距離を走ったが6000キロを超えても海は見えない。
たまに森や谷、岩場を迂回するので真っすぐ走っているかわからないが、なるべくまっすぐになるように走っているつもりだが、この世界に海がないなんてことはあるのだろうか?
雨が降り大気があり風もある。
ちゃんと水分循環が起きているのに海がないのは考え難い。
いや、そもそも宛のない旅なんだから旅が目的ってことでいいかな。
一番困るのは星を一周して元の場所に戻ることだけど気にしないことにしよう。
気温がほとんど変化していないように感じるのは地軸の公転軸に対する傾きがほぼ無いのだろう。
季節はあるので太陽に対しては楕円軌道で周回していることがわかる。
この星のことが少しわかった気がしたけど、それだけだった。
どこまで行っても白夜になることはないだろうと推測できる。
同時に棚氷などもないだろう。
タイタニックは起こり得ないわけだ。
走ってご飯を食べてたまに朝陽と裕太に抱きついて寝る。
そんな事を何度繰り返しただろうか。
流石に飽き始めた。
運転するのは好きなんだけど、こうも続くと面倒に感じる。
しかも、困ったことに川を長いこと見ていない。
つまり、海から離れているのだろう。
川に沿っていけば基本的には海に出るだろうけど、今更言っても仕方がない。
もしかして、地下水脈から海に続いていてとかなんだろうか?
まさか地表に出ている海がなくて、魔法で生活できるこの世界では海がほぼない?
大休止すると言ってから私は地下を掘り進めることにした。
重機を生成して掘り進める。
どんどん掘り進めると硬い岩盤にぶつかった。
気にせず重機を駆使して割って進めると空洞にぶつかりあやうく転落するところだった。
螺旋階段を生成して手すりをつける。
私は朝陽と裕太とともに下の空間に降りていく。
地下と言っても広大な空間が広がっていて2層構造の世界のように見える。
螺旋階段を生成し続けて私は下っていくが暗さはまったくない。
どうやら光を生み出す何かがあるようだ。
こういうの未来から来たっていう猫型ロボットの映画で見た気がする。
ヒカリゴケならぬ、ぴっかりごけ?
光の反射とかいうレベルではなく自ら光ってる感じで明るい。
階段ってやっぱきついな。
面倒になった私は踊り場のような場所を設置するとせっせとエレベーターを生成した。
商業施設なんかでよく見る透明なガラスの施設の壁に沿って設置されてるようなものにした。
状況見えないのは流石に怖いしね。
生成のイメージとして地面につくまで自動で伸びるエレベーターだ。
どんどん伸ばしていくとようやく地面についたようでそこから魔力消費が無くなった。
この踊り場を地下一階として地下二階を地面に設定した。
朝陽と裕太を連れてエレベーターに乗り込むとB2のボタンを押した。
どんどん地下に潜っているが、呼吸に問題はないだろう。
臭いに朝陽も裕太も反応していないからガスや石油が溜まっているようなことはないはずだ。
代わり映えしない光景と、岩壁のゴツゴツ感が続いているだけだ。
2分ほどで地面についた。
やりたいこともなくて退屈だったのでこういうイベントはちょうどいいな。
たまに旅行に行った時に森の中で爽やかな涼しさを感じるような寒すぎない程度の気温に少しじっとりとした湿度を足した感じだろうか。
朝陽と裕太はなぜか尻尾をふりふりして匂いをしきりに嗅いでいた。
地面は普通に岩場になっていて少し歩いてみる。
歩き難いがトレッキングシューズが必要なほどではない。
ゴーっと音が聞こえてきている方向に向かって歩いている。
オフロード車でも出そうかと思ったが風情が壊れるので歩くことにして歩く。
徐々に音の正体が見えてきた。
地下水脈だ。
とてつもない水量が流れていてどこに続いているのかわからないけど地底に海でもありそうな雰囲気だった。
地表と地底で別の世界のようだ。
地底の明るさは日光と違い少し緑っぽい感じなので水の色が幻想的に光っていた。
普通に考えると地上が崩落してきそうなのにこの勢いの水流で振動が起きても、壁が削り取られてもここから見えない天井というか地上の地面が崩落しないのは魔法に依るものだろうか?
気になることは多々あるが少し探索してみようか。
地底世界の荒涼な大地が広がっていて流石に面倒に感じてバギーを出した。
タイヤがデカくて特殊なサスペンションを使ったオフロード仕様の特別車だ。
朝陽と裕太を乗せて出発した。
ナビにマップは表示されるはずもないが、軌跡表示をした上でトレッキングマップアプリも併用した。
少し走ると世界が一変してくる。
木が生い茂る森、
花畑に苔むした廃墟。
廃墟?地底人が存在したのだろうか?
石造りの町並みが見えてきた。
人もいるのだろうか。
町の前に車を停めて探索を始めた。
家を覗き人が居ないことを確認しながら歩く。
心なしか朝陽と裕太も緊張してそうなので時折撫でながら歩く。
素晴らしい巻き方の巻き尾が今は股に挟まれていた。
見たことのないもの、慣れていない場所、嗅いだこと無い臭いでこんな感じになるけど、緊張感からか声を出してはくれなかった。
私自身は特に恐怖は感じていない。
少なくともこの魔法の世界で未知の恐怖に比べ、理解のできる建物の文明的な生活の方が馴染み深いと思えるからだ。
まぁ、人が居ないのは奇妙だし、不気味だけど、突然襲われたりはしないだろう。
面白いものはないかな~と探索していく。
玄関のドアは木製の扉に鍵穴が開いている。
鍵がかかっていない扉は勝手に開けて上がり込んだ。
昔の日本の普通の家って感じだった。
タンスや戸棚は開けていない。
やっぱプライバシーって大事じゃん?
表札までかかってる家を見て回る。
新井、伊藤、谷上、森本・・・
ここの世界って日本がもし魔法で発展したら?ってIFの世界なのだろうか?
魔法で発展したら魔女狩りの逆で科学が淘汰されて、中途半端な技術を持った技術者達は地下に潜った?
辻褄は合いそうだ。
結局人っ子ひとり居なかった。
書物も教科書レベルで真新しい技術もなければ興味を惹かれるものは何もなかった。
まぁ、いずれまた探索すればいいだろう。
地面の下の世界があり、水脈というより海に繋がってそうな大河もある。
今はそれだけでいい。
何かいたとしても朝陽や裕太が気づけ無いはずもないし、魔法サイドと戦争してるなら追手と思って必死で隠れるだろうしね。
私達はエレベーターまで戻ると地上に上がった。
マーカーを置いてから車に戻って眠った。
もうこの辺で住居作ってもいいかな~と思っていた。
そろそろ移動も面倒なので朝陽と裕太と相談してみよう。
間に合いませんでした。
多忙の為、今週更新分は1話となります。
申し訳ございません。
とはいえ、元々は週1ペースト考えておりましたので我ながら頑張っている方と密かに思っておりますが、楽しんでくださっている皆様にはご迷惑をおかけいたします事を謝罪いたします。
できれば来週からはしっかり3話分更新していきたいな~
できるかな~?
できればいいな~
そんな感じで見捨てられないように頑張っていく所存です。




