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琴陵姉妹の異世界日記  作者: もっけさん
ハルモニア王国 王都
84/152

81.琴陵式ブートキャンプ 前編

 パンジーを除く全員で、パワーレベリングをする事にしました。

 パンジーは家の精(ドモヴォーイ)なので、家から離れることが出来ない。

 戦闘力は期待していないので、旧自宅兼事務所とビルと屋敷の家事全般をお願いした。

 旧自宅兼事務所で働いている柚木達に、パンジーを紹介したら神の如く崇められた。

 実質三人で仕事を回しており、食事もままならない状態だったらしい。

「この際、幽霊でも妖怪でも良いから手伝って!」

(たかむら)姉が、パンジーに縋りついていた。

「久しぶりに温かい飯キター!!」

 (たかむら)弟は、パンジーが作った料理を泣きながら食べている。

「掃除と洗濯が終わったら、この書類を纏めて下さい」

と柚木は淡々とした口調で、仕事を振っている。

 相当ストレスが溜まっているようだ。

「ビルの内装工事が完成したら、事務所を移転するからね。その頃には、人手も揃うと思う。暫く顔出せないけど、それまで頑張って! ボーナス出すから」

「ボーナスより休暇を下さい!!」

 柚木達の言葉を無視(スルー)して、そそくさと王都の拠点に戻ってきた。

 人材育成には、時間が掛るものなのだよ。

宥子(ひろこ)、用事終わった?」

「うん、パンジーの紹介をしてきた。人手足りない。休日欲しいってさ。それで班分けは出来た?」

「出来た。本当にチビ共も参加させるの?」

 今回のパワーレベリングに、年少組のチルドルとジャックを強制参加させることに容子(まさこ)は不満顔である。

「参加は必須です。自衛出来ないと困るもん」

 貴族の屋敷(中古)を一括現金払いした上に、大人数の奴隷をポンと購入している。

 派手にお金を使っているので、良からぬ輩に目を付けられている可能性がある。

 もし年少組が人質にされてしまうと、動きが鈍ったり、手出しが出来なくなるなって状況が悪化する場合がある。

 というのは建前で、いずれ独り立ちした時に多少の腕っぷしがあれば食っていけるだろうという思惑だ。

 自分の食い扶持は自分で稼ぐ!

 それが、琴陵(ことおか)家のモットーです。

 元冒険者と私・アンナ・容子(まさこ)・カルテットはダンジョンに入れるが、その他の者達は冒険者登録していないのでダンジョンに入れない。

 年少組の二人は、冒険者登録出来る年齢ではない。

 必然的にダンジョンに入れない。

 だが、抜け道もある。

 冒険者の荷物持ちとして、同行することは可能だ。

 元冒険者チームは一足先にダンジョンに入って貰うことにし、残った者達は近くの森でレベル上げをする事となった。




 王都を出て、魔物除けの薬を散布しつつ歩く事一時間。

 索敵を掛けると、良い感じにモンスターが点在している。

「チームを発表します! 宥子(ひろこ)チームは、蛇達・チルドル・ジャック・ワウル。容子(まさこ)チームは、楽白・ボブ・イスパハン・ジョン。アンナチームは、サクラ・ルーシー・キャロル・マリーです」

「何で私のところだけ物理系なのさ! 野郎ばっかりって可笑しくない? 嫌だ~嫌だ~」

 野郎と組みたくないと駄々を捏ねる容子(まさこ)に、脳天チョップをかます。

「ギャッ!」

「グダグダ文句言うな。お前、昇級試験で片手斧を取得してただろう。指導したれ。念のため、楽白も付けただろう」

 頭を押さえながら蹲っている阿呆(まさこ)は放っておいて、アンナに声をかける。

「ルーシーとキャロルは、火と土魔法のレベル上げな。マリーは水魔法1を取得させたから、そのレベル上げを頼む。サクラがいるから死ぬことは無いと思うけど、安全第一に行動するように。方針は、アンナに任せる」

「了解しました」

「チビっ子チームは、適正のある魔法と槍を覚えて貰う。大丈夫。魔力は膨大にあるから、追々適正を探って戦おうな。まずは、無難に水魔法取得しようか。ワウルは、片手剣で戦え。お前には、壁役させる。何かあったら念話すること。じゃあ、三時間後にこの場に集合!」

 ポイントを割り振って、チビっ子二人に水魔法を取得させた。

 ボブとワウルは片手剣、イスパハンは大剣を取得。

 マリーは、水魔法を取得させておいた。

 私は、チビっ子2人とワウルを連れて移動開始した。

 索敵していたら、ホブゴブリンの群れに遭遇したよ。

 豪運様が、いい仕事をしてくれる。

 索敵で数えて、ザッと三十匹はいる。

 経験値はショボいが、初心者の戦闘には丁度良い材料だろう。

 容子(まさこ)から、内緒でかっぱらった巫女の耳飾を装備しといて良かった。

 巫女の耳飾・改と合わせて使うと、丁度良い感じに収まってくれた。

 悪運が、幸運に好転してくれただけでもありがたや~。

「ギャアァアッ! ホブゴブリンっすよ! あんなに居たら死ぬっす」

「ワウル、五月蠅い。これくらいで騒ぐな。(eccentric)(shock)

 雷魔法1のため威力は無いが、丁度良い具合に感電して麻痺になっている。

 動けなくなっているホブゴブリンの足を、土魔法でガチガチに固めて、三人に命令した。

「よし、今だ! ワウルは、剣で止め刺してこい。おチビは、水魔法で顔を覆うこと。五分経ったら、槍でグサッと心臓目掛けて刺して息の根を止めること」

 大体五分もすれば、ほぼ意識は落ちて95%の確率で死亡している。

 念のために止めを刺せば、確実に経験値が入るだろう。

 蛇達には、彼らが危なくなったら守るように言いつけてある。

 ド素人でも使える剣(物攻12000・会心50%・命中20%)と誰でも達人になれる槍(物攻8000・会心30%・命中60%)を渡しているので大丈夫だろう。

 魔力の扱いに慣れていないためか、顔を覆うくらいのウォーターボールを作ってたり、維持するのが大変だったりで溺死させるまでには至らなかったが、昏睡状態にして槍で確実に止めを刺していたので良しとしよう。

 ワウルは、腰が引けつつもグサグサと心臓を狙って刺している。

 三十分程で片が付きました。

 私も蛇達も出番が無かった。

「じゃあ、次行こうか」

「ちょっ、姐さんもう止めましょうや。ホブゴブリン30匹討伐したですよ。この辺にしときましょうよぉ」

 弱腰になっているワウルの尻を蹴り飛ばし、

「グダグダ言うな。チビ共の方が、お前よりも根性座ってるのにな。この子らを見習え」

 ドロップアイテムを蛇達と共に回収し終わり、索敵で新たな獲物を見つけて移動を開始する。

 自転車を二台出して、チビ2人に乗らせてみる。

 最初は転んだりと危なっかしかったが、三十分もすればスムーズに走れるようになった。

 よし、これで足は確保した。

「しっかり付いてきなよ~」

 私は原付を出して、ワウルを後ろに乗せ先導する。

 速度は30キロ未満なので、私にすれば低速度である。

 次に遭遇したモンスターは、キリンだった。

 馬に角が生えただけなのに、種族名がキリンって!

 普通はユニコーンじゃなかろうか、と思ったが微妙に違うらしい。

 レベルも53と。中々美味しい経験値の塊じゃないか。

 よし、狩ろう!

 雷魔法を持っているので、耐電スキルはあると思った方が良さそうだ。

 そうすると、水魔法もあまり期待出来ないな。

コンクリート(concrete)!」

 キリンの足場をコンクリートで固定し、顎を掴み無理やり口を開かせた。

「試作品の麻痺薬を口に流し込んでっと。うん、良い感じに痺れてんな」

 足から崩れ落ちへたり込み痙攣を起こしているキリンを見て、後ろにいた三人に声を掛けた。

「丁度いい感じに痺れているから、薬の効果が切れる前に止め刺そうか。頭を重点的に狙うんやで」

「……姐さん、外道っす」

「黙れ! お前のレベルよりも上やぞ。正攻法で勝てると思うな、ボケ。汚い手だろうが、生き残れば正義。大体、害獣に仏心は無用だ」

 モンスター討伐に外道もくそもあるかとワウルを叱りつけ、止めを刺せと急き立てる。

 チビ二人の方が、槍を使って一生懸命戦っている。

 根性は、立派なもんだ。 

 十分毎に痺れ薬をしこたま仕込んで、三人に頭をタコ殴りにさせる。

「武器の使い方を学ぶんだよ~。それは的と思って戦うべし。大丈夫、痺れて何も出来ないから怖くないよ~」

 剣なら教えられなくはないが、槍の使い方は知らん。

 自己流で覚えて貰うしかない。

 まずは、突きから覚えればいいだろう。

 本当は()なし方を覚える方が先なのだろうが、師事する人がいないので仕方がない。

 今度、槍使いの奴隷でも買おうかなぁ。

 一時間かけてキリンを倒した。

 最後は、恐怖に怯えた目で私を見ていたのが印象に残った。

 なんか、ちょっと罪悪感が出るね。

 最期は、見るも無残な姿になっていた。

 体のあちこちに切り傷や刺し傷が沢山あった。

 ドロップされたアイテムは、幻獣の角・毛皮・透明な魔石(大)・幻獣の尻尾・金貨400枚だ。

 取得金二倍のスキルが良い感じで働いてくれている。

 容子(まさこ)様様だ。

「じゃあ、次は実践行ってみようか~」

「ちょっ、実践って俺らだけで戦うんすか? いやいや、無理無理。マジ、無理っす!」

 青い顔でガクブルしているワウルは、本当に根性がない。

 チビっ子二人を見ると、若干青い顔色ではあったが反論はしてこない。

 根性が座っていて良いね!

 そういうの大好きだよ。

「子供が文句言わないのに、大の大人が何文句言ってんのさ。三人の平均レベルは40前後まで上がったから、大丈夫。何とかなる。というか、何とかしろ。私も最初は、レベル1でワーウルフを倒した。やれば出来る。いざという時は助けるし、怪我しても常時回復してあげるから死にはせん。痛いだけだよ」

「それでも嫌なもんは嫌っす! 怖いんっすよ」

 絶叫するワウルの頭をハリセンでしばき、地面に沈めた。

「ギャーギャー五月蠅い。武神の加護貰っておいて、ヘタレは治らんのか? 脅されたり、攫われたりした時、一人で対処出来るように扱いてるって分かってる? この先、一人で生きていける様にするための訓練でしょうが。キリキリやれ」

 ううっと呻き声が、聞こえてくるが知らね。

 大の大人が、これくらいの事で泣くなよ。

 キモイな。

「この先、ずっと一緒にいるとは限らない。自立出来るように強くなれ。金も力も知恵も自分の手で手に入れろ。そうすれば、誰かにいちゃもん付けられても、大抵の事なら対処出来るようになる。ワウル、お前に一番欠けているのは自己防衛出来る手段がないことだ。人に良いように扱われる人生で終わりたくないなら剣を取れ。そして戦え。レベル80になるまで戦うからな」

 そう宣言して、パワーレベリングという名のブートキャンプをやりました。

 終わるころには、皆の目が死んでいた。

 ちょっとやり過ぎたかもしれないと自己反省した。

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