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絶対のんびり至上主義  作者: sakura
地盤固め編
10/86

10話.ある日の日記

数日が経った。

カップ麺を振舞った日には彼女の興味が爆発して質問攻めにされた。

質問にただただ答えていた。

彼女の名前は小垣オガキ 美津ミツ

独身女性で恋愛は全戦全敗だと愚痴られた。

そのお腹周りではそうでしょうねとは言わなかった。


この数日でカップ麺も袋麺も切らした。

というか、彼女が全て食い尽くした。

彼女について意外だった事がある。

彼女、小垣さんは大食漢ではなかった。

ではなぜ尋常ではない太り方をしてるのかというと体質ではない。

この世界の在り方が深く関わっているようだった。

女性はなぜ美しくあろうとするのか?

ちやほやされたい欲求が無意識にあるからだと私は思っている。

この世界では太っていることが魅力だと思われている。

太っている=魔法の扱いに長けている。

そして魔力節約が上手いという事らしい。

器量良しって言うのだろうか。


この世界では魔法が使えないと生きてはいけない。

それは衣食住の全てが魔法依存であるからだ。


衣服は魔法で作り出す。

魔力が切れても生み出したものは消滅しない。

生成魔法というらしい。


食事

私がこの数日口にしていたのは小垣さんの出した食糧だ。

食事は魔法で生み出している。

生成魔法というらしい。

正直吐きそうな土のような見た目で手で食べる。

味も不味い。


住居は魔法で生み出している。

岩をくりぬいた様なデザインで3時間ほどでミニチュアサイズを小垣さんは作り出したが

プロが作ると全然違うらしい。

ちなみに、扉はないが、出入り口に結界のようなものがあり、作成者が許可を出さないと入れないらしい。


さて住にあったようにプロというのは岩をくりぬいた様なデザインの家を作る専門職があるらしい。

何でも家の中の気温や魔力吸収量を効率的に高める家を設計と生み出すことができるらしい。

デザインは言わずもがなで洞窟生活を思い浮かべるが大丈夫か?


この世界では魔力が貴重で魔力切れを起こさないようなペース配分が絶対に必要だそうで、普段から魔力を使いまくるが睡眠をとるまで魔力は回復しない。

厳密にいえば衣食住で吸収量が多い効率的な環境で生活する中で回復もするが微々たるもので使用量に対して全く追いつかないそうだ。

結果、一日の魔力量のほぼ上限まで絞りつくす生活で成り立っているらしい。


衣食住以外にもしょうもないものでも事あるごとに魔法を使うそうだ。

お箸を浮かせて動かしたこともそう。

歩くだけなのに身体能力向上魔法を使い、愚痴を言うために念話を使うと聞いた時にはめまいがした。

魔力消費を考えないといけないと言いつつどんだけ魔法依存なんだと。


この世界に言語は一つしかない。

国という組織どころか組織と呼べるのは会社だけという有様だ。

そして会社は多岐にわたる。より魔力吸収量の多いローブ制作を研究する会社

より、魔力吸収量の多い食事を提供するレストラン

味ではなく、自分の魔力を使わず食事で魔力回復を考えているらしい。

より、魔力吸収量の多い建物を作る会社等


つまり、この世界は0から100まで全てが魔力ありきで一日の魔力運用を効率化できる人間が有能であり、器量良しとされている。

極論モテる秘訣だそうだ。

そして、太りすぎ小垣さんはモテないことがあり得ないと愚痴っていたのである。

カップ麺の話からやたら多岐に話が飛びまくった結果、この世界の情報を大量に仕入れたわけである。


最初はただただカップ麺を作ってくれと言われただけなのに。

しかも、作るの意味から違っていて、カップ麺を生み出してくれの意味だったところからの話の展開なわけで、小垣さんはしゃべり疲れて寝てしまった。

そんなこんなから常識のすり合わせが必要と思い至って、うちの日常を体験してもらいながら機械の説明までしていった。

冷蔵庫、エアコン、ガスコンロ

肝心の電気がなくて動かない事も伝えた。


すると小垣さんは泣き出した。

魔法が使えない世界に召喚されたらと考えて青ざめた後、召喚された私の状況に同情したらしい。


その間うちのペット達は二人で遊んでいた。

そう、柴犬はなぜか飽きっぽくて相手してくれなくても体を寄せてきていたのに、5分もすると飽きたのか離れて行って二匹で遊び始めた。


2日目からは遊びがグレードアップしていた。

二匹の火と水をぶつけ合うのが楽しかったらしい。

10発ほどぶつけ合うと毎回ダブルノックアウトして寝てしまうところまでがワンセットになった。

魔力枯渇らしい。

魔力がなくなっても死にはしないけど、生命維持を最優先にするために深い眠りについて回復を待つとのこと。

疲れ切ってるのと変わらないようだ。


さて、食糧問題についてもう少し深く説明しておくことにする。

食糧は魔力を用いて生成する。

その際に魔力吸収量の多い物を生成する事が良き妻の条件らしい

味は二の次さんの次

自分の魔力を使って生成するにもかかわらず大幅に消費して少しだけ回復する。

魔力量に男女差はない、それでもなぜか男は仕事、女は家事と役割分担されているそうだ。

まぁ、男は大半がズボラだからな~(特大偏見)

日曜のお父さんはお母さんに掃除の邪魔と邪険にされてぐーたらしてるものだ。

そこからエスカレートして稼ぎが悪いだの邪険にし始めるのだから女も非道だと思うが

こんな考えだからモテないことは知っている。


要するにこの世界は人間が居てもいなくても一人でも多数でも関係なく一人でも完結できる生活が確約されている。(魔法が使えない人間がいないので)

極論すれば結婚して子供を産むことすら重要とはあまり思われていないようだ。

子作りは愛情の結果らしい。

それでも小垣さんの話はひどかったが・・・。

モテる事が女性のステータスという捉え方をしていて、私ったらモテモテで困ってしまうわ~とマウントを取る人への憎悪であふれていた。

なぜ女性はこうも他社より上でありたいと考えるのか私には理解できない。


「そんなわけであたしが今日から魔法を教えるわ」


何でそうなるのでしょうか?


「いえ、魔法が使えないのはわかってます。うちの子達は使ってましたが、私は使えてませんので」


「あっ、そういえば聞いてなかったわ。あの子達って魔法生物?

何であんな子達を生成してるあなたが魔法が使えないなんてことになってるのよ」


「はぁ?いえ、あの子達はきちんと生き物でペットです。」


「え・・・あなたが作ってるわけじゃないの?あんな不思議な生き物がいるなんて」


心底びっくりしていた。

どうも、この世界には人類以外の生き物はいないようだった。

強いて言うなら植物くらいになるのだろうか?

これも異世界の常識の一つだった。


「まぁ、いいわ。私がちゃんと教えるからきちんと覚えなさい」


一方的に宣言して魔法訓練が始まった。

意外なことにうちのわんこ達よりよほどわかりやすく教えてくれた。


まず、魔力が自分の中にある事を思い込みなさい

どういうものか?そんなのどうでもいいからあるの。

それを例えばそうね、手に水があると思い込んでみましょう。

手で水を受けるようにして手の器を作って、そこに水が入ってると思い込むの。

あるはずがないって考えは捨てなさい。

そして、水を発生させることができた。

火、土、光

生成魔法に攻撃魔法と続いていった。

ゲーム知識で風と闇は?と聞いたらはぁ?あんた何言ってんの?そんな魔法聞いたことないんだけど?と心底馬鹿にした目で言われてしまった。

見えない物を意識するというのは難しく、化学がない世界に風や闇は意識されない項目のようだった。


ちなみに魔力は知覚しておらず、そういうものって認識だそうだ。

風が吹いて髪がなびくと魔力が大移動していると言われているらしい。

メールの内容から知的な人々と思っていたのに常識の魔法が枷になってそういう分野を研究するとはいかない。

言うなればオカルト分野の扱いになっている。

そりゃそうだろう。もし、現代日本で魔法が発言したらオカルトを馬鹿にしていた人達は逆に化学が馬鹿にされることになってしまうわけだから。


そして私は生成魔法を用いて水のタンクを作ることにした。

電気を作り出したところで家庭用に電力供給できる気が全くしない。

ボルト?アンペア?どうやって魔法で調整するんだって話。

だからまずは水から始めることにする。

つまり水のタンクを作る。

家庭用の水道は蛇口で水をせき止めて水を押し止めているところに蛇口を開けることで水が出てくる仕組みになるわけだけど、加圧する為のポンプは再現できないが必要ないだろう。

水圧をかければ解決する問題だから水道メーターの水道管から生成魔法で家の3倍はありそうな水のタンクを作った。

製油所でも作った気分だった。

生成魔法は本当に便利で構造や化学式を必要としない。イメージができればガラスも鉄鋼製品も思うままだった。

楽しくなってきて魔法を使いまくって生活向上に充てていたら小垣さんは茫然としていた。

コンクリートなんて存在しないだろうから仕方ないよね。


庭を出るとぷつりと途切れているだろう水道管から漏れ出して残っていなかったはずの水道が復活した瞬間で感動した。

巨大な水のタンクはイメージとしてはマンションの貯水槽だろうか?

面倒だから巨大にしただけだ。

上部には鉄製のハッチがついていてそこにアクセスするために階段を作った。

上部のハッチを開けて大量の水を発生させてタンクを満たしてハッチを閉める。

階段は螺旋状にしていたが上り下りはかなりしんどいが仕方ない。

そのうち動力を何とかしてエレベーターを作りたいものだ。

魔法がある世界だから何とかなりそうな気はするが、残念なことに自動で常時稼働状態はおそらく無理だろう。科学で特異な事と魔法で特異な事が明確になった気がした。


家の中の蛇口をひねって水が出るか確認したら、異物や汚れのない純粋がすぐに出てきた。

一応二階でもトイレが使えて一気に文化度が上がった。

トイレがウォシュレットなのにヒーターが使えないのは冬が厳しそうだが水洗トイレとしては全く問題なく稼働する。

トイレの仕組みはヒーター機能が必要なければ非常にシンプルな物で電力も必要ないのがありがたい。

これで私がここから引っ越す必要もなくなり食糧問題も解決した。

カップ麵は作ろうとも思わなかったので、ハンバーグやカレーを作った。

魔法で作った食べ物に栄養があるかわからなかったので稲を育てたいものだ。

魔力吸収量はどうか知らないが、おいしく作れて大満足だ。

恨めしそうにぼそぼそした土を食べていた小垣さんにおすそ分けしたら残り全部食われた。

大号泣したことも追記しておく。

生成魔法様様である。

電力生成はできないが、何故か電池が生成できたことを補足しておく。

電池式の充電器ができたことによりスマホが充電できることになった。

オフラインで使用できる機能しか使えないが、スマホが万能で本当に良かった。

ガラケーではもはやどうにもならない状況だった。

私のスマホには標準ではない表計算ソフトやカレンダーソフトなどが入っている。

表計算ソフトで日記をつけ始めることにした。

日付ごとにタブで管理する。

日記と言いつつ私は飽きっぽいので続かないとは思うので、無理せず不定期更新にしておこう。



この一連の流れを元の世界に戻れることになったらラノベにして販売したい。

ラノベ作家への第一歩を踏み出した気がして少しうれしくなった。

スマホをいじる中年の図を小垣さんは無言で見つめていたが、その後気絶した。


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