表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
琴陵姉妹の異世界日記  作者: もっけさん
ハルモニア王国 王都
81/152

78.新しい仲間が加わりました

 Crema(クリマ)の経営と金策巡りしつつ、サイエスでも勢力的に活動していたら、あっと言う間に師走が目前に迫っていた。

 新たな従業員(仮)として、柚木達にワウルとイザベラの姿を紹介してみたが、興味がないのか「ふーん」の一言で終ってしまった。

 仕事の合間に、小学一年生のドリルから勉強をして貰っている。

 勉強は、大事だよね!

 購入したビルは、突貫工事で1フロアを改装した。

 最上階は住居スペースにして、三畳の部屋を十部屋(鍵付き)と風呂とダイニングキッチンが完備されている。

 ネット設備も整え、ビル購入とお社代で大きなお金が吹っ飛んだ。

 ビルの内装が完了するまでは、自宅が本社扱いとして残し、柚木達はそこに通うか、住み込みで働いて貰う予定だ。

 四階から一階までは、まだ工事が入っていない。

 一階は売り場、二階は基礎化粧品の製造ライン、三階が梱包と資材置き場、四階はコールセンターを作る算段になっている。

 琴陵(ことおか)家+αは、五階へ引っ越し新生活が始まった。

 引っ越す前に、姫嶋神社から神主さん呼んで天照大御神から預かった翡翠の勾玉をご神体として、屋上に設置したお社にお祭りした。

 土地神だったヘビ様は、最初は色々いちゃもん付けてきたが、天照大御神の後ろ立てもあって大きな嫌がらせはしなかった。

 その代わり、毎夜夢枕に立っては「水の代わりにお酒をお供えろ」「もっと良い酒寄越せ」とねだってきた。

 あまりにもしつこいので、十回に一回は大吟醸をお供えしたら、また夢枕に立って「おつまみも寄こせ」と催促された。

 ヘビ様は、どうやら私たちの生活ぶりを見ているらしい。

 なので、一日一回私たちと同じ食事・おつまみ・お酒をお供えすることにした。

 和解まではいかないけど、お供え物を欠かさずしている分には何も起こらないので良しとしよう。

「う~ん、結構使ったからお金を稼がないとヤバイ」

 通帳と睨めっこしながらぼやくと、容子(まさこ)がヒョイと顔を覗かせた。

「100万円切っている!! ヤバくね? 給与ちゃんと払える?」

「非常にヤバイです。お社とビルの改装・購入で結構お金使ったからなぁ。金貨換金するにしても、一気にしたら色々面倒だ。自力でお金稼ぐにしても、人手が足りない。ビルの改装が完全に終われば、人を雇えるのに……」

「化粧品セット(良)を販売したら?」

「それは、時期尚早。それよりも、これからどうするか決めないと」

 うーんと二人して唸っていたら、アンナが奴隷買いを勧めてきた。

「奴隷を買いましょう! 人手不足も解消されますし、生産性も上がります」

 確かに生産性も上がれば、受注発注の規制も解除される。

 しかし、当面の生活費がない。

 由々しき問題である。

 決断にうーんと悩んでいたら、頭にヘビ様の声が響いてきた。

『明日の10時に●◎駅前の宝くじ売り場で宝くじ買え』

「は? 何で宝くじ!?」

 私の言葉にヘビ様からの返事はなく、独り言を喋っているように見られた。

「いきなり何? 宝くじとか言っている場合じゃないでしょう」

 ジト目で睨んでくる容子(まさこ)に、私はヘビ様から神託もどきがあったと話した。

「いや、ヘビ様が明日の10時に●◎駅前の宝くじ売り場で宝くじ買えっていうお告げが今あった」

「金に困っている私達を見て助けてくれるつもりか?」

 容子(まさこ)の言葉に、私は心の中で絶対違うと心の中でツッコミを入れた。

 あのヘビ様が、そんな慈悲深い心を持ち合わせているとは思えない。

 献上品の質が落ちるのは嫌だから、宝くじで当てたお金で稼いで色々献上しろって事だろう。

 言わぬが花。

 黙っているのが一番だ。

「ヘビ様の気が変わる前に、皆で宝くじ買いに行こう。イザベラは、留守番な! 大人しくアニメ鑑賞でもしてなさい」

 幸運値の高い契約(テイム)カルテットも連れていけば、誰か一枚くらい当たるだろうと思った時期もありました。

 スクラッチとジャンボな宝くじを一枚ずつ買ったら、全員当たりました。

 一等、二等といった具合に連続で高額当選した。

 ヘビ様ありがとう!

 これで、当面の生活費と資本金は何とかなった。

 宝くじの税金対策は、ちゃんとしたよ。

 当選証明書を発行して貰ったから大丈夫。

 書類の保管やお金関係は、全部アンナに丸投げした。

 だって、私じゃ分からないもん。

 彼女の方が、お金や事務関係は分かっているし、何よりお金大好きだからね。

 一応当面のお金問題は解決したので、人員調達するためにサイエスに戻る事にした。




 王都の宿に戻り、まず最初にしたのは商業ギルドに皆で向かうこと。

 目的は、一軒家を買う為だ。

 ぶっちゃけ宿を借りていると、時間を気にする必要がある。

 なので、手っ取り早く一軒家を買えばその心配はなくなる。

「済みません。家を買いたいのですが」

「家ですね。畏まりました。担当を呼びます」

 受付嬢が、魔法具で不動産担当を呼んでいる。

 数分後に、七三分けの眼鏡を掛けたインテリ系おっさんが出てきた。

「ハウル・シルビアと申します。こちらへどうぞ」

 通された部屋は、皆が座れるくらいの余裕がある大きな部屋だった。

 円形のテーブルは、商業ギルドでは珍しい。

 大抵長方形か正方形が多いが、ここは円形も採用しているのか。

 なかなか人の心理を付いてくるギルドだ。

 こちらも気を引き締めないと、足をすくわれそうだ。

「物件をお探しとの事ですが、どのようなのがご希望でしょうか?」

「白金貨10枚前後でお風呂の付いた広めの家を探しています」

「!? お支払いは即金になりますが大丈夫ですか?」

 白金貨10枚と言ったら驚かれた。

 しかも、金払いの心配までされた!

「大丈夫です。お金ならありますので」

 ウエストポーチに手を突っ込み、拡張空間ホームから白金貨10枚取り出した。

 テーブルの上に置かれた白金貨を見て、インテリ眼鏡はゴクリと生唾を飲んだ。

「た、確かにお金はあるようですね。いくつか候補があります。ご案内致します」

 お金を仕舞い、物件を案内して貰った。

 色々見て回ったが、これと言って良いのが無く値段を上げようかと思ったら、

「一応、お客様の条件に合うのがあるのですが曰く付きでして……」

と歯切り悪く切り出された。

 買わないと思われたのか?

「見ます」

 容子(まさこ)が、何でそんな曰く付き物件をー!! とか文句を言っているけど知らね。

 案内されたのは、商業ギルドから徒歩十分。

 丁度、貴族と庶民が住む区画の堺にあった。

 厳密に言えば、元貴族の家らしい。

 確かに立派な佇まいで大きな庭も付いている。

 中も部屋数が多くリビングも厨房も大きかった。

 何よりお風呂が広くて気に入った。

「良いね! ここにする」

「いや、良くないから! この禍々しさ気付かないの?」

「そんなの気付いているよ。呪われてても問題ないし、ここを買います!」

 ワウルは、「え? 本当に買うの?」と目を丸くしている。

「で、では、一度ギルドに戻って売買書をお渡しします」

「はい、お願いします」

 即金でお支払いし売買契約書を貰って、意気揚々と曰く付きの館へ戻って来ました。

 その間、容子(まさこ)がブチブチ文句を言っていたが知らん。

 曰く付き館に到着して、

容子(まさこ)治癒(heal)を館全体に掛けて。勿論、全力でやれ。手抜きは許さん。MPポーションはあるから安心して、MP切れ起こすまで念入りにするんだぞ」

と家長命令を発動させた。

「何でやねん!」

と関西弁で突っ込まれたので、仕方がないので懇切丁寧に説明してあげた。

「お前の治癒(heal)の方が、サクラの治癒(heal)よりアンデッドを浄化出来るからに決まってるでしょう。容子(まさこ)の聖魔法は、対アンテッド系には絶大な効果を発揮するじゃん」

 私の説明に、納得したアンナはうんうんと頷いている。

「だから、曰く付きで安く売られているこの館を買われたんですね」

 呑み込みが早くて助かるわ。

「叩き売りされたお屋敷を正規の値段で買うなら、到底白金貨10枚じゃ足りないと思うけど?」

「そうですね。安く見ても白金貨80枚は要るかと思います」

「でしょう。てなわけで、サクッと治癒(heal)しろ」

 早くしろとせっつくと、容子(まさこ)は渋々治癒(heal)を敷地全体に渡るように掛けた。

 ギャーとかウァァワアアとか変な声も聞こえたが、強制的に昇天させられた悪霊だから問題なし。

 治癒(heal)を連発して、MPポーションをがぶ飲みして作業を進める容子(まさこ)に心の中で同情はした。

 変な声や気配が消えたので、もう良いよと言うと、容子(まさこ)は息も絶え絶えになっている。

「お疲れ様」

「ごっつう疲れた!」

 ゼイゼイ言いながら、MPポーションを煽っている。

「これで浄化完了したし、住めるな!」

と言いながら扉を開けたら、メイドが立っていた。

 思わず扉を閉めていた。

 見間違いか? と思ってもう一度開けたら、メイドが立っている。

容子(まさこ)治癒(heal)を食らっても成仏しない幽霊って初めて見た!」

「スケルトンキングを一撃で倒すくらい強力なのに、凄い精神力ですね」

 私の呟きにアンナが感心したように同調する。

「いや、そこじゃない! 何で成仏してないのか、そこに焦ろうや」

 家庭内害虫Gよりもしぶとい幽霊メイドに称賛を贈ったら、容子(まさこ)からツッコミが入ったので、幽霊メイドに話しかけてみることにした。

 幽霊メイドから害意は、感じられないし大丈夫でしょう。

「そこのメイドちゃん、悪いんだけどさ。これから私らが、此処に住むの。だから成仏してくれないかな?」

 念のため、容子(まさこ)MPポーション(ドーピング)を飲ませて、いつでも治癒(heal)を打たせる準備をしていたら、幽霊メイドが慌てて縋りついてきた。

「待って下さい。危害を加えるつもりはないんですぅ!! ここに縛り付けられていたせいで、自力で成仏出来ないんですぅ」

「じゃあ、害はないと?」

「はい、ありません!!」

 半泣きになりながら必死に無害アピールする幽霊メイドを見て、うーんと唸った。

 このまま放置しても良いが、それだと後から入ってくる奴隷予定(なかま)達が困惑するので契約(テイム)することにした。

「じゃあ、私の従魔になる? 契約(テイム)すれば、好きな時に成仏出来るし、好きなだけ此処にいても良いよ」

「はい、はい! それでお願いしますぅ」

 パァッと顔が明るくなった幽霊メイドの頭に手を置くポーズを取ると、<幽霊メイドが契約(テイム)されたがってます>と表示されたのでYESを選択した。

 名前は無かったのでパンジーと名付けたら、パッと身体が光り額に太陽の模様が浮き出ていた。

 ステータスを確認すると幽霊メイドではなくなっていた。


---------STATUS---------

名前:パンジー

種族:ドモヴォーイ(家の精霊)

レベル:25

職業:メイド

年齢:18歳

体力:∞

魔力:0

筋力:3

防御:3

知能:145

速度:27

運 :200

■装備:メイド服

■スキル:索敵∞・罠∞・メイド∞

■ギフト:[拡張空間ホーム共有化]

■称号:[宥子(ひろこ)の従魔]・[メイドの中のメイド]

■加護:[須佐之男命・櫛稲田姫命・阿迦留姫命]

■pt統合

-------------------------------

 声が出ない。

 ステータスの鑑定が壊れたかと二度見したが、変わらなかった。

「今度は体力馬鹿が下僕になったんか」

容子(まさこ)が言った。

「阿迦留姫命様の加護が追加されている。皆、ステータス見せて!!」

 確認すると、全員が阿迦留姫命の加護が追加されていた。

 自宅に戻ったら、お礼を言いに行かなければならないな。

「阿迦留姫命様の加護を貰ったから、幽霊からドモヴォーイに変化したんじゃない?」

容子(まさこ)、意味が分からん」

「阿迦留姫命様は、決断と行動の神様で美の神様とも言われている。太陽のように赤い玉から生まれた阿迦留姫命様は、新羅……古代の北朝鮮な。そこの王子と結婚したんだけど、王子が凄いモラハラ男だったのよ。それに耐えかねて、三行半言い渡して日本に帰って来てた逸話がある。出戻りした阿迦留姫命様は、女性達に機織りや楽器などを教えた事で『決断と行動の神様』『美の神様』として女性達の信仰を集めたらしいよ。ほら、ビルの屋上に祀られているヘビ様の使えている神様が阿迦留姫命様だし。多分、それが影響したんじゃないかな」

「日本最古の国際離婚した神様か。凄いな阿迦留姫命様」

「神様へのお礼は後にして、新しい仲間も加わった事ですし、今日は宴会ですね!」

とアンナが提案した。

 お前は、ただ酒が飲みたいだけだろう、とは突っ込まないでおく。

「家の精霊になったお祝いも兼ねて宴会にしよう! 明日からやる事はいっぱいあるしな」

 こうして新しい家を購入したら、新しい仲間が漏れなく付いてきた一日だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ