キメラ
魔獣研究室 研究記録
実験体-1
犯罪者に魔獣因子を注入、後に拒絶反応で死亡
実験体-2
犯罪者に魔獣因子を長時間かけて注入、実験体-1よりも生存時間は伸びたが同じく死亡。
実験体-3
犯罪者の左腕と右腕に魔獣因子を注入。
左腕は因子元である『シャドウウルフ』の体毛らしき物が生えてきたが、右腕から自壊し始め実験体-3は消滅。
補遺-今回使用した因子は影狼の幼体から採取。
実験体-4
犯罪者の左腕と右腕に別々の魔獣因子を注入。
左腕は『オーガ』の因子、右腕は別の幼体オーガの因子を注入。右腕は注入前と比べ筋肉の増大を確認。が、左腕は筋肉の増大が激しく破裂。
そこから出血多量で死亡。
補遺-幼体魔獣の因子であれば適合の可能性が高いと予測。今後、実験体に注入する因子はなるべく幼体のものを用意。
実験体-5a
成体オーガの脊髄に『トレント』因子を注入。
背中側から樹皮のような物が発生。
最終的にオーガがそのままトレント化し暴走。
焼却処分。
実験体-スライム
不必要となった因子を気まぐれで与えた結果スライムの体に因子元の魔獣の特徴が出現。因子元は『レッサーヴァンパイア』
研究員一名が血液を吸い尽くされ死亡。
実験体-スライムは確保、収容。
その後、分裂個体から因子を採取し因子の結合を確認。
個体名を『オリジンスライム』と命名
補遺-レッサーの吸血能力とスライムの吸収能力が上手く噛み合った結果予想以上に『吸』の能力が強くなったと考えられる。
実験体-6
実験体の首に『オリジンスライム』の因子を注入。時間が経っても変化が見られず。
因子の注入を受けても死亡しなかった事から実験体から血液を採取。そこから因子解析。結果は目立った変化無し。経過観察を兼ねて別室に保護。
実験体-7s ⅱ
実験体に『コカトリス』の因子を注入。
身体に変化が現れたのは約10分後。左は目か流血を確認。右は眼球のブレを確認。
左は眼球が破裂。右は失明。30分後死亡確認。
血液から因子抽出。『オリジンスライム』に投与
実験体-6 v2
実験体の脊髄に龍因子を保持している『オリジンスライム』の因子を注入。2時間経過後に血液採取。その際、皮膚の硬質化を確認、さらに龍力を身体に纏っている事も判明。
龍因子と適合し身体的変化では無く能力的変化をしているものと断定。この事から前回注入されていた『オリジンスライム』の『吸』能力も適合している可能性を考慮。
実験体-6v3
実験体の脊髄に龍因子と『シャドウウルフ』の因子を注入。時間経過後、能力の出現を確認。
自身の影を変化させ床からトゲ状の影を生成。
龍力による防御機構の強化も確認。任意で切り替えが出来る事も判明。
実験体-8
実験体の両腕を切断後、実験体の腕とほぼ同サイズの『ハイゴブリン』の腕を結合。その際に同生物の因子も注入。5分程度で拒絶反応が出現。全身から血を流して失血死。
実験体-9
妊娠している実験体の腹部に『アサシンスパイダー』の因子を保持した『オリジンスライム』の因子を注入。母体に変化は無し。
3ヶ月後出産時、母体死亡。原因は赤ん坊の下半身が昆虫、特に『アサシンスパイダー』によく似た物となっておりそれが産道に引っかかり長時間の出血が原因。
補遺-赤ん坊の下半身から生えていた8本の足は全て人間の脚であることを確認。腹部は昆虫であった事から因子注入の時期が遅かった事と母体の出産期が異常に早くなった事も関係してると思考。
因子注入が原因で赤ん坊の成長過程でなんらかの
バグが発生したと考えられる。
この事から次の実験は妊娠中の実験体では無く妊娠前の実験体に因子を注入とする。成長初期段階でバグを発生させた場合の実例を欲す。
実験体-10
前回の幼児腹部昆虫化を踏まえて母体に出る影響がある程度少なくなる魔獣因子を厳選。
妊娠前に『ブラッドベアー』の因子を注入し母体の身体的変化、筋肉の増大と身体の強化を確認。
後に妊娠させ、なるべく早く腹部に因子注入。
半年後、出産。母体は難産ではあったが生存。
実験体である赤ん坊は両足と両腕、頭部(耳)に『ブラッドベアー』の特徴である赤色の毛と耳を持ち合わせて誕生。成長過程で凶暴性が強くなり研究員2名を殺害したため処分。
異常とも言える出産速度であるがおそらく魔獣が出産までの期間が短いのが関係していると思考。
実験体-6 v4
実験体-6の腕に龍の血を取り込んだ『オリジンスライム』を注入。実験体は重度の目眩と吐き気を患ったが死に至る事はなく2日ほどで症状が緩和。
身体に龍の鱗の様な物が生え始める。腕は完全に鱗に覆われており爪も鋭利な龍爪となり始める。
龍の血を『オリジンスライム』経由とは言え取り込んだ人間としては異例の軽症。
また、『シャドウウルフ』の影操作能力も飛躍的に強化され小さな部屋を影で多い四方八方から貫く事が出来るほどの強度と操作性を発揮。
人間性が欠如し始めているが、代わりに魔獣としての本能が強化され始めている。
これ以上の因子注入は国に大規模な影響を与えると判断し。急遽、成功個体では無く実験用母体への運用が決定。出産後、解体し因子を抽出。
実験体-11
誕生時に母体の人外的特徴を全て受け継いでる事が確認。以降成長とともに調教を繰り返し反抗能力を奪う。
母体としての能力が出現した場合即座に適合実験を中止し子供の作成へと移行。後に処分。
実験体の精神状況は一切の考慮無し。
----------------------------------------------
実験体-19
実験体-6の孫に当たる個体。
もはや人間としての面影は無く。ただひたすらに研究員の指示を聞くだけの従順な実験体。
受け継ぎ、取り込んだ因子の数は測定不能。
お互いに効果を打ち消し合う事もあれば、お互いの効果が能力を跳ね上げる事もある。
故に…逆らうことは無いと慢心した研究員達は…最強の兵器が暴走する事を…予見できていなかった。
過去数十年、人としての尊厳、人格自体をぶち壊す実験の犠牲となった…人々の怨嗟と呪詛の理性を…
初代『オリジンスライム』が「吸」の能力にたけ処分品の処理場となっていた事で蓄積された強大な負の魔力を…