62.久々のステータス確認 *
王都へ行くと云っても、ずっと原付に乗り続けるわけにはいかない。
勿論、戦闘になることもある。
カルテットの幸運値と私の悪運を相殺しても、モンスターの遭遇率は高い。
高位モンスターと遭遇する頻度が減っただけでも、カルテットの幸運の恩恵は受けているのだろう。
雑魚モンスターは原付で轢き殺し、ドロップ品の回収するというHit and awayを繰り返している。
聖域で強化された原付バイクは、モンスターにとって走る凶器になりつつある。
最初は、中ボスクラスのモンスターと遭遇してギャーギャー云っていたアンナも、今では悟りを開き魔法で後方支援してくれる。
私は、最初から詠唱せず呪文を唱えて魔法を行使していた。
それを見たアンナは、詠唱破棄のコツについて根掘り葉掘り聞いてきた。
「我流で取得したから分からない」
と返したら、興奮気味に魔法について教えてくれた。
アンナ曰く、詠唱>詠唱破棄>無詠唱の順で魔術師の能力が如実になるという。
「大昔の大賢者が、史上初の無詠唱で魔法を使っておられたと記録があります。詠唱破棄ができるなら、無詠唱も出来ると言われてます」
フンスッと鼻息を荒くしながら訴えるアンナに、私は首を傾げた。
「魔法はイメージと発音さえ合っていれば、魔法適正がなくても発動するよ。サクラと容子が、良い例だよ。サクラの治癒と容子の治癒は、天と地の差があるからね!」
適正が低い場合は、発動しても威力は限りなく弱い。
それは、容子とサクラにも当てはまる。
元々神聖魔法の適性を持っていたサクラと、スキルポイントで獲得した容子では差が出ても仕方がない。
「宥子、酷い!」
「確かに、サクラに掛けて貰った治癒の方が一瞬で治りますね」
「追い打ち!? アンナも酷い! 適正って言うけどさ、魔法を行使するなら構造の理解や想像力も必要だと思う」
メソメソと泣いていた容子は、口をへの字にして魔法に対する持論を述べた。
「で?」
「人の話聞けよー! もうっ、アンナは元々レベル3でに風魔法を中級まで使えていたでしょう。感覚的に使っていたものを、科学的に理解したら同じ中級魔法でも威力は桁違いに上がると言いたいの」
「うん。だから?」
「アンナには、元素から教えれば新しい魔法の一つや二つ作れるんじゃない?」
容子のひょんな一言で、アンナに対し科学について学んで貰うことにした。
Your Tubeに配信されている化学関連の動画、小学生から高校生までの化学に関する教材を読ませたら、グングン吸収して独自の風魔法を編み出すまで至った。
アンナは、地頭が良いから物覚えが早くて助かった。
本当、容子以外は皆チートだ。
王都まであと少しというところまで来ました!
「いい加減、ボス戦に飽きた。毎度遭遇するモンスターが、私らよりレベルが高いのがムカツク」
と、容子は愚痴をこぼしながらモンスターをボコッている。
倒しても倒しても、三十分に一回の確率で高ランクモンスターに遭遇する。
『飽きた』の一言で片づけないで欲しい。
「その割には、余裕で倒してるよね。カルテットが作った武器が、チート過ぎて笑える」
前衛は私と容子、後衛をアンナとカルテットの構成が戦闘スタイルになりつつある。
カルテットの攻撃は、基本投擲である。
作った武器は回収を厳命したら、楽白が武器に糸を括りつけて、赤白・紅白が投擲している。
サクラは、容子の頭に陣取りながら回復魔法で支援してくれている。
この旅で、サクラが範囲魔法を覚えた。
抜群のタイミングで回復をしてくれるので、HPを気にすることなく戦闘に励める。
容子と私は、ほぼ物理攻撃しかしていない。
「私達、物理攻撃しかしてないね~」
「あ~、確かに。聖魔法を取得したのに、サクラちゃんが回復担当してくれるから使う機会がないしなぁ。色んな武器を試してから、魔法を極めるのもありじゃね?」
とお気楽な答えが返ってきた。
妹よ、人はそれを脳筋と呼ぶんだよ。
口には出さないが、私は残念な子を見る目で容子を見た。
「戦闘以外でも、ちょこちょこ使っているけどさ。戦闘に比べて、得られる熟練度は低いからなぁ。王都までの間は、物理攻撃禁止で魔法のみで戦闘しない?」
私の提案に、アンナが難しい顔をした。
「それは、流石に厳しいと思います。MPにも限界がありますし」
私は、カルテットを指さして言った。
「大丈夫。あの子らが、物理攻撃で殺ってくれるし、アンナもある程度接近戦が出来る様にならないとダメだよ。それに、容子のヘッポコ治癒の効果を高めたいの! 折角、ポイント払ってまで取得したのに練習させないと。大丈夫、MPポーションは沢山あるから。MP切れを起こしても無問題」
軽口を叩きながら、物理攻撃から魔法攻撃に切り替えてガンガン打ちまくる。
前衛はカルテット、アンナと私は魔法攻撃で牽制したり、止めを刺す係だ。
容子は、ヘッポコ治癒でサポートに回る。
アンナは、風魔法単体で攻撃していたが、横で混合魔法を使っている私を見て、効率も威力も申し分ないのを確認した彼女は、いつの間にか私の魔法に合わせて魔法を発動するようになった。
相性が良いのか、アンナの魔法を吸収して威力が跳ね上がった混合魔法にモンスターは駆逐された。
十二回目のボス戦に勝利し、ドロップアイテムも結構溜まってきたところで、一旦昼食にすることにした。
容子が拾った『詳細な世界地図のスクロール』を読み込むと、Gogle地図のようなものが現れた。
現在地を確認しながら、休憩できる場所へと移動した。
移動中に出会ったモンスターは、原付バイクの餌食になったのは言うまでもない。
道から少し外れたところに開けた場所があったので、そこでお昼にしようと思ったら、イルビージョーンという恐竜型のモンスターの巣があった。
いや、本当悪運様だよね。
昼食前に、出てこなくても良いのに!
「お腹空いるのに、本気ウザイんですけど!」
とテーザー銃でドカン。
「疲れた。面倒臭い。休みたい。つか、休みくれ!」
とドラゴンフライでズドン。
<楽勝やで~>
<早よ、飯食いたいわ>
と蛇達による肉球斧でバコン。
「そういう問題ではないと思いますよ。風よ、眼前なる敵を切り刻め切り裂き!」
と魔法でズバンッ。
誰も彼も酷いね。
皆、容赦しないところが素敵だよ。
哀れイルビージョーンが、ドロップ品を残して跡形もなく消えた。
これぞ正しく瞬殺。
ドロップされた素材とお金を拾い、拡張空間ホームに突っ込む。
全員に清掃を掛けて、昼食の用意だ。
と云っても、容子の作り置きだけどね。
容子はテーブルと椅子を出しお昼ご飯の用意を、私は虫よけと魔物除けの薬を散布する。
「用意出来たよ~」
と声を掛けられたので、いそいそと席に着いた。
今日の昼食は、カレーライスだ。
カルテットは、物欲しそうにこっちを眺めているが無視だ。
勝手に上げたら、私まで乾パンの刑に処せられるしね。
容子の機嫌が直るまでは、そのまま我慢するんだよ。
「この辺りのモンスターは倒したし、レベルも上がっているんじゃない?」
「そうだねぇ。素材も溜まっているし、一度ステータスチェックした方が良いかな」
素材は拡張空間ホームに放り込めば、自動的に分類されるので問題なし。
ステータスは逐一自分でチェックしないと、現時点での強さが分からないので面倒臭い。
<ステータスは今すぐチェックする必要ないんちゃう?>
<せやで、あの程度の敵倒してもそんなに変っとらんやろう>
<そうですの~。余裕で倒せましたの~>
ステータスチェックを頑なに拒むカルテット。
楽白は、相変わらず奇妙な踊りをしている。
そんなに見られるのが嫌なのか。
それならば、期待に応えないと!
「じゃあ、全員これからステータスチェックしまーす」
<ええ!>
<後でもええやん>
<見たくないですの~>
怪しさ満点なカルテットを無視して、ステータスを表示させていった。
---------STATUS---------
名前:ヒロコ(琴陵 宥子ことおか ひろこ)
種族:人族[異世界人]
レベル:77→400
職業:魔物使いテイマー
年齢:18歳[25歳]
体力:482→2012(+永続回復(小)・テータス異常無効)
魔力:799→1584
筋力:310→1391(+150・強化+150)
防御:321→1311(+1000)
知能:298→1467
速度:199→1234
運 :23991→321099
■装備:楽白作ニットシャツ・楽白作パンツ・スニーカー・サコッシュ
■スキル:縁結び・契約テイム∞・剣術2→6・索敵1[30→33]・[隠ぺい8→20]・[隠密30→34]・魔力操作6→15・上級魔法1→3(全属性)・生活魔法2→8・調合→薬師8・射撃4→8・念話1→5・マッピング2
■ギフト:全言語能力最適化・拡張空間ホーム共有化・鑑定・経験値倍化・成長促進
■称号:蜂殺し・轢き逃げ・ゴブリンスレイヤー
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命]
[■ボーナスポイント:23,280pt→681,555,432pt]
所持金:金貨44枚→30816枚・銀貨8→44079枚・銅貨7→258647枚・青銅貨17→5777枚
---------STATUS---------
名前:マサコ(琴陵 容子)
種族:人族
レベル:55→321
職業:社畜
年齢:18歳[25歳]
体力:182→1602(+永続回復(小)・テータス異常無効)
魔力:403→1379(+150・強化+150)
筋力:111→826(+1000)
防御:97→561
知能:288→1314
速度:99→888
運 :84→102
■装備:楽白作ニットシャツ・楽白作パンツ・スニーカー
■スキル:縁切り・料理4→10・射撃5→12・聖魔法1→8・鍛冶2→30・生活魔法2→5・索敵1[8→11]・隠蔽2[8→10]・隠密[9→10]・魔力操作3→7・念話1→5・マッピング1・鑑定5→18・細工30
■ギフト:なし[拡張空間ホーム共有化]
■称 号:蜂殺し・轢き逃げ(宥子の従魔?)
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命]
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:サクラ
種族:ヒールスライム
レベル:65→192
年齢:0歳
体力:348→400
魔力:1290→2801
筋力:64→63
知能:182→287
速度:377→429
幸運:7692→16791
■スキル:聖属性魔法5→10・念話3→6・マッピング1・鑑定5→10・隠蔽7→15・変化6
■ギフト:なし[拡張空間ホーム共有化]
■称号:宥子の従魔・癒しのマスコット
■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:赤白
種族:蛇/スノーコーンスネイク
レベル:31→193
年齢:1歳
体力:532→2060
魔力:31→66
筋力:3000→10200
知能:270→440
速度:2480→2980
幸運:42495→337561
■スキル:丸飲み13→29・絞め殺し33→58・念話4→6・マッピング1・鑑定5→10・隠蔽8→10・変化5
■ギフト:なし[拡張空間ホーム共有化]
■称号:宥子の従魔・脱走常習者
■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:紅白
種族:蛇/ウルトラアネリモトーレ
レベル:33→197
年齢:0歳
体力:333→2131
魔力:19→43
筋力:2115→3129
知能:162→244
速度:2812→4012
幸運:35128→400920
■スキル:丸飲み10→16・絞め殺し27→54・念話4→5・マッピング1・鑑定5→17・隠蔽8→10・変化5
■ギフト:なし[拡張空間ホーム共有化]
■称号:宥子の従魔・脱走常習者
■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:楽白
種族:蜘蛛/リトルスパイダー(幼体)
レベル:44→199
年齢:0歳
体力:44→69
魔力:47→70
筋力:49→63
知能:432→600
速度:4247→11112
幸運:28225→210753
■スキル:糸操4→11・糸吐き5→28・毒耐性10→15・索敵15→30・看破2→5・念話5→7・変化5・隠蔽8→18
■ギフト:韋駄天・[拡張空間ホーム共有化]
■称号:宥子の従魔
■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命
[■pt統合]
---------STATUS---------
名前:アンナ
種族:人族[サイエス人]
レベル:3→87
職業:無職
年齢:22歳
体力:5→239
魔力:151→981
筋力:7→34
防御:8→24
知能:375→1123
速度:1→22
幸運:412→3489
■装備:白のシャツ・黒のパンツ・スニーカー
■スキル:値切り53・交渉23・魔力操作1→22・生活魔法5・魔力操作1→13・風魔法2(中級)→4(上級)・並列思考1→8・言語最適化・隠密10→13・索敵10→21・隠蔽10・念話1→3
■ギフト:鑑定10
■ギフト:拡張空間ホーム共有化
■称号:ヒロコの従魔(制約魔法試行中)
■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命
■[pt統合]
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うん、皆のステータスが著しく上昇している。
私のステータスは、人間止めちゃったレベルじゃないか?
レベル400とか無いわぁ。
容子が、オールラウンダーな感じだな。
「てか、この変化って何時の間に取得したの?」
カルテット全員に変化が付いている。
レベル5以上と熟練度もそれなりにある。
首を傾げる私に対し、
「何かの拍子で取得したんじゃない? 別にスキルポイントを使って取得しなくても、自然に身につく場合もあるでしょう」
と容子に言われ、私はそれもそうかと納得した。
「しかし、相変わらず偏ったステータスだよね」
全員のステータスを見ながら、思わず本音がポロリと零れ落ちた。
容子以外、運の値がゲシュタルト崩壊している。
「宥子の悪運、上昇の仕方がおかしい。ゴブリンスレイヤーって、あれかな? 三千匹を一人で殲滅したから貰えたのかな?」
「さあ? 私は欲しくなかったけど」
「集落をぶっ壊しても称号は貰えなかったのは、単身で三千匹相手しないと称号は手に入らないって事かな? いや、やっぱり物騒な称号要らない。カルテットが居なかったら、確実に死んでたわ」
ゴブリン集落の襲撃時を思い出したのか、容子はブルリと身体を震わせて自己完結している。
カルテットの幸運様がなければ、今頃彼女は土の栄養分になっていただろう。
「どうせなら、もっと恰好良い称号が欲しよね」
「ドラゴンスレイヤーとか?」
「そうそう」
ハハハと笑いながら言っていた言葉が、後々現実になるとはこの時の私達は知る由もなかった。