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琴陵姉妹の異世界日記  作者: もっけさん
ハルモニア王国 王都
68/152

65.ハルモニア王国の王都に来ました

 日本で慌ただく雑務をこなして、漸く一区切りついたのでサイエスに戻ってきた。

 ハルモニア王国の王都に、やっと着いたよ!

 セブールから王都まで来るのに、半月も掛かった。

 辺境の地から馬車で移動するとなれば、三ヶ月は掛かっただろうとアンナ談。

 原付バイクが無ければ、三ヶ月以上掛かっていたかもしれないと思うとゾッとする。

 道中は、嫌というほどボスクラスのモンスターと対峙していたので、レベルの上がり方が可笑しくなっている。

 城門前の関所で、憲兵に三度見された。

 いくら冒険者と言えども、レベル100越えが三人もいれば目を疑いたくなるだろう。

 こんな事なら、商業ギルドのカードで中に入れば良かった。

 後悔しても仕方がない。

 気持ちを切り替えて、私達は王都へと足を踏み入れた。

「私は、冒険者ギルドに出向いてを報告してくる。容子(まさこ)達は、宿を取って待機」

 トラブルメーカーの容子(まさこ)を連れて歩くと、もれなくカルテットも付いてくる。

 面倒臭いが、更に面倒臭い状況を生み出すカオス空間が出来上がるのは避けたい。

 待機命令を出したらブーイングが上がった、丸っと無視(スルー)を決め込んだ。

「私も一緒に行きます。私も冒険者登録が必要ですし、何より今回の件は許しがたい事ですので、しっかり報告しなくてはなりません」

 ホホホホッと笑うアンナの顔は、目が全然笑ってなくて怖い。

 アンナ、私以上に怒ってないか?

 それはさておき、私達は容子(まさこ)&カルテットと別行動を取る事となった。

 欲しいものがあれば拡張空間ホームからお金を取出して使えば良いし、結構稼いでいるので多少の散財も目をつむろう。

 私はアンナを伴って冒険者ギルドを訪れたのだった。




 王都だけあり、冒険者ギルドの規模も大きかった。

 セブールの冒険者ギルドも大きいと感じたが、比較にならないくらい立派な建物である。

 三階建てで一区画丸々ギルドホールになっている。

 一階は受付・二階は図書館・三階はギルド職員の住居となっているようだ。

 地下一・二階は、模擬戦闘が行われる場所で複雑な結界が張られている。

 魔法障壁と物理結界の二種類の結界は、手持ちの魔法やカルテット特製の武器でも壊せないくらい頑丈だ。

 これだけ厳重かつ充実していると、王都に高ランクの冒険者が集まるのが頷ける。

 ギルド職員も、どんな冒険者に対して斬然とした対応をしている。

 怠慢も奢りもない。

 職員の数だけでも、二百人は超えている。

 そう考えると、王都のギルドマスターは相当のやり手と見える。

 心して掛からないと、こっちが食われそうだ。

 受付嬢にギルドカードを提示して、ギルドマスターに報告したい事があると伝えたら、アポを取ってないため却下された。

 そりゃ、そうだよね。

 アポなし訪問で、お偉いさんがのこのこ出てくるわけないか。

「緊急の報告です。セブールの街付近に、三千匹のゴブリンの軍勢が発生していた事について知らせにきました。取次をお願いします」

 そう言葉にした瞬間、周囲の空気がビリビリと張りつめた。

「その情報は本当ですか?」

「はい、討伐しましたから」

 その言葉に、張りつめていた空気が解ける。

 そして、馬鹿にしたような目で見られた。

 私が、大法螺を吹いていると思われたようだ。

「ギルドカードの討伐記録を確認して下さい。ここに来るまでに、色々と狩りましたので結構遡らないと確認出来ないと思います。証明になるか分かりませんが、ゴブリンキングの剣です」

 布の鞄に手を突っ込み、拡張空間ホームからゴブリンの剣を取出しカードと併せてカウンターの上に置いた。

「確認させて頂きます」

 受付嬢はゴブリン王の剣を鑑定した後、ギルドカードの履歴も確認している。

「確認出来ました。大変失礼致しました」

 青ざめた顔で、ゴブリンキングの剣とカードを返却された。

 こんな成りでも、レベル400ですから。

「ゴブリンの討伐は、偶々鉢合わせて殲滅しました。ダリエラ及びセブールのギルド職員が、色々と問題行動を起こしています。ゴブリン襲撃の情報も、冒険者には回って来ず放置された結果が、ゴブリンキング討伐(これ)ですからね。アポは取ってませんが、ギルドマスターに詳細を報告したいので会えませんかね?」

と下手にお願いしてみたら、受付嬢の顔色が真っ青から真っ白になっている。

 しかし、そこはプロ!

 ちゃんと仕事をしてくれました。

「至急、確認、します」

 魔法具でギルドマスターに連絡を取っているのだろう。

 数分待たされて、十分だけならと許可が下りた。

 十分で終わる内容ではないのだが、面会出来ただけでも良しとしよう。

 三階の一番奥にある仰々しいくらいに凝った扉を開けて貰うと、品の良い調度品が飾ってある。

 シンプルだが、良い品で揃えているのが分かる。

 セブールは成金ぽかったけど、こっちは本物の金持ちって感じがする。

「ハルモニア王国の冒険者ギルド本部へようこそ、ヒロコ殿。そして、値切りのアンナ殿。私は、本部のギルドマスターをしているジョン・タイターだ。気軽にジョンと呼んでくれ」

 馴れ馴れしい奴だな。

 何て言うかキモイ。

 アンナってば、そんな変な二つ名があるとは驚いた。

 値切りのアンナと言われて、彼女の機嫌はすこぶる悪い。

 私なら、そんな変な二つ名はごめんだわ。

「受付から、ヒロコ殿が単身でゴブリンの軍勢及びゴブリンキングを討伐したと聞いているが間違いないのかね?」

 色々と端折られいるが、概ね間違いはないので頷く。

「概ね合っています。セブールには、昇級試験を受けるために寄りました。正直、始まりの町よりもギルド職員の質が悪くて吃驚したくらいです。昇級試験で殺されそうになるとは思いませんでしたよ。勿論、抗議しましたけど梨の(つぶて)でしたけどね。ストレス発散のためにモンスター狩りしていたら、運悪くゴブリンの集団に鉢合わせてしまいまして。戻って報告するにも、時間も余裕もなかったんですよ。なので討伐は、完全に成り行きです」

 そう言い切る私に、ジョンは微妙な顔をしている。

 成り行きでゴブリンの集団をソロで倒す方が、どう考えても異常だろう。

 だってさ、三千匹のゴブリン軍団と遭遇する確率は、天文学的な数字になる。

「念の為に、ギルドカードを拝見しても良いかな」

「どうぞ」

 ギルドカードを渡すと、ジョンは魔法具を使って討伐履歴を確認している。

 私が、今まで狩ったモンスターがズラーッと表示されていた。

 ジョンが、討伐モンスターの名前を見ながら唸っている姿は滑稽だ。

 王都に来るまでに、私達は結構な数のモンスターを狩ってきた。

 ゴブリンやゴブリンキングを討伐履歴から探すのは大変だと思う。

 十五分ほどして、ギルドカードが返却された。

 今まで討伐してきた内容も、しっかりと見たんだろう。

 ジョンの顔が、若干青ざめている。

「確かに確認した。レベルが、ギルドランクと見合ってないように見受ける。昇級試験を受けていかないか?」

「あ、それは後でお願いします。先にダリエラの処分について……んんっ、失礼。セブールの汚職とゴブリン軍勢について詳細をお伝えしても宜しいですか?」

「勿論だ。詳しく話してくれ」

「実は、かくかくしかじかで……」

 私や容子(まさこ)が、セブールでされた事。

 隣領から追い払われたゴブリンが群れを形成して、三千匹のゴブリン集団になった事。

 ダリエラは、隣領からゴブリンが追い払われたことを知っていたにもかかわらず、初動が遅れた事などを盛大に愚痴った。

 ジョンは、顔を赤くしたり青くしたりと忙しい。

「はっきり言って、ギルドマスターの肩書は彼女(ダリエラ)には荷が重いんじゃないですか? セブールの腐敗した体制を何とかしないと、スタンピード が起こったら対応できないと思いますよ」

 私の苦言に、ジョンはハァと大きな溜息を零した。

「ヒロコ殿が居てくれなければ、セブールはゴブリンの軍勢に蹂躙されていただろう。ダリエラの処分は、査問会を開き厳重な処罰を下そう」

「そうして下さい。後、セブールの冒険者ギルドの立て直しも併せてお願いします。どうも、天下りっぽいところがありますので」

「う、うむ。それも早急に対応しよう」

 うしっ、言質は取ったどー!

「君みたいな若い子が、レベル400とは驚きだ。単身で三千匹のゴブリンを討伐出来るなら、CランクではなくSランクが妥当だろうに」

「私、ランクに拘りはないんで。本業は、商人ですからね。ただ、私一人だけ飛びぬけてランクが高いと困るんですよ。アンナと妹でパーティを組んでいるので、上げるとしてもBかAランクですかね」

と答えたら、ギョッとした顔でジョンがアンナを凝視している。

「アンナ、君は商業ギルドを辞めてきたのか!?」

 え、そこに驚くの?

 おっさんの驚くポイントが、私には理解できないよ。

「ヒロコさんと一緒に行動すれば、実入りも良いので。何より彼女は、商人ですから」

「うん、そうなんだけどね」

「商業ギルド職員ではなくなりましたが、商業ギルドには登録済みですよ。私は、ヒロコさんとこれからも行動を共にします。なので、冒険者ギルドに登録することにしましたの」

 ウフフと笑うアンナに対し、ジョンは飽きれた顔をして言った。

「アンナは、流石に戦闘は無理だろう」

「彼女レベル200オーバーだよ。風魔法で何時も後方支援して貰ってます」

 何て言うか、レベルの上がり方が異常に早いんだよね。

 恐らく契約(テイム)した者は、須らく私の経験値倍化が適用されるんだと思う。

「嘘だろう……」

「いや、本当です。登録すれば、私が嘘を言っているか分かるでしょう」

と返せば、成り行きでアンナの登録が行われた。

 ギルドカードには名前・レベル・ジョブ以外を伏せて貰い、改めてカードをジョンに提示すると、彼は頭を抱えている。

「……因みにだが、妹のレベルも聞いて良いか?」

「確か300前半だったと思いますけど」

「お前ら人間じゃねーわ」

 何とも失礼な本音が、ジョンから飛び出した。

 ぶっ飛ばしてやろうかしら。

「パーティで行動しているので、ギルドランクは統一したいんですよ」

「従魔に、蛇と蜘蛛とスライムがいます。蜘蛛は王都に来る前に契約(テイム)したので、ギルドカードの情報に追加しといてください」

 ギルドカードを渡すと、手早く追加してくれた。

 王都のギルドは、仕事が早いね!

「形式だが昇級試験を受けて貰う。Sランクになるが、一応形式は大事なんでな」

「了解です。合格すれば、全員がSランクって事ですか?」

「そうなるな。パーティ戦と個人戦の二つを行うから、都合の良い日を教えてくれ」

「なら、明日で!」

 面倒臭いことは、早々に終わらして基礎化粧品を売ったり、王都でウィンドショッピングしたい!

 私が昇級試験の話をしている頃、容子(まさこ)が一足先にウィンドショッピングをしていて、王都の商品が容子(まさこ)お手製の品より遥かに劣ることにガッカリしているとは知る由もなかった。

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