43.命大事、お金も大事 ※*
容子達と別れて、一人でセブールの街に戻ろうとしたら、案の定遭遇しました。
索敵・隠密でモンスターを避けていたのに、Aランクモンスターと遭遇するとはエンカウント率やばくないですか?
ここでも働くのか、悪運めっ!
絶対、邪神が面白がって嗾けているに違いない。
鑑定してみたら、サーベルファングという魔物だった。
見た目はでっかい虎だが、目に毒な蛍光色に緑斑の模様が目に痛い。
「どんだけ自己主張したいんだよ!」
思わずツッコミを入れてしまった。
私の姿も大概だが、サーベルファングはその上を行く。
戦いたくないでござる。
でも、死にたくないでござる。
流石に、自転車では逃げ切れないだろう。
拡張空間ホームに自転車を収納し、どうやって凌ぐか考える。
キッチンハイターとサンポールの液体は、殆ど残っていない。
距離を詰められたら、良くて大怪我、最悪死亡の未来しかない。
足止めに残っていた虫よけ薬を取り出し、サーベルファングの顔面に目掛けて散布してやった。
投げても避けられるが、十本目辺りになるとサーベルファングの足取りが覚束ない状態になっている。
虫よけ薬の臭いに当てられたのか。
これは、チャンスである。
拡張空間ホームから除光液を取り出し、ボトルの蓋を取り奴の顔面目掛けてぶっかける。
「これでも喰らえ!」
除光液が、丁度良い感じに目に入った。
グゥォォオオウゥと大きく唸り声を上げ、サーベルファングはバタンと地面に倒れのたうち回っている。
腰に装備していたテーザー銃を脳天にぶっ放す。
照射ランプが見え辛くて狙いが定まらなかったが、的はデカイので問題なし!
パンッという騒音と共に、ビリビリビリという電気音が耳を劈く。
耳栓してから撃つべきだったかもしれない。
動きが止まったサーベルファングを鑑定すると、状態異常を起こしていた。
追い打ちとばかりに、下級魔法・水球で鼻と口を覆い水責めだ。
窒息死するまで10分も掛かった。
サーベルファングの綺麗な毛皮と拳(大)の赤の魔石、金貨22枚がドロップされた。
Aランクのモンスター一匹に対して、使用したコストを考えるとトントンか、それ以下である。
死ななかっただけ上出来だったと考えよう。
しかし、文明の利器は凄いね!
『高度な文明は魔法だ』と誰かが言っていた気がするが、それはある意味本当だと思う。
邪神を倒すには、レベル上げも必要なのは分かっている。
だけど、命を掛けてモンスターと戦いたくない。
そもそも、命を奪う行為自体が好きじゃない。
だから索敵と隠密をフル活用しているのに、何故かモンスターと遭遇する。
毎回、自分よりレベルが高いモンスターと遭遇するのは嫌がらせか?
一人でいる時のモンスターとのエンカウント率は、洒落にならないくらい高い。
ドロップアイテムを拡張空間ホームに仕舞い、自転車で移動と言っている場合ではなくなった。
原付バイクに乗り換えて、移動を開始する。
走ること数分で、今度はサラマンダーに出会った。
火を吐くトカゲ。
竜ではない!
爬虫類は好きだけど、歯向かう奴は許さん。
態と水球で威嚇して追い払おうとしたのに、生意気にも火を噴きやがった!
私の慈悲を無に帰してくれたので、サーベルファング同様に水責めにしたさ。
前身が水の球の中に閉じ込められれば、息も出来ないだろう。
窒息死を見届け、私はざまぁと笑った。
下級と侮るなかれ。
魔力をふんだんに注いだ水球は、ちょっとやそっとの衝撃で壊れるような代物ではない。
息継ぎが出来なければ、大抵の生物は死ぬ。
トカゲの分際で、歯向かってきたのが悪いのだ。
魔力切れの症状で体は怠い。
頭も痛いが、後悔は全くしていない。
MPポーションの原料となるマナ草を拡張空間ホームから一束取り出し、口に放り込む。
吐き気を催すえぐみに耐えながら、マナ草を飲み込めば少しだけ頭痛が和らいだ。
味が、生理不順と貧血の為に漢方を処方して貰った時の薬に似ている。
「ほげぇぇえっ!! 不味いよぉ。生で食べると、渋みとえぐみと苦みがポーションの時よりも強い。絶対品種改良してやる! せめて、抹茶くらいの苦さと味にしたい」
抹茶でもそのまま飲むと苦いがな!
サラマンダーの皮と牙、爪、心臓と拳(大)の翠色の魔石、金貨13枚のドロップ品を回収する。
セブールの街に戻る間に、エリアボス並みの敵と何回遭遇するのか考えただけで背筋に悪寒が走った。
「索敵と隠密のレベル上げておこう」
索敵8→30、隠密8→30。
どちらもスキルレベル30まで上げたったわ!
その分ポイントも使ったけど。
どうせ、容子達が狩に精を出していると思うので気にしない。
流石にスキルレベルが30まで爆上げされると、高レベルモンスターのエンカウント率も低くなった。
あくまで低くなっただけあり、遭遇はするんだよね!
本当、悪運様様だ。
どうせなら、幸運が良かった。
運になっているが、あれは絶対悪運だと思う。
結局、セブールの街に戻るまでに計13回の戦闘をした。
数からして不吉だが、無傷とは言えないが大きな怪我もなく生還できたのは快挙だろう。
ヨレヨレの状態でセブールの街に着き、疲労困憊を隠すことなく薬師ギルドへと駆け込んだ。
薬師ギルドは、相変わらず閑散としている。
数少ない受付嬢に、声を掛けた。
「Cランクのヒロコです。中級と上級のHP・MPポーションのスクロール貰えますか?」
「中級でしたらご用意は可能ですが、上級は王都に行く必要があります。また、Aランクにならないと無理ですよ」
ここで、初めてランクによる弊害が出た!!
ないわー。
「じゃあ、中級のスクロール下さい」
「畏まりました。調合スキルレベルが低いと、スクロールを読み込んでも中級ポーションは出来ませんのでご注意下さい」
更に衝撃的な事実発覚!
始まりの街で無理矢理ポーション作りした時に、説明してくれよ糞婆。
調合スキルも上げた方が良さそうだ。
「……それでも良いんで下さい」
「中級MPとHPポーションのスクロール二つで、金貨200枚になります」
そんなにもするの?
ぼったくりにも程があるだろう!
「それは、どこの薬師ギルドでも同じなんですか?」
「はい」
「Oh……」
絶句したわ。
下級ポーションの時は、スクロール代取られない代わりにタダ働きさせられたが。
あれは、婆なりの優しさだったのだろうか?
いや、違うな。
単に人手が足りなかっただけだな。
「あのー、肉体労働でスクロールの値段を下げて貰う事って可能ですか?」
「それは、どういう意味でしょう?」
「MP・HPポーションをそれぞれ100個ずつ作るので、半額にして下さい」
「……上に確認取ります」
受付嬢のお姉さんは、私の言葉に絶句した後、ギルドマスターに確認するという流れになった。
無茶言っている自覚あるけど、中級ポーションごときに金貨200枚は出せない。
魔石を売れば高く売れるだろうけど、容子が加工するから取っておく。
他の素材を売っても、魔石ほどにはならないだろう。
命を天秤にした冒険者稼業は儲からないのだ。
命大事と等しくお金大事!
ケチれるとことはケチります。
始まりの町で出来たんだから、セブールでも出来るはず!
「お待たせしました。確認したところ、半額は無理ですが金貨140枚なら可能との答えが出ました」
何事にも言ってみるもんだな。
「分かりました。それで良いです。作業中のMP回復用にポーションを飲ませて貰いますけど、それは勿論ただなんですよね?」
「はい」
何でそんな事知っているんだ的な目で見られた。
やっぱり、あれは裏技なんだね。
始まりの町で地獄のポーション作りを体験していて良かったよ、今思うと。
「スクロールの代金は、口座から引いて下さい」
ギルドカードを渡すと、金貨140枚引かれた状態で手元に戻ってきた。
「こちらで作業をお願いします」
通されたのは、大きな作業台と空っぽの空き瓶が入った箱の山だ。
「こちらが、MP・HPの中級ポーションのスクロールになります」
差し出された2枚のスクロールを読み込む。
読み終えると、やっぱり綺麗に消えてしまう。
そこは、ファンタジーだ。
「では、約束のポーション各100個を納品お願いします。ポーション(劣)は、数えられませんのでご注意下さい」
厳しいね!
スキルポイントを消費して調合レベルを上げてしまおう。
さっさとポーションを作るに限る。
調合3を調合10まで上げた。
今日一日で使った総ポイント数は、約30万ポイントだ。
スキルレベル上げるだけで、こんなに使うことになるとは思わなかったよ!
腕まくりをし支給されたMPポーションをテーブルの上に置き、ポーション作りに没頭した。
没頭しすぎて時刻は20時を回ってました。
出来たのが以下の通り。
HP中級ポーション(良)×38
HP中級ポーション(普)×114
HP中級ポーション(劣)×21
MP中級ポーション(良)×27
MP中級ポーション(普)×103
MP中級ポーション(劣)×11
魔物除けの薬(特効)×20
魔物除けの薬(良)×150
解毒剤(特効)×15
解毒剤(良)×167
虫よけ(特効)×222
虫よけだけが、ゾロ目になった。
作り過ぎた感はあるが、言われた普通以上を100個作ったので問題ないだろう。
言われた通りそれぞれ100個ずつ納品し、残りは拡張空間ホームのアイテムフォルダにぶち込みました。
ネコババではありません。
れっきとした対価です!
ついでに、自作の基礎化粧品を試しに作ってみたら偉い事になった。
化粧水(極)×100
化粧水(良)×200
化粧水(普)×300
乳液(極)×100
乳液(良)×200
乳液(普)×300
美容液(極)×100
美容液(良)×200
美容液(普)×300
そう言えば、始まりの町の薬師ギルドの婆がレシピ売れ売れ言ってたな。
う~ん、レシピ売っても良いけどが一人で決めるのは悪手だ。
ここは、容子と相談して決めよう。
(極)は、瓶の蓋が薔薇の飾りで差別化を図ってみた。
化粧水は透明、乳液は白、美容液は薄ピンクと色付けしているから一目で分かる。
ボトルの大きさも化粧水・乳液・美容液の順で小さくなっているから間違える心配もないしね。
(良)は、瓶の蓋がリーフの飾りになっている。
(普)は、ただの瓶で細工もなし。
300円ショップと100円ショップを梯子して、爆買いした甲斐があったわ。
これを卸すタイミングも、容子に一言報告してアンナと相談して進めよう。
さっさと、納品して帰らないと容子達に怒られてしまう。
調合室を出て受付嬢にポーション(普)をそれぞれ100本納品し、私は急いで宿に戻った。
---------STATUS---------
名前:ヒロコ(琴陵 宥子)
種族:人族[異世界人]
レベル:62→77
職業:魔物使い
年齢:18歳[25歳]
体力:214→482
魔力:512→799
筋力:123→310
防御:101→321
知能:157→298
速度:121→199
運 :8222→23991
■装備:白シャツ・ベージュのパンツ・スニーカー・サコッシュ
■スキル:縁結び・契約∞・剣術2・索敵1[8→30]・[隠ぺい8]・[隠密8→30]・魔力操作5→6・初級魔法3→4(全属性)・生活魔法2・調合3→10・射撃4・念話1
■ギフト:全言語能力最適化・拡張空間ホーム共有化・鑑定・経験値倍化・成長促進
■称号:蜂殺し・轢き逃げ
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命]
[■ボーナスポイント:23,280pt]
所持金;金貨44枚・銀貨8枚・銅貨7枚・青銅貨17枚
冒険者ギルド預金総額:白金貨2枚・金貨353枚・銀貨3枚・銅貨6枚・青銅貨6枚
薬師ギルド預金総額:金貨69枚・銀貨5枚・銅貨5枚・青銅貨0枚
商業ギルド預金総額:白金貨9枚・金貨539枚・銀貨8枚・銅貨0枚・青銅貨5枚