145.ステータスを確認してみよう
エリアボスと思われる女王蜂と手下を撃破し、何とか生還できたことで私のレベルが一気に跳ね上がった。
総勢534匹を相手によくぞ死ななかったな、私たち。
サクラに治癒してもらっていた私とは対象に、宥子は傷だらけになっている。
宥子は、ポーションもあるし治癒も使えるから放置しても大丈夫だろう。
「魔物除けの薬散布してるから、一度休憩を入れよう。今回の戦闘で、どれくらいレベルが上がったのか確認したいし」
と宥子からの提案に、私は間髪入れずに了承した。
連続のモンスター襲撃に、私の精神は疲れている。
「賛成! お茶とお菓子キボンヌ」
と要望を出せば、
「ハイハイ」
と適当に流された。
アイテムボックスから折り畳みテーブルと椅子を出して貰い、お茶請けが近所のスーパーで買った桜餅なのは少し凹む。
宥子は早速桜餅を小皿に分けて、緑茶を片手に啜りながら食べている。
「容子の銃は、当たれば凶悪な武器だよ。絶対に、人に向かって打つの禁止! あれは危険すぎる。射撃スキルなしで打ちまくったから、弾の減りが異様に早かった。その武器で今後も戦うつもりなら、射撃スキルは取得して」
最もな指摘に、私は二つ返事で返す。
「はいな」
「よし、ステータス確認していくよ~。まずは、私のステータスからね。ステータスオープン」
---------STATUS---------
名前:ヒロコ(琴陵 宥子)
種族:人族[異世界人]
レベル:48
職業:魔物使い
年齢:18歳[25歳]
体力:152→160
魔力:260→312
筋力:90→101
防御:71→84
知能:118→132
速度:71→87
運 :1030→3570
■装備:黒のシャツ・パンツ・スニーカー・綿の鞄
■スキル:縁結び・契約∞・剣術2・索敵1[8]・[隠ぺい8]・[隠密8]・魔力操作2・初級魔法1(全属性)・生活魔法2・調合2・射撃2→4
■ギフト:全言語能力最適化・アイテムボックス共有化・鑑定・経験値倍化・成長促進
■称号:なし→蜂殺し
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命]
[■ボーナスポイント:10054pt]
-------------------------------
度のステータスも軒並み上がっている。
流石、召喚された奴はチートなんだな。
運の上がり方が異常なのは気になるが、ポイントを使わずにスキルレベルは上げられるという事が分かっただけでも収穫はあった。
やっぱりと評するべきか、アレは、エリアボスだった。
危ない綱渡りをしていたのだと気付いて、ゾッと冷や汗を流す。
「気を取り直して、容子の番だよ」
「オーキドキ! ステータスオープン♪」
いよいよ、私のステータスの確認だ。
一体、どれくらいレベルが上がったんだろうか?
---------STATUS---------
名前:未設定(琴陵 容子)
種族:人族
レベル:40
職業:社畜
年齢:25歳
体力:8→156
魔力:11→263
筋力:5→91
防御:6→78
知能:20→123
速度:1→53
運 :10→70
■装備:白のカットソー・黒のパンツ・スニーカー
■スキル:縁切り・料理4
■ギフト:[アイテムボックス共有化]
■称 号:宥子の従魔→宥子の従魔・蜂殺し
■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命
■ボーナスポイント:14596pt
-------------------------------
序盤でレベルアップが早いのはゲームでお約束だが、一桁のレベルで不釣り合いなエリアボスを倒すと、レベルが跳ね上がる。
「容子は、名前の未設定を変更しなよ。後、隠蔽スキル取ってポイントで7まで上げること」
「了解」
と返して、私は、ステータス画面をポチポチと弄り言われた通りに隠蔽スキルと射撃のスキルを取った。
「キャラメイクではないけれども、どういう路線で今後ここで活動したいの?」
と宥子に聞かれ、
「う~ん、スキルより職業を変えたい! 変更しようとしても、どうにもロックが掛かっているんだよね」
と答えると、
「へー」
と気の無い返事を返された。
職業が『社畜』って酷い!
これも、やはり日本で染みついた社畜奴隷として働いていた事が原因なのだろうか?
せめて、作家か小説家・百歩譲って自宅警備員とかにして欲しかった。
「職業の変更か……。そう言えば、アーラマンユ教会が祝福の儀と成人の儀をしてるって言ってたよ」
宥子が思い出したように、職業の変更はアーラマンユ教会で行うらしいよと情報をくれた。
「今その話題を出したって事は、二つの儀式に何か意味があると考えているんだね?」
と念のため確認すると、
「祝福の儀がスキルを授かり、成人の儀が職業を授かるんだって。そこから推測すると、神職系の職業を持つ者なら任意で職業を変える事が出来ると思う。勿論、適正のある職業に限られるだろうけれど。授けるよりは、ずっと簡単でしょう?」
と言われて、私は小さく頷く。
「職業の適性と熟練度が、職業に直結しているのなら、社畜になっても仕方がない。ああ、腹立たしい事に事実を受け入れざる得ないよ」
職業変更は追々するとして、今はスキル取得を優先しよう。
「容子としては、職業の事は一旦置いておいてだ。どんなスキルが欲しい? スキルと職業は、案外切っても切れないものかもしれないよ」
宥子の言葉に、私は考えた。
宥子は、スキルを見ても前衛・後衛どちらにも対応できるバランスの良いものを持っている。
対して私は、ステータスを見ても自分の戦闘スタイルが思い浮かばない。
うんうんと唸ってどうなりたいか考えて、やっと出した答えは、
「生産系のスキルは、欲しいから鍛冶と加工かな。後、神聖魔法も使いたい」
とサポート・支援特化にすると宣言した。
「サクラが神聖魔法持ってるから、他の魔法にしたら? どうしても取得したいなら、聖魔法から! それとは別に、魔力操作・索敵・生活魔法・水魔法・隠蔽・隠密も取得しておいた方が何かと便利だ。行動が分断される可能性が無いとも言えないからね」
私の苦渋の決断を宥子は、バッサリと切り捨てる。
確かに、サクラがいればバフ・デバフも使えるので後衛を増やす必要はないだろう。
しかし、折角異世界に来たのだからストレス発散に最強tururuをやってみたいじゃないか。
職業は神職系に就きたい願望の前には、やはり神聖魔法は欠かせないと思う。
熟練度で聖魔法がレベルアップして神聖魔法へ進化するなら、最初から神聖魔法を取得するよりもポイント消費は少ない。
「一足飛びに神聖魔法取得ならず! ……了解。聖魔法で妥協するわ。ステフリは、こっちでやってOK?」
宥子の意見を取り入れた上で、自分のステータスは自分で決めたいとお伺いを立てたら、条件付きで二つ返事でOKを貰った。
「構わないけど、隠ぺいと隠密は最低7以上に設定しなさい」
「分かってるって」
私は、鼻歌を歌いながらポイントでスキルを取得し、サイエスでの容子というキャラクターを作り上げていく。
聖魔法をガンガン使って、新しい職業を取得したい。
あわよくば教会の連中に成り代わって、自分で職業変更できるようになれば、それを利用して良い小遣い稼ぎになる。
二人で黙々ステータスを弄っていたら、あっという間に一時間も経過していた。
私の変更後のステータスは、以下の通りだ。
---------STATUS---------
名前:マサコ(琴陵 容子)
種族:人族
レベル:40
職業:社畜
年齢:18歳[25歳]
体力:156
魔力:263
筋力:91
防御:78
知能:123
速度:53
運 :70
■装備:白のカットソー・黒のパンツ・スニーカー
■スキル:縁切り・料理4・鍛冶1・射撃2・聖魔法1・生活魔法1・水魔法1・索敵3・隠蔽2[7]・隠密[7]・魔力操作1
■ギフト:なし[アイテムボックス共有化]
■称 号:[宥子の従魔]・蜂殺し
■加護:なし[須佐之男命・櫛稲田姫命]
[■ボーナスポイント:153pt]
-------------------------------
「攻撃系のスキルが、射撃なのはどうかと思うよ」
と宥子のツッコミに対し、私はケロッと顔で返した。
「私は、後ろであれこれ指示を出している方が性に合うから良いの」
その回答に宥子は、予想外と言いたげな顔をしている。
「容子は、もっと派手な魔法を選ぶと思ったんだけどな」
ド派手な魔法を使って目立つのも好きだが、今は職業の変更が優先事項だ。
社畜は嫌で御座る。
「いずれ他の魔法も取得する。神聖魔法が使えるようになれば、復活や範囲治癒も行使出来る。回復担当のサクラちゃんの負担も減るでしょう」
と尤もらしい理由を並べて、宥子に本音を隠した。
「要は、サクラを戦闘に参加させたくなかったと。見た目は可愛い水饅頭だけどスライムだから! 防御力が紙装甲でも、あの戦闘で普通に生き延びれるだけの図太さはあるから気にし過ぎ」
「サクラのステータスも確認しておこう。ステータスオープン」
---------STATUS---------
名前:サクラ
種族:ヒールスライム
レベル:53
年齢:0歳
体力:1→201
魔力:30→488
筋力:1→51
防御:1→33
知能:1→108
速度:1→259
幸運:100→1200
■スキル:聖属性魔法4・念話1
■ギフト:なし[アイテムボックス共有化]
■称号:宥子の従魔・癒しのマスコット
■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命
[■ボーナスポイント:54871pt]
-------------------------------
「ぶふぉっ!」
思わず二人して、吹いてしまった。
私よりレベルが高い!
更に、日本の神様の加護がついている。
これも宥子が契約した影響だからだろうか?
日本の神様有難う!
流石、幸運だけで生きてきただけはある。
幸運値が、異常な数値を叩き出している理由が何となく分かった気がする。
私にも幸運を分けて欲しい。
「サクラ、ステータスをちょっと弄るよ」
と宥子の言葉に、サクラは身体を伸ばして多く〇を作った。
サクラは、宥子の言葉を理解しているのだろう。
これが魔物使い《テイマー》の力なのだろうか。
宥子が、真剣な面持ちでスキル一覧を眺めたかと思うと、ポツリと呟いた。
「念話か。これは、意外と便利かも」
「容子、念話っていうスキルがあるから取ってみて」
「密談には、丁度良いスキルだね。テレパシーみたいなものかな? うん、取れたよ」
私のステータスにも念話1があるのを確認して、実際に念話を使ってみることにした。
<容子・サクラ聞こえたら手を上げて>
宥子の声が、頭の中に響いてくる。
サクラは触手を、私は右手を上げて見せた。
成功したようだ。
「念話で話さないといけない時もあると思うから、時々念話で会話しようね」
<りょ>
<はぁい>
サクラは良い子だ。
軽く返事を返したのがお気に召さなかったのか、宥子は無言で私の頭にゲンコツを一つ落とした。
「痛い! 暴力反対」
「返事は、きちんとしましょう。さて、スキルの確認も出来たことだし、村を目指すよ! 後、容子。弾使い過ぎて、在庫が半分切ったから無駄打ちしないように」
宥子は、ニッコリと笑みを浮かべて釘を刺してくる。
心外な!
口を尖らせて文句を言うと、
「あれだけの敵を相手に戦って生きていた方が奇跡だよ。射撃スキルなしで戦い生き残った事を褒めるべきだと主張する!」
「私の時は、問答無用で鉄拳を喰らわせたのに都合が良い事で」
と論破され、グウの音も出ない。
ここで良い負かされるとは、実に悔しいが神妙な顔を作って取り合えず謝罪しておくことにした。
「……悪かったよ。ごめん。スキル補正の有りと無しでは、予想以上に差が開くとは思わなかった。今後は、弾の無駄遣いはしない。残弾数が、1/3切ったら自腹で弾を注文すると誓うよ」
「そこまで言うなら、弾の件はこれ以上何も言わない。心の準備は良いかい? 冒険の続きと行こうじゃないか」
相変わらず、宥子はチョロインだ。
弾の件が、有耶無耶になった事を私はほくそ笑んだ。
私達は、ここから一番近い村まで向かって歩き始めた。