37話.教師の資質
教師の資質ってどういうものだろうか?
教える上手さ?
人気の取りやすさ?
私は子供の頃の記憶をどれほど持っているかに依ると思う。
子供の頃こういう事が怖かったとか、子供の頃こういう事が嬉しかったとか。
世の大人はそれを忘れて子供の頃嫌だったことを指導や教育の名のもとに平気で理不尽を敷いている。
これは教師だけではなく、むしろ親の方が多いだろう。
子供のくせに生意気なと年齢で問答無用に理不尽を押し付ける。
例えば、嘘は言ってはいけないと嘘で塗り固めた説教をする。
子供は敏感にそれを察知して不信感を生むとか、大人って卑怯だと思っていることだろう。
なぜこうなるのかと考えると子供を舐めているとか、一人の個性と考えず尊重もなく自分の所有物のように考えるからだろう。
保護者は子供をどうしてもいいわけではないのに何を勘違いしているのだろう?
子供に辞書で調べなさいと言いながらわからないことを調べもせず聞いたり、苦手だからやってじゃなく、やりなさいと命令する。
そこに一人の人間に対する尊重はあると思うか?
そういった意味で私は勉強ができるから教える資格があるとは考えない。
有名な高偏差値大学から頭のおかしい宗教にハマったり、どう考えても理屈の通らないことをやる輩は枚挙に暇がない。
昔、大学闘争で大暴れした高偏差値の大学生とか見ていや、頭いいなら武力に訴えるなよとか思った人も少なくないだろう。
端的に言ってアホの所業だからな。
さて、子供を育てたり、授業で教えるような人を教育するのは並大抵のことではない。
愛情を持って叱る。
理屈を教えて叱る。
これらを千差万別の子供達相手にしなければならないのだ。
世のご両親はそんな大変な仕事をされている教師にもう少し敬意を持っていただきたく思う。
それができない親が育てた子供の高が知れてしまうとさえ思うからもう少し相手の立場に立って考えないとご両親も言わずもがなだけど。
まず、どうやって子供達に教えてもらうか。
それと、教師自身がそれなりの勉強ができるようにした上で、自分たちより賢い生徒が出てくることもあるだろう。
だから、教育機関の始まりは、きちんと然り、きちんと方向性を示せる大人で有ることだけが重要で、教える上手さは重視しない事にする。
そうとなれば、私がまず、教師を生徒に見立てて、一人一人に向き合いつつその人に分かる言葉で教えていく他方法はないだろう。
相手にするのは大人だから子供相手より大変さはないが、教師像を私で見ていくだろう7人におかしな姿は見せられない。
そんな事を延々考えながら私は今小学生からの教科書を作り出している。
算数、国語、理科の3種類。
英語、社会はこの世界に合わせられないし必要もないので無視した。
保健体育や家庭科も同様だ。
だけど、音楽だけはしっかり入れた。
体育も実技で運動はするので問題はない。
あとは、学んだことを家で披露した時にできなかった子度ができるようになったことを親が喜び褒めてあげてほしいかな?
人間は不思議な生き物だね。
親によってはそれくらいできて当たり前とかイカれたことを言うくせに恋人にはえ?すごいね。とか褒めたりするわけだ。
人間誰しも最初から全てできる人なんていないのだからその変化を褒めてあげてほしい。
言うなれば女性は特にそうだと思う。
前髪2mm切った事に気づけ?
いやいや、2mmで何が変わるんだと思うし、何ならできなかったことができるようになったわけでもないのに前髪きって雰囲気変わったねかわいいよと言ってほしいなら逆もまた然りだろ?
この世界にそんな風習はないけど。
ちなみにだが、私の幼少期の音楽の教科書はぶっ飛んでいた。
5年生と6年生の音楽の教科書にカトちゃん(加藤茶)ケンちゃん(志村けん)がオーケストラの写真に紛れ込んでいる。超自然な感じで。
これも、ここで言っても何も伝わらないわけだが、見つけた時は笑って同級生に話しまくったものだった。
今の子供達の教科書にはJPOPが載っていたりするらしいが、そんな時代ではなかったので荒城の月とかお硬い雰囲気の音楽が多いが、それでも楽しんでもらえることだろう。
バンドスコアとか出していてもそこまで果てしなく遠い道のりになるだろうこの世界では十分すぎると思うし、今はそれでいい。
私の趣味にはなるが、8cmシングルCDからCDアルバムやら廃れて久しいMDにプレイヤーもある。
ダウンロード済みの音楽データも大量にパソコンには入っているので一歩踏み込みたい人にはそれらをコピーして渡してもいいだろう。
勝手に発展させてくれそうだ。
つらつらと考えすぎて子犬大集合の時間になっていたのか土間がにぎやかになっていたのでそこそこに留めて散歩の準備をした。
「おはようございます。遅くなってすみません。」
この世界はなぜか、日数や時間を全員が正確に把握している。
カレンダーもないし時計もないのになぜこうもしっかり把握できるんだろうか?
そんな疑問があったが、これも魔法らしい。
今何歳と100何日とか平然と答えるのは流石に怖くなるね。
新たに加えあっていた9人(小垣さんと山北さんを含む)を含めた全員で散歩に行くことになった。
「あんたが何かやろうとすると本当にすぐ規模が大きくなるねえ。もうちょっと自重しようとか思わないのかかい?」
そんな課長の言葉に
「そうなんです。あたしが最初来た時とまなちゃんが来た時で建物数も激増してますし、どれも巨大だったんですよ。」
と小垣さんが言えば
「そうでしたね。先輩が怒っていて私も一晩で巨大建造物が出来てたのを見た時はびっくりしましたよ」
と山北さんが同意する。
聞いてるだけの6人と硬みの狭い私でルンルンと楽しげに歩くわんこたちで散歩する。
最近になって気づいたけど、私達が散歩に行く時、普段殆ど動かないショウがちょっとこっち見るのが面白い。
大きすぎて立ち上がってこっち見たりするとすぐわかるからね。
思い思いに話をしながらいつもの散歩コースを回る。
奥様方(課長の息子さんのお嫁さんたち)はありがちな旦那さんへの不満やら子供の恥ずかしい話で盛り上がるし、たまにわんこ自慢で白熱している。
教師役に抜擢した真壁さん達は色々聞きながらわんこの可愛さに目を奪われつつ真壁さんと彼女の話や課長の息子さんたちと今後の不安やら何やら話をしていた。
美野里ちゃんと隼人君はいつも通り楽しそうに自分の家の2匹の子犬を連れている。
どうも美野里ちゃんと隼人君は好かれていて、子犬のリードを一本しか持っていないともう一匹が拗ねるらしい。
たまにいるよね、わんこに好かれすぎる人って。
うちのワンコたち?
小垣さんと山北さんに連れられて楽しそうにしてるけど?
ちょっと寂しい。
でも、私の時にしか本気で甘えないのはわかってるから散歩の時は譲ってあげるよ。
私がしゃがみ込むと顔を舐めに走り寄ってくれるし。
「やっぱり朝陽ちゃんも裕太君も中島さんが一番なんだね」
と微笑ましそうに言ってるから大丈夫だ。今はまだ・・・。
歩いてる時にふと思いついて7人に
「子犬の様子を見てください。その辺の草を食べてお腹下したりしないようにとか喧嘩してたら美野里ちゃん達がどう止めているのかとかね。
子供でも同じことが起こりますよ」
そういうと皆視線が子犬達に固定されていた。
すごく真剣に取り組んでくれそうで安心だ。
その前に太りすぎてて魔法なしの散歩でも汗をかいて息が上がっている。
真壁さんの彼女は平気な顔をしているけど、ここはまだしょうがないね。
そのうち慣れるし何とかなっていくだろう。
いつも通り1時間ほどかけて散歩を終えて帰ってきた。
課長一家は一旦我が家まで歩いてから自宅に帰っていく。
課長一家も一軒家だから、最近は来客に気づいたらわんこたちが吠えて教えてくれるから便利と言っていた。
呼び鈴付けて回らないとだめだな。
うちは来客あっても土間まで誰でも入れるし、敵意がなければ朝陽も裕太も教えてくれないからうちには不要かな?
玄関締めたこともないし。
いや、閉めるようにしないとだめなのか?
家の中に9人が住んでるから悩みどころだね。
必要なら家の中の建物ごとにきちんとドアを作って呼び鈴設置するか。
思い立ったが吉日ってことで全戸の呼び鈴設置を朝食後に行った。
ちなみに朝食についてはトーストに私のお気に入りだった某企業のポテトーストシリーズからコンソメ味をチョイスした。
というか、結構これの比率は高い。
散歩が終わって帰ってくると7人はどうしていいか分からなそうにしていたのでうちに呼んだ。もちろん小垣さんや山北さんもついてきた。
全員でパン、コーヒー(一部コーヒー牛乳)、目玉焼きで朝食になった。
真壁さんが気に入ったらしく、その表情を目ざとく見ていた彼女さんがニヤリとしていた。
この人清楚なお嬢様風の柔らかな雰囲気なのに、獲物を見つけたみたいな時はかなり悪そうな顔になるので何ていうかもったいない人だ。
ここから9人のお勉強タイムに入る。
まずは馴染みの薄そうな理科を教えるための算数から始める。
四則計算と分数まで覚えてもらえれば後は必要になることもないだろう。
教科書を出して説明していく。
九九の表はいつでもカンニング可能にして電卓も渡しておいた。
基礎的なところを説明して0が何もない状態
りんごを1つかごに入れる。
りんごは一つ
では、ここに3つかごに入れる。
りんごはかごの中にいくつあるでしょう?
正解。4つですね。
では、このかごを8個追加しました。
りんごはいくつですか?
全員4+4+4+・・・・
と足していって32とか36とか38とか答えていく。
掛け算の意味が分かればここが楽になりますよ。
計算ミスも減らせますと準備していたホワイトボードに記入していく。
同じものが多くあるなら掛け算を使います。
この場合4個入のかごが8個あるので
4✕8で32が答えになります。
また、こういうときにも使えますよ。
と100mlまでの目盛りしかないビーカーを用意する。
そこに3回水を足す。
同じ量の水をこの中に入れました。
今水の量はどれくらいですか?
すると電卓で掛け算をしていく皆さん。
100✕3が300になることも経験ですぐわかるようになるだろうから今はまだ考え方の練習だ。
500mlまで目盛りの付いたビーカーに移していく。
そして確認。
算数は目で見たほうがわかりやすいと思うから教育現場では活用してもらいたいものだ。
答えはいくつでしたか?では、山北さん。
300mlだと思います。
正解です。自身を持ってもらっていいですよ。
間違ってもいいので、まずはどうやって答えを出していくのかを覚えていきましょう。
こんな感じで割り算や面積まで駆け足で進めた後1段階難易度を上げた。
縦✕横の四角形だが、縦の長さが目隠しされていて面積はわかっているという普通に考えると謎の問題だが、問題は考え方なのだ。
?✕5で50平方センチメートル。
高さは?という問題。
これには割り算も教えたのに悩んでいた。
5をかけて50になるのは50÷5で計算できます。
つまりこの場合は10ですね。
では、ここからもう少し考え方の練習です。
縦✕横で縦、横の数字も入っている四角形に斜めに対角線を一本引き等分する。
この場合2つの面積はいくつですか?
真壁さん
30の半分だから15ですか?
正解です。そう、この場合半分の15ですね。計算式は縦✕横÷2となります。
この割り算は例えばこの場合だと2分の30とも書けます。
この2分のというのは2個に分けるということですね。
では、1つのりんごを2つに等分しました。
では、小垣さん、どう表記しますか?
1/2ですか?
正解です。
ですが、1/2が2つありますね。
この場合2/1足す2/1で2/2になりますね。
そういって2つに分けたりんごを切り口でぴったり合わせる。
これはいくつですか?
1つ
そうですね。
つまり分数は複数に等分していった場合何個に分けたうちの1つもしくは何個に分けたうちのいくつ分という考え方になります。
さて真壁さん。先程の問題ですが2つに分けたら15でしたね。
では、これを4つに分けたら?
4個に分けるんだから、分けられねぇ!?
そうですね。今電卓には.がついてその後に数字が続いていると思います。
壊れてないですよ。それは小数点といって、1より少ない状態を示します。
言う成れば1/10の単位ですね。1までの数を10個に分けてそのうちの1つ分とか2つ分といった考え方ですが
さっきの分数で考えてみると?
30/4ってことか!?
その通りです。
おお~と周りから拍手が起こる。
これを約分するので15/2となるわけだが、ハッキリいうとこの訳文には意味がないと私は思う。
言いたいことは一緒だし、どうせ細かい数字が知りたい訳では無い事がほとんどなのでそこから先は無駄でしか無い。
故に約分しないといけない風潮は必要ないと思うわけだがこの世界では全く必要ないから約分の義務なんて教えない。
教科書には書いてあるが私の世界の変な風習なので無視してもらって構いませんと伝えた。
分数の理解が進まないのはこの無駄な約分のせいだとすら思う。
そこから分数を交えた理解を進めていき、程々の所で休憩にした。
皆が集中していたおかげで休憩を必要としてなさそうだったが、さすがにお昼になっている。
私は昼食をさばの味噌煮と味噌汁、デザートに大福を用意してみた。
頭を使うと魚と甘味が必要だろうと思ったからだが、女性陣は大いに喜んでいた。
算数をひとまず切り上げて理科に入るかと思っていた所で昼食後の余韻に浸っていた皆の中であっ!と驚いたような大声を上げた人がいた。
真壁さんだ。
「どうしたの?」
と彼女さんが聞くと
「これを子供の頃から練習して覚えていくんだろう?」
「ええ、そうね」
「つまりだ、もし、この先自分の子供が出来たとする。」
「皆の前で何いってんのよ、もう」
いちゃつくなら他所でやれと思うが
「いや、あ~そういうのじゃなくて、これを練習して覚えた子供達ってやばくないかって話だよ」
「へ?」
みんな聞いてないですよ~ってイチャラブを無視していたのだが一気に視線を集めた。
「あ~簡単に言うと父ちゃんこんなんもわかんないの?とか言って見下される可能性ってないか?」
はっ!としたように全員が姿勢を正す。
「俺等は今ズルをしてる、この電卓ってので答えがわかっちまう。
でも、子供達はこれ無しで計算するってんだろ?しかも掛け算を覚えて
マジで俺等がちゃんと覚えておかねぇと教えるのに計算できないってわけだよな。
やばくないか?」
しーんとなる空間。
ここで私が口を挟む。
「おそらくおっしゃるとおりになると思います。
ですが、それがどうしました?
子供達が自分にできないことをできるようになるのです。
自分のことのように喜べてこそ親だと思いますよ」
「むむ~」
「今日皆さんは昨日までできなかった考えを急速にできるようになって言ってます。
わからない部分は質問してくだされば良いですし、教える側が教わる側より勉強ができる必要って無いと思ってます。
私が教えようと思っているのはこんな勉強の内容ではなく、答えを出すための道順
そう道順なのです。
それは人付き合いのための道順。皆と仲良くなるための道順
そういうものが教師の資質だと思ってます。
間違ったことをすればその子のために叱る。
それも、何がだめだったかを明確にして叱るのです。
私はみなさんならそれができると思いますし、褒めてやる気を出してあげることも大事です。
褒めすぎて天狗になって威張る子もいるかも知れません。
その時にその発言が自分を孤独にするよ。相手の方が勉強できるって子が現れた時に貴方のような言葉を自分が言われ続けたら友だちでいようと思う?と道順からそれそうなら修正してあげること。それが私の考える教師の資質です。」
またもやしーんとする室内。
「ぶっちゃけて言いますとたいてい賢い子は何が問題で皆が理解できないのか理解できないので教えるのが下手だったりします。
もし、教え方も上手い子がいたらその子に教えさせてみてもいいかもしれないですよ。
子供達よりも圧倒的に勉強ができる必要性を私は感じません。」
「そう言われればそうなのか?」
「中島さんがそういうならそうなんじゃないですか?子供達に負けないように私達も努力すればいいだけですし」
山北さんのその言葉で場は収まった。
こういう時この人の落とし所を攻めるような発言はいつも見事だと思う。
バランス感覚に優れているのだろう。
自転車には乗れないが。
理科で物質の3態変化
つまり、気体、液体、個体の状態について説明した。
それぞれ物質によって異なる温度でそれぞれの変化が起こることを説明していく。
もちろん実験も踏まえてね。
その時じゃあ、木が燃える時に燃えやすさが違うのは温度が違うのか?
という質問があり余談になるが説明していく。
魔法まで絡めて理科の理解を進めていった。
人体構造について教えたいと思っていたが、まぁ、疑問があれば解消しないともやもやするだろうから優先した。
理科+魔法+イメージを絡めた説明は流石に実験込みだと時間がいくらあっても足りず本日の授業はこれで終わった。
授業後は皆で散歩に行く。
更に疲れているところ申し訳ないとは思いつつも全員で素材から夕食作り
私はレシピを伝えた後問題ないか見守るかかりになった。
料理になると張り切るイメージの人が一人増えた。
真壁さんの彼女さん
名前は佐藤翠さんというらしい。
今日のメニューは親子丼と生姜焼きという謎の組み合わせ
作りやすそうで手が込んでそうなイメージの料理を考えてみた。
失敗しても見本ですと生成すればいいかと思っていたら普通以上に美味しかった。
一応お好みでと出していた七味についてはまさかの山北さんがハマっていた。
明日以降はこんな感じの生活になりそうだなと思った。
明日の予定は体育と音楽。
明日もまた頑張ろう。




