3話.安眠妨害と食糧確保
「もしもーし。ちゃんとこちらに来れました~?」
夢の世界に声が響く。うるさい。
「ねぇ、聞こえてんでしょ?返事しなさいよ」
マジでうるさい。安眠を妨害する奴は暴走族も酔っ払いも滅びろ。
「ねぇってば」
もう~何なんだよ~。勘弁してくれ。
「先輩のミスで僻地に落としたんですよね?
しかも魔力の使い方も知らない状態で。
その上安眠妨害で謝らないとか先輩ヤバいっすよ」
そうだそうだ~
「だって・・・返事ないから」
「まず、謝りましょうよ先輩」
「ごめんなさい
謝ったんだから返事してよ~」
絶対反省してなさそうだな。
「そうじゃなくて、念話の仕方を説明するのが先ですよ。先輩
確か向こうの世界って魔力ないんでしょ?」
「え~念話なんて常識じゃん。3歳の子供ができることもできないってそっちの方がヤバいっしょ」
「いや、だから魔力がない世界で念話なんて技術ないんじゃないですかって言ってるんですけど」
「そっか。でも、どうやってできるようになったっけ?
あんた説明できる?」
「いや、あたしもそんな小さい頃の事覚えてないんですけど・・・。」
「はぁ~聞いてらんないね~
誰だか知らないけどあんた聞いてる?」
割り込んできたおばちゃん声
「いいかい?私の言うとおりにするんだよ?
まず、頭の中にしゃべりかけてるうるさいのに返事しようと思って心で会話してみな」
・・・・・誰かがしゃべってるけど、誰にしゃべってるんだこれ?
近所迷惑だろ
あれ?ご近所さんはいてたっけ?
元に戻った?
「聞いてるのかい? さっさとしな」
「はい!」
怒られた気がして目が覚めた。
「どうしたの~」
寝ぼけ眼で朝陽が起きる。
雄太は爆睡していた。
「何か寝ぼけてたみたい。ごめんね朝陽」
「こっちに返事あったよ。向こうで誰かとしゃべってるみたいだけど、返事だけは聞こえたね。」
「ならこっちの声は届いてるってことですね。
でも、念話も使えないのを育てる意味あるんですか?
あたしは言われた通り教えますけど、シャロンと二人でどこにたどり着いたかもわからない奴を教えろって言われても何を教えていいのかもわかんないんですけど」
「私たち二人でこのプロジェクトは任されたんだから頑張りましょうよ、先輩」
「まぁ、そうね。しょうがないか。
で、課長あたしたちは遠隔で魔法を教えながら頑張って合流を目指すところからでいいんですか?」
「そうだね。他に方法もないし、諦めな。地道にやるしかないね」
「はぁ~わかりましたよ」
「もう少しやる気出してくださいよ先輩。特別手当目指して頑張りましょう」
ばっちり目が覚めてきて夢の事が思い起こされる。
「朝陽。寝てる時3人くらいしゃべってる声聞こえなかった?」
「聞こえてないよ」
そっか。
「そんな事より、そろそろご飯だよね。」
「朝陽は太ってきてるからダイエットしたら?運動不足なんだよ」
と怖いもののない雄太はメス(女性)に禁句を発する。
「食べて遊ぶ以外の事を考えてるあんたがおかしいの」
わんこの世界では女性のダイエット問題は大事ではなくてよかった。
しかし、言葉がしゃべれるだけで癒し成分は半減するな。と少し残念に思えてしまった。
考えてみてほしい。
しゃべれない犬が体を寄せてきて甘えてる。かわいい
に対し
しゃべれる犬が
「かゆいとこ掻いて~」
と体を寄せてくる。確実にノミ退治依頼
どうだろうか?かわいいと思えるだろうか?
閑話休題
とりあえず、よくわからない声については放置することにして喫緊の問題は食糧確保と生活基盤の構築
つまり、衣・食・住となる。
住環境は家と庭が丸ごとあるので問題なし。
衣類も同様でネット通販で掘り出し物探しが金に余裕のある時だけ趣味だったので
激太りでもしない限り大丈夫だろう。
食料か・・・。
冷蔵庫を開けてみた。ふて寝した結果問題を先送りしていたが
さすがに腹も減っている。
むわっと熱気が噴き出すような錯覚を覚えた。
(だよな~)
体感で30度くらいの湿度高めの気候
冷蔵庫の電力が切れた段階からガンガン温度が上がっていると思われる。
牛乳は口に入れる勇気が出ないので川に流そう。
湯冷ましを冷蔵庫保管していたが、すでにぬるめのお湯になってるのがボトルからわかる。
肉、魚、野菜・・・全滅だった。
本格的にヤバい。
そういえば・・・ワンチャンに期待してクローゼットの中の防災セットを開けてみる。
ギリギリ消費期限切れは免れた。とりあえず確保
あとは・・・とごそごそしてると栄養食品的なものだけ無事だった。
これは本格的に絶体絶命の様相を呈してきた。
うーん・・・。
「朝陽、雄太。とりあえずご飯食べようか」
二人の食事を用意してから散歩に行く。
ブロックバーを1個だけ口に入れて口がもそもそするので節約したいが防災セットの水を少しだけ飲んだ。
散歩コースが川沿いになった。