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絶対のんびり至上主義  作者: sakura
地盤固め編
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16話.暗躍者

暗い大食堂で対面する者がいた。

人事課長と社長である。


「それで、あんたはどう思うね?」


不躾に多々山課長は社長にあんた呼びをする。


「それは何についてかな?」


気に留めた様子もなく平然と返す浜辺社長。


「言わなくてもわかるんじゃないのかい。この非常識な環境全てだよ」


本当に非常識。しかも、あたしの中で魔力を使う事を控えると夜に同じ建物を生み出せそうなほど魔力が渦巻いているのがわかる。

あの小僧。魔法も知らない坊やだったはずだが、いちいち発言が的を射ている。

道理の知らない小僧が突っかかってきたことは何度もあった。

粋がってるだけのガキがあたしに意見して来ても結局泣いて謝ってくる。

根性なしどもが馬鹿のくせに粋がってんじゃないよ。

あたしは初めあの小僧も同じだと思っていた。

しかし、あの小僧の論理に反論の余地はなかった。


結局あたしは自分でも驚くほどの魔力を無駄にしていたことがたった数日で嫌というほど思い知った。

社長にそのことは伝えていない。

この楽し気に面白そうな事に直行する性格であの小僧に絡まないはずはないさ。

こう見えてこの社長は相当頭がキレる。だが、小僧はそれと同等かそれ以上だとあたしには思えてしまう。末恐ろしいガキどもだよ。本当に。


「まぁ、今の所は観察しつつ現状維持ですかね~」


「何をのんきなこと言ってやがんだい。悠長にしてたら機を逃すよ」


すると社長は一拍おいてから語り出した。


「私は家族を切り捨ててここに来ました。

それが覚悟です。

ですが、社員は急激な変化に戸惑ってます。

事を急いては順応できるものとできない者で格差が生まれてしまう。

新しく会社を興すのも商品もできてない現状でコストをかける事で目に見えて後戻りできなくなってしまう。

ゆっくり時間を置くことが最短ですよ」


この社長は本気になるとあたし相手に悟すような口調で話す。

あの小僧と同じで理路整然と意識してなかったところからぶん殴ってくる。

多少非情になれれば老害に邪魔されず自由にその翼で羽ばたけただろうに


「そんな性格だよ。まったく」


「フフッそうですね。我ながらそう思います」


まぁいいさ。今日は気分がいい。

あの小僧が秘蔵だと言っていた酒を開けるとするかね。

なぁに、小僧は怒りゃしないよ。


「ちょっと待ってな」


酒が不思議な透明で小さな樽に入ってるが、秘蔵だと言ってたのがどれかわからん。

種類が多すぎるんだよ、まったく。


手近な一本を手に取り食堂へ戻る。

魔力制限をしてるあたしは光魔法で地下を照らす事等造作もない。

あの食事のクオリティだ。あたしをがっかりさせないどくれよ。


キッチンからグラスを二つ確保して社長と乾杯した。

酒は信じられないほどうまかった。

失敗したね~。

この男はこんなうまい酒を与えてはいけなかった。

明日にでも中島の小僧に大量生産させそうだね。

魔法の訓練にはもってこいか。


ゆっくり味わうように吞んでいたらいつの間にか夜が明けかけていた。

こりゃ、今日は息子たちにバスケで負けちまうかもしれないね。

こんな日は勝負を避ける。

それがあたしの負けない戦い方さ。



私は社長就任からこの課長を扱いかねていた。

私に意見してくるのは構わないけどね。

そんな事で嫌ったり扱いにくいと思ってるわけではない。

このばあさんは頭が良すぎるんだ。

課長で収まってる器ではない。

社長をやれば私がやるより業績は伸びるだろう。

私はこのばあさんが働きやすいように使えない部長をけん制してきた。

そのばあさんがこんなに目を輝かせて中島君を評価してるのが信じられなかった。

確かに中島君は巨大な建物にうまい飯、ここに至ってはうまい酒まで生み出せる事を知った。

その価値は計り知れない。

それでも、長い付き合いだからわかる。

このばあさんが認めてるのはそんな部分ではない。

それだけのものがあの男にはあるのだろう。


これは明日からが楽しみだな。

まずはゆっくり慣らすためにここでの暮らしに順応させることかな。

変革や会社の立ち上げは折を見ていくしかないだろうね。

私が率先してここのルールを踏襲して見せて、ここでの暮らしが不通になったその時には一気に追い風が来ることになる。会長の手駒に囲まれ会長に頭を押さえられて我慢をしながら社員を守ってきたが、その箱は私の手を離れた。

ここからは私は自由に楽しくやって見せる。

ここから私の為の第二の人生のスタートだからな。



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