20.妹をテイムさせられました ⁑
ベッドで爆睡している容子の身体を揺すって声を掛ける。
「起きて。おーきーてー!!」
徐々に声を大きくして揺するが、唸るだけで起きる気配がない。
仕方がないので、激しく揺さぶってみるも全然起きない。
「……起きてってば! 容子、いい加減に起きろっ!!」
ムカついたので、肩をガシッと掴み高速で揺さぶり、往復ビンタで起こしにかかる。
「うぅ……はよっ? 痛い…何で叩かれてんの、私??」
寝ぼけ眼で状況が理解出来ていない容子は、往復ビンタされた事実に、理不尽と言いたげに不機嫌な顔をしている。
「起こせって用件をメモにして、おいたんでしょーがっ! というか、あのダンボール箱の量は何? 無職がいるのに、散財とか馬鹿か?」
メモ書きを突き付け文句を言うと、
「ああ、悪い悪い。すっかり、忘れてたわ。ダンボール箱については、久世師匠の援助だから気にしなくて良いよ」
最後の一言に、私は顔を顰める。
「容子、話しちゃったの?」
「口止めされなかったし。師匠も向こうの世界が気になるみたい。最低限の生活費を援助して貰う代わりに、私も宥子に同行して向こうの世界に行くことにしたから。というわけで、私を契約して」
「何が、というわけなの? 日中の仕事はどうする気? 容子を下僕にしても、私にメリットが無いんだけど。嫌だよ。お前を養うなんて無理! 絶対無理ぃ!!」
必死に無理無理と連呼すると、
「勿論、日中の仕事は辞めたよ。最低限の保証もされたからね。私と宥子は、久世師匠のところで雇われる形になったから。それに、私も向こうの世界に興味あるんだ。進んで宥子の下僕になりたいわけじゃないけど、契約することで世界を渡れると思ったんだよ」
「アンタ、異世界に来るの? 本気で? ドMなの?」
と素で返したら、アイアンクローされた。
「物は試しだし、やってダメなら諦めるよ。確認したい事もあるし!!」
容子は、言い出したら人の話を聞かない性格だ。
こちらの世界でも魔法は使えるので、物は試しでやってみて契約出来なければ諦めて貰おう。
「……分かった。人にする魔法じゃないから、失敗しても文句言わないでね」
「分かってる」
食事を終えた容子の前に立ち、契約をしてみると出来た。
それも、すんなりと出来てしまった。
「うそ……出来た」
これで容子は、私の下僕か……。
要らねぇ、こんな暴力的な下僕。
契約されたのに容子は、ハイテンションで高笑いしている。。
「じゃあ、私のスキルってどうなってるか知りたい。ステータス画面見せて!!」
「そっちが目的だったのか!?」
思わず突っ込みを入れてしまった。
「ステータスオープンと唱えれば、自分のステータスを確認出来るよ」
「そこは、ゲーム通りなんだね。ステータスオープン」
---------STATUS---------
名前:未設定(琴陵 容子)
種族:人族
職業:社畜
レベル:1
年齢:25歳
体力:8
魔力:11
筋力:5
防御:6
知能:20
速度:1
運 :10
■装備:綿のパジャマ
■スキル:縁切り・料理4
■ギフト:なし
■称 号:ヒロコの従魔
■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命
■ボーナスポイント:0pt
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「職業が、社畜って酷い! てか、スキルが縁切りと料理かぁ。ポイントが入ったら、回復系と鍛冶師のスキル取得したい。職業の変更できるかな?」
「ナニコレ……」
何で料理スキル持っているんだよ。
私だって料理するのに、スキルはなかったぞ。
今後の事のスキル取得に関してブツブツと呟く容子に、本気で私に着いてくるつもりなんだと恐れ慄いた。
「ちょっと服着替えてくる! レッツ異世界ライフ♪」
やっぱりぃ!
ダメッて言っても聞かないんだろうな。
セブールまで行く間、確実に戦闘するだろう。
レベル1の容子が心配だ。
即死防止のために、身代わり人形は装備させておこう。
黒のパンク系で纏めた恰好で現れた容子の手には、見慣れない武器らしきものをしっかり装備していた。
後で聞いたら、ドラゴンフライとM85というエアガンだと分かった。
私が放心している間に、容子は原付バイクの燃料残量を確認しに外に行ってしまった。
戻ってきた容子は、行く気満々な状態なので断れない。
「容子準備はできた? 時計の針を合わせるよ」
私の腕時計で異世界の方の時間を確認した容子は、ペンダント型の時計の針を合わせている。
ちょっ、それ私のコレクション!
スイス製のアンドレイムッシュじゃないか!
花柄がモチーフの超可愛い時計で、コツコツ集めていた奴を何故お前が持っている!
呆然とした私に原付バイクと事前に用意していたであろうキャリーケースをアイテムボックスに収納させり、私達はサイエスへ旅立った。