表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
琴陵姉妹の異世界日記  作者: もっけさん
ハルモニア王国 セブール
30/152

27.地図が財政を圧迫させる

 ショルダーバックの中から、サクラ達が這い出てきた。

「目的地にやっと到着したよ。動きたくないで御座る」

 ボフンッとベッドの上に身体を投げ出して寝転ぶ。

 想像以上にベッドが硬くて、無様に呻いてしまった。

 当面の拠点になるが、寝に帰るのは自宅だからベッドが硬くても良いのだ。

「少し早いけど、ご飯にしようか」

 三匹に声を掛けると、待ってましたと備え付けのチェストに集まっている。

 アイテムボックスから容子(まさこ)お手製弁当を取り出し、サクラにはチョコレート、蛇達は解凍済みのピンクマウスを出しす。

<それやのうて、狩った獲物を食べたい~>

<いっつもそれだと飽きるやん。たまには、豪勢な食事を食べさせえや>

 言っている事は全然可愛くないのに、こてんと可愛らしく首を傾げて舌をチロチロ出す姿は萌えた。

 萌え殺されそうになったが、正気を取り戻し両手でバッテンを作って拒否をした。

「可愛く言ってもダメです! 大体、モンスターが食べれるか確認出来てないのに許すわけないでしょう。仮に人が食べても問題ないと分かっても、おいそれと食卓に出すわけないでしょう。口に入れて、命を落としたら洒落になりません。絶対許可しません。後、食事にケチ付けるなら食べなくて宜し」

 ピンクマウスをアイテムボックスに仕舞おうしたら、焦ったのか腕に絡みついてストップをかけてくる。

 食い意地が張ったのは、一体誰に似たんだか……。

<あるじ~、ボクもそれ食べたぁ~い~>

 サクラは、ピンクマウスに興味を持ったのか触手を伸ばして虎視眈々と蛇達のご飯を掠め取ろうとしている。

 私は、う~んと唸り暫し考えた。

 ダメと頭ごなしに言えば、サクラは確実に泣いて拗ねる。

 スライムは雑食なので、ピンクマウスを一つあげたところで問題は無いだろう。

 私は、解凍済みのピンクマウスを一つ差し出した。

「美味しくなかったら、無理に食べなくても良いからね」

<分かったぁ~>

 ピンクマウスを覆うように体に取り込み体内で溶かす姿は、ぶっちゃけグロイ。

 蛇達は、いつものように時間をかけて丸のみしている。

<これ、美味しいねぇ! 初めて食べた味がする>

<うちらは、食べなれとるしなぁ。モンスターの肉食べさせてーや>

 従魔たちの語らいに、どうかサクラが蛇達の影響を受けておっさん化しないよう心から願った。

 食事も済み、食休みをしてから冒険者ギルドへ向かうことにした。

 昇級試験を受けなきゃならないし、契約(テイム)している従魔の登録も必要だろう。

 始まりの町では、色々あったからそこまで気が回らなかったんだよね。

「みんな、鞄の中に入ってー。これから冒険者ギルドに行って昇級試験受けるからね。大人しくしてるんだよ」

 容子(まさこ)にメールを送っておくか。

 ールボックスを開くと、一件受信メールがあった。

 読んでみると、帰る前に電話しろとの事。

 いつ帰れるかも分からないし、近況報告だけメールしておこう。


****************************************

件名:拝啓、愚昧へ

****************************************

これから冒険者ギルドで昇級試験受けてくる。

蛇達は、サイエスにいるから安心してね。

セブールへ行く途中、原付でHit and wayを繰り返してモンスターを沢山轢き殺したよ。


賢姉より

****************************************


 送信して、暫くしても返信はない。

 サイエスと日本では時差もあるし仕方がない。

 容子(まさこ)自身やることもあるだろうから、返事は気長に待つことにしよう。

 スマートフォンの地図アプリを起動させ、セブールの詳細な地図を売っている店を探した。

 地図を見ながら、手書きでメモ帳に書き写しポケットに仕舞う。

 サクラと蛇達をショルダーバッグの中に入れて、私は宿を後にした。



 メモ帳の地図を片手に歩き回るが、目的地に辿り着けない。

 行く先々で道を尋ねて、何とか目的の雑貨屋を訪れた。

 店の外で掃き掃除をしていた恰幅の良いおばさんに声を掛ける。

「すみません。地図を買いたいんですけど」

「はいよ! こりゃ、随分と若いお嬢さんだ。商家の娘さんかい?」

 私の恰好を見て、冒険者と思われないのは着ている物が上質だからだろう。

「いえ、冒険者です。セブールの地図と、このあたりの町や村の詳しい地図があれば欲しいのですがありますか?」

「小さいのに大変だねぇ。地図だね。ちょっとお待ち」

 小さいは、一言余計だ。

 おばさんは店の中に入り、カウンターの後ろの棚から地図を出してきた。

 地図は、ざっと見て十数枚はあるだろう。

「これが、ファレル領の大まかな地図。こっちが、それぞれの村や町の詳細な地図だ」

 悪質な紙に書かれた地図を見て値段を確認すると、やっぱり大金だった。

「大まかな地図は金貨2枚、村や町の地図は全部で金貨12枚と銀貨7枚だ」

「全部買うので、少し安くなりませんか?」

 金貨14枚以上出費を出したと知られたら、容子(まさこ)が無駄金を使ってと文句を言いそうだ。

 これも必要な物には変わりない。

 ここは、買う一択でしょう。

「全部で金貨14枚」

「もう一声!」

「金貨13枚と銀貨5枚!」

「もう少し!」

「ああ、もう! 金貨13枚!! これ以上は無理だよ」

 金貨1枚と銀貨7枚値切れた!!!

 やっぱり交渉してみて良かった。

 金貨13枚をテーブルの上に置き、地図を片っ端から読み込む。 どんどん私の中に吸収されて消えていく。

 ものの10分足らずで、全ての地図は私の中にインストールされた。

「若いのに、こんな大金を持っているなんて凄いね。冒険者と言われなければ、良いところのお嬢様がお忍びで城下を訪れたと思ったよ」

 身なりには、気を使っている。

 シャツ一つとっても、上質だとおばさんも分かるのだろう。

 シマモリで380円で買ったシャツですら、こっちでは高級品の部類になるんじゃなかろうか?

 裁縫も手縫いではなくミシンだし、布地も滑らかで着やすい。

 着た時のシルエットも綺麗だし、目の付け所は悪くない。

「まさか、商人も兼任してますから(用事が済んだら商業ギルドに登録しにいくけど)。それなりに身なりには気を付けてます」

「あれまぁ、商人も兼任されてたのかい! 通りで身なりが、綺麗なはずだ。珍しい品があれば買うよ。ここで売っていかないかい?」

 おばさんの目が、私を値踏みする目に代わる。

 口先で言いくるめて、安く仕入れようと思っているのが伝わってくる。

「これから用事があるので、機会があれば是非に」

 やんわりと断り、そそくさと店を出る。

 後日、売るかどうかは容子(まさこ)と相談して決めよう。

所持金;金貨150枚・銀貨89309枚・銅貨29060枚・青銅貨1217枚/未確認の貨幣多数あり

冒険者ギルド預金:金貨1枚・銀貨11枚・銅貨16枚・青銅貨8枚

薬師ギルド預金:金貨3枚・銀貨1776枚・銅貨2550枚・青銅貨13450枚

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ