91.納品の時間です
体調を崩し更新が途絶えたこと済みませんでした。また、更新を再開します。宜しくお願いします。
本来のお仕事も忘れてませんよ。
基礎化粧品以外にも売れそうな物を考えた結果、化粧品も作れば良いじゃないかという考えに達した。
出来上がったのは、BBクリーム・口紅・チーク・アイシャドウといった化粧品である。
勿論、試作品も作りましたとも。
容子に量産させたボトルに、二班に分かれて交代で詰め替え作業&梱包作業を依頼した。
私はというと、アンナを連れてサイエスにいる。
何故かと言うと、基礎化粧品を商業ギルドに卸す為である。
容子作のポーチやアクセサリー類の販路確保や、試作品の化粧を売り込むつもりだ。
商業ギルドランクは、現時点でFだ。
店を持っていない分、税金は安くて済む。
だが、毎回商業ギルドを卸すのも時間がかかる。
アンナから店を構える事を打診された。
店舗を買い上げれば、パンジーの能力で一瞬で移動できる。
それとは別に、貴族の間でもCremaの噂が流れているらしい。
容子が許可なく売り払ったアクセサリー類が、色々と話題を呼んでいるらしい。
転売を重ねて、今では結構な高値で取引されているとのこと。
面倒な事になる前に、商業ギルドを後ろ盾にして店を構えるのが一番安全とアンナは宣った。
それで面倒事が回避出来るのなら文句はないが、どうにも不安が残る。
化粧品関連のレシピは売るなと容子に釘を刺されているが、逆に売って特許収入が入る。
長い目を見れば得になるのではないだろうか?
そんな事をチラッとアンナに相談すると満面の笑みでGOサインが出た。
最終的にCremaに特許収入が入るようになれば、後々サイエス組が食い扶持に困ることはないだろう。
今回の訪問で納品とは別に、特許申請の手配も併せて行うことにした。
サイエスで買った豪邸から歩いて十五分くらいのところに、ギルドが密集しているのは助かる。
自転車で移動することも出来ないしね。
地球の文化を無暗やたらに取り入れて、それが戦争などに使われたら最悪だ。
出来るだけ厳選して作っていこうと思っている間、容子とイスパハン・カルテットの馬鹿達が恐ろしい兵器の制作に着手しているとは知る由もない。
「見えてきたな。じゃあ、アンナ交渉は任せるさかい頼むわ」
商業ギルドが見えて来たので、改めて気を引き締め直す。
「お任せ下さい!」
アンナの伊達眼鏡が、ギラッと光ったように見えた。
「7:3がボーダーラインかな」
値切り過ぎるのは良くないよと暗に釘を刺す。
「そこは8:2だと思います。寧ろ9:1でも十分利益は還元出来ると思いますよ」
アンナは、完全に値切りモードに入っている。
「値切るのは良いけど、気持ち良く長く取引するなら相手に利を与えべきでしょう。それに、あくまで商売は此処での生活基盤を整えるための手段でしかない。私の目的は、当初に伝えているの覚えてる?」
邪神をぶっ殺すが、私の目的だ。
しかし、その邪神がどんな神なのかも知らないのが現状だ。
アンナの口ぶりからすると、この世界は一神教みたいだ。
商いをしつつ、各地の伝承や邪神以外に信仰されている存在を確認したい。
Cremaは、情報を仕入れる手段の一つでもある。
邪神に感づかれて、私の計画をご破算にされては困るのだ。
「済みません。そうでした」
「アンナの実務や交渉の能力は買っているから、私の目的さえ見失わなかったら文句はないよ」
「はい」
「じゃあ、売り込みに行こうか! 容子の作品は、無名だから安く買い叩かれる可能性もある。交渉は、アンナに全て任せる」
パンッと軽く背中を叩くと、アンナは私を見下ろして力強く言った。
「お任せください!」
花が綻ぶような笑みを返してくれた。