53.カルテットが暴走した結果
魔石は換金しようと思っていた時期もありました。
アイテムの整理をしていたら、目を疑うような物があった。
私が、前回素材をちょろまかしてカルテットが作った武器を見つけて雷を落としたばかりなのに、新しい凶器を作っていた。
貴重なアラクネトロの心臓を使って、造られた杖がチート過ぎた。
『馬鹿でも使える神聖魔法使い放題。打撃19999』
説明文酷すぎる!
あり得無くね?
そんなものを作ったなら、一言言ってくれよ。もう!
お陰で、こちとらズタボロにアイテムを使いきった状態なんですけど。
思わず足から崩れ落ちた。
というか、いつの間に作ったんだろう。
冒険者ギルドに売るつもりだったアラクネトロの心臓が、いつの間に使われていたのだろう。
帰ったら連帯責任という事で、容子含めて全員〆てやる。
ポーションが無いので鑑定をフル活用して、薬草とマナ草を採取して清掃を施してから自宅に帰ったら誰も居なかった!
容子達も、サイエスに逃亡したようだ。
まあ、いつかは逃亡するだろうと思っていたが、予想より早かったな。
息抜きは必要だし、今回の逃亡は目を瞑ろう。
サイエスで発散してリフレッシュして戻ってきたら、例の杖について追及して〆る。
取り敢えず、念のため所在確認だな。
スマートフォンを取出し、愚妹をタップする。
コール音が鳴り続けて一向に出ない。
何をやっているんだ!?
一分置きにコールしても出ないので、面倒になってメールを送った。
『帰る前に連絡入れろ。後、あのチートな杖は何だ? 何勝手に素材に手を出してんだゴルァ! 売りもんに手を出すんじゃねぇ!! 素材を使うなら一言言ってから使え、ボケ』と送信してから、私は自室のベッドにダイブして惰眠を貪った。
目を覚ますと、一日中寝ていました。
今更だが、筋肉痛でプルプル小鹿ちゃん状態です。
あれだけの相手をしたら、そうなるよね。
MPは全回復したので、体力ポーションを作って飲んだら筋肉痛が和らいだ。
HPポーションは、筋肉痛にも効くとは凄いわ。
筋肉痛のために中級ポーション飲む馬鹿は、私くらいかもしれない。
十本ほど中級のHP・MPポーションを作ったら、素材が無くなった。
三千匹の軍勢相手に大立ち回りして、森を焼いたからなぁ。
うん、仕方がない。
討伐した近くで、運良く薬草とマナ草を見つけられただけ幸運だよ。
さてさて、ステータスがどれくらい上がっただろうか。
---------STATUS---------
名前:ヒロコ(琴陵 宥子)
種族:人族[異世界人]
職業:魔物使い
レベル:77→389
年齢:18歳[25歳]
体力:482→1873(+永続小回復/ステータス異常無効)
魔力:799→3500
筋力:310→1201(+150/強化+150)
防御:321→1134(+2000)
知能:298→1382
速度:199→1156
運 :23991→218971
■装備:楽白の糸で作ったパンツ・楽白の糸で作ったニットシャツ・スニーカー・サコッシュ
■スキル:縁結び・契約テイム∞・剣術2→5・索敵1[30→31]・[隠ぺい30→31]・[隠密30→33]・魔力操作6→10・初級魔法→中級魔法5(全属性)・生活魔法2→6・調合10→薬師3・射撃4→精密射撃1・念話1→3・望遠1・自動装填1
■ギフト:全言語能力最適化・拡張空間ホーム共有化・鑑定・経験値倍化・成長促進
■称号:蜂殺し・轢き逃げ・ゴブリンスレイヤー
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命]
[■pt統合:204,651,691pt→314,777,099pt]
所持金:金貨1365枚・銀貨2989枚・銅貨10038枚・青銅貨987517枚
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使ったポイントも、先のゴブリン退治で荒稼ぎしたみたいだが、多分容子達も同じようにモンスター狩りでポイントを稼いでいるだろう。
実際、ゴブリン三千匹のポイントがどれくらいだったのかはpt統合した今、分からずじまいである。
アイテムボックスの時も管理が杜撰だったが、拡張空間ホームにしてから杜撰さが加速した気がする。
放り込めば、自動でフォルダに仕訳けてくれるから、ついつい管理を怠っていた。
拡張空間ホームは共有になっている為、自分のフォルダに入っている物を容子達が私の許可なく勝手に出し入れ出来てしまう。
現状、使うなと注意する以外は何の手立ても無い。
鍵付きに出来てしまえば良いのだが、そのような機能は解放されていない。
拡張空間ホームの新機能解放条件を満たすための方法を模索しよう。
それまでは、口頭での注意を徹底するしかない。
軒並みスキルレベルが上がっているのは良い事だ。
調合から派生したスキル薬師を取得したのは、上級ポーションを作るに辺り大いに役立つだろう。
これでAランクに格上げしてくれないかなぁ。
射撃が、精密射撃になっている。
これは、嬉しい誤算だ。
さて、問題は冒険者ギルドだ。
ギルドカードで、どのモンスターを討伐したか分かってしまう。
一人で約三千匹のゴブリンを倒したことがバレる。
説明が面倒臭いが、遅かれ早かれ依頼を受ければバレるだろう。
暫く冒険者ギルドに行くの止めようかなぁ。
適正価格で買い取ってくれるのは、冒険者ギルドしかない。
他で売って、足元を見られて買いたたかれるのは嫌だ。
腹く括って行くか。
先延ばしにしても、どのみちバレるしね。
渡る世間は鬼女ばかりのテーマソングが、スマートフォンから流れた。
容子からのメールが来た! やっとか。
いそいそとメールを確認すると、容子もゴブリンと戦っていたようだ。
Oh……そんな偶然いらねぇ。
更に、容子を除くカルテットが、えげつない攻撃でゴブリンを蹂躙したとも書かれていた。
これは一度、全員のステータス確認しないとダメだ。
戦闘でステータスがどれくらい変わったのか確認しなければ、今後が不安になる。
容子から迎えに来てメールが届いたので、身支度を整えて容子達を迎えにサイエスへと向かった。
容子からのお迎えコールを受けて、サイエスまで迎えに行きましたよ。
ゴブリンと遭遇した容子達から事情を聴くと、ゴブリン討伐(パーティ用)の依頼をソロで受けたら、集落を発見したからそのまま襲撃したと言われ、顎が外れた。
開いた口が塞がらないとは、この事を言うのだろうか。
ソロで受けるのは、所持している武器の関係で仕方がない。
だからと言って、集落を見つけたら襲撃する思考回路はおかしい。
死んだらどうするんだ。
私みたいに身代わり地蔵使わなくて済んで本当に良かった。
「……本当に馬鹿じゃない? 百歩譲ってソロで討伐は分かる。だが、何故集落襲撃になるんだ? アホか。死にたいの? ねえ?」
「いや、私は殆ど何もしてないというか……。申し訳ありませんでした。カルテットの暴走を止められませんでした」
ガバッとその場で土下座する容子の頭を容赦なく踏んだ。
「で、そのカルテットって何?」
分かっているが、一応聞いてみる。
「赤白ちゃん、紅白ちゃん、サクラちゃん、楽白ちゃんの四匹のことです! 私も襲撃する気はなかったよ。ちょっ、そんな目で見ないで!! 本当だから! でも、こいつら勝手に突撃して率先して敵を倒していくんだもん。私より強いし、もうチートだよ」
「はあぁ?」
思わずドスの効いた声で返してしまった。
いかん、血管ぶち切れそうだ。
クールダウン、クールダウン、OK。
落ち着いたぜ。
「容子の主張は、カルテットが暴走して収集付かずに集落襲撃に繋がったと?」
「うん、そう」
あははは、と笑っている容子の脳天を思いっきり蹴り飛ばした。
「アベシッ」
と変な奇声が聞こえてきたが、無視だ無視。
私は、ハァと大きな溜息を零した。
「私も人の事言えないけど、無謀な事するなよ。命が幾らあっても足りないから。済んだことは、仕方がない。カルテットと容子は、連帯責任ってことで暫く自宅待機させるかな」
「嫌! 勘弁して下さい!! 毎日毎日毎日エンドレスで同じ物を作らされたら、精神がやられる」
全力で拒否りやがった、チッ。
色々作らせようと思ったのに……。
「じゃあ、無謀なことすんな! ちゃんと手綱握っとけ」
「無理! 最近、私の云う事聞かないもん」
豊満な胸を揺らして、堂々と宣う妹にムカついた私は、反射的に蹴りを入れた。
「ギャッ、何すんのさ!」
「イラっとした。私も約三千匹のゴブリン相手にしてたからストレスが、ね……」
身の危険を感じたのか、ザッと容子達は後退る。
別に何もしないのに、避けられると何かしたくなるじゃないか。
ニヤニヤと笑いながら近寄ろうとすると、ギャーッと悲鳴を上げられた。失礼な!
「宥子の方が、超無謀な事してるじゃん。何で私だけ怒られるの? めっちゃ理不尽!!」
容子は、ギャイギャイと文句を言う。
「私は、悪運様が働いたんだよ! 私一人だとエリアボスのエンカウント率が高いんだ!! 好きでこんな体質になったんじゃないやい」
その言葉に、容子から憐みの眼でみられた。
「うん、ごめん。私が悪かったよ。それで、遭遇したゴブリンは殲滅できたん?」
「した。してなかったら、死んでいたわ。MP・HPポーションと弾全部使ったしね。シュールストレミング缶が、良い役割を果たしてくれたよ。身代わり人形のお陰で、生き延びたしね。フルレイド並の戦闘をしたのに、ドロップ品が酷かった。ショボイくて涙が出た。話は変わるけど、拡張空間ホームに収納してある素材や魔石を勝手に使っているのさ。アラクネトロの心臓は、冒険者ギルドに売るつもりだったのに! ネーミング皆無なの武器を作ったこと、今まで何にも知らされてなかったんだけど」
杖について追及したら、容子は自分じゃないと言い張った。
「私、勝手に使ったりしてない。したら、怒るじゃん」
「じゃあ、このぶっ壊れチートな杖があるの? 物理攻撃だけでもセブール周辺のボスを三発殴れば殺せるアイテムだぞ。アホでも使える神聖魔法を無限に使える杖とか世に出したら駄目でしょう。作る前に一言報告しろよ。そして、何でもっと早く教えないの! 知ってたら、杖でゴブリンをタコ殴りして殺したのに!!」
キーッと発狂してたら、念話が入った。
<それ作ったんわしらやで>
<そうそう、容子は関係あらへん>
「わしら……? カルテットの仕業か!」
赤白と紅白の突っ込みに、一瞬思考停止した。
カルテットが作ったのか……なるほどな。
幸運だけで生きている奴らが手を出せば、チートアイテムくらい作れるだろうよ。
いや、こいつら生産系のスキル持って無かったよね?
「どやって作ったの?」
<うんとね~。楽白ちゃんの糸を固くしてガリガリ削ったの~>
サクラ、お前の説明はざっくり過ぎて良く分からないよ。
「楽白は、糸の強度を変えられるってことで良いのかな?」
楽白に聞くと、そうだよと言いたげに前足を上げた。
うん、安定の可愛さだ。
「それを使っておまえらが、加工したと」
<せやで>
<わいらの力作や>
ドヤ顔テラカワユス!
でも、激オコな今の私には通じないぞ。
「はい、アウトォォオ! そんなチート性能なもの売れないでしょう。売れないものを作るのは禁止! 後、勝手に素材使うな。売りもんだから使っちゃダメ!」
「メンゴ。それ、もう売った後だわ。いやー、良い値で売れてさ。白金貨150枚だった」
「白金貨って何?」
「さあ? 金貨の上の硬貨らしいよ。金貨100枚が、白金貨1枚になるんだって」
何てこったい。
売った後かよ。
絶対目を付けられた。
面倒ごとが起きそうな予感がする。
こういう時の勘は、絶対に外れないんだよねぇ。
「どこで売ったの?」
「商業ギルドで買い取って貰った。宥子の名前を出したら、宥子専属のアンナさんって人が出てきて買い取ってくれたよ」
力が抜けてリアルで『orz』の状態になった。
担当ではあるけど、あくまで化粧品や調味料の売買をするためだ。
武器を売る気は、全くなかったのに面倒臭い事になったじゃないか!
「金輪際、勝手に素材は使わない! 魔石は特に使っちゃダメ!」
容子と|契約カルテットからのブーイングを無視したら、無視し返されて泣く泣く専用のフォルダを作って、その中にある物は使ってよいと許可を出した。
冒険者ギルド預金:金貨14枚・銀貨9枚・青銅貨6枚
商業ギルド貯金:金貨180枚
薬師ギルド預金:金貨156枚・銀貨3枚・銅貨3枚・青銅貨5枚