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琴陵姉妹の異世界日記  作者: もっけさん
ハルモニア王国 セブール
33/152

30.調味料は金のなる木です ※

 通された応接室のテーブルの上に、塩・胡椒・砂糖の入った透明な瓶を並べて置く。

 それを見たアンナは、誰かを呼びに言ったようだ。

 待つこと10分、小太りのおっさんと一緒に戻ってきた。

「お待たせ致しました。所長、こちらが先程お伝えしたヒロコ様です。ヒロコ様、この方はギルドマスターのウォーレンです」

 私は、ニッコリと笑みを浮かべて軽く会釈をした。

 ウォーレンは、ハンカチで汗を拭きながらテーブルの上に並べられた商品に釘付けになっている。

「ウォーレン・キースと申します。彼女より本日は、塩・胡椒・砂糖の販売をされたいと伺いました。間違いありませんか?」

「はい」

「手に取っても?」

「はい、構いません」

 耳かきくらいの小さなスプーンで中身を掬い、小皿の上に乗せた。

 指に付けて味を確かめて、感動したと言わんばかりに歓声を上げた。

「なんて素晴らしい! 雑味が一切ない。しかも、どれも上質だ。特に、この胡椒は手が込んでいるのか、サラサラしている。それに、入れ物は硝子ではありませんかな?」

 あらびき胡椒じゃないからね。

 塩も砂糖も地球産です。

 全部業務用スーパーで購入しました。

 小瓶は、100円ショップで揃えた物だ。

「はい、硝子ですね」

「素晴らしい。これほどの透明度となると相当お高いのでしょう。是非、当ギルドで購入させて頂きたい。幾らぐらい用意出来ますか?」

「硝子瓶付きなら後日になりますが、十本用意出来ます。袋であれば、塩・砂糖それぞれ10キロを二袋用意する事が可能です。胡椒は、これくらいの大きさの壺を一つですね。本日は、商品紹介という事でテーブルの上に出した三本分しかありません。残りは、一週間以内に納品出来ますよ」

 両手で丸を作り、直径10センチくらいの壺になると説明する。

「おお、それは有難い! では、サンプル分を全て購入させて頂こう」

「分かりました」

「お値段ですが、三瓶を金貨8枚で如何でしょう? 」

 元値が642円なので、8万円に化けるとは驚きだ。

 私が無言でいると、

「むむっ……駄目ですか。これだけ良い品ですので、う~ん……金貨10枚で如何ではどうでしょうか?」

 黙っていたら、値段が吊り上がった!

「瓶はシンプルな作りですが、非常に透明度が高く美しい代物です。中に入っている厳選した良質な胡椒で御座います。瓶代込みなら金貨12枚くらいが妥当かと」

 吹っ掛けてみたら、渋い顔をされた。

 流石に欲張り過ぎたか。

 では、飴も与えてみるか。

「今後、塩・砂糖・胡椒に関して優先的にセブールの商業ギルドに卸しましょう。如何でしょう?」

「分かりました! では、三瓶は金貨12枚で買い取りましょう」

 小瓶三つが金貨12枚って凄いね!

 まだまだ在庫あるけど、一気に出すと市場が混乱するので様子を見ながら売ろう。

「して、この入手先はどちらになりますかな?」

「……商人に入手先を聞くのは野暮ですよ」

 ニッコリと営業スマイルで一掃した。

 だって、地球の業務用スーパーで買った物なんて言えないもの。

「そうでした。仕入れ先を聞くなど、商人の命のようなもの。失礼しました。塩と砂糖を10キロ二袋と胡椒を一瓶注文したい。それとは別に、硝子瓶のみ売る気はありませんかな?」

「硝子瓶の単品販売は行っておりませんので、ご期待に添えかねます。その代わり、納品の日数を一週間以内と申し上げましたが、二・三日でご用意致しましょう。お値段は、塩一袋金貨25枚・砂糖一袋で金貨35枚・胡椒一瓶金貨60枚です」

「むむむっ……」

 ウォーレンさんが、頭の中でそろばんを弾いている音が聞こえてくる。

「提示したのは、仲介料金を抜いた金額です。大口で契約頂けるのであれば、硝子瓶三本はおまけで付けさせて頂きますよ?」

 ウォーレン氏、今必死に利益計算しているんだろうな。

 ダメ押しの一言を添えたら、即決した。

「買いましょう!」

 よし、上手くいった。

 ショルダーバッグを通してアイテムバッグから、事前に和紙で作った発注書二枚とA4サイズのカーボン紙を取り出す。

 発注書フォーマットをプリントアウトしたもので、商品名などは空欄になっている未完成の書類だ。

 発注書の間にカーボン紙を挟み、ボールペンで今回注文された商品と個数・金額を記入した。

 勿論、空の硝子瓶三本も記入してある。

「こちらが、発注書の原本です。用意出来次第、こちらにお伺いします。受付の方にお伝えすれば大丈夫ですか?」

 カーボン紙で写された控えは、私が持っている。

「アンナを通して貰えれば、その場で買い取ります。宜しくお願いします。そよりも、これは普通の紙と異なるようですが、お売りになる気はありますかな?」

「今のところは、紙を売る予定は無いですね。売買契約を結ぶ時か、大事な手紙を書く時くらいにしか使いませんので」

 手広く商売をする気はない。

 和紙も買えば、普通紙よりもコストが掛かる。

 調味料の売り筋が伸び悩んだ時に、和紙が金の種になる事だけ頭の片隅に留めておくことにしよう。

「そうですか。それは、残念です。発注書は、どのように作られているのか気になります。二枚とも、寸分違わず綺麗なマスが書かれております。文字も美しい。インク壺に漬けずに、インクが出るペンも欲しいものです」

 時に技術は、お金に変わる。

 プリンターの原理を教えたところで、造れるとは限らない。

 版画やガリ版くらいなら教えても良いが、自分の仕事が増えそうなので保留にしよう。

「お褒めに預かり光栄です。発注書に関してはお教え出来ませんが、ペンであれば新しい物があります。お近づきの印ということで、お譲りします」

「宜しいんですか!?」

 まさか、ペンがタダで手に入るとは思わなかったのか驚いている。

「ええ、構いません。これで良ければどうぞ」

 私は、木目が美しいボールペンを二本出した。

 H・Kのイニシャル入りだが、品だけ見ればサイエスでも違和感なく使える代物だ。

「インクは、使い切ると出なくなります。替え芯を入れ替えて使って下さい」

 替え芯を六本出して、アンナとウォーレンにそれぞれ三本ずつ渡す。

「ヒロコ様、ありがとう御座います。大事にします」

「私まで気を使って下さるなんて、本当にありがとう御座います。後生大事使わせて頂きます」

 感涙しているウォーレンとは対照的に、アンナはニッコニコの笑顔を振りまいている。

「替え芯が必要になったら、連絡下さい。一本銀貨一枚でお譲りします」

 ボッタクリだが、銀貨一枚で替え芯が一本手に入るのだ。

 ペン本体が破損しない限りは、芯を買い替えるだけで永遠に使い続けられる。

 良い事したなー。

「その時は、ペン同様に大量注文させて頂くと思います。何卒、ペンも融通して頂ければ幸いです」

「了解しました」

 ペンくらい持ち込んでも、大した問題にはならないだろう。

 私は、二つ返事でOKを出した。

「付きましては、アンナをヒロコ様専属とさせましょう。以後宜しくお願いします。珍しいお品などありましたら、そちらも買取致しますので。是非!」

 何かVIP扱いされてる?

 アンナが、担当なら話しやすいし宥子(ひろこ)特製の基礎化粧品も売れるかもしれない。

「今後とも宜しくお願いします。では、後日改めて」

 ウォーレン達と熱く握手を交わし、小瓶三本分・金貨12枚はギルドに預ける形で支払って貰った。

「御機嫌よう」

 ショルダーバッグを肩に掛けて鞄を手に取り、商業ギルドを後にした。

 丁度その頃、容子(まさこ)が単独でサイエスに乗り込んでセブールの門前で問題を起こしているとは知る由も無かった。

所持金;金貨163枚・銀貨89302枚・銅貨29060枚・青銅貨1217枚/未確認の貨幣多数あり

冒険者ギルド預金:金貨1枚・銀貨11枚・銅貨16枚・青銅貨8枚

薬師ギルド預金:金貨3枚・銀貨1776枚・銅貨2550枚・青銅貨13450枚

商業ギルド預金:金貨12枚

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